191 / 204
6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人
6-21 巻き込まれ注意報発令中
しおりを挟む
…何の策もなく、ただ全力でぶつかるような真似は避けたい。
力を得てまずフィーが考えたのは、全力をやれるような状態を保持しつつ、後のことを考えての周囲への影響を極限まで落とす方法である。
どうすればいいのか?また場所を移すのか?
いや、それでは結局、移った先の場所で被害が出るだけであり、何の解決にもならないだろう。
だがしかし、周囲へ無差別に放たれるようながれきや衝撃波などを、逆に利用することができれば…ある程度の被害を抑えつつ、相手への攻撃に転用できるはずなのだ。
「…だからこそ、ここを今からちょっとだけ特殊な場へ整えさせてもらおうか!!竜魔法『大竜結界』!!」
オォォォォォォォォっと叫び、周囲全体に咆哮を響かせると、俺たちをあの化け物…竜もどきの魔獣ファヴニールの巨体すら包み込むドーム状の透明な大規模の壁が出現した。
竜魔法の中でも、周囲の空間に作用して影響を与える特殊な空間を作り出すもので、この中でどれだけ暴れようが、結界が壊れると張る前の状態に戻る特別製のもの。
しかも、一度発動させれば維持し続ける力を注ぐ必要もなく、中では自由に動けるのだ。
しいて欠点を述べるのであれば、使う時の使用者の体力に左右されるが…ちょっとばかり肉体の修復後に受けたすさまじいダメージのせいで体力が削れていたので、実はこれで最大のものではない。
けれども、今の状態でもファヴニールを相手にできるほどの体力はある。
「ルルシア、ペルシャ、フィリア!!そのほかこの場にいる魔剣士たちに告ぐ!すぐにこの結界から退去し、万が一に備えてほしい!!これから全力で、こいつとぶつかり合う!!巻き添えになってふっとばされるどころか消滅したくなければ、すぐに出るんだ!!」
周囲でまだ残っていた者たちにめがけて咆哮を上げると、すぐに理解してくれたのか全員が素早くこの場から退避してくれた。
フィリアたちのほうも心配そうに見てきたが、大丈夫な様子を見せると反転しこの戦闘領域から離脱する。
そして残されたのは俺たちとあの巨大な化け物だけで、暴れやすくなった。
【オグォォォォォォォン!!】
「さぁ、こっちにとっても暴れやすくなったし、全力でやりあおうか!!こぶしじゃなくて思いっきり武器を使わせてもらうけどな!!あいさつ代わりにゼナ、改造モードチェンジ!!」
「了解デス!!改造形態変形、まずは『ギガソードクローモード』にスイッチオン!!」
持っていた大剣が光の粒子となり、手を覆って巨大なかぎづめへと変貌する。
ドラゴンの両手も大きいといえば大きいのだが、さらに巨大かつギザギザと凶悪な爪の刃となっており、空気抵抗すら受けることなくすべてを切り裂く。
「いくぞぉ!!」
地面に降り立ち、巨大な竜化状態のまま地面を吹き飛ばすほどの勢いで蹴とばし、超高速で一気にとびかかる。
修復時に多少肉体も大きくなったが、それでも大きさとしては巨大なファヴニールには及ばない。
けれども、巨体だからこそのよけづらさというのもあり、超高速のかぎづめで次々に切り裂き、自己再生を行う箇所すらも再生が間に合わないほどの速度でダメージを与えていく。
【オグァァァッァァア!?】
「おっと、この程度でひるんだか?まだまだあるんだよ!!『人竜変化』からの改造モード、別形態へチェンジだ!!」
「モード変更、『ミサイルチェーンソード』にスイッチオン!!」
巨大なかぎづめが消失したが、光の規模は変わらない。
こちらは竜の力を濃くした人の体へと切り替え、集まった光の粒子とともに顕現した巨大な鎖鎌…いや、鎌ではなくミサイルとなった代物を投げつける。
「改造モードのミサイルが一つだと思うなよ!!『爆裂百裂ミサイルラァァッシュ』!!」
ぶんぶんっと勢いよく振り回せば、巨大なミサイルが鎖につながったまま遠心力で加速し、ファヴニールの肉体へ直撃して大爆発を起こす。
けれども、その爆発一つで終わらずにミサイルはすぐに出現し、ぶつかっては爆発、消失しては顕現して再度爆発へと繰り返し、連続でいくつもの巨大な爆発が生じていく。
【オオオオオオオオオオオオグゥ!!】
「っと、さすがにやられてばかりじゃないか」
爆発の中、根性で耐え抜いたのか巨体を飛び上がらせ、上から押しつぶすように落ちてきた。
爆発によって多少はダメージは受けるだろうが、人型サイズになった俺もまとめて押しつぶし、亡き者にしようというのだろう。
「だがな、人竜変化って小さくなったんじゃなくて、竜の力を濃く圧縮したんで…残念ながら、思惑通りにいかねぇんだよ!!」
ズゥウウウンン!!っとすさまじい衝撃が襲ってきたが…このぐらい、今の俺たちには許容範囲。
人型に収まりつつも中身のドラゴンの力が出ており、巨体を支えきる。
地面のほうが先に砕け散りそうだが、あいにくここは今結界内で、崩壊しても後で元通り。
だからこそ、せっかく問題なく砕けるのであれば、こっちが砕ききってしまうつもりだ。
「その押しつぶし攻撃、そっくりそのままどころか倍増させてもらうぜ!!ゼナ、改造モードチェンジ!!」
「『カウンターハンドソードモード』へスイッチオン!!」
巨大な鎖鎌のミサイルが大地に溶け込んだかと思えば、今度は地鳴りとともに巨大な大量の剣でできたこぶしが飛び出し、潰そうとして腹を向けていたファヴニールの無防備などてっぱらに直撃し、真上に吹っ飛ばす。
【オグゲェェェェェェェェ!?】
「ぶっ飛ばされてびっくりしているようだが、これで終わりにしてやる!!ゼナ、『ソードモード』!!」
「了解デス!!」
こぶしが地面に戻り、俺の右手に集まって最初からできている刃の腕へと切り替わる。
思い返せばこれが最初にできた魔剣としてのモードだが…だからこそ、魔獣たちとの戦いの元凶となったものを取り込んでいるあの化け物、異界の邪竜の名前を借りて付けたあのファヴニールへのとどめに使うにはふさわしい。
「『完全竜化』、『人竜変化』…主に使える俺自身の変身みたいなものだが、お前には特別にこれを見せてやるよ…まさかの神の力を持っていた青薔薇姫の忘れ形見!!神の力をちょっと受け継いでいるから、堂々と解き放ってやるよ!!神龍構成化…魔剣、真開放一体化、『魔竜神剣』!!」
右手を突き上げ、剣の刃から発せられる俺の体内から直接引き出して生み出される光を浴び、俺たちは一体化して一つの姿へ切り替わる。
以前にもゼナの力で一つになったことはあったが、これはそれ以上の代物。
…本来、ゼナの魔剣としての力をフルパワーで使うには、心臓を差しつつ何かを一時的な代償として消失させることで行っていたが、あの声の主によって改造された今、その代償は失われた。
そしてその代わりというべきか、さらなる力を獲得させてもらうというサービスも受けたのだ。
『魔剣ゼナ、その能力の本当の力は…『可能性の光』を引き出すこと。どのような状況においても、その可能性がありうるのであれば、その力をフルに引き出せるものだったが…あの時一つになれたのは、これもまたその可能性に含まれていたのだろう』
二人の声が一つになり、フィーとゼナは、その二つが一つになった存在はそう口にする。
どちらにも見えるし、どちらも併せ持ったような姿になり、天へ刀身の如きこぶしを、星々の光のように輝く剣を持ち、その光の切っ先を向ける。
『さぁ、受けてみよ…竜、神、そして魔剣のすべてを人の可能性に集約した一撃を!!【グランドドラゴンブラスター】!!』
ごうっと音とともに極太の光の柱が生み出され、上に放り投げられたファヴニールの巨体すら飲み込むよな大きさで、顕現する。
【オグギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】
断末魔を上げるも、その声は化け物のものしかない。
その肉体を構成していた別の化け物たち…いや、化け物にされていた人々は声を上げることなく姿を戻し、人へと戻りゆく。
そう、これはただの攻撃ではなく、神の力を無理やりつかって捻じ曲げた、助からないはずだった者たちを助かる運命へと引きあげた救いの光。
そして、滅ぶべき悪しきものだけが消失していき…光の柱がすべて消え失せた後に残っていたのは、地面には無数の人しか転がっていなかった。
『そして空中のほうに残されたのは…やっぱり、炉心になっていた、魔獣の元か』
ぐつぐつと煮えたぎっているような、巨体が失われても大きさを誇る巨大な黒い太陽のようなもの。
そう、これこそが以前、ゼナにも聞いたことがあった…この世界の理に組み込まれていた、魔獣を生み出す源泉というべきもの。
どこかの愚か者がこれをこの世界におろし、利用したのだろうが…そのものも失せ、ここに表れている以上、もう逃れることはない。
『…それじゃ、後は頼みますよ。声の人』
そうつぶやけば、空間がひび割れるような音がして、次の瞬間には黒い球体をさらに上回るような巨大な手が出現し、つかんで引っ張り上げて飲み込んでいく。
あれが、全ての魔獣の元凶だった代物だが、声の主は俺たちを助ける代わりにあれを残してほしいと言っていたものだ。
どうして残してほしいのかと思ったが…話を聞けば、食べるのだとか。
何をどうやってと思うが、俺たちもわからないような高次元の存在の考えることなんてものは知りようがない。
そう思いつつも、この世界から魔獣を生み出していたものも失われたことを感じつつ…俺たちはかなり滅茶苦茶に力を使った反動で、二つに再び分かれて戻り、崩落する結界の音を聞きながら気を失うのであった……
力を得てまずフィーが考えたのは、全力をやれるような状態を保持しつつ、後のことを考えての周囲への影響を極限まで落とす方法である。
どうすればいいのか?また場所を移すのか?
いや、それでは結局、移った先の場所で被害が出るだけであり、何の解決にもならないだろう。
だがしかし、周囲へ無差別に放たれるようながれきや衝撃波などを、逆に利用することができれば…ある程度の被害を抑えつつ、相手への攻撃に転用できるはずなのだ。
「…だからこそ、ここを今からちょっとだけ特殊な場へ整えさせてもらおうか!!竜魔法『大竜結界』!!」
オォォォォォォォォっと叫び、周囲全体に咆哮を響かせると、俺たちをあの化け物…竜もどきの魔獣ファヴニールの巨体すら包み込むドーム状の透明な大規模の壁が出現した。
竜魔法の中でも、周囲の空間に作用して影響を与える特殊な空間を作り出すもので、この中でどれだけ暴れようが、結界が壊れると張る前の状態に戻る特別製のもの。
しかも、一度発動させれば維持し続ける力を注ぐ必要もなく、中では自由に動けるのだ。
しいて欠点を述べるのであれば、使う時の使用者の体力に左右されるが…ちょっとばかり肉体の修復後に受けたすさまじいダメージのせいで体力が削れていたので、実はこれで最大のものではない。
けれども、今の状態でもファヴニールを相手にできるほどの体力はある。
「ルルシア、ペルシャ、フィリア!!そのほかこの場にいる魔剣士たちに告ぐ!すぐにこの結界から退去し、万が一に備えてほしい!!これから全力で、こいつとぶつかり合う!!巻き添えになってふっとばされるどころか消滅したくなければ、すぐに出るんだ!!」
周囲でまだ残っていた者たちにめがけて咆哮を上げると、すぐに理解してくれたのか全員が素早くこの場から退避してくれた。
フィリアたちのほうも心配そうに見てきたが、大丈夫な様子を見せると反転しこの戦闘領域から離脱する。
そして残されたのは俺たちとあの巨大な化け物だけで、暴れやすくなった。
【オグォォォォォォォン!!】
「さぁ、こっちにとっても暴れやすくなったし、全力でやりあおうか!!こぶしじゃなくて思いっきり武器を使わせてもらうけどな!!あいさつ代わりにゼナ、改造モードチェンジ!!」
「了解デス!!改造形態変形、まずは『ギガソードクローモード』にスイッチオン!!」
持っていた大剣が光の粒子となり、手を覆って巨大なかぎづめへと変貌する。
ドラゴンの両手も大きいといえば大きいのだが、さらに巨大かつギザギザと凶悪な爪の刃となっており、空気抵抗すら受けることなくすべてを切り裂く。
「いくぞぉ!!」
地面に降り立ち、巨大な竜化状態のまま地面を吹き飛ばすほどの勢いで蹴とばし、超高速で一気にとびかかる。
修復時に多少肉体も大きくなったが、それでも大きさとしては巨大なファヴニールには及ばない。
けれども、巨体だからこそのよけづらさというのもあり、超高速のかぎづめで次々に切り裂き、自己再生を行う箇所すらも再生が間に合わないほどの速度でダメージを与えていく。
【オグァァァッァァア!?】
「おっと、この程度でひるんだか?まだまだあるんだよ!!『人竜変化』からの改造モード、別形態へチェンジだ!!」
「モード変更、『ミサイルチェーンソード』にスイッチオン!!」
巨大なかぎづめが消失したが、光の規模は変わらない。
こちらは竜の力を濃くした人の体へと切り替え、集まった光の粒子とともに顕現した巨大な鎖鎌…いや、鎌ではなくミサイルとなった代物を投げつける。
「改造モードのミサイルが一つだと思うなよ!!『爆裂百裂ミサイルラァァッシュ』!!」
ぶんぶんっと勢いよく振り回せば、巨大なミサイルが鎖につながったまま遠心力で加速し、ファヴニールの肉体へ直撃して大爆発を起こす。
けれども、その爆発一つで終わらずにミサイルはすぐに出現し、ぶつかっては爆発、消失しては顕現して再度爆発へと繰り返し、連続でいくつもの巨大な爆発が生じていく。
【オオオオオオオオオオオオグゥ!!】
「っと、さすがにやられてばかりじゃないか」
爆発の中、根性で耐え抜いたのか巨体を飛び上がらせ、上から押しつぶすように落ちてきた。
爆発によって多少はダメージは受けるだろうが、人型サイズになった俺もまとめて押しつぶし、亡き者にしようというのだろう。
「だがな、人竜変化って小さくなったんじゃなくて、竜の力を濃く圧縮したんで…残念ながら、思惑通りにいかねぇんだよ!!」
ズゥウウウンン!!っとすさまじい衝撃が襲ってきたが…このぐらい、今の俺たちには許容範囲。
人型に収まりつつも中身のドラゴンの力が出ており、巨体を支えきる。
地面のほうが先に砕け散りそうだが、あいにくここは今結界内で、崩壊しても後で元通り。
だからこそ、せっかく問題なく砕けるのであれば、こっちが砕ききってしまうつもりだ。
「その押しつぶし攻撃、そっくりそのままどころか倍増させてもらうぜ!!ゼナ、改造モードチェンジ!!」
「『カウンターハンドソードモード』へスイッチオン!!」
巨大な鎖鎌のミサイルが大地に溶け込んだかと思えば、今度は地鳴りとともに巨大な大量の剣でできたこぶしが飛び出し、潰そうとして腹を向けていたファヴニールの無防備などてっぱらに直撃し、真上に吹っ飛ばす。
【オグゲェェェェェェェェ!?】
「ぶっ飛ばされてびっくりしているようだが、これで終わりにしてやる!!ゼナ、『ソードモード』!!」
「了解デス!!」
こぶしが地面に戻り、俺の右手に集まって最初からできている刃の腕へと切り替わる。
思い返せばこれが最初にできた魔剣としてのモードだが…だからこそ、魔獣たちとの戦いの元凶となったものを取り込んでいるあの化け物、異界の邪竜の名前を借りて付けたあのファヴニールへのとどめに使うにはふさわしい。
「『完全竜化』、『人竜変化』…主に使える俺自身の変身みたいなものだが、お前には特別にこれを見せてやるよ…まさかの神の力を持っていた青薔薇姫の忘れ形見!!神の力をちょっと受け継いでいるから、堂々と解き放ってやるよ!!神龍構成化…魔剣、真開放一体化、『魔竜神剣』!!」
右手を突き上げ、剣の刃から発せられる俺の体内から直接引き出して生み出される光を浴び、俺たちは一体化して一つの姿へ切り替わる。
以前にもゼナの力で一つになったことはあったが、これはそれ以上の代物。
…本来、ゼナの魔剣としての力をフルパワーで使うには、心臓を差しつつ何かを一時的な代償として消失させることで行っていたが、あの声の主によって改造された今、その代償は失われた。
そしてその代わりというべきか、さらなる力を獲得させてもらうというサービスも受けたのだ。
『魔剣ゼナ、その能力の本当の力は…『可能性の光』を引き出すこと。どのような状況においても、その可能性がありうるのであれば、その力をフルに引き出せるものだったが…あの時一つになれたのは、これもまたその可能性に含まれていたのだろう』
二人の声が一つになり、フィーとゼナは、その二つが一つになった存在はそう口にする。
どちらにも見えるし、どちらも併せ持ったような姿になり、天へ刀身の如きこぶしを、星々の光のように輝く剣を持ち、その光の切っ先を向ける。
『さぁ、受けてみよ…竜、神、そして魔剣のすべてを人の可能性に集約した一撃を!!【グランドドラゴンブラスター】!!』
ごうっと音とともに極太の光の柱が生み出され、上に放り投げられたファヴニールの巨体すら飲み込むよな大きさで、顕現する。
【オグギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】
断末魔を上げるも、その声は化け物のものしかない。
その肉体を構成していた別の化け物たち…いや、化け物にされていた人々は声を上げることなく姿を戻し、人へと戻りゆく。
そう、これはただの攻撃ではなく、神の力を無理やりつかって捻じ曲げた、助からないはずだった者たちを助かる運命へと引きあげた救いの光。
そして、滅ぶべき悪しきものだけが消失していき…光の柱がすべて消え失せた後に残っていたのは、地面には無数の人しか転がっていなかった。
『そして空中のほうに残されたのは…やっぱり、炉心になっていた、魔獣の元か』
ぐつぐつと煮えたぎっているような、巨体が失われても大きさを誇る巨大な黒い太陽のようなもの。
そう、これこそが以前、ゼナにも聞いたことがあった…この世界の理に組み込まれていた、魔獣を生み出す源泉というべきもの。
どこかの愚か者がこれをこの世界におろし、利用したのだろうが…そのものも失せ、ここに表れている以上、もう逃れることはない。
『…それじゃ、後は頼みますよ。声の人』
そうつぶやけば、空間がひび割れるような音がして、次の瞬間には黒い球体をさらに上回るような巨大な手が出現し、つかんで引っ張り上げて飲み込んでいく。
あれが、全ての魔獣の元凶だった代物だが、声の主は俺たちを助ける代わりにあれを残してほしいと言っていたものだ。
どうして残してほしいのかと思ったが…話を聞けば、食べるのだとか。
何をどうやってと思うが、俺たちもわからないような高次元の存在の考えることなんてものは知りようがない。
そう思いつつも、この世界から魔獣を生み出していたものも失われたことを感じつつ…俺たちはかなり滅茶苦茶に力を使った反動で、二つに再び分かれて戻り、崩落する結界の音を聞きながら気を失うのであった……
0
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!
宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。
前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。
そんな彼女の願いは叶うのか?
毎日朝方更新予定です。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
悪役令嬢にならないための指南書
ムササビ
ファンタジー
ウェスペル公爵家の四姉妹が閉ざされた図書館で手に入れたのは、ご先祖さまからの『悪役令嬢にならないための指南書』。王太子と婚約をしたばかりの三女・リーリウムは、ご先祖様の経験に基づいて書かれた指南書を疑いつつも実践していく。不思議な指南書に導かれながら、四姉妹がそれぞれの幸せのために奮闘する物語。
※不定期連載です。週2、3回は更新したいなと思っています
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
私のスローライフはどこに消えた?? 神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!
魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。
なんか旅のお供が増え・・・。
一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。
どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。
R県R市のR大学病院の個室
ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。
ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声
私:[苦しい・・・息が出来ない・・・]
息子A「おふくろ頑張れ・・・」
息子B「おばあちゃん・・・」
息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」
孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」
ピーーーーー
医師「午後14時23分ご臨終です。」
私:[これでやっと楽になれる・・・。]
私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!!
なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、
なぜか攫われて・・・
色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり
事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!!
R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる