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6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人

6-12 叫びたくなる時も、あるんだよ

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‥‥‥ドラゴンの角というのは、一種の感覚器官のようなもの。

 様々な流れや力を感じ取り、周囲の状況把握などを行うことが可能であり、また攻撃手段としても扱う事が出来るものである。

 ゆえに、普段の手入れも大事なものであり、磨いていたりするのだが‥‥‥


「…なんか、すっごい嫌なものを感じ取っているのだが、原因分るか?」
「この方角ですと、ファルン神聖国のようですが…すみません、情報の集まり具合がいまいちになっていマス」

 本日は何やら、その大事な角から、ずきんずきんと痛みのような不快感を感じ取っており、原因をゼナに探ってもらっているのだが、何やら彼女の方もうまいこと言っていない様子だった。

「どういうことだ?」
「うーん、破神布のような組織の件もあったので、情報収集関係の強化として、他国の間諜や密偵の買収や諜報技術強化訓練実施、姉さんたちに協力を仰いでの情報取集機関の設立などもしているのですガ、なんかこう、国そのものに異常が起きたレベルの混乱が生じているようなんですよネ」
「国そのものの混乱?」

 色々とツッコミたい情報が出てきたような気がするが、そんな事はどうでもいい。

 そこまで強化した彼女の情報収集能力の中で生じた、その混乱とやらが気になるのだ。

「ご主人様の婚約者がたは国の人でもありますからネ。そこを何か卑怯な手段で狙うような輩の出現も警戒してやったのですガ…やはり、厳しいデス。国そのものからの情報が入ってきていないところを見ると、既に滅亡とかが起きている可能性の方が大きいデス。情報を伝達する人が、いなくなっていますからネ」
「国の滅亡の可能性か…まだ王国や帝国からも出ていない話だよな?」
「国から情報が来る前に、先にそんな情報を得てしまう結果になりますが…結論としてはそうなるのでしょウ」

 嫌な予感を感じ取ったかと思えば、余計にヤバそうなものがあったのか。

 しかし、一国の滅亡レベルの何かしらが起きたというが…そんなもので、ここまで角がうずくのだろうか?

 正直言って、関係ない話ならばこんなことないのだが‥‥先日の襲撃者の一件や魔獣の偽装なども考えると、無関係という事もない。

 となると、俺たちに関わるような何かで盛大に遣らかしてしまった結果なのだろうが…一体何をしたというのだろうか。

「‥‥‥考えていても分からないか。ゼナ、情報収集としては詳細な結果が分かるには、どのぐらいかかる?」
「滅亡レベルだとすると遅いですガ‥‥それでも、その想定で動き直せば、昼まで、いえ、10分もあれば十分デス」
「短縮しすぎてないかな?まぁ、良いか。集められるならば、出来るだけ正確な情報をすぐに集めてほしい。こう角がうずくとなると、どう考えてもやばい案件になると思うからな」
「了解デス」

 何をどうしてきたのか不明だが、掘っておくことはできない可能性が非常に大きい。

 そもそも、先日から狙ってきていたことでどう考えてもろくでもない事を企んでいるのは分かるのだが、行動に移すのが早い気もする。

 ドラゴンを狙っていたという事で、なにか必要なものがあって、達成しなければできないようなこともあるのかと思っていたが、こういう状況になったという事はその必要性が無くなったのかもしれない。

 必要なくなるなら最初から襲うなと言いたいが…国の滅亡レベルのことが起きているとなると、その代償として用意したのが原因なのかもしれない。


 ひとまずは何が起きたのか確認するために、素早い情報収集へと動くのであった‥‥‥


「直接ドラゴンになって飛んでいくのもありだが…このうずき方から、どう考えてもそれだと危ない気もするのが怖いかもしれない」
「ご主人様が、怖いとか言うの珍しいデスネ」
「ドラゴンとしての勘だよ。あと、これまでどれだけの数の面倒事に巻き込まれたか数えるのを放棄したけど、その経験もあってな‥‥‥」

‥‥‥いや、本当に面倒事にどのぐらい巻き込まれたのやら。数えるの、何時からか放棄した気がする。


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