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1章 転生早々、やらかしも

1-12 挑むは人と、妖精で

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「ねぇ、そこのあなた。ちょっといいかしら?」
「…んん?」

 無事に依頼を終えてギルド内でくつろいでいたところ、声をかけられた。
 このアルモストタウン内では聞いたことがない声のはずが、なんとなくどこかで聞いたようなと思って振り返れば…そこには、あのゴブリンたちを屠ってたローブの人が立っていた。

「何か用かな?」

 見たところあのパイルバンカーっぽい武器は持っていない様子だが、見知らぬ相手なので警戒をしておくにこしたことはない。
 ローブを着込んでいる相手なので中身が見えないのだが、声色的には女性だろうか。
 声の感じからすると、敵意などは感じられない。


「ええ、そうよ、妖精のあなた。ちょっと気になりまして、声をかけさせてもらったわ」
「気になるものなの?」
「気になるものですわ。ここにいる人たちにはすでに日常のように溶け込んでいるようですけれども、妖精という存在はここ意外だと眉唾物の話のように思われてますもの」

 それもそうである。
 どうやらこの世界、他の妖精の存在がかなり昔のものになっているらしく、おとぎ話レベルとか言う話を聞いた時があった。
 ここで過ごしてそこそこ月日が過ぎて、他の人たちも慣れていたところがあっただろうが、この人の話を聞いてそれもそうかとうなずいている人たちもいるようである。

「それだけで終わりか?」
「いえ、そうではないですわね。わたくしも冒険者として生活していますけれども…未知の存在に興味を抱かされるのですわ。とはいえ、普通に話すだけでは物足りないですし…わたくしと模擬戦をしてくれないかしら?」
「模擬戦か」

 冒険者が次のランクに上がる際に実力の確認や、ケンカ、賭け事などで戦うこともあるようで、ギルドの地下のほうに模擬専用の一室が設けられていたりする。
 多少の使用料がかかるが、そこで暴れるのは認められており、人気のある施設にもなっているのだ。

 なお、普通にその模擬専用の部屋以外で、ギルド内で暴れたら厳しい処罰が待っているそうで、たまに酒で酔っぱらった勢いでやらかした人が、一瞬で酔いがさめて青を通り越して真っ白になっている光家尾も見たりすることがある。




 そんなことはさておき、模擬戦を挑まれてしまったがどうしたものか。
 森の中でゴブリンを屠っていた光景を見るとちょっと恐ろしいものだったが、考えてみたらここ最近は対モンスター戦闘が多かったかもしれない。
 この都市にいるのは良い人が多いけど、万が一悪人が襲ってきたときとかを考えると、対人戦等に関しての戦闘経験を積んでおいたほうが良いだろう。

「うーん、ならやろうかな?でも、その前に、名前を聞いて良いかな」
「いいですわ。わたくし、冒険者としてCランク、異名を『百手のアリシア』と呼ばれている者ですわ!」

 異名持ちか…冒険者の中には、ある程度のランクになっている人の中で、特徴的なものを持っていた場合、異名と呼ばれるものが付くことがあると聞いたことがある。
 千変万化、林の狩人、黒猫、痛風毒酒、雪崩岩…様々な異名持ちの冒険者が存在しているようで、その名が示すような特徴がはっきりとあるらしい。

 今、名乗ってきた彼女も異名を持っているということは、その名を考えると百手になるようなものがあるということなのだろうか。
 というか、そんな相手がまだ低いランクの妖精に模擬戦を挑むのはいかがなものかと思うとこともあるが、まぁ別に気にするようなことはない。なんとなく、異名持ちってロマンあるし、ちょっぴり自分も欲しいと思わなくもない。『光線妖精』とか…そのまますぎるか。


 なんにせよ、断る意味はない。
 挑まれたのであれば、受けて立って見せようか、冒険者としての矜持をもって。


「なるほど、百手のアリシアさんか…なら、こちらも改めて名乗らせてもらおうか。光妖精の冒険者、ラロン。君の模擬戦の挑戦、受け取った!!」
「なら、話は早いですわね」
「ああ」
「「模擬戦、一つ挑もうか!!」」

「「「「イェェェェェェイ!!酒のつまみが追加されたぞぉぉぉぉぉ!!」」」」

 お互いに模擬戦に乗り気だったが、その光景を賭け事や酒のつまみにする気満々だった他の冒険者たちが叫び、一瞬びくっと驚いてしまう。
 このぐらい堂々とやれないのは、まだまだ自分は冒険者としてはひよっこというべきなのだろうか。

 そう思いつつも、すぐに受付のほうへそろって向かい、模擬戦の場を借りる手続きを行うのであった…

「ところで、使用料どうする?お互いに出すか?」
「いえ、持ち掛けたわたくしが払いますわ。ちょうど、ゴブリンたちの魔石を売ったお金がそこそこありますもの」

 そういえば、ここに来る前に粉砕玉砕大爆散やっていたのを見たんだっけか…あ、結局やりすぎて魔石しか回収できなかったのか…
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