58 / 115
訪れる学園生活
log-054 吹き抜けるのは風の息吹
しおりを挟む
…誘拐犯はお縄に付き、糸玉に捕らわれたまま衛兵たちに引きずられて行った。
剥がそうにもかなりべたべたになっており、縄で周囲を囲んで引きずるしかなかったようだが…相当きついのか、物凄く後悔するような声が聞こえてくる。
そして、その誘拐犯に囚われていた袋の中身の人と言えば…
「ああ、ああお嬢様!!申し訳ございません!!まさか、あのような不遜な輩が堂々と出てくるとは、油断しておりました!!」
「別に良いですわよ、アンナ。貴女の手にはあの時、大量に荷物を持たせていたのが悪かったのですわ」
「それでも、お嬢様を袋詰めにして攫われるとは…」
ううううっと泣きながら、先ほどまでは般若の形相で追いかけていた女性…メイド服にいくつかの鎧のような装飾品を身に着けたアンナと呼ばれる人は、袋から取り出された女の子に向かって懺悔している。
「助かったのだからそこまで、無く必要はありませんわ。それに…」
ふと、ジャックが見ていることに気が付いたのか、改めて顔を向ける女の子。
フワフワとしたドレスを身に纏いつつ、その頭は異世界お嬢様のテンプレの一つなのかと言いたいドリルな髪型を二つ背負っているかのような姿をしている。
「…改めまして、助けてくれたことに感謝しますわ、庶民の方」
綺麗な所作でふんわりと、彼女はそう礼を言う。
「一応、訳があってお忍びの形ゆえに、名前までは明かせないのですが、それでも救われたのは事実であり、きちんと恩には礼を返す主義ですもの。なので…そうですわね、アンナ、あれを出してほしいですわ」
「はっ」
ぱんぱんっと手を叩き、すぐさま先ほどまでの号泣般若だったメイドの人がどこかへ走り、すぐさま戻ってきた。
手にしていたのは、何やら紋章が書かれた一枚のカード。
「これは?」
「それはちょっとした魔道具で、所有者が誰だったのか確実にわかる仕掛けが施されているものですわ。エルメリア帝国関係の店、もしくはその首都内の店で出せば、わたくしの関係者と言うことで全商品半額になりますもの。ドレス以外にも日用品等を扱っているので、そちらを使うと良いですわ」
エルメリア帝国…確か、グラビティ王国近くにある国の一つで、過去に争うことはあったらしいが、今は友好国として交流を持っている国である。
そんな国の関係者であり、所作や道具の効果から考えると…いや、これ以上庶民の身であるからこそ、踏み入れないほうが良いかもしれないか。
「わかりました。このようなもの、お礼としていただけてありがとうございmす」
「いえいえ、こちらこそ助けられたのですから当然ですわ。恩には礼を、罪には破滅を、投げつけろというのがわたくしの家のモットーであり、大したことではありませんもの。それでは、ごきげんよう」
衛兵たちが戻ってきて、事情聴取のために向かうらしい。
確保したのは自分だが、そもそもなぜさらったのかの目的を聞き出すために向かうようで…ここでひとまず別れを告げられる。
ほんの少しだけ巡り合った、他国の少女。
その出会いは風のように通り過ぎていくのであった…
「…お嬢様、本当にあれを渡して良かったのでしょうか。助けていただいたとはいえ、一般市民に渡すには少々、金銭感覚の危うさを招きかねない者かと思われますが」
…ジャックと別れた後、少女はようやく糸から引き剥がして縄で拘束されたという不審者から情報を聞き出すために向かっている中、メイドから問われていた。
「大丈夫ですわ。わたくし、人を見る目ならば、ある程度はあると自負してますもの。彼自身に悪意などもなく、正直な様子からしてバカみたいなことに使わないはずですわ」
「そうでしょうか」
「ええ。それに、アンナ…あの子が使った道具、よく見ていなかったのかしら?あの不審者を捕らえたあの糸…わたくしが今日買った衣服の布地に使われていたものと性質が違えども、同じものが使われていたことに」
「…え?」
きらりと目を光らせ、そう告げる少女の言葉に、おどろくメイド。
「…おそらくは、何か関係があるものとみて良いですわね。彼とつながりを持っておけば、後々こちらの方も助けられることがあると思いますし、今のうちに多少縁をつないだ方が良いと判断したのですわ」
「そうですか…ええ、ミラージュお嬢様がおっしゃるのであれば、そうかもしれませんね」
「そうね‥‥この、皇女との縁、大事にしてほしいですわね…」
…そうつぶやきながら、少女は…エルメリア帝国の第3皇女ミラージュは先へ向かう。
今はまだ、小さな縁であり、これから先再会するのかは知らない。
けれども、どんなものであったとしても、繋いでおけば良いものになると感じたために、少しばかりつなぎを強くしていたのであった…
剥がそうにもかなりべたべたになっており、縄で周囲を囲んで引きずるしかなかったようだが…相当きついのか、物凄く後悔するような声が聞こえてくる。
そして、その誘拐犯に囚われていた袋の中身の人と言えば…
「ああ、ああお嬢様!!申し訳ございません!!まさか、あのような不遜な輩が堂々と出てくるとは、油断しておりました!!」
「別に良いですわよ、アンナ。貴女の手にはあの時、大量に荷物を持たせていたのが悪かったのですわ」
「それでも、お嬢様を袋詰めにして攫われるとは…」
ううううっと泣きながら、先ほどまでは般若の形相で追いかけていた女性…メイド服にいくつかの鎧のような装飾品を身に着けたアンナと呼ばれる人は、袋から取り出された女の子に向かって懺悔している。
「助かったのだからそこまで、無く必要はありませんわ。それに…」
ふと、ジャックが見ていることに気が付いたのか、改めて顔を向ける女の子。
フワフワとしたドレスを身に纏いつつ、その頭は異世界お嬢様のテンプレの一つなのかと言いたいドリルな髪型を二つ背負っているかのような姿をしている。
「…改めまして、助けてくれたことに感謝しますわ、庶民の方」
綺麗な所作でふんわりと、彼女はそう礼を言う。
「一応、訳があってお忍びの形ゆえに、名前までは明かせないのですが、それでも救われたのは事実であり、きちんと恩には礼を返す主義ですもの。なので…そうですわね、アンナ、あれを出してほしいですわ」
「はっ」
ぱんぱんっと手を叩き、すぐさま先ほどまでの号泣般若だったメイドの人がどこかへ走り、すぐさま戻ってきた。
手にしていたのは、何やら紋章が書かれた一枚のカード。
「これは?」
「それはちょっとした魔道具で、所有者が誰だったのか確実にわかる仕掛けが施されているものですわ。エルメリア帝国関係の店、もしくはその首都内の店で出せば、わたくしの関係者と言うことで全商品半額になりますもの。ドレス以外にも日用品等を扱っているので、そちらを使うと良いですわ」
エルメリア帝国…確か、グラビティ王国近くにある国の一つで、過去に争うことはあったらしいが、今は友好国として交流を持っている国である。
そんな国の関係者であり、所作や道具の効果から考えると…いや、これ以上庶民の身であるからこそ、踏み入れないほうが良いかもしれないか。
「わかりました。このようなもの、お礼としていただけてありがとうございmす」
「いえいえ、こちらこそ助けられたのですから当然ですわ。恩には礼を、罪には破滅を、投げつけろというのがわたくしの家のモットーであり、大したことではありませんもの。それでは、ごきげんよう」
衛兵たちが戻ってきて、事情聴取のために向かうらしい。
確保したのは自分だが、そもそもなぜさらったのかの目的を聞き出すために向かうようで…ここでひとまず別れを告げられる。
ほんの少しだけ巡り合った、他国の少女。
その出会いは風のように通り過ぎていくのであった…
「…お嬢様、本当にあれを渡して良かったのでしょうか。助けていただいたとはいえ、一般市民に渡すには少々、金銭感覚の危うさを招きかねない者かと思われますが」
…ジャックと別れた後、少女はようやく糸から引き剥がして縄で拘束されたという不審者から情報を聞き出すために向かっている中、メイドから問われていた。
「大丈夫ですわ。わたくし、人を見る目ならば、ある程度はあると自負してますもの。彼自身に悪意などもなく、正直な様子からしてバカみたいなことに使わないはずですわ」
「そうでしょうか」
「ええ。それに、アンナ…あの子が使った道具、よく見ていなかったのかしら?あの不審者を捕らえたあの糸…わたくしが今日買った衣服の布地に使われていたものと性質が違えども、同じものが使われていたことに」
「…え?」
きらりと目を光らせ、そう告げる少女の言葉に、おどろくメイド。
「…おそらくは、何か関係があるものとみて良いですわね。彼とつながりを持っておけば、後々こちらの方も助けられることがあると思いますし、今のうちに多少縁をつないだ方が良いと判断したのですわ」
「そうですか…ええ、ミラージュお嬢様がおっしゃるのであれば、そうかもしれませんね」
「そうね‥‥この、皇女との縁、大事にしてほしいですわね…」
…そうつぶやきながら、少女は…エルメリア帝国の第3皇女ミラージュは先へ向かう。
今はまだ、小さな縁であり、これから先再会するのかは知らない。
けれども、どんなものであったとしても、繋いでおけば良いものになると感じたために、少しばかりつなぎを強くしていたのであった…
40
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
異世界転移は分解で作成チート
キセル
ファンタジー
黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。
そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。
※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。
1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。
よろしければお気に入り登録お願いします。
あ、小説用のTwitter垢作りました。
@W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。
………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。
ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!
キモおじさんの正体は…
クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。
彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。
その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。
だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
努力をしらぬもの、ゆえに婚約破棄であったとある記録
志位斗 茂家波
ファンタジー
それは起きてしまった。
相手の努力を知らぬ愚か者の手によって。
だが、どうすることもできず、ここに記すのみ。
……よくある婚約破棄物。大まかに分かりやすく、テンプレ形式です。興味があればぜひどうぞ。
転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~
柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。
想像と、違ったんだけど?神様!
寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。
神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗
もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。
とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗
いくぞ、「【【オー❗】】」
誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。
「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。
コメントをくれた方にはお返事します。
こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。
2日に1回更新しています。(予定によって変更あり)
小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。
少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる