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5章 復讐は我にあり

5-37 地の底より、出て来るもの

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「全滅させるのに時間はそこまでかからなかったとはいえ、すっかり燃料切れになったなぁ」
「それで乗せてもらって申し訳ないですわね」
「大丈夫大丈夫、このぐらい楽に飛べるからな」

 空飛ぶ魔獣たちがやって来たので、その場で殲滅し切ったとは言え鎧の飛行燃料が切れてしまった。
 俺の方は自前の翼があるが、ルルシアの方は飛べなくなったのである。

 その為、完全竜化‥‥‥までもすることはなく、普通にゼナに適当な布を出してもらい、その両端を持って運ぶことにした。
 ゼナ曰く、本来は大量のカラスで運んでもらった方が絵面的に合うらしいが、それでもこの運び方は気楽なものだろう。乗っているだけで良いし、こっちは離さないように気を付ければいいだけの単純な輸送手段となる。


「それにしても、燃料の方は拡張させる余地がありそうですネ。もう少しこう、スペースを活用して消費量も減らしていけば‥‥‥」
「‥‥‥それにしてもフィー。彼女が素で空を歩いてついてきているのって、どうなってますの?」
「普通に空中歩行をするようになっていることに関しては、俺も流石に突っ込み切れない」

 こちらはルルシアを運んでいるが、ゼナの方は二人分の鎧を手に持って器用に歩きながら改造を施している最中である。
 重くなるなら着たままでもよかったのだが、別に大した問題ではないと言い切って見事に運びながら空を歩いているメイドと言うのはどういうことだと思いたい。
 でも、ツッコミをいれたところで「空中歩行程度、メイドとしての嗜みなのデス」と言われるのが目に見えているので、やる意味もないだろう。その嗜み、全部のメイドができたら怖いが…‥‥うん、無理だと思いたい。


 とにもかくにもそんな横で空を歩くメイドも見つつ、帝都の壁が見えてきた。
 この辺りになると飛ぶ必要もなく、きちんと入るための門にある列へ並ぶために着陸し、地面を行くだけだ。

「だいぶ遅くなったし、学園の寮に入れるっけ?」
「門限はありましたけれども、多分大丈夫ですわ」
「問題ないと思いたいデス」

 帝都内に入り、寮までの道を歩いていた…‥‥その時だった。


ピピーッ!!
「ン?」
「何か今、ゼナの方から変な音出たな」
「これ、私の部屋の防犯ブザーの音デス。泥棒対策に頑丈に施錠していますが、何かが無理やり入り込もうとしたらなるように設定しているのデス」

 すぐに分かるようにとしているらしいが、そんなブザーが何故鳴ったのか。
 考えられるとしたら、今の説明通りゼナの自室に無理やり入ろうとする輩が出たのだろうが‥‥‥相当な命知らずの奴なのかもしれない。

「音声パターンはBですカ。正面からではなく、壁や屋根、床から無理やり侵入を試みたものがいた場合にセットしているものデス。この様子だと、何処かの間者か密偵か、何にしても入り込むのは失敗してマス」

 部屋に異常はないとはいえ、それでも入り込もうとした輩がいたのは事実だろう。
 放置しておくのも不味そうなので駆け足で学園の方に走ると、何やら様子がおかしい。

「うわぁぁぁあ!!急いで離れろぉぉ!!」
「なんだあれなんだあれぇぇ!!」

「‥‥‥学園の方から、走って逃げている人が多い?」
「何かあったのかしら?」

 必死になって走る人々にぶつからないように、僕等は道から少し外れて上の方、建物の屋根を飛び移って向かうことにした。
 流石に不審すぎる動きだが、慌てている周囲の様子からしてバレることはない。

 そうこうしているうちに学園の寮が見えてきたが、人々が逃げている原因も一緒に見えてきた。

「何だあれ!?学園全体が密林と化しているんだけど!?」
「ジャングルになってますわ!!」
「植物侵食87%…‥‥結構酷い状況ですネ」

 大剣が刺さったような形をしていた、ダーインスレイヴ学園。

 その学園は今、敷地内をはみ出て大量の植物に覆われていた。

 さらに、その植物の中には蠢く様子もあり、いくつかの蔓やら葉っぱやらが襲い掛かっている様子を見て取れる。

「一気に焼き払うのは不味いな。大火事になりかねん」
「ひとまず近くのものから切り裂いて、確認したほうが良さそうですわね」

 戦っている他の学生たちも見えるが、戦況としては劣勢のようだ。

 植物が覆いまくっているせいで炎や雷と言った火事を引き起こしかねない魔剣を使っている人は戦いにくいし、切り裂くのに適していないタイプの魔剣を持つ人もやりづらい。
 切断系に優れている魔剣士もいるようだが、相手はどうもその対策もしているのか硬そうな木の実を飛ばしてくるなどの光景が見えてくる。

「‥‥‥何にしても、まずは状況把握だ!!こういう状況なら、学園で教師たちの方が戦っているかもしれない!!教師陣を捜すぞ!!」
「分かりましたわ!!全力で伐採して、除草しますわね!!」
「除草剤は手持ちに無いので、ご主人様の魔剣として力を振るいましょウ。この手の類ならばご主人様、ソードレッグをお勧めしマス」
「ああ、そうしよう!」

 何がどうなってこんなジャングルのような光景になったのかは不明だが、今はその情報を知っていそうな人たちを捜したほうが良い。

 そう思い、襲い掛かる植物を薙ぎ払って避難の手助けをしつつ、状況を解明するために動き始めるのであった…‥‥

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