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5章 復讐は我にあり

復讐者 / 造られし者

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‥‥‥ドロドロと煮えたぎるようなこの思いは、人も持つ恨みなのだろう。

 人ならざる者だとしても、心があるのならば生じるのはおかしくはないのだが、それでも不快な気持ちになるのは変わらない。

 とは言え、この思いがまた自身の原動力にもなり、煮えたぎれば煮えたぎるほど神々に対しての復讐心が沸き上がる。


 いつからだろうか、このようなものを抱いたのは。

 あの時はまだ、他にも仲間がいたのだが…‥‥彼らがいなくなり、そして残された自分だけが永遠とも思えるような時間の中で、蒸発し切ることがなく無限に沸き上がる負のマグマを抱え込んでいる。


「…‥‥それもこれも、あの神のせいだ」

 いや、神のせいだというのはまだ足りない。もっと恨むべきはその神を生み出すような真似をしたもっと別の神であり、どんどん連なって考えていけば全ての神々がその対象となる。

 とは言え、堕ちたるこの身ではすでに届くこともなく、手を下すことはできないだろう。




 だからこそ、必要になるのだ。

 その神の座に届くだけの、膨大な力が。神の下にたどり着くための媒体となる神造の代物が。

 そして今、丁度その両方が手に入りそうなほどの者たちがいることが分かっている。

 かつて、神の座に近づきつつも、地上に落ちた星の竜の血を引く者が。

 神々の一柱が介入し、理に合うように造りあげた神造の代物が。

 この二つがどちらか片方が出るだけでも、奇跡的な確率だろう。

 さらに、同時に世にいるこの事態は更に考えられないほどのものであり…‥‥神々でさえ抗う事の出来ぬ運命によるものだと、確信を抱く。


 しかしながら、簡単に手に入ることはなく、得るためには多大な犠牲を払う必要がある。

 その犠牲のために、愚か者どもを操り作り上げた組織の手のものを利用するのだが‥‥‥愚かゆえに、届きそうで届かないもどかしさも発揮してしまうようだ。


「それでも、求め続けるぞ…‥‥星の竜と、神造の魔剣よ」

 彼らの姿を写したものを燃やし、手に入れるために願いを込める。

 神に祈るようで癪だが、それでも祈らざる得ないだろう。

 流石に二兎を追う者は一兎をも得ずという言葉もあり、同時に狙うのは厳しいがゆえに、愚か者どもにはより手に入れやすそうなものになる魔剣を狙うようなことを告げたが、それでも可能であれば両方とも手中に収めたいところだ。

 燃え滾るような復讐の想いを込めた心のマグマを過熱させ、空に輝く恒星のようにより強大な炎を作り上げていくのであった‥‥‥








―――――

‥‥‥自由の身になり、この身は解き放たれた。

 そして暴れまくり、己の力を存分に振るい、そしてオリジナルに敗北したという事実は、もう受け入れているものだ。

 敗者であるからこそ勝者に従い、従順なふりをしつつも牙を研ぐ。

 そう、負けたからとはいっても、再び挑むことがないとは限らない。

 敗北を理解したからこそ、次の勝利という美酒を味わうために、己を高めていくのは普通の事だろう。

 だが、力で勝つにはまだ足りない。なぜならば、魔剣という存在があるのだから。

 同等の条件をそろえたとしても、相手の方が経験も何もかも上であることは理解しており、それを超えるために今はゆっくりと探り、より上を目指すのである。

『アアア・・・・フワァ』

 この身が沈み込むような、心地の良い眠気に抗うこともまたその修行になるだろう。

 飛び続けて疲れたところで、中に入れられてスペースを貰って寝かされても、堕ちることはないはずだ!!

「ありゃ、すっごい眠そうだな」
「バサバサと、勢いよく飛んでましたからネ。体力回復のために、睡眠を得るのは当然でしょウ」

 よくわかっていると思う、このメイド魔剣は。

 自分の身と同じような身を持つ者‥‥ちょっと学ばせてもらい、定義的には兄と言えるような超えるべき相手に仕えているだけあって、同じような身の自分のことも分かっているのだろう。

「ほらほら、ゆっくり寝てください。睡眠は強くなるためにも必要なことデス」
『フアァァ・・・・アアア』

 さすりとおでこを優しくなでられ、より深い眠気が襲ってくる。

 良いだろう、その言葉に従い、今はゆっくりと寝ることにしよう。けれども、起きたらドンドン強くなっていくことを後悔しないでほしい。

 強くなっていき、再び挑むときには…‥‥勝利した暁には、よりおいしいものなども食べさせてもらうのだ!!


 勝利の美酒とご馳走を想像して、私は目を閉じてゆっくりと意識を沈めていく。

 大人しくしているだけに見せかけ、下剋上を狙うために油断させるようにしている自分の策にはまるがよい…‥‥あ、でもこの心地よさは良いかも‥‥‥

 くぴぃっと 寝息を立て、一人の火炎竜の少女がそう思うのだが、その想いは誰にも通じていない。

 下剋上を目指す心を持っている竜は今、一人の幼げな子供としてしか見られないのであった…‥‥



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