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6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人

6-18 そのころこちらでは

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……ドルマリア王国のほうに出現したという、巨大なドラゴンのような魔獣のようなわからない化け物の存在。
 その話はすでにミルガンド帝国のほうにも伝わっており、フィーが何やら竜魔法を使用してもろともどこかへ一瞬にして消えたらしい。

 どこへ行ったのか、どうしようとしてなのかは不明だが、彼のことだから被害ができるだけ広がらないように…それでいて、万が一に備えて多少の時間稼ぎにできるようにという意図があったかもしれないということだけはくみ取れる。

「魔剣リガールドで引き起こせる嵐で手助けできなかったの悔やまれますわね…彼がそう簡単にくたばることはないとは思いますけれども、どこにどういったのか不明なのが歯がゆいですわ」
『アアアアア!!』

 帝国の皇女でもあるルルシアが魔剣の塚を握りしめてつぶやく言葉に、同意するように叫ぶ紅の竜フィリア。
 完全竜化によって巨大な炎のドラゴンと化しているフィリアの背中に乗せてもらいつつ、ルルシアはここ数日間、消えたフィーや魔剣ゼナの捜索に乗り出していた。


 数日前に起きた騒動だが、情報に関して帝国のほうでは素早くつかめており、なおかつ巻き込まれて行方不明になったのは皇女の婚約者でもあるからこそ、自ら動いているのだ。

 正確に言えば元王国の王女でもあるペルシャの婚約者もであるため、王国のほうでも動いており、できればフィーたちの発見を最優先にしつつ、同時にどこかへ消え失せた化け物に関しても警戒を行っていた。

 可能であればフィーのほうを先に発見したいのだが…情報によると、相手はかなりやばかったようで、最後にあった目撃情報としては、化け物の攻撃に身を焼かれている姿だという。


 ドラゴンの力を持ち、異常なほどの力を持つ魔剣を持つ彼がそう簡単に息絶えることはないだろうが…最後のその目撃情報による瀕死の重傷を負っている可能性も考えられて不安になる。


「それでも、生きていてほしいですわ。…これだけ心配させて、見つけたときにものすごくぴんぴんしていたら心配させ損としてアイアンクロー…いいえ、皇室に伝わるという伝説の首バットとかいう武器でぶっ叩きますわ!!」
『アアアア!!』

 ルルシアの言葉に対して、同意の声を上げるフィリア。
 まぁ、フィリアとしては自分の元となった人物が簡単にやられるとは思ってないし、戦える相手がいなくなるのは困るという思いもある。

 いつかは必ず倒したくもあるのだが、それまでに自分以外に負けてほしくもない…生まれもいろいろあって複雑な事情がありつつも、心配させられているという気持ちでは同じなのだ。

 そのため、一匹と一人が大空から探していると、ふとあることに気が付いた。



ーードーン!!ドーン!!
「ん?あの爆発音は…ああ、ペルシャさんですわね」

 何やらどんどん爆発音が聞こえた来たと思えば、魔剣ボンバードによる爆発を利用して、大空を爆破しながらその衝撃で飛んでいるペルシャの姿を補足した。

 以前はどこかの組織に追われた際に逃走手段として使いつつも不完全だったやり方ではあったが、あれからそれなりに月日も流れており、しっかりと便利な移動手段として会得したようだ。

 爆破による加速力も悪くはなく、いざとなれば空中戦も可能であり、なかなか使い勝手のいい移動方法。
 しいて欠点を上げるのであれば、爆発音が大きめなので場所がわかりやすいが…その程度、特に問題になることはない。
 潜入捜査をするわけでもないし、むしろ音を出して魔獣をおびき寄せて爆破するなどの活用方法を見出しているほどでもあるのだ。

 そんなことも考えつつ、ひとまず彼女たちはお互いにフィーを探す婚約者同士として合流し、一緒に捜索を続けるのであった……


「それにしても、いいですわねその移動方法。わたくしも似たような手段が欲しいですわ」
「あれ?前に彼から、あなたのほうにはあのメイド魔剣から飛べる鎧のようなものを得たとかいう話を聞いたことがあるんだけど、ないの?」
「あのメイドが収納していて、一緒に行方不明になっているせいで持ってないのですわ…」

……可能ならば城でそのまま保管すればよかったが、ちょっとばかりオーバーテクノロジーを詰めているので、安全のためゼナ預かりになっていたらしい。
 もしも今、手元にあればより役立ったのだろうが…惜しむには少し、遅かった。

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