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移り変わる季節と、変わる環境
log-088 風は吹きつつ木枯らしを
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…新しい家に対して、様々な改造を施し、ハクロ達はそちらで過ごすことが増えた。
とはいっても、全員が直ぐにそこに居を構えるわけではなく、いまはまだ寮室と行き来したりして、少しづつ各々の個室に手を加えていたりする状況ではある。
でも、週に一度は全員家のほうに泊まるようになり…その日は一人ゆっくりとした時間を、ジャックは過ごすのだ。
「…まぁ、皆がいない状態だと、この部屋の中が結構広く感じるのが少し寂しいかもね」
夜中、明かりを付けながら本を読む中、周囲を見渡してジャックはそうつぶやく。
いつもならば皆がワイワイとしているが、いなくなるとここまで静かだっただろうか。
少しばかり心寂しく思うのは、皆と過ごす時間が多いゆえか…そう思っていても、この時間もまた大切なのが理解できる。
「さてと、せっかく静かだから読書の時間にふけたほうが良いか…」
そう言いながらジャックが持っているのは、この学園の図書室から借りてきた小説。
こういう世界でも文学の類が娯楽として存在しており、中には同人誌活動のような物をしている人もいるようで、有名な著者のものが中々手に入れられないだろう。
その中でもこれは、学園に寄贈された書籍の中でベスト5に入るという『勇者ツンドルデの伝説』という王道ながらも読みごたえのある喜劇本である。
…勇者の本と言うのに喜劇本とはどういうものなのかと思うが、単純にギャグマンガに近いもので、勇者ツンドルデが毎回何かしらのハプニングでやらかし、盛大なオチがつくのだ。
「というか、勇者の言葉があるってことは、この世界にもそういう概念があるのか…まぁ、そもそもモンスターがいるのならば、勇者も魔王もセットで存在してもおかしくは無いか…」
実際、聖女とかいうのも存在しており、何かしらのテンプレのような物があるのは明白なもの。
ところどころ歴史の授業の中には、過去に転生者らしい動きをしている人物も存在しており、中には自ら勇者だの魔王だの名乗ったという輩もいるらしい。
まぁ、大抵の場合はツンドルデネタとして扱われて、誰も気にも留めずに潰されていくらしいが…中には本物が実は混ざっていた可能性もある。
しかし、そうだとしてもやらかせば結局取り締まられるのがオチだったりして、ツンドルデシリーズのお約束案件を見るともしかしたら実例も混ざっているのかもしれない。
「何にしても、そういうものにならずに安定した生活を得られるようにしたほうが良いからな…」
冒険者としての資格を有していても、安定した生活を得られるとは限らない。
可能な限りこのせいでは、ゆったりとしつつもしっかりとした職を手に付けたいのだ。
そのために今は、商人や文官の類になるための勉学のほうに意識を向けているが…地道な積み重ねで慣れるかもわからない。
今はただ、しっかりと学生としての本分を果たして過ごすだけだ。
「勇者だろうと魔王だろうと、何も手に付けなければ役目を果たした後に絶対に困るだろうし…そうじゃないなら、きちんとした職に就いたほうが将来が安定するよね」
冒険者業もハクロ達がいれば安定するだろうが、それでもいなくなった時のことも考えて、しっかりとした生活をくみ上げていく必要がある。
「…いなくなる生活は考えたくはないけど、頼り切り過ぎないようにしないとね」
むしろ、下手すりゃヒモ生活まっしぐらな気もするからね…そうならないためにも、自立できるだけの生活基盤を組み立てたいのであった…
【…ヒモでも良いと思うのですけれどもね。私、絶対にジャックを苦しい生活にさせませんから】
【何を言っているんだ、我らが主殿を貧相な生活に身を置かせるわけがなかろうが】
とはいっても、全員が直ぐにそこに居を構えるわけではなく、いまはまだ寮室と行き来したりして、少しづつ各々の個室に手を加えていたりする状況ではある。
でも、週に一度は全員家のほうに泊まるようになり…その日は一人ゆっくりとした時間を、ジャックは過ごすのだ。
「…まぁ、皆がいない状態だと、この部屋の中が結構広く感じるのが少し寂しいかもね」
夜中、明かりを付けながら本を読む中、周囲を見渡してジャックはそうつぶやく。
いつもならば皆がワイワイとしているが、いなくなるとここまで静かだっただろうか。
少しばかり心寂しく思うのは、皆と過ごす時間が多いゆえか…そう思っていても、この時間もまた大切なのが理解できる。
「さてと、せっかく静かだから読書の時間にふけたほうが良いか…」
そう言いながらジャックが持っているのは、この学園の図書室から借りてきた小説。
こういう世界でも文学の類が娯楽として存在しており、中には同人誌活動のような物をしている人もいるようで、有名な著者のものが中々手に入れられないだろう。
その中でもこれは、学園に寄贈された書籍の中でベスト5に入るという『勇者ツンドルデの伝説』という王道ながらも読みごたえのある喜劇本である。
…勇者の本と言うのに喜劇本とはどういうものなのかと思うが、単純にギャグマンガに近いもので、勇者ツンドルデが毎回何かしらのハプニングでやらかし、盛大なオチがつくのだ。
「というか、勇者の言葉があるってことは、この世界にもそういう概念があるのか…まぁ、そもそもモンスターがいるのならば、勇者も魔王もセットで存在してもおかしくは無いか…」
実際、聖女とかいうのも存在しており、何かしらのテンプレのような物があるのは明白なもの。
ところどころ歴史の授業の中には、過去に転生者らしい動きをしている人物も存在しており、中には自ら勇者だの魔王だの名乗ったという輩もいるらしい。
まぁ、大抵の場合はツンドルデネタとして扱われて、誰も気にも留めずに潰されていくらしいが…中には本物が実は混ざっていた可能性もある。
しかし、そうだとしてもやらかせば結局取り締まられるのがオチだったりして、ツンドルデシリーズのお約束案件を見るともしかしたら実例も混ざっているのかもしれない。
「何にしても、そういうものにならずに安定した生活を得られるようにしたほうが良いからな…」
冒険者としての資格を有していても、安定した生活を得られるとは限らない。
可能な限りこのせいでは、ゆったりとしつつもしっかりとした職を手に付けたいのだ。
そのために今は、商人や文官の類になるための勉学のほうに意識を向けているが…地道な積み重ねで慣れるかもわからない。
今はただ、しっかりと学生としての本分を果たして過ごすだけだ。
「勇者だろうと魔王だろうと、何も手に付けなければ役目を果たした後に絶対に困るだろうし…そうじゃないなら、きちんとした職に就いたほうが将来が安定するよね」
冒険者業もハクロ達がいれば安定するだろうが、それでもいなくなった時のことも考えて、しっかりとした生活をくみ上げていく必要がある。
「…いなくなる生活は考えたくはないけど、頼り切り過ぎないようにしないとね」
むしろ、下手すりゃヒモ生活まっしぐらな気もするからね…そうならないためにも、自立できるだけの生活基盤を組み立てたいのであった…
【…ヒモでも良いと思うのですけれどもね。私、絶対にジャックを苦しい生活にさせませんから】
【何を言っているんだ、我らが主殿を貧相な生活に身を置かせるわけがなかろうが】
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