上 下
121 / 204
5章 復讐は我にあり

5-44 ほげぇぇっと、叫びたくなるものもいる

しおりを挟む
‥‥‥貴族の家には、何かしらのものがあったりする。

 完全に清く過ごせる家というのは実はそうそうなく、何かと黒い秘密を持っていたりとするところが多い。

 そして公爵家も例にもれず、ここの家の場合は呪いの品々が眠っていたことのようだが…‥‥


バシィン!!
「‥‥‥触れる前に、砕け散ったんだけど」
「ふむ‥‥‥ドラゴンとしての血もあったのだろう?それがはじく原因ではないか?」
「でも、母さんの形見のものは砕ける事も無かったんだけどな?」
「あの子、馬鹿みたいに力が強かったものね…‥‥呪いを簡単に破壊しかねないから、そう言えば丁寧に扱っていたわね」

 悲しいかな、これはこれである意味母さんでもある青薔薇姫の残した形見のようなものなのに、触れただけでいくつかの呪いの品が砕けてしまった。

 これはドラゴンとしての血がなせる業なのか、はたまたは母さんの集めた呪いの方が貧弱なのが多かっただけなのか、あるいは単純に俺自身の耐性が高いだけだったのか‥‥‥わからないだろう。

「というか、ここにおいてあるもの、もしかして全滅か?」
「そうなるかもな‥‥‥となるとここにあるのは駄目だろう」

 祖父曰く、この部屋に置いてあるのはまだ弱い呪いの品々らしい。

 流石に強い呪いの品ほど管理をしっかりしないと危ないので、別の場所にもまだあるのだとか。

「そう考えると、どれだけ残しているんだよ母さん‥‥‥」
「そこそこあるな」
「そうねぇ。他のもダメだったら、一番危ないものが置いてあるところへ向かいましょうか」







「…‥‥ある程度可能性も考えてましたが、本気で何をしでかしているのでしょうか、ここの神」
「分からないでしょウ。そもそも、人じゃない存在の思考は人に理解できまセン」
「それ、私たち全員にいえる事なのですガ」
「「「‥‥‥」」」

 ゼナが呆れたように言ったことだったが、その場の全員が黙り込む。

 何も言えないというか、これが人の振り見て我が振り直せという事なのか‥‥‥そう思うも、治す気はない。

「それにしても、公爵領地に何でこの結界を施したのでしょうカ?これでは、血縁者以外入れないのデス」
「この先に、色々とヤヴァイものを詰め込んでいるのは分かるのですガ」
「私達では、入れないですよネ」

 悲しいかな。色々とできるものたちが集まっているのだが、自分たち以上の存在が作り上げてしまった者に対して中々手が出せない。

 この先に放置できないものが多く保管されていることが分かっているのに、何もできていないのだ。

 だからこそ、他に見ないほど集まっているのだが、苦戦しているのである。

「こうなると、ゼナ、貴女のご主人様にお願いするしかないですネ」
「目的は分かっていマス。その為、結果としてここにたどり着くのは目に見えているでしょウ」
「そうですガ…‥‥メイドたるもの、主の身に危険が迫りそうな現場に行けそうにないのは心苦しいデス」

 ゼナとしては、できればここにフィーを行かせたくはない。

 ここに来た目的は分かっているのだが、ここで得た情報からして向うのはできれば避けたほうが良い。

「あ、でも自分メイド魔剣なら、ご主人様の呼びかけで入れるのでハ?」
「無理ですネ。相当ガチガチのものデス」
「やった人、絶対にわかって強力なものにしてますネ」
「何ですト!?」

 ふと、希望が見えた瞬間に盛大に叩き潰され、ゼナは驚きの声を上げる。

 そうこうしているうちに、いつの間にかあらかた見終えたのかフィーの接近を彼女は感じ取った。

「ああ、できればご主人様には向かってほしくないような、でも望むのであれば行かせたほうが良いような‥‥‥どうしたらいいのでしょうカ」

 悩ましい所だが、メイドとしての自分で考えるならば、主のしたい事を優先させるべきだろう。

 だが、そうでない自分としては‥‥‥何かなりそうならば、側にいてあげたい。

「どうしたものかとなんでこうも、悩まされるのでしょうカ‥‥‥」
「「「‥‥‥」」」


 そのゼナの様子を見て、彼女の姉妹たちは顔を見合わせる。

 自分達は魔剣ではないとはいえ、根本的な部分は同じ存在。

 それなのに、メイドとしての優先もあるはずなのにそうでない想いによって迷いが生じているゼナの様子に疑問を覚えたのである。

 いや、疑問を覚えるべきものなのだろうか。これはむしろ、自分たち以上に成長しているというべきなのかもしれない。

 そしてついでに言うのであれば…‥‥彼女は彼女のなりの答えが、実は見えてきかけているのではないだろうか。

(‥‥‥少々報告からも気になって、実は少しだけ大げさにしましたガ)
(それでも、表れるものが変わってますネ)
(これはこれで、良いデータになるのではないでしょうカ?)

 とにもかくにも、やって来るフィーをその場へ向かわせてしまうことに関しては、どうにもならない事。

 ならばここで大人しく待つしかないのかとゼナは思いつつ、他の姉妹たちは着々と動き始めるのであった‥‥‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名
ファンタジー
★2024年9月19日に2巻発売&コミカライズ化決定!(web版とは設定が異なる部分があります) 🔷第16回ファンタジー小説大賞。5/3207位で『特別賞』を受賞しました!!応援ありがとうございます(*^_^*) 💛小説家になろう累計PV1,770万以上達成!! ※感想欄を読まれる方は、申し訳ありませんがネタバレが多いのでご注意下さい<m(__)m>    スーパーの帰り道、突然異世界へ転移させられた、椎名 沙良(しいな さら)48歳。  残された封筒には【詫び状】と書かれており、自分がカルドサリ王国のハンフリー公爵家、リーシャ・ハンフリー、第一令嬢12歳となっているのを知る。  いきなり異世界で他人とし生きる事になったが、現状が非常によろしくない。  リーシャの母親は既に亡くなっており、後妻に虐待され納屋で監禁生活を送っていたからだ。  どうにか家庭環境を改善しようと、与えられた4つの能力(ホーム・アイテムBOX・マッピング・召喚)を使用し、早々に公爵家を出て冒険者となる。  虐待されていたため貧弱な体と体力しかないが、冒険者となり自由を手にし頑張っていく。  F級冒険者となった初日の稼ぎは、肉(角ウサギ)の配達料・鉄貨2枚(200円)。  それでもE級に上がるため200回頑張る。  同じ年頃の子供達に、からかわれたりしながらも着実に依頼をこなす日々。  チートな能力(ホームで自宅に帰れる)を隠しながら、町で路上生活をしている子供達を助けていく事に。  冒険者で稼いだお金で家を購入し、住む所を与え子供達を笑顔にする。  そんな彼女の行いを見守っていた冒険者や町人達は……。  やがて支援は町中から届くようになった。  F級冒険者からC級冒険者へと、地球から勝手に召喚した兄の椎名 賢也(しいな けんや)50歳と共に頑張り続け、4年半後ダンジョンへと進む。  ダンジョンの最終深部。  ダンジョンマスターとして再会した兄の親友(享年45)旭 尚人(あさひ なおと)も加わり、ついに3人で迷宮都市へ。  テイムした仲間のシルバー(シルバーウルフ)・ハニー(ハニービー)・フォレスト(迷宮タイガー)と一緒に楽しくダンジョン攻略中。  どこか気が抜けて心温まる? そんな冒険です。  残念ながら恋愛要素は皆無です。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

倒すのが一瞬すぎて誰も見えなかった『絶対即死』スキルを持った暗殺者。護衛していた王子から何もしない無能と追放されてしまう

つくも
ファンタジー
「何もしない無能暗殺者は必要ない!お前はクビだ! シン・ヒョウガ」 それはある日突然、皇子の護衛としてパーティーに加わっていた暗殺者——シンに突き付けられた追放宣告。  実際のところ、何もしていなかったのではなく、S級の危険モンスターを一瞬で倒し、皇子の身を守っていたのだが、冗談だと笑われ聞き入れられない。  あえなくシンは宮廷を追放される事となる。  途方に暮れていたシンは、Sランクのモンスターに襲われている少女を助けた。彼女は神託により選ばれた勇者だという。 「あなたの力が必要なんです! 私と一緒に旅をして、この世界を救ってください!」 こうしてシンは彼女のパーティーに入り旅に出る事となる。  ――『絶対即死スキル』で魔王すら即死させる。これは不当な評価で追放された最強暗殺者の冒険譚である。

処理中です...