上 下
43 / 204
2章 吹く風既に、台風の目に

2-32 こぼすものは、何故大きく

しおりを挟む
 3泊4日の日程の『魔獣討伐試験:海の部』ではあったが、最終日は自由時間がほぼすべての予定を占めていた。

 何かと魔獣たちが襲ってきたり、終えたところで勉学の山が待ち受けてきたりと色々あったが、こうやって最終日を無事に迎えられたのは嬉しく思えるだろう。

「というか、結局泳がずに水上走行を会得してよかったのだろうか…‥?」
「まぁ、これはこれで結果オーライと言う事デス」

 ずだだだだっと水上を駆け抜けつつ、思わずつぶやけばゼナが並走しながら答える。

 泳げない彼女なりのやりかたを生み出してしまったとはいえ、色々と何かを間違えてしまった気がしなくもない。そして俺自身もコツをつかんでしまったのか水上を駆け抜けられるようになったが、ツッコミを自分自身に入れるのは馬鹿らしいのでやめていた。

‥‥‥いや本当に、何で水上を走行できちゃったんだろうなぁ。瞬歩での足の動きを応用したら、こうなるとは誰が想像できただろうか。

 

 
 けれども、流石に連続走行は体力的に長時間持つわけではないので、ソードウイングモードかスクリューソードモードを選んで戻ろうかと思いつつ、できるところまで行ってみようかなと思う気にもなる。

「いや、普通に泳ぐべきか…‥‥海なのに泳がずに魔剣で走破するのはおかしいか」
「こうやって海上走行している時点で今さらだと思うのデス」

 いつもツッコミを入れたい相手に、ツッコミを入れられた。

 何にしても、こうやって走破していると何も考えなくていいような時間にもなっており、何となく気が楽になっているような感じもある。昨晩のゼナから聞いた、青薔薇姫の話から今は亡き顔も見ぬ母について考えたせいで、ちょっとだけ心が寂しく思っているのもあるのだろう。

 だからこそ、こうやって走って何も考えずに突き進むのも楽かもしれない…‥‥そう考えていた、その時だった。


「ン?」
「どうした、ゼナ?」
「いえ、何か今感知…‥‥ッ!!ご主人様、モードチェンジ『ガトリングモード』!!」

 ゼナが一瞬何かに気が付いたかのように動きを止め、何事かと説明してもらう前に俺の方に飛び掛かり、素早くガトリングへと切り替わる。

 そのまま俺の身体も操作して銃口を上に向けた。

「上に何が、ってなんだ!?」

 つられて上の方に視線を移すと、そこには何かが大量に落ちてきていた。

 赤黒い粒のようなものが大雨のごとく降り注ぐように、こちらへめがけて勢いよく落下しており、あっけに取られている間にガトリングが動き、一気に対空砲火を浴びせて直撃を防ぐ。


ザブゥン!!
「足を止めるから沈んだけど、何だ今の!?」
「分かりまセン!!ただ、何かの攻撃によるものだという事だけは言えマス!!第2陣、落下してきマス!!」

 どうやらまだまだ収まる気配は内容で、赤黒い粒の雨が再び迫るのが目に見えた。

「モードチェンジ『スクリューソード』モードで、現海域から全速離脱!!」
「了解デス!!」

 ガトリングから大砲のようなスクリューのある筒へと切り替わり、海に潜って粒をしのぎつつ全速力でこの場から一旦離れる。

 水中ならばこちらの方が早いので、上からの攻撃であろうとも海その物が一旦の受け皿になって落下物を減速してくれるので海中に落ちてきても避けやすい。

(…‥‥でも、ただの落下物ではなさそうだな)

 ごぼぼぼっと口の中の空気を逃がさないようにしつつ、後方を見れば赤黒い粒が海に溶け込んでいる様子が見えた。

 どうやら固形物というよりも何かの液体が固まったもののようで、海の中が染まっていく。



 そのまま全速力で海域を脱出し、浜辺に飛び出してソードモードへ切り替える。

「フィー!!何があった!!」
「分からない!!何かが降り注いできて攻撃されていることだけなら分かることだ!!」

 どうやら浜辺から沖合の異常は見えていたようで、出るや否や会長が駆け寄ってきて状況説明を求めてくるが、俺にもこの状況は分からない。

「状況不明、ただし攻撃その物に意志があるようで、こちらを狙っているのは間違いないようデス。魔剣による攻撃でもなく、海中への溶け込む液体をスキャン…‥‥魔獣による攻撃と推測できマス」
「魔獣だと!!だが、姿は見えないぞ!!そもそも沖合には、生徒たちでは相手にできないような魔獣が来ないように、教師陣が見張っているはずだ!!」

 この場にいる生徒たちが魔剣を持っているとはいえ、戦闘経験や実力で言えば教師陣の方が上を行くのは間違いなく、万が一に備えて本日の自由時間中は教師陣は沖合で目を光らせている。

 それなのに、それをかいくぐって魔獣が攻撃を仕掛けられるのはおかしく、生徒会長の叫びに全員同意する。

「どうやら教師陣の探査範囲外、私の関知範囲からも離れた長距離攻撃のようですネ」
「そんな事、可能なのか?」
「理論上では可能デス。地に落とすための射出速度や角度、着弾地点予測などが必要になりそうですが‥‥‥何か大型の砲撃が可能な魔獣が、はるか沖合から狙っている可能性があるでしょウ」

 そんな事を話し合っている間にも、再び空から赤黒い粒が降ってきたようで、各自各々の対空攻撃手段で直撃を防ぐ。

「ぎゃああああ!!いっだぁぁぁl!!」
「貫くというより、焼くような攻撃だ!!」

 しかし、完全に防げるものではなく、撃ち漏らされたものが避け損ねた者に直撃し、火傷のような傷を負わせていく。

「物理的だが、焼くような攻撃…‥‥酸のようなものがあるのか?」
「可能性は大きいと思われマス。ただ、濃度を今確認しましたが…‥‥胃液に近いデス」
「胃液だと?」


 そんなものが、何故降り注ぐのかという疑問もあるが考える暇もない。

 一定のリズムで降り注いできているようで、連続して降り注ぐ赤黒い胃液の雨には対空砲劇をしても疲労して防ぎきれなくなってくるだろう。

「ゼナ、対策としては?」
「着弾を想定しての攻撃のようですので、まずは距離を稼いで逃げることが重要でショウ。ただ、それでも相手の射程圏内なら意味が無いので、ここは直接攻撃を行い、攻撃の手を緩めさせたほうが良さそうデス」
「見えないが…‥‥飛んでくる胃液の飛沫雨のようなものから察するに、こっちの方向か。だったら、こいつでどうだ!!」

 生徒会長が魔剣を振るい、海面に叩きつけると爆発が起きた。

 その爆発は連鎖的にどんどん水面を伝って爆破して…‥‥‥ある程度見えなくなったところで、大きな爆発音と共に水柱があがった。

「物体に当たれば爆破するようにした攻撃手段だが‥‥‥どうやら効果はあった様だな」

 先ほどまで定期的に降り注いでいた赤黒い胃液の雨が止まり、一旦周囲の天候が晴れる。

 とは言え、これはほんの一瞬の間の攻撃強制停止にしかすぎず、再び来る可能性は十分ある。

「生徒会長として、教師陣がいない今全員に指示を出す!!遠距離攻撃及び対空攻撃ができない生徒はこの場から急いで離れろ!!攻撃可能なものは再度の雨に備えつつ、私の攻撃する方向へ攻撃を放ち、見えぬ敵の手を防ぐんだ!!」
「「「「「了解!!」」」」」

 全員すぐに会長の号令に従い、指示通りに各自の可能な部分から動き始める。

「フィー、たしか君の魔剣は飛行可能な魔剣でもあったな?今から攻撃をこちらで続けるから、着弾地点にいるはずの魔獣の確認を頼む。ただ、反撃がどう出るか不明だから、攻撃せずに位置情報をつかみ次第、教師陣営に応援を頼んでくれ!」
「わかった!!ゼナ、ソードウイングモード!!」
「了解デス!!」


 素早く剣の翼を広げ、一気にその場から飛び去り、俺たちは会長たちの攻撃が到達しているところまで見に行くことにした。

 相手の正体が不明な事から攻撃をこちらに狙われるのを避けて、位置をつかんで教師たちの応援を頼みたいのだが‥‥‥こうも遠距離から降り注がせる胃液の雨を使うような魔獣は何だというのか。

「それなりに距離がありそうだが、全速力で頼む!」
「大丈夫です、この海にいる間に改良をしておきましたので、飛行可能速度は飛躍的に向上済みデス!」

 だてに海での短い日々を何もしていないわけでもなく、各モードの強化改良を彼女は施していたようで、空を飛ぶ速度も確かに向上していた。

 ぐんぐん速度を上げて、着弾地点にたどり着き、大空から確認すると…‥‥海上に、一つの島が浮かんでいた。


「いや、違う‥‥‥島じゃないな、アレ」
「大型の魔獣、クジラのような魔獣ですネ」

 そこにいたのは、ぷかぷかと海に浮かぶ島のように見えつつ、表面に大量の穴ぼこが出来た大きな魔獣。絵面としてはかなり気持ち悪く、その穴から浸水して沈まないのかと思いたい。

 穴から噴き出したものがあの胃液の雨なのだろうが…‥‥何ともまぁ、こんな醜悪な姿の魔獣も存在していたものである。


ブシュウウ!!
ドォォォォォン!!

 そして浜辺から攻撃している会長たちの攻撃が直撃しているようで、反撃をしようと動いても爆発などで怯み、直ぐに動けない様子。

 この調子ならば、位置の特定が出来たので教師陣を呼ぶ時間は十分稼げるだろう。

「ゼナ、教師陣のいる方向に向かうぞ。相手の場所が確認でき、」
「ちょっと待ってくだサイ!」

 っと、翼になっているゼナが叫び、何事かと思って魔獣の方を見れば、何やら様子が変わっていた。

 あちこちに出来上がっていた穴ぼこがぷつぷつと閉じ、つるりとした表面に切り替わっていたのだ。


 そう、穴だらけのチーズを全部防ぎ、綺麗な表面にしたような…‥‥もっといい言い方があるかもしれないが、自分の語彙力では言い表しにくい。

「なんだ?穴を全部防いで何をする気だ?」
「エネルギーの集中を確認。分散していた分を中心部に集めて増幅しているようデス」

 先ほどまで放出していた胃液の雨あられを止めて、違う攻撃手段に出たようだ。

 見ていればつるつるの表面にふたたび穴が出来たが、そのサイズはかなり大きく上に向けられて‥‥‥

「って、こっちを向いてないかアレ!?」
「不味いデス!!補足されていマス!!」

 上から見ていたことに気が付いていたのか、その穴の向かう先は俺たちの方に向けられていた。

 嫌な予感を抱き、直ぐに現空域から逃げようとしたが…‥‥どうやら遅かったらしい。


ブジュバァァァァア!!

 噴きあがってくるのは、大量の赤黒い水柱。

 それが弧をやや描きつつも、狙いを寸分たがわずにこちらに迫ってきており、避けたとしても規模から考えて浜辺に着弾することが予想できる。

「ゼナ、回避が不能だからスクリューソードになれ!!竜巻での減速及び方向をずらせ!!」
「了解デス!!」

 一気に変形させ、陸地での竜巻を正面からぶつけ、赤黒い水柱の減退と方向転換を俺たちは狙った。

 流石に回避を狙おうにもできない状況なので、せめてもの最悪の事態を防ぐために行ったが、どうやらうちかったようで到達前に無事に爆散に成功する。

ドッバァァァァン!!
「良し!!」

 ギリギリで助かったと思ったが、それは油断だったのだろう。

 次の瞬間、俺たちが察する前に海中からその巨体は一気に浮上して飛び上がり、大きな口を開いてその中に捕らえられる。

「‥‥‥え?」
「あ」

 そして状況を把握する前に、大きな衝撃が起きて、意識を失うのであった…‥‥‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。 お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。 これからどうやって暮らしていけばいいのか…… 子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに…… そして………

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...