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学園最後の夏休みで章
閑話 スアーン夏休み旅道中 Final
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ルースたちがいる世界の裏とされる世界、メギドニア。
スアーンはその世界から何とか帰還しようと、親切な魔族にもらった地図を頼りに、その目的地を目指していた。
いや、たどり着いたとしても帰れる保証はない。
それでもスアーンは必死になって先を進む。
怪鳥に攫われようが、岩石にめり込もうが、溶岩流に飲み込まれようが、化け物どもに追い回せれようが、諦めずに突き進む。
「ふぅ、中々落ち着けねぇな」
土のドームを形成し、一時的な休息を得ていたとしても…‥‥
バッゴォォォン!!
【じゃごげぇぇぇぇ!!】
【ひじゃげぇぇぇぇ!!】
「突破されたぁぁあ!!」
匂いや熱で感知されているのか、どこからともなくメギドニアの怪物たちが襲撃をかけてくる。
とはいえ、長い間常に極限状態に近い状況にあるせいか、スアーンの魔法も洗練されていき、なんとかまともに戦えるようになってきた。
こういう状況こそ人を急成長させるのか、くしくも夏休み当初の目的であった自身の修行ともなっている。
何にしても、長い長い旅路……時間の流れが同なのかは今一つわからないが、ようやくスアーンは地図にあった場所へ辿り着くことが出来た。
「ここが、目的地か…」
全身色々と満身創痍ながらも、ようやくたどり着いた目的地に、スアーンの心は踊る。
何が待ち受けているのかは知らなかったが…‥‥地図を渡してくれた魔族の言葉の意味を今、この場所で彼は知った。
「なるほど…‥‥ただの出口と言う訳でもなさそうだな」
その場所は、化け物ひしめくメギドニアの中でも異様であった。
空中にいくつもの穴が浮かんでおり、それぞれから風が吹いたり、マグマや毒液が噴き出している。
……おそらくは、メギドニア以外の場所へつながる穴なのであろう。
ここへ来てしまった原因は、あの魔族によれば偶然迷い込んだことによるのだが、この場所は違う。
ここは、その原因となる穴が恒常的に開いており、それぞれへ繋がっているのだ。
だがしかし、こうも数多くあるという事は……どれかが元々スアーンがいた世界につながるのであろうが、それ以外は違う所へ繋がる事になる。
つまり、飛び込む穴を間違えてしまえば…‥‥元の世界に還れない、いや、それどころかここよりもひどい所へ迷い込む可能性だってあるのだ。
この場で一度きりの選択、間違えれば帰還不可能の可能性が大きい。
あの魔族の者が曖昧な言葉で濁したように、ここは確かに出口はあれども、出口でない場所もあるのだ。
「どれが元の世界の物なんだ?」
一つ一つスアーンは穴の様子をのぞき込み、元の世界の物が無いか探す。
しかし、その穴の数は無数にあり、探しまくるがどれが正解なのか皆目見当がつかない。
風の匂いを嗅いでも分からず、溶岩が溢れる穴でも元の世界の火山かもしれないと思えるものがあり、どれがどれなのか正しい道が見つからない。
ふと気が付けば、足元には大量の躯があった。
おそらくは、スアーンと同じようにメギドニアへ迷い込み、同じように帰還できる穴を探し求め、結局どれなのかわからずに命を失った者たちなのであろう。
探しているだけで命を落とすとは思えないが、ここはメギドニア、地獄のような世界。
何が起ころうとも不思議ではなく、探している間に穴から化物でもはい出てきて食い殺されたという可能性もあるのだ。
このまま探し続けて答えを得られないという人生もあるかもしれないが…‥‥そんなのは嫌である。
元の世界へ帰還したい、そう願いながらスアーンは探し、諦めなかった。
……そして、この場に到着してからかなり長い時間が立ち……スアーンは穴を3つ迄絞り込んだ。
一つは、大海原が覗き込める穴。
もう一つは、台風吹き荒れる嵐の穴。
そして最後の一つは…‥‥何も見えない、真っ暗でもなく、かと言って明るくもなく、視覚的に不明な穴。
直感で、そして詳細を調べ、この3つしかないと彼は判断した。
とは言え、間違えれば元の世界に還れない。
悩みに悩み抜き、最終的にスアーンが出したのは……3つ目の、何も見えない穴であった。
他2つに比べて、中身は全く見えない。
けれども、こういう時には見えないほうが良いのかもしれないと思えたのだ。
人と言う者は、目的のものを捜している時に限って見つけられず、何もしていな時に限って見つける事がある。
そう考えると、むしろこの何も見えない穴の方こそ、正解なのではないかとスアーンは思えた。
「よし……行くぞぉ!!」
この選択がどうなるのかは分からない。
だが、選んでしまったものはしょうがない。
ゆえに、スアーンはこの際勢いをつけてその何も見えない穴に飛びこんだ。
……飛びこんで数時間ほど漂ったようにスアーンは感じた。
だが、どうやらきちんと出口があったようで、外の明かりが目に入る。
そして、次の瞬間。
ドォン!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
超強力な衝撃波を喰らったような感覚がした後、スアーンはどういう訳か空中に飛ばされた。
放物線を綺麗に描き、地面が迫ってくる。
とは言え、どうやらきちんと元の世界に戻れたらしいという事だけは理解できた。
なぜならば、視界に一瞬だけだが、彼の友人が目に入ったのだ。
メギドニアから帰還できた喜びに感極まりつつも、そのまま受け身を取り損ねて地面に盛大に突撃し、骨が折れる音がしつつも、かろうじて生き延びるのであった‥‥‥‥
スアーンはその世界から何とか帰還しようと、親切な魔族にもらった地図を頼りに、その目的地を目指していた。
いや、たどり着いたとしても帰れる保証はない。
それでもスアーンは必死になって先を進む。
怪鳥に攫われようが、岩石にめり込もうが、溶岩流に飲み込まれようが、化け物どもに追い回せれようが、諦めずに突き進む。
「ふぅ、中々落ち着けねぇな」
土のドームを形成し、一時的な休息を得ていたとしても…‥‥
バッゴォォォン!!
【じゃごげぇぇぇぇ!!】
【ひじゃげぇぇぇぇ!!】
「突破されたぁぁあ!!」
匂いや熱で感知されているのか、どこからともなくメギドニアの怪物たちが襲撃をかけてくる。
とはいえ、長い間常に極限状態に近い状況にあるせいか、スアーンの魔法も洗練されていき、なんとかまともに戦えるようになってきた。
こういう状況こそ人を急成長させるのか、くしくも夏休み当初の目的であった自身の修行ともなっている。
何にしても、長い長い旅路……時間の流れが同なのかは今一つわからないが、ようやくスアーンは地図にあった場所へ辿り着くことが出来た。
「ここが、目的地か…」
全身色々と満身創痍ながらも、ようやくたどり着いた目的地に、スアーンの心は踊る。
何が待ち受けているのかは知らなかったが…‥‥地図を渡してくれた魔族の言葉の意味を今、この場所で彼は知った。
「なるほど…‥‥ただの出口と言う訳でもなさそうだな」
その場所は、化け物ひしめくメギドニアの中でも異様であった。
空中にいくつもの穴が浮かんでおり、それぞれから風が吹いたり、マグマや毒液が噴き出している。
……おそらくは、メギドニア以外の場所へつながる穴なのであろう。
ここへ来てしまった原因は、あの魔族によれば偶然迷い込んだことによるのだが、この場所は違う。
ここは、その原因となる穴が恒常的に開いており、それぞれへ繋がっているのだ。
だがしかし、こうも数多くあるという事は……どれかが元々スアーンがいた世界につながるのであろうが、それ以外は違う所へ繋がる事になる。
つまり、飛び込む穴を間違えてしまえば…‥‥元の世界に還れない、いや、それどころかここよりもひどい所へ迷い込む可能性だってあるのだ。
この場で一度きりの選択、間違えれば帰還不可能の可能性が大きい。
あの魔族の者が曖昧な言葉で濁したように、ここは確かに出口はあれども、出口でない場所もあるのだ。
「どれが元の世界の物なんだ?」
一つ一つスアーンは穴の様子をのぞき込み、元の世界の物が無いか探す。
しかし、その穴の数は無数にあり、探しまくるがどれが正解なのか皆目見当がつかない。
風の匂いを嗅いでも分からず、溶岩が溢れる穴でも元の世界の火山かもしれないと思えるものがあり、どれがどれなのか正しい道が見つからない。
ふと気が付けば、足元には大量の躯があった。
おそらくは、スアーンと同じようにメギドニアへ迷い込み、同じように帰還できる穴を探し求め、結局どれなのかわからずに命を失った者たちなのであろう。
探しているだけで命を落とすとは思えないが、ここはメギドニア、地獄のような世界。
何が起ころうとも不思議ではなく、探している間に穴から化物でもはい出てきて食い殺されたという可能性もあるのだ。
このまま探し続けて答えを得られないという人生もあるかもしれないが…‥‥そんなのは嫌である。
元の世界へ帰還したい、そう願いながらスアーンは探し、諦めなかった。
……そして、この場に到着してからかなり長い時間が立ち……スアーンは穴を3つ迄絞り込んだ。
一つは、大海原が覗き込める穴。
もう一つは、台風吹き荒れる嵐の穴。
そして最後の一つは…‥‥何も見えない、真っ暗でもなく、かと言って明るくもなく、視覚的に不明な穴。
直感で、そして詳細を調べ、この3つしかないと彼は判断した。
とは言え、間違えれば元の世界に還れない。
悩みに悩み抜き、最終的にスアーンが出したのは……3つ目の、何も見えない穴であった。
他2つに比べて、中身は全く見えない。
けれども、こういう時には見えないほうが良いのかもしれないと思えたのだ。
人と言う者は、目的のものを捜している時に限って見つけられず、何もしていな時に限って見つける事がある。
そう考えると、むしろこの何も見えない穴の方こそ、正解なのではないかとスアーンは思えた。
「よし……行くぞぉ!!」
この選択がどうなるのかは分からない。
だが、選んでしまったものはしょうがない。
ゆえに、スアーンはこの際勢いをつけてその何も見えない穴に飛びこんだ。
……飛びこんで数時間ほど漂ったようにスアーンは感じた。
だが、どうやらきちんと出口があったようで、外の明かりが目に入る。
そして、次の瞬間。
ドォン!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
超強力な衝撃波を喰らったような感覚がした後、スアーンはどういう訳か空中に飛ばされた。
放物線を綺麗に描き、地面が迫ってくる。
とは言え、どうやらきちんと元の世界に戻れたらしいという事だけは理解できた。
なぜならば、視界に一瞬だけだが、彼の友人が目に入ったのだ。
メギドニアから帰還できた喜びに感極まりつつも、そのまま受け身を取り損ねて地面に盛大に突撃し、骨が折れる音がしつつも、かろうじて生き延びるのであった‥‥‥‥
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