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5章 復讐は我にあり

5-42 成長、倍増、大改良

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‥‥‥ずっと寝ていた時間が長かったので、かなり体がなまっていそうだ。

 そう思い、退院して早々体の感覚を取り戻すためにゼナと模擬戦を行ったのだが…‥‥


ドッパァァァァアン!!
「‥‥‥あれ?なんか威力が上がっているんだが」
「上がってますね。念のためにチェーンナックルモードで受け止めましたが、ぶつかった時の衝撃が大幅に向上していまシタ」

 拳と拳が打ち合った瞬間、生じた凄まじい衝撃波。

 周囲で見ていた他の生徒たちがふっ飛ばされ、地面を転がっていた。

「なんか、無茶苦茶強くなってないか?」
「あの一撃、生身の普通の人間なら爆発四散ものだろ」
「うわぁ、絶対に相手にしたくねぇ‥‥‥」

 相当強い衝撃だったようで、なんとか体を起こした者たちがそう口にするが、確かにこれまともな人間相手にやらかせばスプラッターな光景になるのが目に見えている。

 というか、今さらなんだが力加減がどうもおかしくなっている気がする。




 その為、まともにやり合うには加減が出来ないと不味いので一旦模擬戦を中止し、本日の模擬戦の授業を請け負っていた教師に許可をもらい、周囲に被害が出ない適当な場所で、自分の今の状態を再確認することになった。


「と言われましても、見た目だけは大きく変化はしていないですわね?角がちょっと尖ったかなと思う程度で、人としての姿は変化ないですわ」
「そうか?」

 念のためにまともな人から見た感想も欲しかったが、ルルシアがついてきてくれたので一緒に見てもらうことにした。

 加減が難しい状態で一国の皇女を連れてきていいのかという問題もあるかもしれないが、万が一に備えて現在彼女はゼナ御手製の鎧でしっかりと身を固めてもらっているので大丈夫だろう。

「そうなると、あのドラゴンの姿の方に異変が生じているのかもしれませんわね」
「ほぼ100%そうでしょウ。ご主人様の人としての姿に変化は少ないのですガ、中身の力としてドラゴン部分が大きく影響しているようですからネ。原因としてはドラゴンとしての身体にあるとみて良いはずデス」
「なら、確認してみるか。『完全竜化』!!」

 なまっていたとしても、自分のドラゴンとしての身体を顕現させるのはすぐにできる。

 何度もやっていたからこそスムーズに出せた…‥‥はずだったが、変化が生じていた。



「…‥‥なんか、ひとまわりふたまわりも大きくなっているような気がするんだが」
「気のせいではないですわね。前よりも巨大化してますわ」
「全体的に成長したようですネ」

 巨大なドラゴンの姿という表現は変わっていないのだが、大きさが以前よりも大きくなっていた。

 しかもただ巨大化したわけではなく、角の形状がより鋭くとがり先が裂け、翼の方は強靭になり、はばたくだけでもかなりの風が吹き荒れる。

 尻尾の方も長さを増しているだけではなくこちらにも棘のようなものが生えそろい、攻撃力が増しているように見えるだろう。

 
 そして何よりも、ドラゴンとしての鱗の色が前よりも綺麗な宝石の青色に近い色合いになっているのだ。


「…‥‥どうやら幼体から大きく成長して、青年のドラゴンの身体として若体へ変化したようデス」
「え?俺、あれで幼体だったの?」
「ハイ。ご主人様のドラゴンとしての姿は、まだまだ伸びしろがあるようなのデス」

 自分でも実感していなかったが、どうやらドラゴンとしてはひよっこと言える状態だったようで、ようやくこれでまだちょっと力を付けたドラゴンとしての身体になったらしい。

 なんでそんな急に成長したのかと思ったが、ゼナの推測では当たり前の成長現象のようだ。

「というか、元々いつ成長してもおかしくはなかったのですが機会が得られていなかったようデス。ですが、先日の騒動でマグマ漬けからの石固めとなって危機感を体が感じとり、それがきっかけとなって転じたのでしょウ」

 成長するだけの力はついていたようだが、純度100%のドラゴンではないので、何かきっかけがないと成長できない状態にあったらしい。

 けれども、あの危機的状況を経験したことが良いきっかけとなって、体が大きく成長する結果になったようだ。

‥‥‥というか、まだあれで幼体だったのかと驚く自分がいるよ。むしろ、それで力を振るっている時が何かいきっている若気の至りのようで、少し気恥しい気がしなくもない。


 何にしても、大きく成長できたのは良かったのだが、その反面より内包されている力が増加してしまったことで、その分人間の体の時に出る力も増加してしまい、加減が難しくなっていたことが判明した。

 その為、この状態での力加減を覚える必要が出来たようで、しばらくは加減を覚えるために物凄く慎重に生活しないといけなさそうだ。

「あー‥‥‥今ならあの弱体化の呪いとかを持っていた母さんの気持ちが分かるかも。強い力を加減するのって、かなり難しい‥‥‥」

 青薔薇姫だった母さんは、自身の力をかなり抑え込む呪具を持っていたという話があったが、その気持ちが物凄く分かるだろう。

 加減をしてする生活はかなり大変で、いっそ本気で抑え込めるような呪いがあればわざとかかりたくなるのは無理もない。

「ですが、それは難しそうですわよ?力を抑える呪具は色々とあると聞きますけれども、ここまで成長した力を抑え込めるものってありますの?」
「んー、知り合いに呪いの収集家がいますので、打診してみれば可能かもしれませんが難しいデス。そもそも青薔薇姫が使っていたのは国が管理するレベルの代物でしたし、ご主人様の今の状態を見ると同等のものが良さげですが、簡単に入手できなさそうデス」

 結局、地道に自力で加減の仕方を覚えるしかないようだ。

 強くなるのは魔獣相手に戦う魔剣士としては好都合であったが、それ以外で日常生活を送る身になると不都合なものにもなるらしい。

 何事も力で解決できないことはあると、深く思い知らされるのであった…‥‥


「‥‥‥そう言えば、母さんの実家‥‥‥公爵領の家には無いのかな?スペアとしての道具を隠し持っていてもおかしくはないかもしれない」
「可能性はありますネ」
「でしたら今度の休日にでも、出向いたらどうですの?ああ、でも正式に公表されていない状態ですし、簡単に出向きにくいですわね」
「大丈夫デス。ご主人様の祖父とは既に話もしていましたし、手紙を出しておくだけでも大丈夫でしょウ。それとつい最近知りましたが、姉が数名ほど潜り込んでましたので、突然の来訪でもどうにかなるでしょウ」
「へぇ、なら今度の休日に向かうって手紙を‥‥‥いやちょっと待って、今さらっと爆弾発言が聞こえたぞ?」

…‥‥ゼナの家族構成は謎が多いが、姉がまだ他にもいるのかよ。しかも今の口ぶりから察するに、一名だけじゃないな?
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