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1章 旅立ちと始まり
1-36 獲物狙いは、どこにでも
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‥‥‥ぱちぱちと焚火が音を立て、周囲を照らす。
ダンジョン、ハルゾランドの5階層の中央部分辺りであり、夜中かどうかわかりにくい場所だが、時間感覚を失わないようにする為の時計を見ればすでに深夜になっていることがうかがえるだろう。
そして目の前には、すやすやと寝息を立てている宝箱があり‥‥‥その内部には、少年とその従魔の蜘蛛の女性も一緒に眠っているらしい。
「‥‥‥ロイヤルチェストという最強の守りで、ぐっすりとか‥‥‥羨ましいことだ」
「野営で見張りをせずに済むとは良いとは思うぜぇ。でも、従魔じゃなければ、喰われるだけなのがシビアすぎるぜぇ」
「とは言え、ダンジョン内のセーフエリアならば守りを固める必要もないのは良いでやんすけどね」
魔物がどんどん湧き出るダンジョンや迷宮だが、実は一部には魔物が寄り付かない特殊な場所、セーフエリアと呼ばれる場所が存在することがある。
全ての階層にあるわけではなく、どこにどう生成されるのか法則性はまだわかっていないのだが、ダンジョンシティとして管理されている場所の物であれば、既にセーフエリアの場所を把握していることもあり、こうやって安全に休息をとる事が出来るのだ。
「それにしても、ナイトメアアラクネにロイヤルチェスト‥‥‥国滅ぼしクラスの魔物を従えるとは末恐ろしい少年だな。君たちも同じ様な魔物を従えさせることはできるかい?」
「いやいやいやいやいや!!無理ですって旦那ぁ!」
「あっしらには不可能でやんすよぉ!!」
「ははは、冗談だよ」
ここまでの護衛として雇っている冒険者たちに問いかけてみれば、物凄い勢いで首を振った。
まぁ、無理もないだろう。何しろ、相手は国滅ぼしの魔物‥‥‥宝箱の方は元とつくそうだが、それでも他の国々から見れば欲しがるようなものなのだから。
そう思いつつ、ゴルゾンボル王国の第5王子である私、アルフレッドは彼らを見ていた。
魔物に襲われていたところを、助けてくれたのは良いだろう。
だが、王子という身分でありつつも、王位継承権から離れているのを利用していつでも王家から出ても大丈夫なように魔物学者としての勉強中でもある私はすぐに、彼らがどの様な魔物なのか理解をしてしまい、どれだけの力を持っているのかという事も同時に悟った。
ああ、そうか。ダンジョンに入っている間でも手紙を届けてくれる郵便屋から受け取ったものに書かれていたのは、彼らのことだったのかという事を。
今いるこの国、メルドグランド王国で国滅ぼしの魔物を従魔にした冒険者が出たという話だったが‥‥‥こうして目の当たりにすると、本当だったのだと深く実感させられるものだ。
でも、宝箱もといロイヤルチェストの情報はまだなかったな。単純にまだ話が広まっていないだけなのかもしれないが、それでも広がるのは時間の問題だろうな。
「‥‥‥皆、一応依頼主として釘を刺しておくが、彼らに手を出すようなことは避けてくれよ?国滅ぼしの魔物の怒りを買えば、それこそその力を見せられてしまうというからな」
「「出すような馬鹿はそういないと思いたいんですがぁ!!」」
ここまで雇っている冒険者たちは、しっかりと理解してくれているようだ。まぁ、王子の護衛をさせるために雇う冒険者だからこそ、そうそう変な輩を雇う訳にもいかないのでしっかりと審議しているのだから問題あるまい。
これで変な奴らを雇っていたら、助けてもらっていたのにやらかし‥‥‥うん、やめておこう。惨劇が起こりそうな想像はしたくはない。
何しろ、そういう事になる輩は見てきているのだから。
ついでに言えば、自分の兄たちでも同じような過ちを‥‥‥「自分ならば絶対に大丈夫だ!!」と自信満々に行い、そして潰れ行く様を見てしまったこともあるのだから。
そう考えると、目の前で寝ている彼らはその潰れた兄に見つかっていたらまずかっただろうなぁ。まぁ、あの国だからどうなっても良いような気がしなくもないが、そんな事情も知らぬ民に迷惑がかかるようなことはない方が良い。
「そう考えると、これはこれでよかったのだろう」
噂だけでは、広まる話だけでは、その真偽は確かめようがない。
大げさな事、虚飾の話、そういう類かもしれないと思うところもあったが、こうやって直接出会い確信を持てるようになったのは幸いなことだ。
また、一応身分を隠してただの貴族デースとごまかしもしたが、それでも縁を繋げたのも良いだろう。縁というのは相手が良ければ、こちらにも利が出来ることもあるのだから。
あの場で助けられ、こうやってともに行動出来ている今は、本当に幸運だと思うべきだ。
そしてさらに言えば、彼らがこの階層で依頼を終えればともに期間を目指さないかという誘いをしたところ乗ってくれたのもあるので、帰り道の安全も確保されたも同然である。
この幸運と縁の繋がりに感謝しつつ、夜は更けていくのであった‥‥‥‥
「…‥‥それにしても、国滅ぼしクラスが二体か…‥‥普通、そんな簡単に従える様なことはできないはずなのだがな」
王子という身分でありながらも、魔物学者としての学問も収めているので、どれだけのことなのか分かるのだが…‥‥しかし、考えすぎなだけだろうか?いや、そうでないのかもしれないが‥‥‥
ダンジョン、ハルゾランドの5階層の中央部分辺りであり、夜中かどうかわかりにくい場所だが、時間感覚を失わないようにする為の時計を見ればすでに深夜になっていることがうかがえるだろう。
そして目の前には、すやすやと寝息を立てている宝箱があり‥‥‥その内部には、少年とその従魔の蜘蛛の女性も一緒に眠っているらしい。
「‥‥‥ロイヤルチェストという最強の守りで、ぐっすりとか‥‥‥羨ましいことだ」
「野営で見張りをせずに済むとは良いとは思うぜぇ。でも、従魔じゃなければ、喰われるだけなのがシビアすぎるぜぇ」
「とは言え、ダンジョン内のセーフエリアならば守りを固める必要もないのは良いでやんすけどね」
魔物がどんどん湧き出るダンジョンや迷宮だが、実は一部には魔物が寄り付かない特殊な場所、セーフエリアと呼ばれる場所が存在することがある。
全ての階層にあるわけではなく、どこにどう生成されるのか法則性はまだわかっていないのだが、ダンジョンシティとして管理されている場所の物であれば、既にセーフエリアの場所を把握していることもあり、こうやって安全に休息をとる事が出来るのだ。
「それにしても、ナイトメアアラクネにロイヤルチェスト‥‥‥国滅ぼしクラスの魔物を従えるとは末恐ろしい少年だな。君たちも同じ様な魔物を従えさせることはできるかい?」
「いやいやいやいやいや!!無理ですって旦那ぁ!」
「あっしらには不可能でやんすよぉ!!」
「ははは、冗談だよ」
ここまでの護衛として雇っている冒険者たちに問いかけてみれば、物凄い勢いで首を振った。
まぁ、無理もないだろう。何しろ、相手は国滅ぼしの魔物‥‥‥宝箱の方は元とつくそうだが、それでも他の国々から見れば欲しがるようなものなのだから。
そう思いつつ、ゴルゾンボル王国の第5王子である私、アルフレッドは彼らを見ていた。
魔物に襲われていたところを、助けてくれたのは良いだろう。
だが、王子という身分でありつつも、王位継承権から離れているのを利用していつでも王家から出ても大丈夫なように魔物学者としての勉強中でもある私はすぐに、彼らがどの様な魔物なのか理解をしてしまい、どれだけの力を持っているのかという事も同時に悟った。
ああ、そうか。ダンジョンに入っている間でも手紙を届けてくれる郵便屋から受け取ったものに書かれていたのは、彼らのことだったのかという事を。
今いるこの国、メルドグランド王国で国滅ぼしの魔物を従魔にした冒険者が出たという話だったが‥‥‥こうして目の当たりにすると、本当だったのだと深く実感させられるものだ。
でも、宝箱もといロイヤルチェストの情報はまだなかったな。単純にまだ話が広まっていないだけなのかもしれないが、それでも広がるのは時間の問題だろうな。
「‥‥‥皆、一応依頼主として釘を刺しておくが、彼らに手を出すようなことは避けてくれよ?国滅ぼしの魔物の怒りを買えば、それこそその力を見せられてしまうというからな」
「「出すような馬鹿はそういないと思いたいんですがぁ!!」」
ここまで雇っている冒険者たちは、しっかりと理解してくれているようだ。まぁ、王子の護衛をさせるために雇う冒険者だからこそ、そうそう変な輩を雇う訳にもいかないのでしっかりと審議しているのだから問題あるまい。
これで変な奴らを雇っていたら、助けてもらっていたのにやらかし‥‥‥うん、やめておこう。惨劇が起こりそうな想像はしたくはない。
何しろ、そういう事になる輩は見てきているのだから。
ついでに言えば、自分の兄たちでも同じような過ちを‥‥‥「自分ならば絶対に大丈夫だ!!」と自信満々に行い、そして潰れ行く様を見てしまったこともあるのだから。
そう考えると、目の前で寝ている彼らはその潰れた兄に見つかっていたらまずかっただろうなぁ。まぁ、あの国だからどうなっても良いような気がしなくもないが、そんな事情も知らぬ民に迷惑がかかるようなことはない方が良い。
「そう考えると、これはこれでよかったのだろう」
噂だけでは、広まる話だけでは、その真偽は確かめようがない。
大げさな事、虚飾の話、そういう類かもしれないと思うところもあったが、こうやって直接出会い確信を持てるようになったのは幸いなことだ。
また、一応身分を隠してただの貴族デースとごまかしもしたが、それでも縁を繋げたのも良いだろう。縁というのは相手が良ければ、こちらにも利が出来ることもあるのだから。
あの場で助けられ、こうやってともに行動出来ている今は、本当に幸運だと思うべきだ。
そしてさらに言えば、彼らがこの階層で依頼を終えればともに期間を目指さないかという誘いをしたところ乗ってくれたのもあるので、帰り道の安全も確保されたも同然である。
この幸運と縁の繋がりに感謝しつつ、夜は更けていくのであった‥‥‥‥
「…‥‥それにしても、国滅ぼしクラスが二体か…‥‥普通、そんな簡単に従える様なことはできないはずなのだがな」
王子という身分でありながらも、魔物学者としての学問も収めているので、どれだけのことなのか分かるのだが…‥‥しかし、考えすぎなだけだろうか?いや、そうでないのかもしれないが‥‥‥
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