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事後2

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「…確かに俺は本気でお前は快楽目的だったかもしれない。だが、お前は快楽目的なら誰でもいいわけじゃないって言ってくれたじゃないか。俺だからしてみたいって。俺はそれだけで充分嬉しかった。それに、俺だってお前と付き合えるわけではないのにこういうことをしたいと頼んだんだ。俺にだって、お前としてみたいという性的な目的はあったんだぞ」


俺の言葉に隼はゆっくりと顔を上げた。

「……というか、お前さえ良ければ俺は何度でもお前としたいよ。雨宮とできるまで、お前も欲が溜まるだろうし」

「えっ」


俺の言葉に嘘はない。

あの快楽を知ってしまった俺らは、どのみち後戻りはできないだろうから。


「ほんとにいいの…?」

隼はゆっくりとこちらを振り返る。

「ああ。むしろ俺は本望だ。」

「そっか。でも……」

「その代わり、何があってもバレてはいけない。瑠千亜や五郎、清和、それに雨宮にさえも絶対に知られてはいけないぞ」

「それはそうだけど…」

「まあ、お前に任せるよ。また俺としたくなったら俺はいつでも待ち構えてる。なんなら俺のほうがお前としたいくらいだからな」



隼が決めあぐねているので、敢えてこう言ってはみた。

が、きっと隼は近いうちに再び俺を求めてくるだろう。


真面目で優しいこいつのことだから、きっと俺と体の関係だけになるのは気が引けているのだと思う。

雨宮という彼女もいる手前、俺を性欲処理の都合の良い奴として扱うことになる、と。


しかし、俺からしたらむしろ隼がこの話を受け入れてくれることこそが都合が良い。

隼と何度も、さっきのようなことができるなら……

隼の気持ちは雨宮にあるが、少なくともあの行為の最中は俺だけに向いている。
俺を求めてくれている。


それに、隼もきっと同じだと思う。

あの濃厚な行為を、性欲真っ盛りの男が辞められるはずがない。



俺は隼のことは手に取るように分かる。

だからきっとこの推測も間違うことはないはずだ。



「………わかった。よく考えてみる」


隼は深刻な顔をして前に向き直る。

よく考える暇もなく、こいつはきっと俺とまたしたがるはずだ……












数ヶ月後、俺のそんな予想は見事的中していたことがわかった。

テニスの遠征の最終日、俺と隼はホテルの二人部屋で、再び体を重ね合った。
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