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5章 復讐は我にあり

5-45 放置されて、忘れられて

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‥‥‥少なくとも、邸内に残されていた母の遺品というか、負の遺産とも言えなくもない呪いの品々は、ほぼ全滅したと言って良いだろう。
 
 流石にすべて壊すのも不味いので、ある程度の強さのランクごとに試してみたのだが、どれもこれも力を抑えることが出来ることはなく、逆にはじけ飛ぶほどである。


 その為、最後の希望と言えるものがあるという事で、邸の奥深く…‥‥厳重に閉められた部屋の際を目指し、俺は中に入っていた。

「不気味そうなイメージもあったけど‥‥‥なんか邸のサイズに見合わない長い廊下だな」

 奥深くと言ったが、別に地下にある場所ではない。

 一階の方の奥の方にあったのだが、どうも外観以上の長さがあり、歩いても歩いても中々辿り着かない。

 実は下に少し傾いて地下の方へ向かう様な形でごまかしているのではないかと思ったが、むしろ少し斜め上に傾いており、地下どころか空へ届きそうな感じではある。


 いや、よく考えたら真面目に歩く意味はないなコレ。

 走っても良いが、ここは上に向かっているのならば翼を広げ、飛んだほうが早いと判断する。

 すぐにバサッと翼を広げ、一気に加速した。







「…‥‥そして加速しても、結構かかったなぁ」

 飛翔してそこそこ時間が経過した頃合いで、ようやく先が見えてきた。

 先へ向かうにつれて天井もどんどん上がって幅も広がり、明かに邸に絶対に収まらないだろうとツッコミをいれたくなるような空間に転じていたが…‥‥うん、驚くことはない。

 何しろこういう空間の無茶苦茶ぶりに関しては、寮の方に作られたゼナの私室で体験済みであり、青薔薇姫の名から出てくる数々のトンデモ話を聞いていると、母もこういう不思議空間が作れてもおかしくはないと納得できてしまっているのだ。

 常識なんてものは、あの母には存在しないだろうからね‥‥‥祖父母から聞かされる母さんの幼いころから引き起こしてきた珍エピソードの数々のせいで、ツッコミが機能停止したからな。


 とにもかくにも、こんなだだっ広い空間になっていたとしても、今さらどうという事はない。

 そして目の前には、大きくそびえたつ巨大な鉄の扉が存在しており、鎖で封じているように見えるが‥‥‥あ、これ雰囲気だけのものか?全然カギとかにかかってないし、普通に開けられそうだ。

「さて、鬼が出るか蛇が出るかはわからないが、この先に求めるものがあっていいだろう。母さん、ここに何を隠したのか見せてもらおうか!!」

 正直、どっちが出てももうツッコむ気が失せているのでどうでもいい。

 ただ一つ言えるのであれば、まともに使える呪具があればいいのだが‥‥‥無ければそれはそれで、諦めておとなしく加減を覚えるために地獄の特訓をすれば良いだけの話である。

 基本的に努力を惜しむ気はないが、それでも大きすぎる力って大変だからなぁ…‥‥楽したくもあるこの矛盾した気持ちは何なのか。



 そう思いつつ、盛大に扉を開き‥‥‥その先に広がっていた光景に、俺はあっけにとられた。

「‥‥‥はぁ?」


 想像としては、かなりヤヴァイ呪具があちこちに飾られているような禍々しさあふれる部屋であったはずだ。

 だがしかし、目の前に広がる光景は何なのか。

「何で、足場もないふわふわした空間が広がっているんだ!?」

 夜空の様なものが部屋全体に広がりつつ、足場も何もない広すぎる空間。

 それでいてあちこちに大小さまざまな球が浮かんでおり、勝手にふわふわと動いているようだ。

 あと耳を澄ませると、その小さな球の一つ一つから、更に小さな声も聞こえるような‥‥‥何なんだ、この部屋は一体?

「呪具があるように見えないけど、また更に広すぎる空間が広がっているんだが‥‥‥一体なんだよこれは?」

 考えても答えは出ないだろう。ゼナと一緒に来ていれば、彼女ならばどういう場所なのか看破してくれたのだろうか。

 でも、今から引き返してまた来るのもかなり手間がかかるな‥‥‥彼女を呼んだとしても、ここまで来るのに相当時間がかかりそうな気がするし、ここはもう飛びこんで自力で探るしかないのだろうか。

「足場もない、浮いた広すぎる謎の空間だけど‥‥‥どうにかなるか?」

 試しにそっと足を出してみたが、落ちる時の様な感覚がないだけで、飛行不可能な空間にはなっていないようだ。

 ならば、普通に翼を広げて飛んで探し回ることぐらいはできるはずだ。

「でも、当たらないようにした方が良いかもな‥‥‥なんか、ろくでもないことになりかねない」

 思い切って扉から一歩踏み出し、部屋の中を飛翔し始める。

 浮いている感覚が水中に近いような気がするが、それともまた違う謎の感覚。

 少々慣れるのに手間取りそうではあったが、それでもここまで来てしまった以上、堂々と隅々まで探る方が良いと俺は判断をするのであった…‥‥


「っとっとっと、この浮遊感空中ともまた感覚が違うな‥‥‥あ、ブレスの反動で飛んだほうが楽か?」

 思いついてやってみたら、案外こっちの方が楽に行けた。口から火を噴いてバックで進むことになるが、勢いが持続していくようだし、これはこれで進みやすいかもしれん‥‥‥

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