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日常
第764話 高菜炒め
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朝方のクーラーが、少しだけ寒いと思うようになった。
「でも、消したら暑いしなあ」
まったくもって、調節の難しい季節である。昼間は待ったなしでクーラーが必要だが、朝晩は悩ましいところではある。
「わふっ」
「おはよう、うめず」
わしゃわしゃと撫でたうめずの体はほのかに温かい。毛皮を身にまとっているから、俺らより暑いだろう。今日もクーラーは必須だな。
カーテンを開けてみる。おや、今日は雲が多めのようだ。どことなく薄暗いし、雨が降るのだろうか。
「雨が降ったら、練習どうなんのかなー」
「わう」
「なー、今日も大変だなあ」
さあて、朝ごはんと昼の準備。
昼ご飯の時間があんま十分に取れないからなあ、おにぎりにしよう。ばあちゃんが昨日作ってくれた高菜炒めがあるんだ。それに、きんぴらごぼうも。二つずつ作ろう。
おかずは卵焼きとプチトマトと、冷凍のソースカツ。これで間違いないだろう。
朝ごはんは昨日の残りの切り干し大根を炊いたやつ、それとみそ汁とご飯と……卵焼きだな。
「いただきます」
一日経った切り干し大根は、味が染みてよりおいしくなっている。んー、ジュワジュワする。うまい。ご飯に汁が染みてまたいい。
卵焼きもしっかり焼けている。甘い卵焼き、思えば、自分で焼いたのは久しぶりだな。
みそ汁の具は厚揚げにした。食べ応えがあっていいんだ。外側はジュワッとしていて、内側はプルプル。みそ汁に厚揚げって、結構好きな組み合わせだ。
「ごちそうさまでした」
さて、今日はどんな一日になることやら。
今日は二時間目までが通常授業だったが、一時間目の途中くらいから空がみるみる暗くなり始め、静かに雨が降り出した。
二時間目の終わりに、先生が教科書をそろえながら言う。
「練習場所については、後で連絡があると思うので、着替えをして待っておくように」
「はーい」
「各係やリーダー、部活動での集まりがある生徒は、それに従うように」
「はーい」
気だるげな返事が各所から聞こえ、先生は教室を出ていった。
「春都は放送部だろ?」
と、勇樹が振り返って聞いてくる。
「ああ」
「大変そうだよなー。設営した後に雨降ってきたらどうすんの?」
「頑張って急いで片付ける」
「あはは、そりゃしんどい」
雨の日って何すんだろ、放送部。もしかして体育館で練習とかすんのかな。それはそれで骨が折れそうだ。
ササッと着替えて廊下に出る。おお、人がいない。でもざわざわと火との声が聞こえるから変な感じだ。
「春都ー」
「咲良、朝比奈も」
「よう」
三人そろって、何をするんだろうなー、などと話をしながら視聴覚室へ向かう。と、扉に何か張り紙がしてあった。咲良がそれを読み上げる。
「えーっと、放送部は体育館に集合、だって」
「やっぱり」
そうだと思った。
再び二階へ戻り体育館シューズを持ち、体育館へ向かう。
「体育館では、各ブロックの応援練習と、ダンスの練習、それに集団行動があります。音響設備の確認を今から、始めてください」
「はい」
放送部の返事は、間抜けたものではない。生半可な返事をしようものなら、先生に詰められる。
「マイクもいりますか?」
「そうね、準備よろしく」
「分かりました」
日差しはないが、体育館は蒸し暑い。
また疲れそうだなあ。さ、頑張ろう。
「あっつかった~!」
そう言いながら、咲良は視聴覚室の扉を開ける。お、涼しい。先生がクーラーを入れてくれていたようだ。
「あー、涼し~」
「涼しいな」
「腹減った……」
朝比奈が心なしかしんなりしている。背後に、塩でもんだ菜っ葉が見えるようだ。
「早く飯食おうぜ~」
椅子に座る。冷たい。水筒の麦茶は残り少ないので一気に飲み干し、追加で買ったペットボトルの麦茶を注ぎ入れた。氷がカラカラと音を立て、心なしか涼しくなった。
「いただきます」
さて、おにぎりおにぎり。保冷剤しっかり入れてたから、冷たいな。
まずは高菜の方から。冷たいおにぎりの米は、ギュッとつまっていて、もちっとしつつもほろほろとほどける。そうそう、冷たい米ってこの口当たりがいいんだ。
そして現れる高菜。シャキシャキとみずみずしくも、炒めてあるからまた違う歯ざわり。ほんのり辛くて、しょっぱい味付けが、汗をかいた体に心地よい。口の部分も、葉の部分もどっちもうまい。
高菜特有の香りが、より一層食欲を増進させ、米を進ませるのだ。プチッとはじけるごまが香ばしい。
間に卵焼き。疲れた時って、甘いものが染みるなあ。
プチトマトのさわやかさが嬉しい。はじける食感、甘さとさわやかさ。
ソースカツは甘く、ねっちりとしていて、隅の方はちょっとかため。そうそう、この食感がいいのだ。
さて、次はきんぴらごぼうを。
シャキシャキ食感が歯に心地よい。ごぼうの風味が鼻に抜け、香ばしい味付けが米に合う。きんぴらごぼうのおにぎりって、なんか好きなんだよな。にんじんはほのかに甘く、ごまがいい風味だ。
もうちょっと涼しくなったら、おにぎりもってどこかにサイクリングへ行こうかな。うんうん、それはいい考えだ。
どこに行こう。できれば、広い公園とか、静かなところがいいなあ。
今度の休みに、探しておこう。
その時はまた、ばあちゃんにきんぴらごぼうを作ってもらおう。いっそお弁当も……きっと豪華になるだろうなあ。
ふふ、楽しみだ。涼しくなるのも、いいもんだな。
「ごちそうさまでした」
「でも、消したら暑いしなあ」
まったくもって、調節の難しい季節である。昼間は待ったなしでクーラーが必要だが、朝晩は悩ましいところではある。
「わふっ」
「おはよう、うめず」
わしゃわしゃと撫でたうめずの体はほのかに温かい。毛皮を身にまとっているから、俺らより暑いだろう。今日もクーラーは必須だな。
カーテンを開けてみる。おや、今日は雲が多めのようだ。どことなく薄暗いし、雨が降るのだろうか。
「雨が降ったら、練習どうなんのかなー」
「わう」
「なー、今日も大変だなあ」
さあて、朝ごはんと昼の準備。
昼ご飯の時間があんま十分に取れないからなあ、おにぎりにしよう。ばあちゃんが昨日作ってくれた高菜炒めがあるんだ。それに、きんぴらごぼうも。二つずつ作ろう。
おかずは卵焼きとプチトマトと、冷凍のソースカツ。これで間違いないだろう。
朝ごはんは昨日の残りの切り干し大根を炊いたやつ、それとみそ汁とご飯と……卵焼きだな。
「いただきます」
一日経った切り干し大根は、味が染みてよりおいしくなっている。んー、ジュワジュワする。うまい。ご飯に汁が染みてまたいい。
卵焼きもしっかり焼けている。甘い卵焼き、思えば、自分で焼いたのは久しぶりだな。
みそ汁の具は厚揚げにした。食べ応えがあっていいんだ。外側はジュワッとしていて、内側はプルプル。みそ汁に厚揚げって、結構好きな組み合わせだ。
「ごちそうさまでした」
さて、今日はどんな一日になることやら。
今日は二時間目までが通常授業だったが、一時間目の途中くらいから空がみるみる暗くなり始め、静かに雨が降り出した。
二時間目の終わりに、先生が教科書をそろえながら言う。
「練習場所については、後で連絡があると思うので、着替えをして待っておくように」
「はーい」
「各係やリーダー、部活動での集まりがある生徒は、それに従うように」
「はーい」
気だるげな返事が各所から聞こえ、先生は教室を出ていった。
「春都は放送部だろ?」
と、勇樹が振り返って聞いてくる。
「ああ」
「大変そうだよなー。設営した後に雨降ってきたらどうすんの?」
「頑張って急いで片付ける」
「あはは、そりゃしんどい」
雨の日って何すんだろ、放送部。もしかして体育館で練習とかすんのかな。それはそれで骨が折れそうだ。
ササッと着替えて廊下に出る。おお、人がいない。でもざわざわと火との声が聞こえるから変な感じだ。
「春都ー」
「咲良、朝比奈も」
「よう」
三人そろって、何をするんだろうなー、などと話をしながら視聴覚室へ向かう。と、扉に何か張り紙がしてあった。咲良がそれを読み上げる。
「えーっと、放送部は体育館に集合、だって」
「やっぱり」
そうだと思った。
再び二階へ戻り体育館シューズを持ち、体育館へ向かう。
「体育館では、各ブロックの応援練習と、ダンスの練習、それに集団行動があります。音響設備の確認を今から、始めてください」
「はい」
放送部の返事は、間抜けたものではない。生半可な返事をしようものなら、先生に詰められる。
「マイクもいりますか?」
「そうね、準備よろしく」
「分かりました」
日差しはないが、体育館は蒸し暑い。
また疲れそうだなあ。さ、頑張ろう。
「あっつかった~!」
そう言いながら、咲良は視聴覚室の扉を開ける。お、涼しい。先生がクーラーを入れてくれていたようだ。
「あー、涼し~」
「涼しいな」
「腹減った……」
朝比奈が心なしかしんなりしている。背後に、塩でもんだ菜っ葉が見えるようだ。
「早く飯食おうぜ~」
椅子に座る。冷たい。水筒の麦茶は残り少ないので一気に飲み干し、追加で買ったペットボトルの麦茶を注ぎ入れた。氷がカラカラと音を立て、心なしか涼しくなった。
「いただきます」
さて、おにぎりおにぎり。保冷剤しっかり入れてたから、冷たいな。
まずは高菜の方から。冷たいおにぎりの米は、ギュッとつまっていて、もちっとしつつもほろほろとほどける。そうそう、冷たい米ってこの口当たりがいいんだ。
そして現れる高菜。シャキシャキとみずみずしくも、炒めてあるからまた違う歯ざわり。ほんのり辛くて、しょっぱい味付けが、汗をかいた体に心地よい。口の部分も、葉の部分もどっちもうまい。
高菜特有の香りが、より一層食欲を増進させ、米を進ませるのだ。プチッとはじけるごまが香ばしい。
間に卵焼き。疲れた時って、甘いものが染みるなあ。
プチトマトのさわやかさが嬉しい。はじける食感、甘さとさわやかさ。
ソースカツは甘く、ねっちりとしていて、隅の方はちょっとかため。そうそう、この食感がいいのだ。
さて、次はきんぴらごぼうを。
シャキシャキ食感が歯に心地よい。ごぼうの風味が鼻に抜け、香ばしい味付けが米に合う。きんぴらごぼうのおにぎりって、なんか好きなんだよな。にんじんはほのかに甘く、ごまがいい風味だ。
もうちょっと涼しくなったら、おにぎりもってどこかにサイクリングへ行こうかな。うんうん、それはいい考えだ。
どこに行こう。できれば、広い公園とか、静かなところがいいなあ。
今度の休みに、探しておこう。
その時はまた、ばあちゃんにきんぴらごぼうを作ってもらおう。いっそお弁当も……きっと豪華になるだろうなあ。
ふふ、楽しみだ。涼しくなるのも、いいもんだな。
「ごちそうさまでした」
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