私はあなたの魔剣デス ～いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね？～

5章 復讐は我にあり

5-75 昼以外にも、気を付けないと

‥‥‥すやすやと、全員が眠る真夜中。

　本日は試験三日目の夜であり、流石に全員なんとかこの重くなる環境に慣れてきたようで、重さを感じつつも根性で寝る事が出来ていた。


「とは言え、やはり環境的に厳しいデス。重さがこうもあると、メンテナンスが大変ですネ」

　そんな中で、女子用の宿舎にてゼナは一人で自身のメンテナンス作業を行っていた。

　魔剣士にとって魔剣のメンテナンスは必要なことだが、彼女は自ら動くことが出来るのでいつでも自由にやる事が出来る。

　その為、フィーによるメンテナンス‥‥‥刃部分を磨いてもらうこと以外にも、自分を少々分解して中身の状態を確認することが出来ていた。



　自身の身体を一旦分解し、内部の部品を確認しつつ、組み立て直す。

　オーバーホールの一歩手前の状態ではあるが、素早く一つに戻せる状態でもある。


　そもそもメンテナンスしている理由としては、この環境に原因があった。

　重さが増していく特殊な山の環境だが、その重さのかかり方は山にいるすべてのものにかかるもの。

　そして一気に全部がまとめて重くなるのだが、外側だけではなく中身の方も重くなっており、内部に複雑な構造がある魔剣ゼナにとっては少々負担になる部分もあったので、こうやって自分で時間がある時に中身を確認して異常がないのか見るのだ。

「よし、これでだいぶいい感じに動かせますね‥‥‥グラビティマシンソードモードもできたおかげで、超重力環境だとしても対応可能ですガ、それ以外の状態だとちょっと厳しい部分もありますネ」

　あちこち変形し、改良したり統合した各種モードに切り替えながら試し、そうつぶやくゼナ。

　下見に来た時もあったが、あの時はそう長いこといたわけではない。

　長期間の滞在による影響を確認しておらず‥‥‥こうやって日々確認作業を行い、不調が出ないようにメンテナンスを毎日怠ることができないのである。実際、一部の部品が重さの変化によって外れていたりねじ曲がったり折れたりしていたのだ。

　まぁ、メンテナンスを欠かさず細かくやっているおかげでいつでも万全の状態で対応できるようになっているので、問題が起きる前にすぐに対応が出来ている。

　とは言え、細かい部分にまで重さが変わっている影響を完全に無視できず、ちょっとばかり厳しい部分があった。

「それでもメイドとして、きちんと尽くさなければいけないですからネ。ひとまずこの程度で済ませて・・・・・ム？」

　そろそろ一旦メンテナンスに一区切りをつけて、休憩を入れようとしている中、ふと彼女は何かを感じ取った。

「センサーに感あり‥‥‥ですが、何ですカ、この反応？」

　ピコンっと自身の感知できる範囲内に入って来た反応。

　魔獣でも発生して攻めてきたのかと思ったのだが、妙な違和感を感じ取る。

　魔獣に似ているのだが、そうではないような反応。

「ご主人様のものに近い‥‥？ですが、ご主人様はまだ寝ているはずですし、反応もありますネ」

　何故だろうか、自分の主であるフィーと似たようなモノを感じ取ることが出来る。

　だが、その主は今、男子用の宿舎にてぐっすり眠っているはずであり、別の場所にいるはずがない。

　いや、違う。この感じは以前もわずかに感じたが、あの時とは比較にならないような…‥‥

「‥‥‥狂竜戦士に近いデスネ」

　
　以前、破神布とか言う組織が仕掛けた転送先にて、戦闘することになった崩壊した狂気の竜戦士。

　どうやら自身の主の細胞を入手し、何処かで培養、つなぎ合わせたゲテモノだったようだが、近づいてきている反応をみるとアレに比べて不純物が少なく、ほぼフィーと同じ構成になっていることがうかがえる。

　おそらくはより高度な技術で組み立てられたものなのだろうが、おかしなことにその反応以外は他の場所に破神布のものらしきものはない。

　予想するのであれば、また探知できないような道具を使っているか、あるいは彼らも想定していない事態になっているのか…‥‥改良を進めて対応できるようになった今、おそらく後者の方が正解だろう。

　こうしてはいられないと思い、自身の主の元へ駆けだすゼナ。

　しかしその速さよりも、接近する反応の方がより早く…‥‥






――――ドッゴォォォォォォォォォン！！
「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ！？」」」」」

　目の前で赤い流星のようなものが、物凄い速さで見事に男子宿舎へと直撃し、悲鳴があがるのであった‥‥‥