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「リョータ! リョータ!」
ザブンと大きな音。暗闇の中、水しぶきが上がる。
「リョータ!」
見事なクロールで25mを泳ぎきったリョータは、名前を叫ぶアユムの元へスイと流れるように寄ってきた。
水から顔をあげ落ちる雫ごと髪をかきあげたリョータの表情は満足そうに輝いていて、アユムはプールサイドにしゃがみこみ「バーカ」と呟いた。
「水音がどうとか言って、たんに泳ぎたかっただけだろ」
「バレた?」
「バレバレだって」
呆れてみせるアユムにリョータは悪びれない。
「アユム、手貸して」
プールから上がろうというのか、濡れた手を伸ばしてくる。
アユムは中腰になり、その手をとった。
「見つかったら面倒なんだからさ、さっさと上がれよ。……え? ―――うわッ」
派手な水音と水しぶきが同時に上がる。
リョータの手に強く引かれプールに突っ込んだアユムは、水をかきわけ水面に出ると「ぷはぁっ」と大きく息を吐いた。
「なに、す……ッ!」
「せっかくだからさ、一緒に泳ごうぜアユム」
全くもって悪びれないリョータは、いかにもな悪ガキの表情と心底楽しそうな表情を同時に浮かべてアユムを誘う。
アユムはげんなりと肩を落とした。
「そんなに泳ぎたいなら、ご勝手に」
「なんだよ、一緒にって……」
「お独りでどうぞ」
ツンケンと返すアユムに、リョータは膨れっ面となる。
「こんな暗いトコでひとりで泳いでたって、面白くもなんともないだろぉっ」
知るかとばかりアユムはツンとそっぽを向いた。リョータはチェッと舌打ちを洩らす。
「付き合い悪ィの。アユムだって泳ぐの好きなくせにさ。ベッドでの泳ぎなんか特に」
「―――!」
ギョギョッとアユムは眸を剥いた。
突然なにを言い出すんだ、こいつは!
「―――……帰る」
冷ややかに告げたアユムの肩をリョータの手が留める。
「帰さない……って言ったら?」
「ふざけ……ッ!」
ふざけるなと振りほどこうとした手は逆に捕まれた。
寒さからではなくアユムの身体は震え、眸許は羞恥に赤く染まっている。
そのなんとも艶めいた表情に、リョータは瞬間眸を奪われ、次いでニヤリと優越感を覗かせる笑みをみせた。
「アユムはプールで泳ぐより、ベッドで泳ぐ方が好きなんだ?」
「言ってないだろ?」
「そうかぁ? でもさ、ほら」
「リョータ、やめ……ッ」
逃げようと反転させたアユムの身体が背後から抱きこまれる。
羽交い絞めに近く片手だけで押さえこまれた身体に、もう一方の手が這わされた。
「リョータ!」
器用に動いた彼の手はジーンズのフロントを難なく開いて、下着の中までスルリと潜りこんでくる。
とたんにビクリとアユムの身体が跳ねた。
「あ……ッ」
「身体の方は期待しちゃってるみたいだけど?」
「あうッ……」
声があがる。
半身を握りこまれて、アユムの身体は大きく震えた。
「いつもベッドでしてるようなこと、ここでしようかアユム」
満足そうな囁きがアユムの耳朶を擽る。
嫌だと声にすることはできなかった。口を開けば濡れた喘ぎが洩れてしまう。
アユムの身体を知り尽くした手は、容易くアユムを快感の極みへと押し上げていくのだ。
「ん……っ……く……」
「声殺す必要なんてないだろ。誰も来ないって、こんな夜中に」
ところが、だ。
ふたりが気づいていなかっただけで、人の気配は確実に近付いてきていた。
「誰も来ないってことはないだろ」
不意にかけられた声に、ふたりは驚き一斉に眸を向ける。
「ヒロヤッ」
掠れかけた声をあげたのはアユムだ。
これで助けてもらえると救いの眸を向けるアユムに、だがヒロヤは意味深な一瞥をくれリョータに言葉を投げかけた。
「抜け駆けだぞ」
ニヤリと笑うヒロヤの表情にリョータと同じものを見つけて、アユムは夜だからというわけでなく眸の前が真っ暗になる気がした。
ザブンと大きな音。暗闇の中、水しぶきが上がる。
「リョータ!」
見事なクロールで25mを泳ぎきったリョータは、名前を叫ぶアユムの元へスイと流れるように寄ってきた。
水から顔をあげ落ちる雫ごと髪をかきあげたリョータの表情は満足そうに輝いていて、アユムはプールサイドにしゃがみこみ「バーカ」と呟いた。
「水音がどうとか言って、たんに泳ぎたかっただけだろ」
「バレた?」
「バレバレだって」
呆れてみせるアユムにリョータは悪びれない。
「アユム、手貸して」
プールから上がろうというのか、濡れた手を伸ばしてくる。
アユムは中腰になり、その手をとった。
「見つかったら面倒なんだからさ、さっさと上がれよ。……え? ―――うわッ」
派手な水音と水しぶきが同時に上がる。
リョータの手に強く引かれプールに突っ込んだアユムは、水をかきわけ水面に出ると「ぷはぁっ」と大きく息を吐いた。
「なに、す……ッ!」
「せっかくだからさ、一緒に泳ごうぜアユム」
全くもって悪びれないリョータは、いかにもな悪ガキの表情と心底楽しそうな表情を同時に浮かべてアユムを誘う。
アユムはげんなりと肩を落とした。
「そんなに泳ぎたいなら、ご勝手に」
「なんだよ、一緒にって……」
「お独りでどうぞ」
ツンケンと返すアユムに、リョータは膨れっ面となる。
「こんな暗いトコでひとりで泳いでたって、面白くもなんともないだろぉっ」
知るかとばかりアユムはツンとそっぽを向いた。リョータはチェッと舌打ちを洩らす。
「付き合い悪ィの。アユムだって泳ぐの好きなくせにさ。ベッドでの泳ぎなんか特に」
「―――!」
ギョギョッとアユムは眸を剥いた。
突然なにを言い出すんだ、こいつは!
「―――……帰る」
冷ややかに告げたアユムの肩をリョータの手が留める。
「帰さない……って言ったら?」
「ふざけ……ッ!」
ふざけるなと振りほどこうとした手は逆に捕まれた。
寒さからではなくアユムの身体は震え、眸許は羞恥に赤く染まっている。
そのなんとも艶めいた表情に、リョータは瞬間眸を奪われ、次いでニヤリと優越感を覗かせる笑みをみせた。
「アユムはプールで泳ぐより、ベッドで泳ぐ方が好きなんだ?」
「言ってないだろ?」
「そうかぁ? でもさ、ほら」
「リョータ、やめ……ッ」
逃げようと反転させたアユムの身体が背後から抱きこまれる。
羽交い絞めに近く片手だけで押さえこまれた身体に、もう一方の手が這わされた。
「リョータ!」
器用に動いた彼の手はジーンズのフロントを難なく開いて、下着の中までスルリと潜りこんでくる。
とたんにビクリとアユムの身体が跳ねた。
「あ……ッ」
「身体の方は期待しちゃってるみたいだけど?」
「あうッ……」
声があがる。
半身を握りこまれて、アユムの身体は大きく震えた。
「いつもベッドでしてるようなこと、ここでしようかアユム」
満足そうな囁きがアユムの耳朶を擽る。
嫌だと声にすることはできなかった。口を開けば濡れた喘ぎが洩れてしまう。
アユムの身体を知り尽くした手は、容易くアユムを快感の極みへと押し上げていくのだ。
「ん……っ……く……」
「声殺す必要なんてないだろ。誰も来ないって、こんな夜中に」
ところが、だ。
ふたりが気づいていなかっただけで、人の気配は確実に近付いてきていた。
「誰も来ないってことはないだろ」
不意にかけられた声に、ふたりは驚き一斉に眸を向ける。
「ヒロヤッ」
掠れかけた声をあげたのはアユムだ。
これで助けてもらえると救いの眸を向けるアユムに、だがヒロヤは意味深な一瞥をくれリョータに言葉を投げかけた。
「抜け駆けだぞ」
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