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5章 復讐は我にあり

5-88 酒は飲んでも、飲まれるな

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「グラビティマシン、エンジェリング、竜魔剣、ガトリング、ソード‥‥‥色々と形態が変わって来たけど、今更ながら魔剣と言って良いのかと思えるものが多いよな」
「今更すぎますわよ?」

‥‥‥カァンカァンっと金属音が鳴る中、目の前の光景を見ながら俺がそうつぶやけば、呆れたようにルルシアはそう返答する。
 呆れてしまうのも、無理はないか。そもそもの話、メイドとしての魔剣の時点で、魔剣の定義に当てはめて良いのかというツッコミ自体はあるのだから。
 魔剣と一口に言っても、モーニングスターや蛇腹などのような形態もあり、全部が全部剣としての形を持っているわけではないという例はきちんと存在しているのだが、それを考慮してもゼナの変幻自在な各形態を使っていると、やはりそう思ってしまうのだ。

 魔剣なのに、剣らしくないというか剣の形態の外れ過ぎているというか、常識的なものとしては何だったのか、たまに迷うこともあるのである。
 だがしかし、それでも一応剣だったと思わせるように、ソードモードの時には片腕が刃にされるとは言え、きちんとした剣としての刀身があるので、なんとか定義の沼から這い上がる事が出来るのだ。


 そう、今まさに、改めて刃だけの形状になった上で、槌と燃え滾る焔で鍛え直されている彼女を見て、本当に魔剣というか剣の部分があったんだなと思えるほどに。

『アア?』
「あー、うん、なんで今鍛え直しをしているのか分からないというか、そもそもやっているあの人誰って顔になるのは分かるよ」

 フィリアが首をかしげるのだが、安心してほしい。俺もいまいちわかっていない。
 
 ただ一つ言えるのであれば、どうやらフンフ恐怖の師匠さんが呼んできた人のようで、話を聞けば‥‥‥今、刀身だけになっている彼女を鍛えている人物はその様子のままの通り、魔剣鍛冶師と呼ばれるような人だというのだ。

 魔剣を鍛え直すような人がいたのかと驚くところもあったが、そもそもなぜ今、こんな状況になっているのか。

 それは単純な話‥‥‥‥やらかしただけであった。











 数刻前の事、俺たちは村の中で模擬戦を行っていた。

 完全竜化の姿ではなく、人竜変化の状態でフィリアと殴り合ったあと、軽めにこの村の防衛を任されている騎士たちとも久し振りに手合わせをして、ルルシアとも斬り合っていた。
 もちろん、彼女相手に竜化は不味いので、人の身の状態でかつ一番慣れたソードモードでの相手をしていたのだ。

「ふふふ、やはり強いですわね。フィー。わたくしの魔剣リガールドの暴風や雷雨もどんどん強くなっているはずなのに、まともなソードモードだけで相手を出来てしまうとは、正直手加減されている気分もあり、ちょっと悔しいですわね」
「たまには普通に、まともな魔剣士同士のやり合いもしたいからね。他の形態を縛ってやって見ているけど、それでも危ない所はあるから悔しがる必要はないよ」

 嵐を引き起こし、雷撃を落すこともできる魔剣を相手に、普通の剣の状態ではちょっと厳しい所もあるだろう。
 でも、そういう魔剣相手だからこそ、普通の状態の魔剣でどう戦うべきなのか戦略を見直しやすく、基礎を見つめ直して自身の昇華に役立てやすくもあるのだ。

「個人的な意見ですガ、他のモードもやりたいですけれどネ。ご主人様、ルルシア様と手合わせした後、私とやり合いませんカ?」
「ああ、良いよ。ただし、全力でやらせてもらうけどね。というか、やらないとまた負けるほど強いだろうが‥」

 彼女は彼女で、強さのレベルがおかしいような気がする。

 最初のころも他の生徒たちを相手に涼しい顔で全員叩きのめしていたし、メイドとしての姿だけで普通にやり合えるのはおかしいとは思う。
 それに完全竜化を得た後も、ちょっとばかり他の形態も使いつつも全力で相手を出来ているのはどういうことなのだとツッコミをいれたい。

 そう思いつつも、ルルシアと一戦交えた後、ゼナとやろうとしたところ‥‥‥盛大に事故った。

「人竜変化からの竜のかぎづめで迎え撃つ!!」
「ソードモードで受け止め、」

ガッ、バキィッ!!
「「あ」」



…‥‥まさかまさかの、ゼナの刀身が見事に折れた。

 今までこんな風にうちあってきたことはあったのだが、これまでは全く傷もつかず、無傷だった。
 とは言え、一応ゼナが破損しないなんてことはない。以前にもちょっとだけ、ひび割れたりとかしたことぐらいはあり、その時は他のモードが使用不能になっていたが‥‥‥この模擬戦で、盛大に折れるようなことなんぞ無かったのだ。

「えっと、ゼナ、大丈夫か?」
「‥‥‥‥」

 茫然自失というか、真っ白に燃え尽きて固まるゼナ。
 相当ショックだったのか、あるいは魔剣なので折れたことで何か影響が出たのか…‥‥心も折れたみたいな状態になっていた。








 そんなわけで、其のまま動かなくなったゼナをどうすればいいのかと思い、ちょうどオッサンズがまた何かをやったようで、アイアンメイデンに投入していたフンフさんに相談したのである。
 その結果、事情をよく理解してくれたようで、どこからか魔剣鍛冶師なる人物を連れてきて、即席で鍛冶場を作り上げ、この状況に至ったのであった。

「前に鍛え直したのですガ、やはり専門家に任せた方が良かったかもしれないファファ。まさか、こんな見事に折れるとは‥‥‥私もまだまだだったとようだファ」
「それで、現在進行形で鍛え直しになっているけど‥‥‥メイドの姿も消えて、あの刀身の状態になって修繕作業もして、大丈夫なのか?」
「大丈夫。大事なところは壊れていないから、治るファファ」

 どこなのかは教えてくれないようだが、一応治ると言えば治るらしい。

 だがしかし、修理するのは良いのだが、一つ問題もあるそうだ。

「…‥‥一応、あの妹は『メイド魔剣』として成り立っているから‥‥‥自身の身が主に折られたことで、ちょっと衝撃が強すぎたかもしれないね」
「というと?」
「メイドたるもの、自身の身を犠牲にしても主の成長を促したりする…‥‥というのもあるけど、大事なところは大丈夫だったとはいえ、身を盛大にやっちゃったのは変わらないから、しばらくおかしくなると思うファファ」
「具体的にはどうなりますの?」
「分からないね。ただ、別の妹の方で霧散した子だと、しばらく酔っぱらったような状態に近くなっていたから‥‥‥多分そうなるかも?」

 どういう状態になるのか、いまいちわからない。

 ただ、この事故がきっかけで、しばらくの間盛大におかしくなるというか厄介な状況になることはほぼ確定であると彼女は告げるのであった…‥‥


「あと、治っても問題かも。似たような事例だと、元に戻った後、自殺しかけていたからねぇファファファ」
「どのぐらいヤバい事になるんだよ!?」

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