558 / 846
日常
第五百二十六話 いちごあめ
しおりを挟む
年が明けて早一週間、すっかり日常が戻ってきた。連休ってのも悪くないが、学校行ってからの休み、ってのもまたいい。頑張っとくと休みやすい。
「よいしょっと」
ゲームとジュースをもってこたつにもぐりこむ。うめずは尻尾を揺らしながらソファに飛び乗って落ち着いた。父さんと母さんはそろそろ出発だからと、準備をしている。
「なんかテレビやってっかな」
「わうっ」
「なー、アニメ以外よく分からんよなあ」
番組編成もいつも通りに戻った。年末年始特番のダイジェストがニュースの芸能コーナーで流れている。年末に音楽番組が集中するのは何なのだろうか。演歌縛りとか、グループ縛りとか、いろいろあるよなあ。縛りって言い方はなんか変かな。
『続いては、今年行きたいグルメスポットを紹介します』
こういうグルメスポットって、都会であることが多いから、なかなか行かないんだよなあ。あとシンプルに高い。でも、見てるだけでも楽しいんだ。
『まずは食べ歩きにうってつけの……』
「食べ歩きかぁ」
普段見ない景色見ながら食う飯ってのは、やっぱ味わいが違うんだよなあ。でも正直いうと、家でこうやってのんびりしながら普段食わない飯を食うの、好き。だからつい、テイクアウトにしてしまうんだなあ。
『こちら、いちごあめ! 串にささっていて……』
おっ、これネットで見たことある。うまそうだなあって思ってたんだ。写真じゃわかりづらかったけど、結構いちご、大きいんだなあ。なんか値段に納得いった。高いものにはそれなりの理由があるんだな。
大ぶりのいちご四つが串にささっていて、透明の飴が薄くかかっていて、パリパリでジューシーで……
「うまそうだな」
「わう」
「な」
でも、ちょっと買いに行くには遠いなあ。うちで再現できないかな。そりゃお店の味みたいにはなんないけどさ、雰囲気は味わえそうだし。
ちょっと調べてみよ。
「スマホスマホ……どこだ、あった」
うめずの下敷きにされていたスマホを取り出し、レシピサイトで検索してみる。おお、いっぱい出てきた。そんなにレシピがあるんだ。へえ、知らなかった。ぶどうの飴とかもあるんだ。シャインマスカットの飴、うまそう。今年作ってみようかな。いざシャインマスカットを目の前にして飴掛け、できるだろうか。
てかそもそもうちに、いちごないじゃん。買いに行くしかないかあ。寒いなあ、今日。もういいかなあ……
「……とりあえずゲームしよ」
テレビを消し、こたつに深くもぐりこんでゲームを起動する。ああ、新しいコントローラーいいねえ。色合いもいいし、何より、勝手に動かない。でも今まで勝手に動く中でやってきたから、逆に変な感じがする。
あっ、そういえばコントローラー、梱包しただけで送ってないや。早めに出しに行かないと、見積もりも来ないからなあ。
「うーん、行くかあ」
ずっとじーっとしてるのもあれだし、うめずの散歩ついでに行こうかな。
「思ったより寒くないな」
太陽の光も差し、風も穏やかで、まるで春先のようである。気持ちいいなあ。
「わーうっ」
「な、気持ちいいな」
「わう」
運送会社の営業所までは遠いと思っていたが、そうでもないようだ。散歩にはちょうどいい距離である。自転車で行くともっと早いんだろうな。道も広いし、歩きやすい。道路としっかり離れているのはいいな。
宅配便なんてそうそう出さないから、ちょっと手間取る。でも受付してくれた人が親切にしてくれたし、他にお客さんも待っていなかったから、焦らずにできてよかった。
帰り道は行きと少し違う道を通る。車の通りが少ない道で、結構この雰囲気、好きなんだ。図書館に寄りたいが、それはまた今度にしよう。
そしてこの道は途中で花丸スーパーの前を通る。
「……いちご、売ってると思うか?」
うめずに話しかけると、うめずは首を傾げた。そして飼い主の言葉が分からないなりに「わうっ」と言った。
「ありがとな」
「わう」
「売ってるよな」
よし、買おう。気になるもんは一度、食ってみるに限る。
えーっと、いちごあめを作るのに必要な物は……グラニュー糖に水、それといちごか。シンプルだけど、でも、ちょっと難しそうだ。
砂糖と水を薄い鍋に入れ、かき混ぜることなく火にかける。えっ、いいのこれで。焦げないの? いやでもレシピいくつか見て全部そうだったし、きっと大丈夫なんだろうなあ。なんか怖いな。
いちごは串にさしておく。よし、煮詰まったな。そしたら鍋を火からおろして、いちごをつけていく。
くるくる回して、きれいにつけて、つけたらクッキングシートの上にのせる。冷蔵庫に入れて、冷やしたら完成だ。
待っている間は少し、ゲームでもしようかな。
「いちごあめ作ったんだ?」
荷造りを終えた父さんと母さんがやってくる。
「おいしそうねぇ」
「二人の分もあるよ」
うめずには切り分けたバナナを。安かったんだ、今日。間食にもちょうどいいし。
「いただきます」
さて、どうかなあ。
パリッと香ばしく砕ける飴、はじけるいちごの酸味と程よい甘み。これはうまい。初めて作った割にはうまくいったなあ。イチゴが甘いばっかりじゃなくて、酸味もそれなりにあるやつでよかった。
飴のカリカリしたところ、うまい。べっこう飴だな、これ。
「おいしいじゃない、これ」
「うんうん、おいしい」
ちょっとねっとり、かたまりきってないところというか、分厚いところもうまい。いちごあめ、うまいな。
お店のはまた違うんだろうなあ。そっちも食べてみたい。
でも、うちでも作れるもんだ。また作ろう。
「ごちそうさまでした」
「よいしょっと」
ゲームとジュースをもってこたつにもぐりこむ。うめずは尻尾を揺らしながらソファに飛び乗って落ち着いた。父さんと母さんはそろそろ出発だからと、準備をしている。
「なんかテレビやってっかな」
「わうっ」
「なー、アニメ以外よく分からんよなあ」
番組編成もいつも通りに戻った。年末年始特番のダイジェストがニュースの芸能コーナーで流れている。年末に音楽番組が集中するのは何なのだろうか。演歌縛りとか、グループ縛りとか、いろいろあるよなあ。縛りって言い方はなんか変かな。
『続いては、今年行きたいグルメスポットを紹介します』
こういうグルメスポットって、都会であることが多いから、なかなか行かないんだよなあ。あとシンプルに高い。でも、見てるだけでも楽しいんだ。
『まずは食べ歩きにうってつけの……』
「食べ歩きかぁ」
普段見ない景色見ながら食う飯ってのは、やっぱ味わいが違うんだよなあ。でも正直いうと、家でこうやってのんびりしながら普段食わない飯を食うの、好き。だからつい、テイクアウトにしてしまうんだなあ。
『こちら、いちごあめ! 串にささっていて……』
おっ、これネットで見たことある。うまそうだなあって思ってたんだ。写真じゃわかりづらかったけど、結構いちご、大きいんだなあ。なんか値段に納得いった。高いものにはそれなりの理由があるんだな。
大ぶりのいちご四つが串にささっていて、透明の飴が薄くかかっていて、パリパリでジューシーで……
「うまそうだな」
「わう」
「な」
でも、ちょっと買いに行くには遠いなあ。うちで再現できないかな。そりゃお店の味みたいにはなんないけどさ、雰囲気は味わえそうだし。
ちょっと調べてみよ。
「スマホスマホ……どこだ、あった」
うめずの下敷きにされていたスマホを取り出し、レシピサイトで検索してみる。おお、いっぱい出てきた。そんなにレシピがあるんだ。へえ、知らなかった。ぶどうの飴とかもあるんだ。シャインマスカットの飴、うまそう。今年作ってみようかな。いざシャインマスカットを目の前にして飴掛け、できるだろうか。
てかそもそもうちに、いちごないじゃん。買いに行くしかないかあ。寒いなあ、今日。もういいかなあ……
「……とりあえずゲームしよ」
テレビを消し、こたつに深くもぐりこんでゲームを起動する。ああ、新しいコントローラーいいねえ。色合いもいいし、何より、勝手に動かない。でも今まで勝手に動く中でやってきたから、逆に変な感じがする。
あっ、そういえばコントローラー、梱包しただけで送ってないや。早めに出しに行かないと、見積もりも来ないからなあ。
「うーん、行くかあ」
ずっとじーっとしてるのもあれだし、うめずの散歩ついでに行こうかな。
「思ったより寒くないな」
太陽の光も差し、風も穏やかで、まるで春先のようである。気持ちいいなあ。
「わーうっ」
「な、気持ちいいな」
「わう」
運送会社の営業所までは遠いと思っていたが、そうでもないようだ。散歩にはちょうどいい距離である。自転車で行くともっと早いんだろうな。道も広いし、歩きやすい。道路としっかり離れているのはいいな。
宅配便なんてそうそう出さないから、ちょっと手間取る。でも受付してくれた人が親切にしてくれたし、他にお客さんも待っていなかったから、焦らずにできてよかった。
帰り道は行きと少し違う道を通る。車の通りが少ない道で、結構この雰囲気、好きなんだ。図書館に寄りたいが、それはまた今度にしよう。
そしてこの道は途中で花丸スーパーの前を通る。
「……いちご、売ってると思うか?」
うめずに話しかけると、うめずは首を傾げた。そして飼い主の言葉が分からないなりに「わうっ」と言った。
「ありがとな」
「わう」
「売ってるよな」
よし、買おう。気になるもんは一度、食ってみるに限る。
えーっと、いちごあめを作るのに必要な物は……グラニュー糖に水、それといちごか。シンプルだけど、でも、ちょっと難しそうだ。
砂糖と水を薄い鍋に入れ、かき混ぜることなく火にかける。えっ、いいのこれで。焦げないの? いやでもレシピいくつか見て全部そうだったし、きっと大丈夫なんだろうなあ。なんか怖いな。
いちごは串にさしておく。よし、煮詰まったな。そしたら鍋を火からおろして、いちごをつけていく。
くるくる回して、きれいにつけて、つけたらクッキングシートの上にのせる。冷蔵庫に入れて、冷やしたら完成だ。
待っている間は少し、ゲームでもしようかな。
「いちごあめ作ったんだ?」
荷造りを終えた父さんと母さんがやってくる。
「おいしそうねぇ」
「二人の分もあるよ」
うめずには切り分けたバナナを。安かったんだ、今日。間食にもちょうどいいし。
「いただきます」
さて、どうかなあ。
パリッと香ばしく砕ける飴、はじけるいちごの酸味と程よい甘み。これはうまい。初めて作った割にはうまくいったなあ。イチゴが甘いばっかりじゃなくて、酸味もそれなりにあるやつでよかった。
飴のカリカリしたところ、うまい。べっこう飴だな、これ。
「おいしいじゃない、これ」
「うんうん、おいしい」
ちょっとねっとり、かたまりきってないところというか、分厚いところもうまい。いちごあめ、うまいな。
お店のはまた違うんだろうなあ。そっちも食べてみたい。
でも、うちでも作れるもんだ。また作ろう。
「ごちそうさまでした」
22
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
蛍地獄奇譚
玉楼二千佳
ライト文芸
地獄の門番が何者かに襲われ、妖怪達が人間界に解き放たれた。閻魔大王は、我が次男蛍を人間界に下界させ、蛍は三吉をお供に調査を開始する。蛍は絢詩野学園の生徒として、潜伏する。そこで、人間の少女なずなと出逢う。
蛍となずな。決して出逢うことのなかった二人が出逢った時、運命の歯車は動き始める…。
*表紙のイラストは鯛飯好様から頂きました。
著作権は鯛飯好様にあります。無断転載厳禁
お父様、ざまあの時間です
佐崎咲
恋愛
義母と義姉に虐げられてきた私、ユミリア=ミストーク。
父は義母と義姉の所業を知っていながら放置。
ねえ。どう考えても不貞を働いたお父様が一番悪くない?
義母と義姉は置いといて、とにかくお父様、おまえだ!
私が幼い頃からあたためてきた『ざまあ』、今こそ発動してやんよ!
※無断転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる