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日常
第二百四十七話 焼きそば
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「いいなーそれ、かっけー」
今日も半日で帰れると、いそいそと帰り支度をしていたら、いつものごとくやってきた咲良がピンバッチを見て言った。どこにつけようかと考えた結果、ポケットに入れっぱなしになってしまっていた。それにさっき気付いたところである。
「ガシャポンの割にはレベル高いよなー」
「……お前今なんて言った?」
「へ? レベル高いよなーって」
「その前だ」
咲良はきょとんと首をかしげる。
「ガシャポン?」
「それだ。ガチャポンじゃねえのか」
そう言えば咲良は「えー?」と納得いかないというように声を上げた。
「ガシャポンだろ?」
「え、ガチャポンじゃないのか」
「えー? ……ちょっと待て」
咲良はそそくさと教室を出て行くと、間もなくしてある二人を連れてやってきた。朝比奈と百瀬だ。
「えっ、なに井上。急に何」
「また居残りか……?」
百瀬は本気で訳が分からないという表情をしているし、朝比奈はうんざりした表情をしている。
「お前らさ、これなんだけど」
咲良は俺の手からピンバッチを取り上げると、先ほどまでの会話を繰り返した。
「これ、どこにあったんだ? 欲しかったけど見つけられなくてな」
朝比奈はピンバッジを丁寧に眺めながら聞いてきた。
「プレジャスの二階」
「へー、まさかあそこに」
「結構穴場だぞ」
「いや、そこじゃなくて」
咲良が話を戻す。
「お前ら、ガチャポン派? それともガシャポン派?」
その問いに二人は視線を合わせると、百瀬が先に答えた。
「俺はガチャガチャかなあ」
「え、マジで?」
その答えに今度は俺が咲良と目を見合わせた。
「第三の勢力だ」
「ガチャガチャか……」
ふと気になって、なんとなく聞いてみる。
「それ、出てきてなくね?」
すると咲良が盛大に吹き出し、朝比奈も肩を震わせ、百瀬は「あ、それ言っちゃう?」と笑った。
「でもさー、ガチャポンもそうじゃん? ガチャッて回してポンッとは出てこんでしょ。せめて二回は回さないと」
それを聞いた咲良は笑いながら言った。
「それなら、ガチャガチャポンになっちまうなあ」
「教育番組みたいな名前だな」
「ガシャポンはどうなの? なんか壊れてない? 大丈夫?」
「なんでだよ、壊れてねえよ」
百瀬理論でいくなら、ガシャガシャポンになるな。なんかいくつか出てきそうだ。
「で、朝比奈は?」
咲良が聞くと、朝比奈は顎に手を当てて少し考えこむと「……ガチャ」とつぶやいた。
「ガチャかあー」
それもあったか、と咲良が頷く。
「でもガチャっつったらソシャゲ感出るよな」
俺の中ではガチャといえばスマホゲームだなあ。あ、そういやそろそろ推しの誕生日記念ガチャがあるんだっけ。
「それはそう。てか、ガチャポンとか言うのがだるい。長い」
「ポンぐらい許してやってくれ」
そうこうしているうちにもう一人やってきた。
「何話してんの」
「勇樹。それがな……」
事の顛末を話せば、勇樹は「なるほどなあ」と笑って頷いた。
「確かに、いろんな言い方あるよな」
「お前はなんて言うんだ?」
興味津々というように咲良が聞けば、勇樹は平然とこう答えた。
「ガシャガシャ」
「おっとぉ、これまた新勢力が」
「なんか激しいな」
ほんと、人によって違うもんだなあ。
結局、誰一人として意見が合わぬまま解散となった。まあ、通じりゃそれでいいんだけど。
とりあえずピンバッチは自分の机の上に置いて、腹ごしらえとしよう。
半日休みの日の昼飯はなんだか手軽に済ませたい。というわけで買い置きのカップ麺を作ろうと思う。
ラーメンやうどん、そばも捨てがたいが、今日は焼きそばの気分である。
お湯を沸かす間にふたを開ける。パックを取り出して、お湯を入れる前に開けるべきものがないかを確認していたら湯が沸けた。
容器にそっとお湯を注ぎ入れ、もう一度ふたをする。上でソースを温めるんだったかな。
これだけじゃ足りないかもしれないのでご飯も食おう。炊いた分はないので冷凍している分をレンジでチンする。
「んー……このままでいいか」
茶碗を出すのも億劫なのでラップのまま。まあ、おにぎりみたいなもんだ。
時間が経ったらお湯を捨て、ふたについているであろうキャベツを落とすために軽くたたいてからふたを開け、ソースとかやくを混ぜる。香ばしい、いい香りだ。
マヨネーズが合うんだなあ、これが。
箸は割りばし、そして食う場所は最近電源が入ることの少なくなったこたつ。テレビをつけたら準備万端だ。
「いただきます」
まずはソースたっぷりの麺から。インスタントの焼そばは具材が少ないのがいい。
もっちもちの麺に香ばしく甘辛いソース。間違いなくおいしい。たまに感じるキャベツの甘味とかやくのうま味がいい感じだ。口いっぱいにほおばれば芳醇な香りが口元を包み込むようだ。
これにマヨネーズを和える。ちょっと混ざりにくいな。
一気にまろやかな風味になっておいしい。
ご飯が欲しくなるなあ、やっぱ。冷凍したご飯はなんかもちもちしている。焼きそばと一緒に食うのがいい。濃い味に白米がよく合うんだ。
焼きそばパンもいいけど、最近はご飯、好きだなあ。紅しょうががあってもいいけど今日はこれで。
塩焼そばとかもあったな。今度食ってみよう。
それにしたって今日は片付けも少ない。楽って、いいなあ。
「ごちそうさまでした」
今日も半日で帰れると、いそいそと帰り支度をしていたら、いつものごとくやってきた咲良がピンバッチを見て言った。どこにつけようかと考えた結果、ポケットに入れっぱなしになってしまっていた。それにさっき気付いたところである。
「ガシャポンの割にはレベル高いよなー」
「……お前今なんて言った?」
「へ? レベル高いよなーって」
「その前だ」
咲良はきょとんと首をかしげる。
「ガシャポン?」
「それだ。ガチャポンじゃねえのか」
そう言えば咲良は「えー?」と納得いかないというように声を上げた。
「ガシャポンだろ?」
「え、ガチャポンじゃないのか」
「えー? ……ちょっと待て」
咲良はそそくさと教室を出て行くと、間もなくしてある二人を連れてやってきた。朝比奈と百瀬だ。
「えっ、なに井上。急に何」
「また居残りか……?」
百瀬は本気で訳が分からないという表情をしているし、朝比奈はうんざりした表情をしている。
「お前らさ、これなんだけど」
咲良は俺の手からピンバッチを取り上げると、先ほどまでの会話を繰り返した。
「これ、どこにあったんだ? 欲しかったけど見つけられなくてな」
朝比奈はピンバッジを丁寧に眺めながら聞いてきた。
「プレジャスの二階」
「へー、まさかあそこに」
「結構穴場だぞ」
「いや、そこじゃなくて」
咲良が話を戻す。
「お前ら、ガチャポン派? それともガシャポン派?」
その問いに二人は視線を合わせると、百瀬が先に答えた。
「俺はガチャガチャかなあ」
「え、マジで?」
その答えに今度は俺が咲良と目を見合わせた。
「第三の勢力だ」
「ガチャガチャか……」
ふと気になって、なんとなく聞いてみる。
「それ、出てきてなくね?」
すると咲良が盛大に吹き出し、朝比奈も肩を震わせ、百瀬は「あ、それ言っちゃう?」と笑った。
「でもさー、ガチャポンもそうじゃん? ガチャッて回してポンッとは出てこんでしょ。せめて二回は回さないと」
それを聞いた咲良は笑いながら言った。
「それなら、ガチャガチャポンになっちまうなあ」
「教育番組みたいな名前だな」
「ガシャポンはどうなの? なんか壊れてない? 大丈夫?」
「なんでだよ、壊れてねえよ」
百瀬理論でいくなら、ガシャガシャポンになるな。なんかいくつか出てきそうだ。
「で、朝比奈は?」
咲良が聞くと、朝比奈は顎に手を当てて少し考えこむと「……ガチャ」とつぶやいた。
「ガチャかあー」
それもあったか、と咲良が頷く。
「でもガチャっつったらソシャゲ感出るよな」
俺の中ではガチャといえばスマホゲームだなあ。あ、そういやそろそろ推しの誕生日記念ガチャがあるんだっけ。
「それはそう。てか、ガチャポンとか言うのがだるい。長い」
「ポンぐらい許してやってくれ」
そうこうしているうちにもう一人やってきた。
「何話してんの」
「勇樹。それがな……」
事の顛末を話せば、勇樹は「なるほどなあ」と笑って頷いた。
「確かに、いろんな言い方あるよな」
「お前はなんて言うんだ?」
興味津々というように咲良が聞けば、勇樹は平然とこう答えた。
「ガシャガシャ」
「おっとぉ、これまた新勢力が」
「なんか激しいな」
ほんと、人によって違うもんだなあ。
結局、誰一人として意見が合わぬまま解散となった。まあ、通じりゃそれでいいんだけど。
とりあえずピンバッチは自分の机の上に置いて、腹ごしらえとしよう。
半日休みの日の昼飯はなんだか手軽に済ませたい。というわけで買い置きのカップ麺を作ろうと思う。
ラーメンやうどん、そばも捨てがたいが、今日は焼きそばの気分である。
お湯を沸かす間にふたを開ける。パックを取り出して、お湯を入れる前に開けるべきものがないかを確認していたら湯が沸けた。
容器にそっとお湯を注ぎ入れ、もう一度ふたをする。上でソースを温めるんだったかな。
これだけじゃ足りないかもしれないのでご飯も食おう。炊いた分はないので冷凍している分をレンジでチンする。
「んー……このままでいいか」
茶碗を出すのも億劫なのでラップのまま。まあ、おにぎりみたいなもんだ。
時間が経ったらお湯を捨て、ふたについているであろうキャベツを落とすために軽くたたいてからふたを開け、ソースとかやくを混ぜる。香ばしい、いい香りだ。
マヨネーズが合うんだなあ、これが。
箸は割りばし、そして食う場所は最近電源が入ることの少なくなったこたつ。テレビをつけたら準備万端だ。
「いただきます」
まずはソースたっぷりの麺から。インスタントの焼そばは具材が少ないのがいい。
もっちもちの麺に香ばしく甘辛いソース。間違いなくおいしい。たまに感じるキャベツの甘味とかやくのうま味がいい感じだ。口いっぱいにほおばれば芳醇な香りが口元を包み込むようだ。
これにマヨネーズを和える。ちょっと混ざりにくいな。
一気にまろやかな風味になっておいしい。
ご飯が欲しくなるなあ、やっぱ。冷凍したご飯はなんかもちもちしている。焼きそばと一緒に食うのがいい。濃い味に白米がよく合うんだ。
焼きそばパンもいいけど、最近はご飯、好きだなあ。紅しょうががあってもいいけど今日はこれで。
塩焼そばとかもあったな。今度食ってみよう。
それにしたって今日は片付けも少ない。楽って、いいなあ。
「ごちそうさまでした」
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