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日常
第百二十三話 たこ焼き
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父さんと母さんはうめずを連れて店の方に行っていた。
「一応準備はしといたから、あとは若者だけで楽しみなさい! 何かあったら連絡してね~」
とだけ言って。
さて、咲良は朝比奈と百瀬、あとは菜々世を引き連れてくるだろうし、観月には部屋番号教えた。あとは来るのを待つだけだ。
と、その時チャイムが鳴った。うちのマンションはオートロックで、来客者の姿は部屋に備え付けられたモニターで確認できる。
「お、観月」
『来たよ』
鍵を開け、しばらくすると観月は部屋にやってきた。
「おじゃまします。十階って、見晴らしいいね」
「引っ越しは大変だったけどな」
「そうだろうね。あ、これお土産」
渡されたのは立派な紙袋。なんとなく線香の匂いがする。
「久しぶりに行くし、お世話になるんだから持ってけって、親が」
「わざわざありがとな」
どうやら和菓子の詰め合わせらしい。これは父さんたちと食うことにするか。
「まさか、また今度がこんなに早く来るとは」
「俺も思った」
「部活も用事も入らなくてよかったよ。絶対楽しいじゃん、今日」
「だいぶ、やかましくなりそうだけどな」
たこ焼き機はテーブルではなく、こたつの方にセッティングをしていた。結構広いので人数いても座れる。
「お、連絡来た。あと十分もしたら来るって」
「わあ、なんか緊張するなあ」
それから二人で色々と近況を話していたら、間もなくしてチャイムが鳴った。
「来たか」
『四名でーす!』
「全員で言うな。騒々しい」
咲良にいたっては何か大きな荷物を抱えている。こいつ、マジで人生ゲーム持って来やがった。
「賑やかだ」
そう言って笑う観月に、俺は苦笑いで返すほかなかった。
「お邪魔しまーす!」
はいこれ、と咲良から渡されたのは、道中、地元のスーパーで買ってきたらしいお菓子の詰め合わせ。どうやらみんなでお金を出し合ったとかで、結構な量がある。
「こりゃまた大量に買ってきたな」
「六人もいたら食うっしょ」
「一応言っとくが、たこ焼きもするんだぞ?」
「大丈夫だろ!」
知らない者同士が自己紹介をしている間に俺は準備をする。たこ焼き粉はかなりの量を準備しているし、たこは母さんが切っておいてくれた。
「僕、手伝うよ」
「俺も」
「お、サンキュー。じゃあこれ持ってって」
観月にはジュース類を持って行ってもらい、朝比奈にはコップとか取り皿を人数分持って行ってもらおう。
「あ、俺注ぐよ。何飲みたい?」
咲良が観月からペットボトルを受け取り、百瀬がコップを受け取った。守本は俺から生地が入ったボウルを受け取ってくれた。
「春都は何飲むー?」
「オレンジ」
「朝比奈と嶋田は?」
「俺は……緑茶」
「僕も」
「オッケー、じゃあ俺は色々混ぜよう」
「あ、ずるいぞ咲良。俺もミックスする」
「だよなー! 菜々世、分かってるー」
ファミレスのドリンクバーかよ。
各々にコップがいきわたったところで、さっきからそわそわしていた咲良に乾杯の音頭は任せることにした。
「じゃ、かんぱーい!」
結局二人のコップは何色と形容すべきか分からない色に染まっていた。
「うまいのか?」
「まあ、うん。嫌いじゃない」
「まずくはないけど量は飲めないって感じだ!」
次はフツーにコーラ飲む、と咲良は笑った。
テレビがある方は避けて、俺と観月、咲良と守本、朝比奈と百瀬、各々隣り合って座った。
「じゃ、焼いてくか!」
「おー」
油をひき、そこに生地を注ぎ入れる。たこを入れたら、キャベツや紅しょうが、天かすを散らして、焼けるのを待つ。
「へー、観月って風紀委員長なんだ。どうりで真面目そうだ」
咲良がコップの中身をちびちびと飲みながら言う。
「いやあ、なんかなりゆきで」
「こいつ、竹刀持つと性格変わるぞ」
端の方が焼けてないか竹串でつつきながら言うと、観月は「なんだよ」とこちらに視線を向けた。
「え、そうなん? 虫も殺さないような顔してるけど」
百瀬はそう言うが、それはいわゆる外見詐欺というものだ。
「いや実際俺フルボッコにされたし、授業で」
これはまごうことなき事実だ。中学の時、柔道か剣道か体育の授業で選択しなければならず、どちらもいやだった俺は観月のいる剣道を選択したのだが、そこでもう、だめだった。
目の色が変わるというか、さっきまでの温和な表情どこいったって感じだ。バシバシ撃ち込まれながら、俺は「無慈悲」という言葉を身をもって覚えたものだ。
「一条も運動神経よさそうなのに」
守本はそう言うが、俺を知るやつらはふっと少し噴き出す。
「一条は……運動よりも、勉強とか、料理が、な」
と、朝比奈が百瀬に同意を求める。
「そうそう。まあ、単位取れるぐらいだから!」
「えっ、そういう次元で語るレベルなのか? 俺の運動神経」
「隙あらばさぼろうとしてるしな!」
咲良にそう言われ、何か言い返そうにも事実なので何も言えない。
「えー、でも料理できるっていいなあ。俺、料理はからっきし」
「守本んちって、レストランじゃなかったっけ? 手伝ってるって、咲良から聞いたけど」
そう聞くと、守本は苦笑して首を横に振った。
「手伝ってるのはホールだけ。どうも調理器具と相性悪くて」
その腕のほどを唯一知っている咲良は「なんて言えばいいかなあ」と顎に手を当てる。
「味覚のセンスはあるけど、それに体が伴わない感じ」
「あー、なるほど」
「要するに不器用なんだ、俺」
「でもそれなら、改善のしようがあるよな」
お、そろそろ焼けてきた。
何人かでひっくり返していけばあっという間に終わる。あとは仕上がるのを待つだけだ。
「うまそうなにおいしてきたな」
さて、焼きあがったか?
「ソースとかポン酢とか、いろいろ用意してるぞ」
「俺ソースがいい!」
「ポン酢もおいしそうだよね」
「これは……出汁?」
「明石焼きみたいになりそう!」
「マヨネーズくれ」
各々好みに味付けしたらさっそく……
「いただきます」
やっぱ最初はソースとマヨだな。うん、安定のおいしさ。お店のように油をたっぷり使っていないのでカリッとまではいかないが、それでも香ばしい。ほにゃっとした感じが家のたこ焼きという感じだ。
「あっつい!」
「やけどすんなよ」
「うまいなー」
今度は出汁で食ってみる。紅しょうがの風味が引き立つ気がする。ほんのり温かいのがいい。ポン酢はさっぱりするし、何よりちょっと冷やしてくれるので非常に食べやすい。
「次、焼いていこうか」
実は今日のたこ焼きはただのたこ焼きではない。
違う具材も用意していたのだ。
「あっ、チーズある!」
目ざといな、咲良。
「コーン、ソーセージ、キムチ……あれ? ソーセージが二種類あるんだな?」
「よくぞ聞いてくれたな、朝比奈。これは激辛チョリソーだ。タバスコもある」
「えっ」
要するにロシアンたこ焼きだ。
「うわ、怖いことするなあ、一条。お前も大概だな」
「提案したのは俺じゃないぞ、百瀬。こいつだ」
俺が指さしたのは、当然というかなんというか、とにかく咲良だ。咲良は両手でピースサインをして満面の笑みだ。
「いや、その悪乗りに全力でのっかったお前も同罪だからな?」
「大丈夫だ。食べられる量にしとくから」
食べ物は粗末にしない主義なので、辛いが食べられるというぎりぎりのラインを責めるつもりだ。
さて、では第二陣。
「ねえ~、もうだいぶ辛いにおいするんだけど~」
根っからの甘党、百瀬が嘆く。
「チョコとか入れようよ~」
「いやそっちの方がよっぽどじゃないか?」
「こっち、救済コーナー作ろうぜ。チーズ、ソーセージ、たこ、コーン……キムチチーズ!」
どこに何があるか分からないように、焼きあがったらランダムに場所を入れ替える。救済コーナーだけは動かさない。
「じゃ、食うか」
せーの、で一斉に食う。
ん、俺のはたこだ。たこキムチ。キムチの風味とたこって合うなあ。こりゃ大当たりだ。
「僕チーズだ」
そうニコニコと笑う観月。朝比奈は「コーンマヨ、おいしい」とつぶやく。
「よかったあ~、俺、ソーセージだったあ~」
と、ほっとする百瀬。
「ちょっとピリッとするな、これ、チョリソーか。覚悟してたよりは辛くない」
そう言ったのは、守本だ。となると。
「ん~!」
辛さに悶絶するのは咲良だ。
その様子を見て百瀬が一番に笑う。
「言い出しっぺが当たったな!」
「っあ~! 辛い! ちょ、春都、なんか飲み物!」
「これでいいか?」
と、空になった咲良のコップに乳酸菌飲料を注いでやる。咲良はそれを一気に飲み干すと、息を整えて、うめくように言ったものだ。
「タバスコは……やめよう」
一度で満足――いや、懲りたらしいので、それからは平和に焼いていくことにした。
チーズは程よくとろけてまろやかだし、チョリソーもいい感じにピリッとしておいしい。コーンは甘く、ソーセージの肉っ気もいい。タバスコも量を加減すればいい感じで味変できるものだ。
でもやっぱ最後はたこに戻ってくるんだよな。
「やっぱこれだよ、たこ焼きは」
「うまいな」
「うん、おいしい」
なんだかんだ言って、まあ、楽しめた。
しかしまだまだ時間はあるし、お菓子もある。
「片づけたら映画見ねえ? 面白そーなの借りてきた。それ見ながら人生ゲームしようぜ」
咲良の提案に、当然、反対する奴はいない。
あれだけなみなみあった生地も今はもうすっからかんだ。
いやあ、食った食った。
さて、こっからはちびちびお菓子でも食いながら楽しむとしますか。
「ごちそうさまでした」
「一応準備はしといたから、あとは若者だけで楽しみなさい! 何かあったら連絡してね~」
とだけ言って。
さて、咲良は朝比奈と百瀬、あとは菜々世を引き連れてくるだろうし、観月には部屋番号教えた。あとは来るのを待つだけだ。
と、その時チャイムが鳴った。うちのマンションはオートロックで、来客者の姿は部屋に備え付けられたモニターで確認できる。
「お、観月」
『来たよ』
鍵を開け、しばらくすると観月は部屋にやってきた。
「おじゃまします。十階って、見晴らしいいね」
「引っ越しは大変だったけどな」
「そうだろうね。あ、これお土産」
渡されたのは立派な紙袋。なんとなく線香の匂いがする。
「久しぶりに行くし、お世話になるんだから持ってけって、親が」
「わざわざありがとな」
どうやら和菓子の詰め合わせらしい。これは父さんたちと食うことにするか。
「まさか、また今度がこんなに早く来るとは」
「俺も思った」
「部活も用事も入らなくてよかったよ。絶対楽しいじゃん、今日」
「だいぶ、やかましくなりそうだけどな」
たこ焼き機はテーブルではなく、こたつの方にセッティングをしていた。結構広いので人数いても座れる。
「お、連絡来た。あと十分もしたら来るって」
「わあ、なんか緊張するなあ」
それから二人で色々と近況を話していたら、間もなくしてチャイムが鳴った。
「来たか」
『四名でーす!』
「全員で言うな。騒々しい」
咲良にいたっては何か大きな荷物を抱えている。こいつ、マジで人生ゲーム持って来やがった。
「賑やかだ」
そう言って笑う観月に、俺は苦笑いで返すほかなかった。
「お邪魔しまーす!」
はいこれ、と咲良から渡されたのは、道中、地元のスーパーで買ってきたらしいお菓子の詰め合わせ。どうやらみんなでお金を出し合ったとかで、結構な量がある。
「こりゃまた大量に買ってきたな」
「六人もいたら食うっしょ」
「一応言っとくが、たこ焼きもするんだぞ?」
「大丈夫だろ!」
知らない者同士が自己紹介をしている間に俺は準備をする。たこ焼き粉はかなりの量を準備しているし、たこは母さんが切っておいてくれた。
「僕、手伝うよ」
「俺も」
「お、サンキュー。じゃあこれ持ってって」
観月にはジュース類を持って行ってもらい、朝比奈にはコップとか取り皿を人数分持って行ってもらおう。
「あ、俺注ぐよ。何飲みたい?」
咲良が観月からペットボトルを受け取り、百瀬がコップを受け取った。守本は俺から生地が入ったボウルを受け取ってくれた。
「春都は何飲むー?」
「オレンジ」
「朝比奈と嶋田は?」
「俺は……緑茶」
「僕も」
「オッケー、じゃあ俺は色々混ぜよう」
「あ、ずるいぞ咲良。俺もミックスする」
「だよなー! 菜々世、分かってるー」
ファミレスのドリンクバーかよ。
各々にコップがいきわたったところで、さっきからそわそわしていた咲良に乾杯の音頭は任せることにした。
「じゃ、かんぱーい!」
結局二人のコップは何色と形容すべきか分からない色に染まっていた。
「うまいのか?」
「まあ、うん。嫌いじゃない」
「まずくはないけど量は飲めないって感じだ!」
次はフツーにコーラ飲む、と咲良は笑った。
テレビがある方は避けて、俺と観月、咲良と守本、朝比奈と百瀬、各々隣り合って座った。
「じゃ、焼いてくか!」
「おー」
油をひき、そこに生地を注ぎ入れる。たこを入れたら、キャベツや紅しょうが、天かすを散らして、焼けるのを待つ。
「へー、観月って風紀委員長なんだ。どうりで真面目そうだ」
咲良がコップの中身をちびちびと飲みながら言う。
「いやあ、なんかなりゆきで」
「こいつ、竹刀持つと性格変わるぞ」
端の方が焼けてないか竹串でつつきながら言うと、観月は「なんだよ」とこちらに視線を向けた。
「え、そうなん? 虫も殺さないような顔してるけど」
百瀬はそう言うが、それはいわゆる外見詐欺というものだ。
「いや実際俺フルボッコにされたし、授業で」
これはまごうことなき事実だ。中学の時、柔道か剣道か体育の授業で選択しなければならず、どちらもいやだった俺は観月のいる剣道を選択したのだが、そこでもう、だめだった。
目の色が変わるというか、さっきまでの温和な表情どこいったって感じだ。バシバシ撃ち込まれながら、俺は「無慈悲」という言葉を身をもって覚えたものだ。
「一条も運動神経よさそうなのに」
守本はそう言うが、俺を知るやつらはふっと少し噴き出す。
「一条は……運動よりも、勉強とか、料理が、な」
と、朝比奈が百瀬に同意を求める。
「そうそう。まあ、単位取れるぐらいだから!」
「えっ、そういう次元で語るレベルなのか? 俺の運動神経」
「隙あらばさぼろうとしてるしな!」
咲良にそう言われ、何か言い返そうにも事実なので何も言えない。
「えー、でも料理できるっていいなあ。俺、料理はからっきし」
「守本んちって、レストランじゃなかったっけ? 手伝ってるって、咲良から聞いたけど」
そう聞くと、守本は苦笑して首を横に振った。
「手伝ってるのはホールだけ。どうも調理器具と相性悪くて」
その腕のほどを唯一知っている咲良は「なんて言えばいいかなあ」と顎に手を当てる。
「味覚のセンスはあるけど、それに体が伴わない感じ」
「あー、なるほど」
「要するに不器用なんだ、俺」
「でもそれなら、改善のしようがあるよな」
お、そろそろ焼けてきた。
何人かでひっくり返していけばあっという間に終わる。あとは仕上がるのを待つだけだ。
「うまそうなにおいしてきたな」
さて、焼きあがったか?
「ソースとかポン酢とか、いろいろ用意してるぞ」
「俺ソースがいい!」
「ポン酢もおいしそうだよね」
「これは……出汁?」
「明石焼きみたいになりそう!」
「マヨネーズくれ」
各々好みに味付けしたらさっそく……
「いただきます」
やっぱ最初はソースとマヨだな。うん、安定のおいしさ。お店のように油をたっぷり使っていないのでカリッとまではいかないが、それでも香ばしい。ほにゃっとした感じが家のたこ焼きという感じだ。
「あっつい!」
「やけどすんなよ」
「うまいなー」
今度は出汁で食ってみる。紅しょうがの風味が引き立つ気がする。ほんのり温かいのがいい。ポン酢はさっぱりするし、何よりちょっと冷やしてくれるので非常に食べやすい。
「次、焼いていこうか」
実は今日のたこ焼きはただのたこ焼きではない。
違う具材も用意していたのだ。
「あっ、チーズある!」
目ざといな、咲良。
「コーン、ソーセージ、キムチ……あれ? ソーセージが二種類あるんだな?」
「よくぞ聞いてくれたな、朝比奈。これは激辛チョリソーだ。タバスコもある」
「えっ」
要するにロシアンたこ焼きだ。
「うわ、怖いことするなあ、一条。お前も大概だな」
「提案したのは俺じゃないぞ、百瀬。こいつだ」
俺が指さしたのは、当然というかなんというか、とにかく咲良だ。咲良は両手でピースサインをして満面の笑みだ。
「いや、その悪乗りに全力でのっかったお前も同罪だからな?」
「大丈夫だ。食べられる量にしとくから」
食べ物は粗末にしない主義なので、辛いが食べられるというぎりぎりのラインを責めるつもりだ。
さて、では第二陣。
「ねえ~、もうだいぶ辛いにおいするんだけど~」
根っからの甘党、百瀬が嘆く。
「チョコとか入れようよ~」
「いやそっちの方がよっぽどじゃないか?」
「こっち、救済コーナー作ろうぜ。チーズ、ソーセージ、たこ、コーン……キムチチーズ!」
どこに何があるか分からないように、焼きあがったらランダムに場所を入れ替える。救済コーナーだけは動かさない。
「じゃ、食うか」
せーの、で一斉に食う。
ん、俺のはたこだ。たこキムチ。キムチの風味とたこって合うなあ。こりゃ大当たりだ。
「僕チーズだ」
そうニコニコと笑う観月。朝比奈は「コーンマヨ、おいしい」とつぶやく。
「よかったあ~、俺、ソーセージだったあ~」
と、ほっとする百瀬。
「ちょっとピリッとするな、これ、チョリソーか。覚悟してたよりは辛くない」
そう言ったのは、守本だ。となると。
「ん~!」
辛さに悶絶するのは咲良だ。
その様子を見て百瀬が一番に笑う。
「言い出しっぺが当たったな!」
「っあ~! 辛い! ちょ、春都、なんか飲み物!」
「これでいいか?」
と、空になった咲良のコップに乳酸菌飲料を注いでやる。咲良はそれを一気に飲み干すと、息を整えて、うめくように言ったものだ。
「タバスコは……やめよう」
一度で満足――いや、懲りたらしいので、それからは平和に焼いていくことにした。
チーズは程よくとろけてまろやかだし、チョリソーもいい感じにピリッとしておいしい。コーンは甘く、ソーセージの肉っ気もいい。タバスコも量を加減すればいい感じで味変できるものだ。
でもやっぱ最後はたこに戻ってくるんだよな。
「やっぱこれだよ、たこ焼きは」
「うまいな」
「うん、おいしい」
なんだかんだ言って、まあ、楽しめた。
しかしまだまだ時間はあるし、お菓子もある。
「片づけたら映画見ねえ? 面白そーなの借りてきた。それ見ながら人生ゲームしようぜ」
咲良の提案に、当然、反対する奴はいない。
あれだけなみなみあった生地も今はもうすっからかんだ。
いやあ、食った食った。
さて、こっからはちびちびお菓子でも食いながら楽しむとしますか。
「ごちそうさまでした」
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