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《番外編 新しい常務がやって来た!!》

2.広報室広報係 三井えみりの場合 ③

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17:30――。


就業後、3階にあるリフレッシュルームで、営業二課の古舘ふるたちさん、広岡君、そして私の三人で作戦会議をしている。


「とりあえず、神原さんには”こんな企画があるんだけど”的な軽い感じでは言ってあるんです。でも、正式にお誘いするのは、営業二課か広報誌係の広岡君がするべきだと思うんですよ」


私が言う。


「まあ、そうだな。プロジェクト成功の打ち上げと広報誌大成功の打ち上げ、そういう名目だからね。じゃあ、うちか広報誌係か、どちらが行く?」


営業二課の古館さんは私たちより1歳上の先輩社員だ。プロジェクトチームにまさに参加していた人。
古館さんは既に、プロジェクトメンバー全員から参加する旨の返事を取り付けている。


「神原さん、結構手強いからな……」


広岡君が、また後ろ向きなことを言う。


「神原さんにも来てもらうんだから、結構いけると思うよ?」


そんな広岡君を早いところ牽制しておく。


「そうだね。うちも、相当乗り気だよ。常務にはかなり恩があるからね。それに、僕も、奥様に会ってみたいし」


古館さんがそう言った。


「ですよね?」

「うん。常務って、奥様の話するときだけ、少し表情が緩むんだ。あの、鋭い雰囲気を発しまくっている榊常務が、奥様のためにとこーんな小さな象のぬいぐるみなんかを選んでるんだよ? あの姿を目にしてしまった時は、僕、何とも言えないむず痒い気持ちになった」


古館さんが、手のひらで丸を作りながらそんなおいしい話をしてきた。


「な、なんですか、その情報! 詳しく聞かせてください」


私は椅子から立ち上がる。


「う、うん。出張中にね、夜、たまたま繁華街の土産物店にいるのを見かけたんだ。常務みたいな人は何を選んでるのかなぁ、なんて興味が湧いてこっそり観察してみたんだけど。そうしたら、タイでは有名な、タイシルクで出来た象のぬいぐるみで。そんなものを、めちゃくちゃ真剣に眺めては手に取っているんだよ」

「なんということ! 榊常務のその後姿、激写したい!」

「――そ、それを見て、常務がそんなものを欲しいと思っているとは考えられないし、ということは、奥様へのお土産かなぁなんて思ってさ。男の僕でも、なんか胸がぎゅっとした」

「するするする! します!」

「……おい、おまえ、いちいち声、大きい――」

「それでそれで? 結局お買い上げしたんですか?」


広岡君を押しやり前のめりになる。


「いや、それがね。それだけ真剣に悩んでたのに、結局買わずに出て来たんだよ。どうやら、決められなかったらしい。どれだけガチで悩んでるんだって話しだよね。で、結局、常務は何か急用ができたみたいで慌ただしく帰国してしまって。それで、僕が代わりに買って帰ったら、もう、それは喜んでくださった!」

「あ~、いい話。ほんと、もう、常務、どれだけ奥様愛してるの?」


私は手のひらを握り合わせる。


「ますます、お二人のラブラブぶりを目の当たりにしたい。もう、これは絶対常務ご夫妻を引っ張り出しましょう! こうなったら、営業二課と広報誌係両方でお誘いに行けばいいんじゃないですか? これだけ切望されれば、絶対来てくださるはず!」


――ということで、広岡君と古館さんで常務室に出向くことになり……。



いただきました! オッケー、いただいてきました!


――おっしゃっ!


と拳を突き上げたのは言うまでもない。




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