上 下
14 / 14

13の旅『天空の国』

しおりを挟む
『おー‥‥‥こういうところを見ると、なんか別の世界で見た映画のあのセリフとか言いたくなるなぁ』

 上空で停車場所を探している中、ふと私はちょうどよさげな場所を見つけてつぶやいた。


 今日は気まぐれに、雲のまで飛行して走り抜けているのだが、とある大きな雲の上に差し掛かったところで、その雲がただの雲ではないことに気が付いた。


 というのも、地上にある風景のような光景が広がっており、まさに天空の都市というべき様な光景が広がっていたのだ。

 大きな牧場のような物もあれば、農場のような物もある。

 場所によっては雲の上だというのに、湖があって養殖場ができていたり、はたまたはワイバーンとか飛竜とか、そう言う呼ばれ方をするような生物が巣を作っていたりと、見ているだけでも面白い。

 ああ、ステルス機能があるから襲われずに済んでおり、働いている者たちにも見られていないのだろうけれども‥‥‥

『でも、人間がいないなぁ?』

 そこで動いているのは、人型だけど人間ではない存在たち。

 他の世界でも土や石などで出来た存在として見かけるような…‥‥ゴーレムというべき者たちが動いていたのだ。

 一見人間そっくりな類もあるけど、私自身が人ではないこともあってか、それらすべてが人ではないことは分かる。

 後ついでに、この世界へ立ち寄る前に別の世界でメンテナンスを受け、新しい機器を搭載したからこそ反応を確認できるが…‥‥人ならざる者ばかりしかいないようだ。あ、でも人の反応もちょこっとあったし、0という訳でもないのか。


 



 とにもかくにも、雲の上に存在する国とは面白そうなものなので、そこに停車することにした。

 着陸し、ブレーキをかけ、蒸気を吹き上げる。

 動輪が止まり、人型になったところできちんと雲の上に足を踏み入れて見たが‥‥‥何と言うか、土の感触とかとは全く違う。

 硬いような柔らかいような、寝転がったらふわっとしつつも反発して起き上るような、とにかく不思議な感触。

 こんな雲の上の国だからこその特有の感触とも言うべきものに、私は好奇心を抱く。

「よし、とりあえず話を聞けそうな人がいないか探ってみよう!」

 流石にこんな雲の上を出歩いて人に出くわしても、旅人ですと言って信じてもらえなさそうな気がするけどね…‥‥まぁ、一応話が通じそうな人がいないか探すために、ちょっとステルス機能を使って…‥‥



ドズゥン!!
「ん?」

 なにやら急に影ができ、雲の大地が震えた。

 後ろを振り返ってみれば‥‥‥そこには非常に大きな、純白のドラゴンが存在していた。

‥‥‥あれ?もしかして私、これ壊される死んじゃう












「‥‥‥なるほど、世界を旅する機関車で、人型になれる存在か…‥‥空を駆け抜けられるのであれば、簡単にここに来てもおかしくはなかったか」
「そうなんですけれども‥‥‥あの、信じてくれるのでしょうか?」
「ああ、信じるとも。知り合いに色々と変なのも多い分、人を見る目ができていると自負できるからな。後は、色々とこちらの能力もあるが‥‥‥」

 雲の上にあったお城の一室。

 そこに私は招かれ、あの大きなドラゴンが人型になって、前の方に座っており、お茶を出してくれた。


 全体的に白い青年というか、ドラゴンが人型を取るとはちょっと驚きである。

「いや、機関車が人型になるお前の方が、こちらにとっては驚くのだがな‥‥‥」
「それもそうですか?」

 うん、他人ごとではなかった。自分も人型になれる存在でした。


 とにもかくにも話を聞くと、ここは彼の持つ空の上の国の一つ…‥‥特に名称はないが、地上の人間たちからは天空の国だとか、龍の住まう楽園とか、色々と呼ばれているらしい。

 そして目の前の彼は、この国を作ったドラゴン‥‥‥この世界に存在するというドラゴンの頂点、龍帝と呼ばれる存在の中で、はるか上の地位にあるという神龍帝だとか。

 本当はれっきとした個人名もあるそうだが、それはだいぶ昔の話。

 今はさほど使う事もなく、ただ単純にこの名称で良いらしい。

「異世界からの客人は珍しいからな‥‥‥わざわざ場所を移してもらったが、迷惑ではなかったか?」
「い、いえそんなことはありません!!」

 迷惑でもないし、そもそも相手の方が力が大きいのが十分分かってしまうので直ぐにそう返答する。

 他の世界では、うっかり地雷を踏み抜いて、追いかけまわされたことがあったからね‥‥‥それはまぁ、嫌な思い出の一つとしつつ、苦い経験なのでちょっと気を遣うのだ。

「ははは、そこまで慌てなくとも良い。こちらとしてはそう言う存在は色々と見てきたからこそ、ちょっとやそっとで不敬とも思うようなことはない。そもそも、神龍帝だとかドラゴンの頂点とか言われてはいるが、自分ではそこまで責任を負っているような気もないからな」

 良いのか、この世界のドラゴンの頂点がそんな気で。

 っと思ったが、まあ口に出すことはなかった。



 とにもかくにも、話してみれば案外気のいい人である。

 どうやらこの国を治めている以上、他者の視点も聞きたかったようで、それが異世界の者ならなおさら興味を抱いていたようで、国の案内をしてくれた。

 ありとあらゆる天候を制御できるので、どの様な日でもいつでも新鮮な作物を収穫できる大農場。

 様々な職人ゴーレムと呼ばれる職人たちが腕を振るい、磨き合い、競い合う職人街。

 ちょっと困りものの動物がいる以外は、珍しい家畜が多い牧場。

 その他様々な場所を案内させてくれて、しかもどの様なことを行えるのかなどの説明などもしてくれて、物凄くためになったかもしれない。



‥‥一応、異世界の機関車である存在故か、ちょっと構造を調べさせてほしいと職人街でオーバーホール作業をされたけどね。

 職人ゴーレムたちが目を輝かせて、私の部品や構造を見て興奮していたけど‥‥‥ちょっと恥ずかしいような気がしなくもない。

 そして色々あった謎技術を分析したようで、分からないところもあったけれどもどうにかできるところもあったらしく、少し改良を行ってもらうことができた。


「これで、出力が1.5倍、耐久力も4~7倍ほど向上したらしいぞ」
『滅茶苦茶増えてないですかね?』

 メンテナンスを行える世界に行ったことはあるけど…‥‥その世界以上の技術がないですかね、ここ。

 あ、職人だけあって、その技術に特化した人が多い分、より細かく改良できたのか。

「あと技術的にちょっと進んで、また新しく発展できると喜んでいたぞ。ここで作業させてくれて、ありがとうな」
『どういたしまして』

 私としても自身の改良につながったのは良い事だし‥‥‥素直にお礼を述べておこう。

 あとは、その他の街並みや、こんな空の国に買い物に来る人がいるのかと思えるような商店街も巡り、中々充実しただろう。





‥‥‥そして数日ほど宿泊させてもらい、ここを去る時が来た。

 いつまでも長居するわけにもいかないし、この世界にこんな国があるなら、他にも面白そうな国がありそうだからね。

「そうか、もう行くのか」
『ええ、お世話になりました』

ボォォォっと汽笛を鳴らし、自身の蒸気を蓄え、発車準備を整える。

「そちらはこの世界を見て回った後に、また別の世界に行くのだろう?なら、その先でまた再会できるかもな」
『私としては、同じように世界を渡れるドラゴンがいたのも驚きですけれどね』

 この国にまた来たいが、その時に神龍帝はここにいる事が無い時もあるそうだ。

 どうやら彼は私同様に他の世界に出むことができるようで、たまに何処かへ遊びに行っていることが多いらしい。

 ならば、別の世界で偶然にも再会する可能性もあるし‥‥‥その時には、その世界で語り合って見たいだろう。

 酒を飲みかわしつつ、穏やかに、そして笑いあいながら再会の語り合いも旅の醍醐味であろう。


『それでは、発車いたします!!』
「ああ、またの再会を願おう!!異世界の列車よ!!」


 ボォォォォォォっと汽笛を鳴らし、動輪を動かし、私はここで得ることができた友の姿を後ろに見ながら、先へ進む。

 雲の地から離れ、天空の国が遠ざかっていくが…‥‥あの友人に、再び別の世界で会える予感はしているのだ。


 その予感に期待を抱きつつ、私はこの世界の別の国へ向かって、走り抜けていくのであった‥‥‥‥

 
しおりを挟む
感想 35

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(35件)

YO
2020.01.13 YO
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2020.01.13 志位斗 茂家波

ありがとうございます。
こちらの作品はかなりの遅い更新ですが、それでも更新をできるように考えます。

・・・・・しかしそれはそれで、結構いるのかぁ。
やっぱり使われやすいのだろうか?

解除
荒谷創
2019.10.21 荒谷創
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2019.10.21 志位斗 茂家波

*流石に変型合体などはしません

「でもちょっと、あれはあれでやってみたいような気がする」
「その場合、もっと弄ることになるが?」
「‥‥‥やっぱり遠慮しておきます」

‥‥‥あくまでも蒸気機関車なので、方向性を見失ったらだめだと冷静になって思った。
まぁ、某銀河鉄道のビッグボーイ型のあれとかもちょっとやってみたいけどね‥‥‥

解除
リョウ
2019.10.21 リョウ
ネタバレ含む
志位斗 茂家波
2019.10.21 志位斗 茂家波

神というか、それ見立てて収めているとかって話もあるんだっけか。
何にしても、機能向上は役に立つからいいかな。

‥‥‥いや、元の出力が明らかに普通の蒸気機関車から逸脱していたけどね。魔改造されて、更に改造されて、どこへ向かう気だろうかこの蒸気機関車。

解除

あなたにおすすめの小説

努力をしらぬもの、ゆえに婚約破棄であったとある記録

志位斗 茂家波
ファンタジー
それは起きてしまった。 相手の努力を知らぬ愚か者の手によって。 だが、どうすることもできず、ここに記すのみ。 ……よくある婚約破棄物。大まかに分かりやすく、テンプレ形式です。興味があればぜひどうぞ。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

幸せな帝国生活 ~「失敗作」と呼ばれていた王女、人質として差し出された帝国で「最重要人物」に指定される~

絢乃
恋愛
魔力が低いと蔑まれ「失敗作」扱いだった王女ソフィアは、人質として宗主国の帝国に送られる。 しかし、実は彼女の持つ魔力には魔物を追い払う特殊な属性が備わっていた。 そのことに気づいた帝国の皇太子アルトは、ソフィアに力を貸してほしいと頼む。 ソフィアは承諾し、二人は帝国の各地を回る旅に出る――。 もう失敗作とは言わせない! 落ちこぼれ扱いされていた王女の幸せな帝国生活が幕を開ける。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。