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夏も過ぎ去り、最後の学園生活で章

287話

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‥‥‥スアーンの留年決定まで、あと1日。

「一応、方法を試したが…‥‥帰って来るかなぁ?」

 精霊王から聞いた情報を元に、一方的だがこちらでの留年危機の情報は、スアーンの元へ送られたはずである。

 そう考えるが、残り1日という状況だけに不安はあった。

「まぁ、あの下僕の事だから多分大丈夫だと思うわよ」

 ルースのつぶやきに対し、エルゼはそう答える。

「そうかなぁ?」
「そうよ」

 同郷出身同士、一応入学も一緒であれば卒業も一緒であってほしいという想いはある(エルゼ的にルース以外はどうでもいいが)。

 何にしても、後は相手側の動きがあるのみで、こちらからはこれ以上手の施しようがない。

 今できるのは祈るだけであり、考えていても仕方がないだろう。


「何にしても、今はこちらの作業の方をしたほうが良いとは思うけどな‥‥‥」
―――――量、多イ。

 考え込んでいるルースの側で、ある作業をしていたレリアとバトの言葉に、ルースはとりあえず気持ちを切り替え、その作業へ移すことにした。

 その作業とは…‥‥卒業式の後にやる爵位授与の後の、結婚式の招待状。

 正式な日付もようやく決まり、結婚式会場となる空島の改装もだいぶ終わり始め、今はもうその招待状を送るのみ。

 とはいえ、この結婚式への招待状を送るには、少々難があった。

 というのも、ルースの相手を単純にまとめてみると、エルゼ(ミストラル公爵家)、レリア(モーガス帝国王女)、タキ&ヴィーラ(国滅ぼしモンスター)、バト(妖精女王)、バルション(グリモワール学園長)、ミュル(元フェイカー幹部現教師)、リディア(侯爵令嬢)、ルルリア&アルミア(降嫁になる元王女)‥‥‥立場的には、それぞれ色々あり過ぎる。

 王国と帝国の重鎮などの貴族に、タキたちの知り合いでもある他の国滅ぼし系統の興味を持った者たち、その他妖精や精霊王の孫であるがゆえにその関連の精霊‥‥‥出す相手が多いのだ。

 しかも、現状ちょくちょく出してみるが、全員出席することは確定しており、会場自体の広さはあれども、規模が大きすぎるのである。

‥‥‥正直言って、衝突とか争いごととかも起きかねなかったりもするが、そちらは色々対応可能。

 面倒なのは、この機会に出席をどうにかして、縁をつないで権力を得たり利用しようと考えるような輩とかもいるので、それの追い払いなどの対策である。

 まぁ、空の島だけに入る方法は限られるし、そうそう暴力的な手段をする者はいないだろう。

 というか、多分大半が法的に排除可能なものが多いので、ふるい落として残った者には物理的な排除と、二重の構えで行けるので問題はない。
 
 まぁ、情報自体は妖精女王であるバトが配下の妖精部隊で集めているし、各自の権力やら伝手で馬鹿者共を排除できるのならばありがたいが…‥‥下手すると、この結婚式を行うまでに、2,3、いや、それ以上の家が潰れる予感しかしない。

 貴族というのも複雑なもので、いらないものは単純に潰せばいいと思うかもしれないが、潰した後の後始末が大変。

 その領地管理を別のものに任命したりすることが多いのだが、今回のケースで行くと潰した相手の方がその領地を引き受けさせられる可能性が高いようで、結局ルースの領地となって面倒を見させられる可能性が高い。

 面倒事を押しつけたいのに、逆に面倒ごとが舞い込むようなことはされたくないので、できれば馬鹿なところはおとなしくしてほしいが‥‥‥多分、無理であろう。


「広ければ広いほどいいとか言うような人もいるようだけど、むしろ管理とか大変になるからなぁ‥‥‥交通整理とか、下手すると国レベルになるんじゃないかな」
「面倒なのは、どこも一緒‥‥‥と思いたいですわね」
「なんかわかるな。コチラの親も、帝国をまとめた当初は大変だったというしな」

 まぁ、あくまで領地であって、国とはならないのは良い。

 こういう時にきちんとグレイモ王国の所轄にあると言えれば、ある程度のごまかしも効くからね‥‥‥


「でもね、なんかこういうのって押しつけられそうですわよね。むしろルース君のこの領地自体、帝国と王国の間にあるのだし‥‥‥案外、まとめて一つの国にされてしまったりして」
「エルゼ、その言葉はちょっとやめて欲しいな‥‥‥」

 あり得そうな可能性だけに、できれば口にしないで欲しい。

 今までも何か口にして、それで悲惨で大変な目に遭ってきているのだし、この結婚式が無事に終わる時までは、できれば平穏に生きたいのだ。

 組織も潰したし、争いごとの種はしばらくないと思いたいのだが…‥‥どう考えても、嫌な予感しかルースはしないのであった。
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