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晴哉の告白
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試験が終わった頃、奈桜からハロウィンパーティーのお誘いが来たので、母にそれを伝えたらかぼちゃプリンを作ってくれた。母は自慢ではないけど、料理がとても上手であり、そのおかげで近所付き合いでトラブルになったことがない。作っては近所の家に持って行き、コミュニケーションをしていた。そんな姿を見ていた瑞穂は母の姿と自分が全く重ならず、彼女との血のつながりを疑った。
「母さんがかぼちゃプリンを作ったんだ。一応、理人でも食べられるように砂糖は入ってないから安心して。」
「ありがとう。瑞穂君のお母さんの料理は何でも美味しいから楽しみ。もうみんな来ているんだよ。」
奈桜に袋を渡して入ると、案内されたいつもいるリビングにはすでに晴哉と尚哉、彰彦が勤める弁護士事務所の同僚である松本と後輩の砂原がいた。瑞穂は最近知ったのだけど、晴哉と彰彦は弁護士であり、松本と砂原も同じαだが、松本は弁護士、砂原は事務員と聞いた。彼らもαだが瑞穂を下に見ることはなくただの知り合いのように接してくれた。
「瑞穂君が最後なんて珍しいな。」
「母がラッピングに凝ってしまって。」
「瑞穂君のお母さんって料理上手よね?」
「たまにゼリーとか頂くけど、どれもうまいな。」
砂原が安堵していて松本と彰彦は母の話題で盛り上がっていた。彰彦は理人も食べられるのでゼリーがお気に入りだったようで彼はこれほどにないほど褒めていた。
しかし、そんな中で一箇所だけ暗い雰囲気を纏っている場所があった。そこではなく、そこの隣には尚哉が居心地の悪そうな顔をしながら視線で移動された。瑞穂と目が合った晴哉がすぐにそっぽを向き、それが拗ねた子犬のように見え、どんな反応をしていいか分からずその場で立ち止まった。
「みーくん!トリックオアトリートって!」
マントを付けた理人がお菓子をあげる格好をしていて、瑞穂はハロウィンパーティーだったことを思い出した。
「えっ、、あぁ、トリックオアトリート!」
「おかし、どうじょ。」
「ありがとう。」
お菓子をもらうと理人はにっこりと笑った。いつも彼は笑顔だけど、誰かに喜んでもらった時にはとびきりの笑顔になった。それこそ”はじける”と言えただろう。
「だいしゅきな人にあげてね。」
以前言われたことと同じことを理人が言った。誰からそんなことを教わるのか分からないけれど、瑞穂はそれに背中を押された気がした。
「晴哉さん、どうぞ、あげる。」
お菓子を受け取らず手首ごと掴まれてそのまま引っ張られ部屋から出された。理由は分からないけれど、晴哉の気に障ることをして彼の機嫌を損ねたことは瑞穂でもわかった。しかし、別に今まで晴哉と一緒にいて彼の機嫌を取るために行動をしたわけではなかったので、晴哉の行動には瑞穂が納得できず腕を何度も振った。
「晴哉さん!ちょっと!」
瑞穂が反抗するのだが、”もやし”と言われた彼の力など大人の晴哉には全く敵わなかった。そのまま、晴哉の車の助手席に押し込められ、晴哉の方は運転席に乗り込んだ。目を回しそうになる展開の速い状況に瑞穂は両手でぎゅッと鞄を握りしめた。
「瑞穂、思わず引っ張ってしまって悪い。」
晴哉の謝罪が突然始まった。瑞穂は彼の言葉を俯いて聞いていた。
「瑞穂、頼むから俺を見てくれないか?」
晴哉の懇願するような声を瑞穂は無視したわけではなく、今後どうなるかわからず恐怖に襲われていただけだった。それに焦れたのか急に晴哉が両肩を掴んできたので驚いた瑞穂は顔をあげると、すぐ近くまで晴哉の顔が迫ってきた。晴哉の目は瑞穂を捉えて離さず、その視線に瑞穂は魅入られたのか目を離すことができなかった。
「瑞穂、俺はお前とこの先同じ景色を見たり、同じ物を食べたりしたいんだ。お前とこの先を共に歩みたい。」
「それはどういう···」
「お前を愛してる。」
単純で瑞穂には最も遠い言葉だった。
「俺は分かりません。でも、晴哉さんと一緒にいると楽しいし嬉しいと思う。」
「追加で”だいしゅきな人”だろう?」
理人の言い方を真似する晴哉は明らかにからかっていた。それに、瑞穂は自分の体が熱くなるのを感じ、心臓の音が速く大きくなっていた。
「そうだよ!大好きな人って言われて思いついたのは晴哉さんだけだよ!」
「瑞穂!最高だよ!最大で最高の告白だ。」
晴哉に初めて抱きしめられ、その勢いが止まらなかった晴哉からおでこにキスをされた。その温かい感覚がしばらく消えなかった。
初めて晴哉との関係を明確にしたことで、今まで恐怖から踏み出せなかった一歩を出した。瑞穂はその日理人の元に戻ることもできず、晴哉に連絡を任せ早く帰宅したことを心配した母をよそに瑞穂は部屋に駆け込みベッドの上にダイブした。
「今日は寝られない。」
瑞穂の予想通り全く寝ることができなかった。
「母さんがかぼちゃプリンを作ったんだ。一応、理人でも食べられるように砂糖は入ってないから安心して。」
「ありがとう。瑞穂君のお母さんの料理は何でも美味しいから楽しみ。もうみんな来ているんだよ。」
奈桜に袋を渡して入ると、案内されたいつもいるリビングにはすでに晴哉と尚哉、彰彦が勤める弁護士事務所の同僚である松本と後輩の砂原がいた。瑞穂は最近知ったのだけど、晴哉と彰彦は弁護士であり、松本と砂原も同じαだが、松本は弁護士、砂原は事務員と聞いた。彼らもαだが瑞穂を下に見ることはなくただの知り合いのように接してくれた。
「瑞穂君が最後なんて珍しいな。」
「母がラッピングに凝ってしまって。」
「瑞穂君のお母さんって料理上手よね?」
「たまにゼリーとか頂くけど、どれもうまいな。」
砂原が安堵していて松本と彰彦は母の話題で盛り上がっていた。彰彦は理人も食べられるのでゼリーがお気に入りだったようで彼はこれほどにないほど褒めていた。
しかし、そんな中で一箇所だけ暗い雰囲気を纏っている場所があった。そこではなく、そこの隣には尚哉が居心地の悪そうな顔をしながら視線で移動された。瑞穂と目が合った晴哉がすぐにそっぽを向き、それが拗ねた子犬のように見え、どんな反応をしていいか分からずその場で立ち止まった。
「みーくん!トリックオアトリートって!」
マントを付けた理人がお菓子をあげる格好をしていて、瑞穂はハロウィンパーティーだったことを思い出した。
「えっ、、あぁ、トリックオアトリート!」
「おかし、どうじょ。」
「ありがとう。」
お菓子をもらうと理人はにっこりと笑った。いつも彼は笑顔だけど、誰かに喜んでもらった時にはとびきりの笑顔になった。それこそ”はじける”と言えただろう。
「だいしゅきな人にあげてね。」
以前言われたことと同じことを理人が言った。誰からそんなことを教わるのか分からないけれど、瑞穂はそれに背中を押された気がした。
「晴哉さん、どうぞ、あげる。」
お菓子を受け取らず手首ごと掴まれてそのまま引っ張られ部屋から出された。理由は分からないけれど、晴哉の気に障ることをして彼の機嫌を損ねたことは瑞穂でもわかった。しかし、別に今まで晴哉と一緒にいて彼の機嫌を取るために行動をしたわけではなかったので、晴哉の行動には瑞穂が納得できず腕を何度も振った。
「晴哉さん!ちょっと!」
瑞穂が反抗するのだが、”もやし”と言われた彼の力など大人の晴哉には全く敵わなかった。そのまま、晴哉の車の助手席に押し込められ、晴哉の方は運転席に乗り込んだ。目を回しそうになる展開の速い状況に瑞穂は両手でぎゅッと鞄を握りしめた。
「瑞穂、思わず引っ張ってしまって悪い。」
晴哉の謝罪が突然始まった。瑞穂は彼の言葉を俯いて聞いていた。
「瑞穂、頼むから俺を見てくれないか?」
晴哉の懇願するような声を瑞穂は無視したわけではなく、今後どうなるかわからず恐怖に襲われていただけだった。それに焦れたのか急に晴哉が両肩を掴んできたので驚いた瑞穂は顔をあげると、すぐ近くまで晴哉の顔が迫ってきた。晴哉の目は瑞穂を捉えて離さず、その視線に瑞穂は魅入られたのか目を離すことができなかった。
「瑞穂、俺はお前とこの先同じ景色を見たり、同じ物を食べたりしたいんだ。お前とこの先を共に歩みたい。」
「それはどういう···」
「お前を愛してる。」
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「そうだよ!大好きな人って言われて思いついたのは晴哉さんだけだよ!」
「瑞穂!最高だよ!最大で最高の告白だ。」
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「今日は寝られない。」
瑞穂の予想通り全く寝ることができなかった。
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