266 / 855
日常
第二百六十話 野菜ラーメン
しおりを挟む
「ありゃ」
台所の片づけをしていて、インスタント食品がなくなったことに気付く。
まあしょっちゅう食べるわけじゃないけど、あると便利なんだよなあ。
「どーしよっかなー」
薄く開けた窓から風が入ってきて、テーブルに置いてあったチラシ類を散乱させる。
「わふっ」
「はいはい」
うめずがそれを知らせるつもりかどうかは知らないが一声吠えたので、返事をしてそれを拾いに行く。
「……お、なんだ。今日安いんだ」
どうやら今日はインスタント食品が安いらしい。
どうせ必要なら、安いうちに買っとくか。すぐ悪くなるものでもないしな。
休日のスーパーはかなり混む。日曜日なんかは特に肉や魚が安いので、朝から店内は人でごった返す。土曜日の方がまだ幾分か落ち着きがあるというものだ。
カップ麺数種と袋麺をいくつか。辛いやつはチャレンジしてみるかとも思ったが、やめた。
野菜はうちにあるから今日は買わなくていいし、他に買うもんはなかったはずだ。あ、ちょっとだけスイーツを見てみるか。
こういうスーパーのちょっとしたカップスイーツとかケーキとか、何気にうまそうだし実際おいしいのが多い。うまさは値段だけでは判別できないって思い知らされる。というか高いものを食ったことはあまりないのだが。
プリンアラモードに、季節限定のフルーツゼリー。チョコパフェもある。
ケーキはショートケーキ、チョコ、モンブランに抹茶、チーズと結構より取り見取りだ。二種類一組になっているやつもある。
あ、シュークリームとかエクレアもいいなあ。
なんか一つ買って帰ろう。
「桜味って何味なんだろう……」
「なんか梅っぽい味するよー」
誰だ。
「……びっくりしたー」
「あはは。そんなに驚かなくても」
誰だって後ろから急に、肩に手を置かれたらびっくりするだろう。
「こんにちは、山下さん」
「おーっす。何? なんか買うの?」
「まあ、一つ」
「それならねー、この会社のやつおすすめだよ」
甘さ控えめでさー、と山下さんはスティックタイプのチーズケーキとブラウニーを手に取った。
「それとも甘い方が好き?」
「うーん……」
そこまで意識してなかったので何と答えればいいのか分からない。答えあぐねていたら田中さんがやってきた。
「お、一条君」
「こんにちは」
「晃、買うもん決まったか」
「んー」
今日はエプロンをつけていないところを見るあたり、客として店に来ているらしい。
山下さんは少し悩んでから、二つとも買うことに決めたらしい。
「長旅だからなー」
「長旅?」
「大げさな」
楽しげに笑う山下さんと、あきれた表情の田中さん。どっか行くのかな、と思っていたら聞く前に山下さんが言った。
「今から映画なんだよー。今日から公開でな? 初日だけ来場者プレゼントがあるって言うからさあ」
「なるほど」
その来場者プレゼントというのが二種類あるらしく、どっちも確保したいがために田中さんも一緒に行くのだとか。
そろそろ時間だというので、二人とはそこで別れた。
結局、悩みに悩んだ結果、時々買っているプリンアラモードにすることにした。よく見るとそれを作っている会社は、山下さんおすすめの会社と同じだったことに気付いた。
デザートをいつどのタイミングで食うかはいつも迷う。
朝飯後か、昼飯前か後か、はたまた三時のおやつか、晩飯の後の楽しみにするか。空腹のときに食う甘いものって、うまいんだよなあ。
しかし今日は晩飯の後にしよう。風呂上がりにのんびり食うの、好きなんだ。
さて、さっそくではあるが今日の昼飯には今日買ってきたインスタント麺を使う。塩ラーメンの袋麺にしよう。
それと、野菜室に中途半端に余っていた野菜を使う。キャベツ、ニンジン、それと消費期限が今日までのもやし。
まずは野菜から準備していく。キャベツはざく切り、ニンジンは短冊切り、もやしは袋を開けてそのままさっと洗う。
油をひいたフライパンで野菜を炒めていく。味付けは軽く塩コショウを振る程度だ。
ラーメンはまず鍋にお湯を沸かし、麺を茹でていく。そこにスープを入れるタイプのものもあれば丼の方にスープを用意しておくものもあるが、今日は茹でている鍋にスープを入れるタイプなので、お湯の量には注意する。薄すぎるスープはちょっと寂しい。
丼にラーメンを移し、その上に野菜炒めをのせる。
野菜炒めは万能だ。たいていのラーメンに合う。野菜が不足しがちなインスタントラーメンと相性がいい。ごまを振ったら完成だ。
「いただきます」
塩ラーメンの香りはどことなく懐かしい感じがする。
まずは麺を一口。程よくもちもちした麺にあっさりとした塩味のスープがよく合う。味の主張がない麺なのでスープの味が際立つ。ゴマもいい香りだ。
野菜のうま味が染み出したスープがいい。ただの塩ラーメンも好きだが、野菜があると豪華な気分だ。
キャベツはシャキッとみずみずしくて甘い。ニンジンはほくトロッとしている。
もやし、多すぎたかなあ。でもボリュームがあっていい。麺と一緒に食うといろんな触感が口いっぱいに広がる。そこにスープを流し込むのがいい。
これ、麺なしで野菜だけ入れて、スープにするのもありだよな。
まあ結局物足りない気がして麺を入れてしまうんだろうけど。
なにせ麺があったとしても、食い終わったら残ったスープに米を入れてしまうのだからな。
ほろほろっとほぐして、スプーンでスープと一緒に口に含むのがうまい。米の甘味が加わって、麺とはまた違ったおいしさがあるというものだ。
こうやって食うと、スープも全部堪能出来ていい。
あ、今度は缶詰のコーンも入れてみようかな。
「ごちそうさまでした」
台所の片づけをしていて、インスタント食品がなくなったことに気付く。
まあしょっちゅう食べるわけじゃないけど、あると便利なんだよなあ。
「どーしよっかなー」
薄く開けた窓から風が入ってきて、テーブルに置いてあったチラシ類を散乱させる。
「わふっ」
「はいはい」
うめずがそれを知らせるつもりかどうかは知らないが一声吠えたので、返事をしてそれを拾いに行く。
「……お、なんだ。今日安いんだ」
どうやら今日はインスタント食品が安いらしい。
どうせ必要なら、安いうちに買っとくか。すぐ悪くなるものでもないしな。
休日のスーパーはかなり混む。日曜日なんかは特に肉や魚が安いので、朝から店内は人でごった返す。土曜日の方がまだ幾分か落ち着きがあるというものだ。
カップ麺数種と袋麺をいくつか。辛いやつはチャレンジしてみるかとも思ったが、やめた。
野菜はうちにあるから今日は買わなくていいし、他に買うもんはなかったはずだ。あ、ちょっとだけスイーツを見てみるか。
こういうスーパーのちょっとしたカップスイーツとかケーキとか、何気にうまそうだし実際おいしいのが多い。うまさは値段だけでは判別できないって思い知らされる。というか高いものを食ったことはあまりないのだが。
プリンアラモードに、季節限定のフルーツゼリー。チョコパフェもある。
ケーキはショートケーキ、チョコ、モンブランに抹茶、チーズと結構より取り見取りだ。二種類一組になっているやつもある。
あ、シュークリームとかエクレアもいいなあ。
なんか一つ買って帰ろう。
「桜味って何味なんだろう……」
「なんか梅っぽい味するよー」
誰だ。
「……びっくりしたー」
「あはは。そんなに驚かなくても」
誰だって後ろから急に、肩に手を置かれたらびっくりするだろう。
「こんにちは、山下さん」
「おーっす。何? なんか買うの?」
「まあ、一つ」
「それならねー、この会社のやつおすすめだよ」
甘さ控えめでさー、と山下さんはスティックタイプのチーズケーキとブラウニーを手に取った。
「それとも甘い方が好き?」
「うーん……」
そこまで意識してなかったので何と答えればいいのか分からない。答えあぐねていたら田中さんがやってきた。
「お、一条君」
「こんにちは」
「晃、買うもん決まったか」
「んー」
今日はエプロンをつけていないところを見るあたり、客として店に来ているらしい。
山下さんは少し悩んでから、二つとも買うことに決めたらしい。
「長旅だからなー」
「長旅?」
「大げさな」
楽しげに笑う山下さんと、あきれた表情の田中さん。どっか行くのかな、と思っていたら聞く前に山下さんが言った。
「今から映画なんだよー。今日から公開でな? 初日だけ来場者プレゼントがあるって言うからさあ」
「なるほど」
その来場者プレゼントというのが二種類あるらしく、どっちも確保したいがために田中さんも一緒に行くのだとか。
そろそろ時間だというので、二人とはそこで別れた。
結局、悩みに悩んだ結果、時々買っているプリンアラモードにすることにした。よく見るとそれを作っている会社は、山下さんおすすめの会社と同じだったことに気付いた。
デザートをいつどのタイミングで食うかはいつも迷う。
朝飯後か、昼飯前か後か、はたまた三時のおやつか、晩飯の後の楽しみにするか。空腹のときに食う甘いものって、うまいんだよなあ。
しかし今日は晩飯の後にしよう。風呂上がりにのんびり食うの、好きなんだ。
さて、さっそくではあるが今日の昼飯には今日買ってきたインスタント麺を使う。塩ラーメンの袋麺にしよう。
それと、野菜室に中途半端に余っていた野菜を使う。キャベツ、ニンジン、それと消費期限が今日までのもやし。
まずは野菜から準備していく。キャベツはざく切り、ニンジンは短冊切り、もやしは袋を開けてそのままさっと洗う。
油をひいたフライパンで野菜を炒めていく。味付けは軽く塩コショウを振る程度だ。
ラーメンはまず鍋にお湯を沸かし、麺を茹でていく。そこにスープを入れるタイプのものもあれば丼の方にスープを用意しておくものもあるが、今日は茹でている鍋にスープを入れるタイプなので、お湯の量には注意する。薄すぎるスープはちょっと寂しい。
丼にラーメンを移し、その上に野菜炒めをのせる。
野菜炒めは万能だ。たいていのラーメンに合う。野菜が不足しがちなインスタントラーメンと相性がいい。ごまを振ったら完成だ。
「いただきます」
塩ラーメンの香りはどことなく懐かしい感じがする。
まずは麺を一口。程よくもちもちした麺にあっさりとした塩味のスープがよく合う。味の主張がない麺なのでスープの味が際立つ。ゴマもいい香りだ。
野菜のうま味が染み出したスープがいい。ただの塩ラーメンも好きだが、野菜があると豪華な気分だ。
キャベツはシャキッとみずみずしくて甘い。ニンジンはほくトロッとしている。
もやし、多すぎたかなあ。でもボリュームがあっていい。麺と一緒に食うといろんな触感が口いっぱいに広がる。そこにスープを流し込むのがいい。
これ、麺なしで野菜だけ入れて、スープにするのもありだよな。
まあ結局物足りない気がして麺を入れてしまうんだろうけど。
なにせ麺があったとしても、食い終わったら残ったスープに米を入れてしまうのだからな。
ほろほろっとほぐして、スプーンでスープと一緒に口に含むのがうまい。米の甘味が加わって、麺とはまた違ったおいしさがあるというものだ。
こうやって食うと、スープも全部堪能出来ていい。
あ、今度は缶詰のコーンも入れてみようかな。
「ごちそうさまでした」
12
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。


だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる