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7章 終わりまで、ずっと

7-8 憂いをなくすために、容赦はしない

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…破神布の組織の拠点は、一晩ですべてが崩壊し、この世界から失われた。
 
 まだ多少はどうにかなるような構成員に関しては、記憶を少々弄ったりして二度と同じようなことをさせないような暗示などをかけて生かしはしたが…それでも、どうにもならないような者たちに関しては、しっかりとその罪の度合いを測定し、裁くことになった。

 正直、量が多かったので結構大変ではあったが、流す先を決めるのは楽なもの。
 滅茶苦茶救いようのない輩に関しては、ゼナを改造してくれたあの人…なんか声の人と呼んでいる相手だが、あちらがその魂をすべて引き取ってくれるらしいので、流すことにした。

 まぁ、渡された時点でその末路は決まっているらしく、二度と同じ魂の主に遭うようなことはないというのだが、そこで一つの問題が生じた。


「…神の類に該当していた、創始者のは、受け取れない?」
『ああ、ものすごくおいしそうなんだけどね…残念ながらやったことがあり過ぎるせいで、ゲテモノを超えたヤバイモノになっている。味わいたいが、ちょっとばかり引き渡す先があるんだよ』

 おいしそうとか何やら食べる気満々なのはさておき、残念ながらとらえた創始者のものに関しては、この後しかるべきところへ引きわたし、その裁きを待つことになるらしい。
 
 話を聞けば…創始者となっていたこのものは、昔は神の類に該当するような存在だったようだ。

 神の類といっても、世界を任されるような管理神とかまではいかず、本当に雑用しかできない程度の力ない末端のものだったようだが、それでも神の類には該当していた存在。
 より上の存在になれないだけの器だということもあってか、他の神々に隠れて別の世界から人々を動かしまくって大迷惑をかけていたような、いわゆる疫病神よりもさらに面倒ごとを引き起こすようなやつだったらしい。

 だが、そんな好き勝手をこっそり隠れてやっていた日々はある日突然終わりを迎えて…もてあそぼうと引っ張ってきたある存在に因果応報とでもいうべき程の返り討ちに遭い、神々の座から転落してしまったようだ。

 他にも同類の神の仲間もいたようだが、全滅してしまい…何とか生き延びていたのが、この創始者だったというわけだ。


 ただ、生き延びたところでその身からは既に神の力は失われており、神の存在から愚者へと堕ちてしまった最悪の存在へ変わっていた。
 それでも、神だった時の生活が…人は一度上がった生活水準を下げるのは厳しいというが、神であってもその感覚は同じようなものであり、再び座につこうと暗躍していたそうである。

 その中で、自分たちを全滅させた存在が神に近しい存在、いや、神になりつつあるといううわさ話をどこからから耳にしたそうで、泥水をすするような生活になったのもあってか復讐心が芽生え、さらに自分たちの存在価値を見出すこともなかったほかの神々にまで見当違いの怒りを向け、復讐者になったそうである。

 もとは自分たちで引き起こしたことであり、その器に見合ったことしかできなかったというだけなのに…何をどう狂って考えたのか、神々を引きずり落してその座に就くことで、自分にとって非常に都合の良い神としての存在へ舞い戻ろうと、無駄にあった行動力を活かして組織を密かに作っていたようだ。


「…その中で、神の座に就くならまずは世界を手に入れるのが手っ取り早い。だから、世界を管理する神をまずは狙って落とし、留守になった席を狙ったということか」
『その狙われた神が…君の母親である青薔薇姫と呼ばれた彼女のようだね。とはいえ、管理する神が自ら座を捨てたんじゃなくて、故意に引きこされたことで下界へ叩き落されたから、ことはそううまく運ばなかったようだ』

 神々の時間感覚はルーズというべきか、2~3日放置するつもりでうっかり1万年ほど放置してしまうこともあって、多少居留守になってもその座はすぐに動くことはない。
 むしろ、安定を世界そのものが望むために、神が自らの意志で降りることがなければ、下界に落ちようがどうなっていようが、その神が管理したままであるということは変わらず、たやすくその管理する座を得ることはできないようになっているそうだ。

 青薔薇姫も堕ちて人の身になったようだが…それでも管理神という事実は変わらず、普通にその生涯を終えれば再び管理神として職場復帰するだけだった。

 そこに気が付き、落としたのは物凄く無駄なことだったと創始者は嘆いたようで…ならばその無駄な努力をやらせた仕返しだと、ものすごく逆恨みな行動理由で今度はその命を狙って動き…あの魔獣が村を襲撃し、両親を亡き者にした事件が起きたという。


「最悪すぎるだろ…そこから別の方法を探して、今度はゼナに行きついたということか」
『神造魔剣…この世界で発生していた魔獣へ対抗するために生み出された魔剣に、ある神が手を加えて普通とは違うのになったからね。神へ対抗するための武器としては、確かに最上級のものだったのかもしれない』
「あれ?でもそうなると、魔獣の件はこの創始者とは無関係だったのか?また別のところからとか?」
『いや、関係はしているらしい。堕とされてから必死に動いていたようで…その時に偶然の副産物として出来上がった、神でも手が付けにくいも代物として、半ば放置もしていたのだろう。正業がほぼできないようなやばいものだが、何らかの利用手段があるし、管理神の管理の隙をつくために利用してやればいいと嫌がらせのような形でやっていたようだ』

 どこまでも迷惑すぎるというか、様々な面倒ごとの大元凶だったというわけだ。

 だが、今回の組織壊滅作戦によって、生き延びていたその命運も尽きたようである。


『なんにしても、すぐに捕食できないのは残念だが…決して、決まったわけじゃない。むしろ、今回捕獲する際に使用した希望から絶望への責め苦に近いものが、この先延々を続き…存在が失われる前に、転がり込んでくる可能性があるから、それはそれでいいかもね』
「なるほど…まぁ、それはそれで、良いのか」


…魔獣を生み出した元凶、両親の命を奪い、この世界に多大なる迷惑をかけまくった最悪の存在。
 復讐心に関しては、こちらも抱くところがあったが、こうやって話を聞いてしまうと、何やらむなしくも思えてくるというか、事が済んでしまえばもうどうにでもなって良い無関心しかないだろう。

 そう思い、フィーは創始者だったものを引き渡し、これで作戦は完全に終了する。
 後世の憂いを断つためにやり遂げ、大成功を収めたわけだが…いつまでも覚えているとその縁を手繰り寄せて無理やりまた出てきそうな気がしたので、きれいさっぱりなかったことにして、終わったこととして片づけるのであった。



「…あとは、用意しすぎたことに関しての事後処理か。やばいものをどれだけ用意されているかと思って、想定してこちらが用意したものを片付けないとなぁ」

…残念ながら、その後始末までは呼び出した者たちにすべてやらせることもできず、自分で片づける羽目になるので、処理が済むまで苦労することにもなったのだった。

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