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日常
第五百五十一話 休日飯
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目が覚めた時、外はまだ薄暗かったが、身支度を整えているうちに明るくなってきた。最近は日も長くなってきたことだし、明るい時間が長くなるのはいいことだ。
「うん、いい天気だ」
いわゆるお出かけ日和、というやつだろう。天気予報でも言っていた。今日は一日を通して雨の心配もなく、気温もちょうどいいから、レジャーにはうってつけだと。
しかし、俺は今日、一切外に出るつもりはない。一日のんびり、家で過ごす!
「さーて、まずは……」
朝飯だな。卵かけごはんとみそ汁にしよう。
炊き立てご飯を茶碗によそう。白米から立ち上る湯気が朝陽の中にたゆたってきれいだ。焼きたてパンとコーヒーの湯気、というような洋風の香りはうちとはあまり縁がない。朝はやはり、ご飯がいい。パンもうまいんだけどな。
お椀にみそ玉を入れて、お湯を注ぐ。みそがほどけていくのを見るの、好きだ。
「いただきます」
まずはみそ汁をひとすすり。うん、いい味、落ち着く味だ。具はわかめと小さい豆腐。この小さい豆腐、うまいんだよなあ。豆腐らしい口当たりはないけど、ちゃんと風味はあって、見た目もなんか好き。わかめは食感もいいよなあ。
卵をよく溶いて、醤油を入れたらさらに混ぜて、くぼみを作ったご飯にかける。そしてしっかりかき混ぜたら、食べる。ああ、これこれ、この味。卵のまろやかさに醤油の香ばしさ、さらさらと入ってくる米粒が最高にうまい。朝飯って感じする。冷たい卵が、口の中に心地よい。
のりで巻いて食べてみる。味のりの風味も加わり、パリッとした食感とご飯のやわらかさ、卵の滑らかさといった食感の違いがいい。
「ごちそうさまでした」
茶碗を洗いながら、今日は一日どう過ごそうか考える。とりあえず課題やって、そしたらテレビでも見ようかな。ああ、ゲームでもいいし、漫画を読むのもありだ。うーん、ま、その時にやりたいことをやればいいか。
「っし」
洗い終わったところで洗濯が終わった。洗濯終わりの軽快な音楽がうっすらと聞こえてきて、うめずが少し反応した。
たまっていた洗濯物を一気に洗ったので、重労働だ。水を含んだ冬物は、重い。でも今日は天気もいいし、よく乾くだろう。
「わうっ」
「いい天気だなー、うめず」
ベランダで洗濯物を干していたら、窓際までうめずがやってきた。そこはかとなく感じる春の兆しに、うめずもワクワクしているのだろうか。ゆったりとしっぽを振って、もう一声「わふ」と吠えた。
吹く風はまだ冷たい。洗濯物を干し終え、さっさと部屋にもどる。課題はそれほど多くないので、さっと終わらせよう。
自室から勉強道具を持って来る。見れば、うめずはいつの間にかソファーを陣取り、気持ちよさそうに横になっている。
「いいご身分だなあ」
「ふすっ」
「んっふふ」
鼻息で返事された。
えーっとまずは、数学からやるかなあ。
数学には少し手間取ったが、なんとか終わった。
「ちょっと腹減ったな」
がっつり昼飯を……ってほどはへっていない。なんか間食にちょうどいいのあったかなあ。
「あー、たこ焼き。いいな」
冷凍たこ焼き、これにすっか。皿にいくつか出してレンジでチンする。その間にソースとマヨネーズ、かつお節を準備する。飲み物は……オレンジジュースにしよう。
ん、出来上がったみたいだ。
「いただきます」
冷凍のたこ焼きはなんか、フォークで食うのがうまい。
たっぷりとソースをかけて、マヨネーズを絞って、かつお節を振りかける。フォークで触れると伝わってくる、ぷわぷわとした感覚。なんだか愛おしい。
「熱っ」
そのかわいらしいフォルムとは裏腹に、熱さは暴力的だ。しかしそこでひるんではいけない。やけどもしてはいけないが。
トロッとした中身は当然、激熱だ。でも気を付けながら食べると、出汁の風味が分かってくる。ソースの酸味とマヨネーズのまろやかさ、かつお節の風味がいい塩梅だ。半分に割って食うと食べやすい。たこは小さめだが、グニグニした食感とにじみ出る味はうまい。
少し冷めてくると食べやすくなる。一口で食って、口いっぱいにたこ焼きが満ちるのがいいんだよなあ。
オレンジジュースの甘さとさわやかさがまた合う。
「はー……ごちそうさま」
さて、とりあえず片づけたら……ゲームでもするか。
「あ、そろそろ晩飯」
しこたまゲームをやったところでふと時計を見れば、もうこんな時間だ。ちょうど区切りいいし、セーブしよう。洗濯物、途中で片付けといてよかった。今から片づけると思ったら億劫だ。
しかし何が食べたいだろうか。うちにあるもので何か作れるもの……あっ、冷凍のそばがあったな。それチンして、ねぎと天かすをかけて食うか。麺つゆでいいかな。
それと七味唐辛子。これがあるのとないのとでは全然違うんだなあ。
「いただきます」
まずは麺つゆとねぎと天かすだけで。うん、シンプルでいい。麺は柔らかめで、ほんのりと温かい。麺つゆが程よく冷たいから、食べやすくていいな。麺つゆの甘味と出汁のうま味は最高だ。
ネギのさわやかさと、天かすの香ばしさがたまらない。天かすは、カリッとしたところとふやふやとしたところの塩梅が絶妙だ。
七味唐辛子をかけてみる。ちょっと多めに。
んー、辛い。でも嫌な辛さではない。うま味といい香りがたっぷりの辛さだ。甘めの麺つゆによく合う。甘いだけってのもいいが、辛いと味が引き締まるんだよなあ。
ざるそばほど冷たくもないし、出汁のかかったそばほど熱くない。程よい熱さのそばは、食べやすくてうまい。温度ってやっぱり、大事だよな。
いやあ、しかし。今日は自分にいいように過ごしたなあ。こういう休日もいいもんだ。
明日は何を食べようかな。飯の漫画でも読んで決めるか。アニメもいいな。
……また、腹が減ってしまいそうだ。
「ごちそうさまでした」
「うん、いい天気だ」
いわゆるお出かけ日和、というやつだろう。天気予報でも言っていた。今日は一日を通して雨の心配もなく、気温もちょうどいいから、レジャーにはうってつけだと。
しかし、俺は今日、一切外に出るつもりはない。一日のんびり、家で過ごす!
「さーて、まずは……」
朝飯だな。卵かけごはんとみそ汁にしよう。
炊き立てご飯を茶碗によそう。白米から立ち上る湯気が朝陽の中にたゆたってきれいだ。焼きたてパンとコーヒーの湯気、というような洋風の香りはうちとはあまり縁がない。朝はやはり、ご飯がいい。パンもうまいんだけどな。
お椀にみそ玉を入れて、お湯を注ぐ。みそがほどけていくのを見るの、好きだ。
「いただきます」
まずはみそ汁をひとすすり。うん、いい味、落ち着く味だ。具はわかめと小さい豆腐。この小さい豆腐、うまいんだよなあ。豆腐らしい口当たりはないけど、ちゃんと風味はあって、見た目もなんか好き。わかめは食感もいいよなあ。
卵をよく溶いて、醤油を入れたらさらに混ぜて、くぼみを作ったご飯にかける。そしてしっかりかき混ぜたら、食べる。ああ、これこれ、この味。卵のまろやかさに醤油の香ばしさ、さらさらと入ってくる米粒が最高にうまい。朝飯って感じする。冷たい卵が、口の中に心地よい。
のりで巻いて食べてみる。味のりの風味も加わり、パリッとした食感とご飯のやわらかさ、卵の滑らかさといった食感の違いがいい。
「ごちそうさまでした」
茶碗を洗いながら、今日は一日どう過ごそうか考える。とりあえず課題やって、そしたらテレビでも見ようかな。ああ、ゲームでもいいし、漫画を読むのもありだ。うーん、ま、その時にやりたいことをやればいいか。
「っし」
洗い終わったところで洗濯が終わった。洗濯終わりの軽快な音楽がうっすらと聞こえてきて、うめずが少し反応した。
たまっていた洗濯物を一気に洗ったので、重労働だ。水を含んだ冬物は、重い。でも今日は天気もいいし、よく乾くだろう。
「わうっ」
「いい天気だなー、うめず」
ベランダで洗濯物を干していたら、窓際までうめずがやってきた。そこはかとなく感じる春の兆しに、うめずもワクワクしているのだろうか。ゆったりとしっぽを振って、もう一声「わふ」と吠えた。
吹く風はまだ冷たい。洗濯物を干し終え、さっさと部屋にもどる。課題はそれほど多くないので、さっと終わらせよう。
自室から勉強道具を持って来る。見れば、うめずはいつの間にかソファーを陣取り、気持ちよさそうに横になっている。
「いいご身分だなあ」
「ふすっ」
「んっふふ」
鼻息で返事された。
えーっとまずは、数学からやるかなあ。
数学には少し手間取ったが、なんとか終わった。
「ちょっと腹減ったな」
がっつり昼飯を……ってほどはへっていない。なんか間食にちょうどいいのあったかなあ。
「あー、たこ焼き。いいな」
冷凍たこ焼き、これにすっか。皿にいくつか出してレンジでチンする。その間にソースとマヨネーズ、かつお節を準備する。飲み物は……オレンジジュースにしよう。
ん、出来上がったみたいだ。
「いただきます」
冷凍のたこ焼きはなんか、フォークで食うのがうまい。
たっぷりとソースをかけて、マヨネーズを絞って、かつお節を振りかける。フォークで触れると伝わってくる、ぷわぷわとした感覚。なんだか愛おしい。
「熱っ」
そのかわいらしいフォルムとは裏腹に、熱さは暴力的だ。しかしそこでひるんではいけない。やけどもしてはいけないが。
トロッとした中身は当然、激熱だ。でも気を付けながら食べると、出汁の風味が分かってくる。ソースの酸味とマヨネーズのまろやかさ、かつお節の風味がいい塩梅だ。半分に割って食うと食べやすい。たこは小さめだが、グニグニした食感とにじみ出る味はうまい。
少し冷めてくると食べやすくなる。一口で食って、口いっぱいにたこ焼きが満ちるのがいいんだよなあ。
オレンジジュースの甘さとさわやかさがまた合う。
「はー……ごちそうさま」
さて、とりあえず片づけたら……ゲームでもするか。
「あ、そろそろ晩飯」
しこたまゲームをやったところでふと時計を見れば、もうこんな時間だ。ちょうど区切りいいし、セーブしよう。洗濯物、途中で片付けといてよかった。今から片づけると思ったら億劫だ。
しかし何が食べたいだろうか。うちにあるもので何か作れるもの……あっ、冷凍のそばがあったな。それチンして、ねぎと天かすをかけて食うか。麺つゆでいいかな。
それと七味唐辛子。これがあるのとないのとでは全然違うんだなあ。
「いただきます」
まずは麺つゆとねぎと天かすだけで。うん、シンプルでいい。麺は柔らかめで、ほんのりと温かい。麺つゆが程よく冷たいから、食べやすくていいな。麺つゆの甘味と出汁のうま味は最高だ。
ネギのさわやかさと、天かすの香ばしさがたまらない。天かすは、カリッとしたところとふやふやとしたところの塩梅が絶妙だ。
七味唐辛子をかけてみる。ちょっと多めに。
んー、辛い。でも嫌な辛さではない。うま味といい香りがたっぷりの辛さだ。甘めの麺つゆによく合う。甘いだけってのもいいが、辛いと味が引き締まるんだよなあ。
ざるそばほど冷たくもないし、出汁のかかったそばほど熱くない。程よい熱さのそばは、食べやすくてうまい。温度ってやっぱり、大事だよな。
いやあ、しかし。今日は自分にいいように過ごしたなあ。こういう休日もいいもんだ。
明日は何を食べようかな。飯の漫画でも読んで決めるか。アニメもいいな。
……また、腹が減ってしまいそうだ。
「ごちそうさまでした」
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