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日常
第四百七十三話 鉄板餃子と大きなパフェ
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大会当日。電車やら何やらを乗り継いで会場に向かい、準備を済ませ、今は待機中だ。
正直、思ったよりも緊張してない。なんていうか、あれだな。いつもと違う景色を見てテンション上がってるところがある。
いつも乗ることのない電車に乗って、よその学校に来て……観月の文化祭の時とはまた違うワクワク感がある。
「ショッピングモールが近い学校って、どんな感覚なんだろうなあ」
賑やかな教室のすみっこ。原稿片手に椅子に座る咲良が言った。
「でかい病院とか、飯屋とか、科学館とかあるんだぜ」
「そうだなあ」
いつも行く図書館からほど近い場所にある、住宅街の中の高校だ。確かに、俺たちの学校とはだいぶ環境が違う。
「まあ、俺はこの近くの大学病院、年に何回か行ってんだけど」
咲良が何でもないように言うので、どう反応するのが正解なのか分からない。
「それに対してはなんと返事をするのが正解なんだ」
咲良の隣にいた朝比奈が困ったように聞けば、咲良はあっけらかんと答える。
「そうなんだー、とか、へー、とか、そんなんでいいよ」
「あ、そう」
「そうそう、それでよし」
へらへらと笑って言うが、結構大変なことだと思うんだよなあ……こいつ、よく分からん。妙なことで、この世の終わりのごとく騒ぐのになあ。
「ね、帰りにショッピングモール行こうぜ。バスで行けるはず」
「ああ、いいな」
そのためにも、気分良く大会を終わらせないといけない。予選の後、決勝があるんだったか。
ま、やれるだけやってみよう。
「さすが早瀬、県大会出場おめでとう~」
帰りのバスを待つ間、咲良が早瀬に言った。早瀬は「まあなあ」と言いながら、賞品を鞄にしまう。俺と咲良、朝比奈は、早々に予選で落ちたので、早いうちからフォローに回っていた。
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいぜ。でもさ、県大会はレベルが格段に上がるからさー」
「はぁ~、そんなもんかあ」
早瀬は「でもな」と表情を引き締めて言った。
「全国大会、今度は沖縄なんだよ。つまりさ、頑張ったら、学校が沖縄旅行連れてってくれるってわけ」
「なんだそれ、うらやましいな」
咲良もきりっとした表情で言う。確かに、咲良の言うとおりだ。沖縄なんてめったに行ける場所じゃあないぞ。
沖縄かあ。沖縄ならどんな飯があるかなあ。ショッピングモールでやってる沖縄フェアとかじゃあお目にかかれないようなものもあるのかなあ。てか、沖縄フェアって行ったことないけど。あ、あれ食べたいなあ、海ぶどう。
「一人分なら、マネージャー枠で来られるんじゃなかったかな」
まあ、全国行けたらの話だけど、と早瀬は笑った。
「えー、マジ? 早瀬頑張ってよー。俺、沖縄行きたい~」
「何言ってるの、旅行じゃないのよ」
と、矢口先生が通りがかる。苦笑していた先生は、早瀬に声をかけた。
「早瀬、週明けに賞状持っておいで。名前書いてもらうから」
「はーい」
「じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でしたー」
先生はこの先にある、駐車場へと向かって行った。
賞状は、渡されたときには付箋に名前が書いてあるだけで、学校に帰って先生が筆とかで名前を入れてくれるらしい。うちの学校には書道の先生がいるので、その先生がいつも書いてくれるのだとか。
そうこうしているうちにバスが来た。乗り込みながら、咲良が言う。
「さ、それじゃちょっとしたお祝いをしてやろうじゃないか」
「そうだな」
相槌を打つ隣で、朝比奈が顎に手を当てる。
「ああいうショッピングモールって、どんなのがあるんだったっけ……」
「え、なになに。なんかおごってくれんの?」
早瀬がにこにこしながら聞いてくる。
大したものはやれないが、ちょっといい感じの飯ぐらいはおごれるだろ。たぶん。
「何食いたいか決めとけよ」
そう言えば早瀬は「食いもん限定かよ」と笑ったのだった。
夕暮れ時のフードコートは、まだ、人であふれてはいなかった。しかしそろそろ混んでくるだろう時間帯だ。
「何食う? ステーキ?」
咲良がステーキ屋のメニューボードを指さす。
「予算足りねーよ」
「だよなあ」
「いろんな店があるなあ」
朝比奈は感心しっぱなしだ。どの店の飯を食っても喜ぶんだろうな、こいつは。
「うどん、オムライス、ハンバーグ、サンドイッチ……おっ、あれはどうだ?」
早瀬が示したのは、中華料理の店だった。餃子が売りなんだなあ。結構手ごろな値段だ。定食がワンコインか。
「いいんじゃね? あれにしようぜ。早瀬、おごるぞ。どれがいい?」
咲良が聞けば、早瀬は明るく笑って言った。
「ここは自分で払うからさ、あとで豪華なパフェでもおごってくれよ。さっき、でかいパフェ見つけたんだー。皆で食おうよ!」
その言葉に、朝比奈がきょとんとする。
「俺たちもか?」
「おう! 皆で食った方がうまいだろ?」
早瀬が屈託なく言うものだから、そんな気がしてくる。
結局、そういうことに決まって、まずは飯を食うことにした。
「いただきます」
フードコートの一角、四人掛けのテーブル席に座る。鉄板焼きの餃子だ。うまそう。
細長い感じのフォルムの餃子を特製のたれにつけて食べる。おお、表面カリッカリ。もちもちっともしているが、やはり、カリカリが勝る。揚げ焼きっぽい感じなのかな。香ばしくてうまい。
肉だねに混ぜ込まれたにんにくやニラは控えめだが、うま味は十分だ。濃い目の味付けなので、ご飯が進むことこの上ない。鉄板だからずっと熱々なんだなあ。
「早瀬、大会でいろいろ行ったんだろ。他にどんなとこ行ったんだ?」
咲良が聞けば、早瀬は「そうだなあ」と楽しそうに話し始める。
「夏の県大会はいつも同じ大学でやっててな……」
「大学とか行くんだなあ」
朝比奈も、興味津々というように聞いている。
いろんなところに行けるってことは、いつもと違う飯が食えるってことだよな。今みたいに。鉄板餃子なんて、なかなか食べないから楽しい。
ラー油で味変して辛さを堪能したり、柚子胡椒をつけて爽やかに食べてみたり。結構ボリュームも量もあったから、色々楽しめた。
お次はパフェである。ほう、でかい割には、割り勘するのにちょうどいい金額だ。
たっぷりのソフトクリームにチョコスプレー、果物はいちごかあ。お、下の方にチョコブラウニー発見。コーンフレークもたっぷりだ。
「餃子の後に甘いもの、いいなあ」
早瀬が満足そうに言う。
うん、確かに、しょっぱくなった口にひんやり冷たい、そして甘いアイスがちょうどいい。イチゴは甘いだけでなく酸味もあってうまい。
チョコスプレーの色も楽しいが、食感もなんか好きだ。ブラウニーはしっとりと、アイスのさわやかな甘みによく合う、濃厚な甘さとほろ苦さだ。
ザクザクと、大量に入ったコーンフレークを崩し、アイスと混ぜて食べる。
なんかもう、入賞とかできなかったけど、うまいもん食えたからいいや。すげー大満足。一人じゃこんなパフェ、食わねえもんなあ。
沖縄、もし誰か行くんなら、自分は行かなくてもいいから、お土産買ってきてもらおう。
飯食うためだけについてくってのは、だめかなあ。
「ごちそうさまでした」
正直、思ったよりも緊張してない。なんていうか、あれだな。いつもと違う景色を見てテンション上がってるところがある。
いつも乗ることのない電車に乗って、よその学校に来て……観月の文化祭の時とはまた違うワクワク感がある。
「ショッピングモールが近い学校って、どんな感覚なんだろうなあ」
賑やかな教室のすみっこ。原稿片手に椅子に座る咲良が言った。
「でかい病院とか、飯屋とか、科学館とかあるんだぜ」
「そうだなあ」
いつも行く図書館からほど近い場所にある、住宅街の中の高校だ。確かに、俺たちの学校とはだいぶ環境が違う。
「まあ、俺はこの近くの大学病院、年に何回か行ってんだけど」
咲良が何でもないように言うので、どう反応するのが正解なのか分からない。
「それに対してはなんと返事をするのが正解なんだ」
咲良の隣にいた朝比奈が困ったように聞けば、咲良はあっけらかんと答える。
「そうなんだー、とか、へー、とか、そんなんでいいよ」
「あ、そう」
「そうそう、それでよし」
へらへらと笑って言うが、結構大変なことだと思うんだよなあ……こいつ、よく分からん。妙なことで、この世の終わりのごとく騒ぐのになあ。
「ね、帰りにショッピングモール行こうぜ。バスで行けるはず」
「ああ、いいな」
そのためにも、気分良く大会を終わらせないといけない。予選の後、決勝があるんだったか。
ま、やれるだけやってみよう。
「さすが早瀬、県大会出場おめでとう~」
帰りのバスを待つ間、咲良が早瀬に言った。早瀬は「まあなあ」と言いながら、賞品を鞄にしまう。俺と咲良、朝比奈は、早々に予選で落ちたので、早いうちからフォローに回っていた。
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいぜ。でもさ、県大会はレベルが格段に上がるからさー」
「はぁ~、そんなもんかあ」
早瀬は「でもな」と表情を引き締めて言った。
「全国大会、今度は沖縄なんだよ。つまりさ、頑張ったら、学校が沖縄旅行連れてってくれるってわけ」
「なんだそれ、うらやましいな」
咲良もきりっとした表情で言う。確かに、咲良の言うとおりだ。沖縄なんてめったに行ける場所じゃあないぞ。
沖縄かあ。沖縄ならどんな飯があるかなあ。ショッピングモールでやってる沖縄フェアとかじゃあお目にかかれないようなものもあるのかなあ。てか、沖縄フェアって行ったことないけど。あ、あれ食べたいなあ、海ぶどう。
「一人分なら、マネージャー枠で来られるんじゃなかったかな」
まあ、全国行けたらの話だけど、と早瀬は笑った。
「えー、マジ? 早瀬頑張ってよー。俺、沖縄行きたい~」
「何言ってるの、旅行じゃないのよ」
と、矢口先生が通りがかる。苦笑していた先生は、早瀬に声をかけた。
「早瀬、週明けに賞状持っておいで。名前書いてもらうから」
「はーい」
「じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でしたー」
先生はこの先にある、駐車場へと向かって行った。
賞状は、渡されたときには付箋に名前が書いてあるだけで、学校に帰って先生が筆とかで名前を入れてくれるらしい。うちの学校には書道の先生がいるので、その先生がいつも書いてくれるのだとか。
そうこうしているうちにバスが来た。乗り込みながら、咲良が言う。
「さ、それじゃちょっとしたお祝いをしてやろうじゃないか」
「そうだな」
相槌を打つ隣で、朝比奈が顎に手を当てる。
「ああいうショッピングモールって、どんなのがあるんだったっけ……」
「え、なになに。なんかおごってくれんの?」
早瀬がにこにこしながら聞いてくる。
大したものはやれないが、ちょっといい感じの飯ぐらいはおごれるだろ。たぶん。
「何食いたいか決めとけよ」
そう言えば早瀬は「食いもん限定かよ」と笑ったのだった。
夕暮れ時のフードコートは、まだ、人であふれてはいなかった。しかしそろそろ混んでくるだろう時間帯だ。
「何食う? ステーキ?」
咲良がステーキ屋のメニューボードを指さす。
「予算足りねーよ」
「だよなあ」
「いろんな店があるなあ」
朝比奈は感心しっぱなしだ。どの店の飯を食っても喜ぶんだろうな、こいつは。
「うどん、オムライス、ハンバーグ、サンドイッチ……おっ、あれはどうだ?」
早瀬が示したのは、中華料理の店だった。餃子が売りなんだなあ。結構手ごろな値段だ。定食がワンコインか。
「いいんじゃね? あれにしようぜ。早瀬、おごるぞ。どれがいい?」
咲良が聞けば、早瀬は明るく笑って言った。
「ここは自分で払うからさ、あとで豪華なパフェでもおごってくれよ。さっき、でかいパフェ見つけたんだー。皆で食おうよ!」
その言葉に、朝比奈がきょとんとする。
「俺たちもか?」
「おう! 皆で食った方がうまいだろ?」
早瀬が屈託なく言うものだから、そんな気がしてくる。
結局、そういうことに決まって、まずは飯を食うことにした。
「いただきます」
フードコートの一角、四人掛けのテーブル席に座る。鉄板焼きの餃子だ。うまそう。
細長い感じのフォルムの餃子を特製のたれにつけて食べる。おお、表面カリッカリ。もちもちっともしているが、やはり、カリカリが勝る。揚げ焼きっぽい感じなのかな。香ばしくてうまい。
肉だねに混ぜ込まれたにんにくやニラは控えめだが、うま味は十分だ。濃い目の味付けなので、ご飯が進むことこの上ない。鉄板だからずっと熱々なんだなあ。
「早瀬、大会でいろいろ行ったんだろ。他にどんなとこ行ったんだ?」
咲良が聞けば、早瀬は「そうだなあ」と楽しそうに話し始める。
「夏の県大会はいつも同じ大学でやっててな……」
「大学とか行くんだなあ」
朝比奈も、興味津々というように聞いている。
いろんなところに行けるってことは、いつもと違う飯が食えるってことだよな。今みたいに。鉄板餃子なんて、なかなか食べないから楽しい。
ラー油で味変して辛さを堪能したり、柚子胡椒をつけて爽やかに食べてみたり。結構ボリュームも量もあったから、色々楽しめた。
お次はパフェである。ほう、でかい割には、割り勘するのにちょうどいい金額だ。
たっぷりのソフトクリームにチョコスプレー、果物はいちごかあ。お、下の方にチョコブラウニー発見。コーンフレークもたっぷりだ。
「餃子の後に甘いもの、いいなあ」
早瀬が満足そうに言う。
うん、確かに、しょっぱくなった口にひんやり冷たい、そして甘いアイスがちょうどいい。イチゴは甘いだけでなく酸味もあってうまい。
チョコスプレーの色も楽しいが、食感もなんか好きだ。ブラウニーはしっとりと、アイスのさわやかな甘みによく合う、濃厚な甘さとほろ苦さだ。
ザクザクと、大量に入ったコーンフレークを崩し、アイスと混ぜて食べる。
なんかもう、入賞とかできなかったけど、うまいもん食えたからいいや。すげー大満足。一人じゃこんなパフェ、食わねえもんなあ。
沖縄、もし誰か行くんなら、自分は行かなくてもいいから、お土産買ってきてもらおう。
飯食うためだけについてくってのは、だめかなあ。
「ごちそうさまでした」
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