4 / 339
始まりの章
3話
しおりを挟む
‥‥‥明晰夢ってやつかな?
これは夢だ。そうはっきりとルースはその場で感じ取っていた。
周囲が黒く塗りつぶされたように暗いのに、己だけがはっきりと見えているこの空間。
このような場所は村のどこにもないし、思い当たる場所としては今朝の夢の中であろう。
ここに至るまでの経緯を、ルースは思い返してみる。
幼馴染に起こされ、そして村の中央での叡智の儀式に出て、金色に輝く魔導書を触れて‥‥‥
そこから膨大な、ナイアガラの滝のごとくあふれ出てくる情報に潰され、気を失ったのだ。
そこまで思い出したところで、ふとルースは気が付いた。
――――コッチダ
「‥‥?」
何か、自分を呼ぶような声が聞こえて、ルースはその声の方へ顔を向ける。
するとそこには、今朝の夢でも出てきて、そして現実でも触れた金色の魔導書が、光を放ちその場に浮かんでいた。
――――ヨウヤク、コッチヲ見タカ。我ヲ手二スルノニ相応シキ者ヨ。
抑揚や、高さ低さもない無機質な声。
その声を発するのは、目の前の魔導書であることをルースは理解した。
「‥‥‥一体何なんだお前は?」
しばし考えこんだ後、結論が出ないのでルースは思い切ってその金色の魔導書に尋ねた。
――――我ハ我。ソレ以外ノ何物ニモアラズ。
‥‥‥なんだろう、全くかみ合っていないような気しかしないんだけど。
その魔導書の返答に、思わずルースはガクッとずっこけた。
――――タダ、我ハ主トナッタ者二使用サレルダケノ存在。力ヲ与エ、ソレダケデ良イデハナイカ?
‥‥‥魔導書はあくまで人間に使用され、力を与えるだけの存在と言っているようだ。
だがしかし、なんとなくその言葉の裏には何かが隠れているような気もルースはしなくもなかった。
しかし、踏み入れれば何か知らなくてもいいことまで知ってしまいそうな気がして、そして今はまだ聞くのは早いのかもしれないと、ルースは感じ取った。
「‥‥なるほど、わかった。それじゃぁ、今はただ俺はお前を使用する主ということでいいんだな?」
――――ソノ通リ。
ルースの言葉に、満足げな感じの魔導書の言葉を聞き、その選択が間違っていないことをルースは感じ取る。
そして、気が付くと少しづつあたりが明るくなってきていた。
――――時間ダ。我ト話セルノハ、我ガソウ思ッタ時カ、主ガ強ク望ンダ時ノミ。今ハタダ、我ヲ使エバ良イノダ‥‥‥
だんだんと声が小さくなっていき、周囲が白く塗りつぶされたところで…‥‥
「‥‥‥はっ!」
ルースは目を覚まし、意識を戻した。
そして気が付けば、心配そうに彼を見ている幼馴染のエルゼの姿があった。
「あ!!ルース君が気が付いた!!良かったぁぁぁ!!」
ルースの起床に気が付き、そのまま抱き付いてきたエルゼ。
心配していたのは、その表情や、意識が戻った時に喜んでいた笑顔からよくわかった。
‥‥‥ただ、目覚めたその喜びに乗じて抱きしめた際に、2,3本ほど髪を抜かれたのは気のせいだと思いたい。
確かよく聞く話で、青色の魔導書で使える魔法に、水人形と言う物があったはずだよね…‥‥うん、深く考えたら絶対いいことはないだろう。
ルースはそう思い、その考えを忘却することにしたのであった。
これは夢だ。そうはっきりとルースはその場で感じ取っていた。
周囲が黒く塗りつぶされたように暗いのに、己だけがはっきりと見えているこの空間。
このような場所は村のどこにもないし、思い当たる場所としては今朝の夢の中であろう。
ここに至るまでの経緯を、ルースは思い返してみる。
幼馴染に起こされ、そして村の中央での叡智の儀式に出て、金色に輝く魔導書を触れて‥‥‥
そこから膨大な、ナイアガラの滝のごとくあふれ出てくる情報に潰され、気を失ったのだ。
そこまで思い出したところで、ふとルースは気が付いた。
――――コッチダ
「‥‥?」
何か、自分を呼ぶような声が聞こえて、ルースはその声の方へ顔を向ける。
するとそこには、今朝の夢でも出てきて、そして現実でも触れた金色の魔導書が、光を放ちその場に浮かんでいた。
――――ヨウヤク、コッチヲ見タカ。我ヲ手二スルノニ相応シキ者ヨ。
抑揚や、高さ低さもない無機質な声。
その声を発するのは、目の前の魔導書であることをルースは理解した。
「‥‥‥一体何なんだお前は?」
しばし考えこんだ後、結論が出ないのでルースは思い切ってその金色の魔導書に尋ねた。
――――我ハ我。ソレ以外ノ何物ニモアラズ。
‥‥‥なんだろう、全くかみ合っていないような気しかしないんだけど。
その魔導書の返答に、思わずルースはガクッとずっこけた。
――――タダ、我ハ主トナッタ者二使用サレルダケノ存在。力ヲ与エ、ソレダケデ良イデハナイカ?
‥‥‥魔導書はあくまで人間に使用され、力を与えるだけの存在と言っているようだ。
だがしかし、なんとなくその言葉の裏には何かが隠れているような気もルースはしなくもなかった。
しかし、踏み入れれば何か知らなくてもいいことまで知ってしまいそうな気がして、そして今はまだ聞くのは早いのかもしれないと、ルースは感じ取った。
「‥‥なるほど、わかった。それじゃぁ、今はただ俺はお前を使用する主ということでいいんだな?」
――――ソノ通リ。
ルースの言葉に、満足げな感じの魔導書の言葉を聞き、その選択が間違っていないことをルースは感じ取る。
そして、気が付くと少しづつあたりが明るくなってきていた。
――――時間ダ。我ト話セルノハ、我ガソウ思ッタ時カ、主ガ強ク望ンダ時ノミ。今ハタダ、我ヲ使エバ良イノダ‥‥‥
だんだんと声が小さくなっていき、周囲が白く塗りつぶされたところで…‥‥
「‥‥‥はっ!」
ルースは目を覚まし、意識を戻した。
そして気が付けば、心配そうに彼を見ている幼馴染のエルゼの姿があった。
「あ!!ルース君が気が付いた!!良かったぁぁぁ!!」
ルースの起床に気が付き、そのまま抱き付いてきたエルゼ。
心配していたのは、その表情や、意識が戻った時に喜んでいた笑顔からよくわかった。
‥‥‥ただ、目覚めたその喜びに乗じて抱きしめた際に、2,3本ほど髪を抜かれたのは気のせいだと思いたい。
確かよく聞く話で、青色の魔導書で使える魔法に、水人形と言う物があったはずだよね…‥‥うん、深く考えたら絶対いいことはないだろう。
ルースはそう思い、その考えを忘却することにしたのであった。
0
お気に入りに追加
1,197
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。
田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。
結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。
だからもう離婚を考えてもいいと思う。
夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる