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6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人
閑話 捕食するものは、外から見ていて
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…世界の理の一部だった、魔獣を生み出していた根源。
それは今、世界の外にて喰われており、消失しつつあった。
『…しかしこれ、やっぱり人為的なものか。天然ものよりは劣るな』
かみ砕き、じっくりと舌の上で味わいつつ、根源を捕食していたその者はそうつぶやく。
この大きな悪性の物体を、自身に捧げることを代償にさせてもらったが、味の深さとしては少々物足りない部分がある。
管理神がいる世界において、世界そのものを脅かしかねない代物というのは、そうたやすく生まれることはない。
確認したところ、この根源自体はいつの間にか出ており、対抗策として魔剣という下界への干渉手段を生み出すようなものだったようだ。
自然な出現…世界そのものが作られて成長する中で自力で出現した天然ものなのかと、期待したのだが、食べてみれば舌が肥えているものであればわかるだろう。
『明らかな人工物か…理に組み込まれているが、味の根本部分まではごまかされることはないな』
自然発生したものではなく、どこかで誰かが、悪意を持ってなのかそれとも別の思惑を持ってなのか、作り上げた代物だということが味からわかる。
天然ものならばもうちょっとまったりとしつつのど越しもぬるんとしているだろうと思えるのだが、この根源には天然の味がしないのだ。
しかし、そうなると誰が一体何の目的で生み出したのか、ということが問題になってくる。
世界を管理する管理神の目を欺くのは、隙さえ伺うことができれば、実はそんなに難しいことでもない。下界の感覚は神々の者にとってほんの一瞬に過ぎないことも多く、気が付いたらなっていたなんてことは割とざらにある話だ。
でも、その隙を見つけて組み込もうとしても、そうたやすくやばいものに関しては、世界そのものが受け付けることもないはず。
『神が落とされたという巨大な拳に、破神布とかいう組織…あの機械神の眷属ともいえる魔剣の目も欺けるような異常な技術に、それを提供しつつもこなすために必要な材料の調達…こりゃ、別のところの何者かがどう考えても関わっているのだろうな』
もぐもぐと魔獣が生み出されていた根源を味わいつつ、その者はそうつぶやく。
知り合いに誰か可能なものがいたかなと考えてみるが、こんなろくでもないことをしそうなものなんぞ…割と心当たりしかなさ過ぎて、絞ることはできない。
『だが、気になるのは組織のほうか…神を落とすような真似までするのはよほどの馬鹿か、それとも過去に神に何かあったものか…いや、人に限った話でもないのか』
考えても普通の人間たちが、その領域まで到達することはほぼ不可能に近い。
神の血やあるいはそれに近いものを身に宿している者たちならばともかく、あの管理神が管理を行っていた世界にやすやすと作られるはずもないのだが…それでももっと、やばいものの干渉が考えられるのである。
とはいえ、その者…ほかの世界では悪食や預言者、魂喰らいに消失のものなどと呼ばれているような自身には関係のない話だ。
『だが、縁は得たか…ふむ、放置することもなく、やらせてもらうのもありか』
眷属ならその上に話が向かうのも早いだろうが、それでも対応は後手後手に回っているのを見ると、単純なことでもないように見える。
これは下手すると、神々やその外なる存在全般に影響しかねない話だと考え、動くことにする。
うまくいけばそのどさくさに紛れて、よりうま味のあるものを手に入れられる思惑もありつつも…その者は、少しだけ干渉を行うことを決める。
『なんにしても、どのようなことだとすれども、解決するのはその世界のものに変わりはない。ただほんの少しだけ、手助けをしてやるだけでいいか』
本来であればやることはないのだが、天然物の期待もあるので、自ら動く。
直接は厳しいが…ほんのわずかなものであれば、大丈夫だろうと考えて。
…神々の目を欺くことができるほどの悪意あるものがいたとしても、その悪意を食らうさらなる化け物が目をつけてくることは、さすがに予想できなかっただろう。
『さてさて、忙しくなるねぇ…』
数十年、いや、数百年ぶりの面白そうな、それでいて歯ごたえのありそうな案件が発生したことに、その者は内心心躍らせ始めるのであった…
『しかし、干渉記録を見ると…ふむ、過去にもいろいろあるな、これ。管理神が落ちる前後にか…あの悪魔や精霊のやつらにも、連絡を入れるか…』
それは今、世界の外にて喰われており、消失しつつあった。
『…しかしこれ、やっぱり人為的なものか。天然ものよりは劣るな』
かみ砕き、じっくりと舌の上で味わいつつ、根源を捕食していたその者はそうつぶやく。
この大きな悪性の物体を、自身に捧げることを代償にさせてもらったが、味の深さとしては少々物足りない部分がある。
管理神がいる世界において、世界そのものを脅かしかねない代物というのは、そうたやすく生まれることはない。
確認したところ、この根源自体はいつの間にか出ており、対抗策として魔剣という下界への干渉手段を生み出すようなものだったようだ。
自然な出現…世界そのものが作られて成長する中で自力で出現した天然ものなのかと、期待したのだが、食べてみれば舌が肥えているものであればわかるだろう。
『明らかな人工物か…理に組み込まれているが、味の根本部分まではごまかされることはないな』
自然発生したものではなく、どこかで誰かが、悪意を持ってなのかそれとも別の思惑を持ってなのか、作り上げた代物だということが味からわかる。
天然ものならばもうちょっとまったりとしつつのど越しもぬるんとしているだろうと思えるのだが、この根源には天然の味がしないのだ。
しかし、そうなると誰が一体何の目的で生み出したのか、ということが問題になってくる。
世界を管理する管理神の目を欺くのは、隙さえ伺うことができれば、実はそんなに難しいことでもない。下界の感覚は神々の者にとってほんの一瞬に過ぎないことも多く、気が付いたらなっていたなんてことは割とざらにある話だ。
でも、その隙を見つけて組み込もうとしても、そうたやすくやばいものに関しては、世界そのものが受け付けることもないはず。
『神が落とされたという巨大な拳に、破神布とかいう組織…あの機械神の眷属ともいえる魔剣の目も欺けるような異常な技術に、それを提供しつつもこなすために必要な材料の調達…こりゃ、別のところの何者かがどう考えても関わっているのだろうな』
もぐもぐと魔獣が生み出されていた根源を味わいつつ、その者はそうつぶやく。
知り合いに誰か可能なものがいたかなと考えてみるが、こんなろくでもないことをしそうなものなんぞ…割と心当たりしかなさ過ぎて、絞ることはできない。
『だが、気になるのは組織のほうか…神を落とすような真似までするのはよほどの馬鹿か、それとも過去に神に何かあったものか…いや、人に限った話でもないのか』
考えても普通の人間たちが、その領域まで到達することはほぼ不可能に近い。
神の血やあるいはそれに近いものを身に宿している者たちならばともかく、あの管理神が管理を行っていた世界にやすやすと作られるはずもないのだが…それでももっと、やばいものの干渉が考えられるのである。
とはいえ、その者…ほかの世界では悪食や預言者、魂喰らいに消失のものなどと呼ばれているような自身には関係のない話だ。
『だが、縁は得たか…ふむ、放置することもなく、やらせてもらうのもありか』
眷属ならその上に話が向かうのも早いだろうが、それでも対応は後手後手に回っているのを見ると、単純なことでもないように見える。
これは下手すると、神々やその外なる存在全般に影響しかねない話だと考え、動くことにする。
うまくいけばそのどさくさに紛れて、よりうま味のあるものを手に入れられる思惑もありつつも…その者は、少しだけ干渉を行うことを決める。
『なんにしても、どのようなことだとすれども、解決するのはその世界のものに変わりはない。ただほんの少しだけ、手助けをしてやるだけでいいか』
本来であればやることはないのだが、天然物の期待もあるので、自ら動く。
直接は厳しいが…ほんのわずかなものであれば、大丈夫だろうと考えて。
…神々の目を欺くことができるほどの悪意あるものがいたとしても、その悪意を食らうさらなる化け物が目をつけてくることは、さすがに予想できなかっただろう。
『さてさて、忙しくなるねぇ…』
数十年、いや、数百年ぶりの面白そうな、それでいて歯ごたえのありそうな案件が発生したことに、その者は内心心躍らせ始めるのであった…
『しかし、干渉記録を見ると…ふむ、過去にもいろいろあるな、これ。管理神が落ちる前後にか…あの悪魔や精霊のやつらにも、連絡を入れるか…』
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