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1章 旅立ちと始まり

1-29 どこかで誰かの胃が、爆発したらしい

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‥‥‥ブラッディボックスが仲間になり、旅路の供が増えた。

 一人で旅するよりも楽しくはあるだろうし、元々が宝箱の魔物だけに収納能力もかなりあるらしく、荷物の問題点を解決できるのはありがたい。

 名前としては流石に魔物名のままなのも味気ないので、『ラナ』と呼ぶことにした。「頑丈な宝箱の魔物」という印象があったので、そこからちょっと文字を取っただけである。

 その為、このまま普通に荷物持ちできつつ魔法も扱えるので遠距離攻撃可能な荷物持ちになる‥‥‥はずだった。




「…‥‥それで、その名前を与えた後に姿が変わったと?」
「はい。なんか、ブラッディボックスから別の魔物になっちゃいました」
【シュルル】
【グララァ】

 ガルサンドタウンのギルド、その執務室内。

 ここのギルド長を前にして、僕等はそう説明をしていた。

 無理もない。ブラッディボックスのラナの姿が、名前を与えて早々瞬時に光ったかと思えば、次の瞬間には違う宝箱の姿に変貌していたのだから。

 元々が宝箱の姿をしていたが、今度は白を基調としつつ金色の装飾が施され、あちこちに宝石が埋まっているような豪華な宝箱の姿になり、開けた際に生えていた牙は自由自在に収納できるようになったようだ。


「うーむ、ブラッディボックスのこの変化を見ると、おそらくエリート種の類だね。条件としては多分『三回仕える相手を変えた』だとすると…‥‥『ロイヤルチェスト』だろう」
「ロイヤルチェスト?」

―――――
『ロイヤルチェスト』
宝箱の姿をしている魔物のエリート種が変化するという、豪華な宝箱の姿に変わった魔物。
防御力が非常に強化されており、並大抵の武器などでは傷一つつかない宝箱になっている。
収納能力は非常に膨大であり、その気になれば一国を全て飲み込むことが可能な、『大喰いの魔物』として国滅ぼしの魔物に一時期分類されていたこともある。
ただ、魔法を自由に扱えたり、そもそも意志を持った宝箱の魔物という事で一度収納したものは認めた主や許可した相手以外に出し入れすることは不可能であり、一体だけで一国の宝物庫を兼ねることが可能なため、非常に有用性が高い。
また、主として認めた相手に絶対の忠誠を誓うので、国滅ぼしのカテゴリから外れつつ国の重要なものを入れる最上級の王族御用達収納箱として重宝されるようになった。
―――――

「つまり、この箱一つあれば、どんな賊が攻めてきたとしても国の財産に傷がつくこともなく、寿命が尽きるその時まで守り通すことが出来ることを意味するからね…‥‥仕えさせることが出来れば、それこそ主として在位している間は確実に、国の安寧は最低限確保できることを意味するんだよ」
「うわぁ…‥‥国滅ぼしのカテゴリから外れているのに、とんでもないものになっていたよ」
【シュルルルゥ】
【グラグラァ】
「でも、条件が判明しているとはいえそもそもブラッディボックスの時から仕えさせるのも難しい話だ。気に入らなければ、即バクンっとされるからね」

 なお、国滅ぼしの魔物に入っている逸話の城喰らいに関しては原因がはっきりした文献が残されており、主を殺した相手がいたせいでもあるそうだ。

 かたき討ちをするほど忠誠心が高いのもあるので、滅亡させた後は後を追うようにして自壊したそうだが‥‥‥国滅ぼしだった魔物の類としては、そこそこ有名でもあるらしい。


「というか、国によっては実は密かに代々仕えさせているってところもあるらしいからね。珍しさで言えばそこのハクロというナイトメアアラクネよりは無いな。カテゴリから外れているのもあって、そこまで秘匿もされていないよ」

 有名な類の元国滅ぼしの魔物で、珍しさもないらしいがそれでもとんでもない魔物であることには変わりない。

 そしてハクロ同様にしっかりとした検査もする必要があるようで、まだ数日程はここに留まることになるようだ。

「また、検査ですか」
「そうなるね。何しろ、国滅ぼしのカテゴリから外れているとはいえ、それでもすさまじい力を持つ魔物。きちんとした記録を取っておかないといけないよ」

 そういう訳で、すぐにこの街から出ることは叶わなくなった。

 まぁ、また検査するだけだしそんなに問題もないと言えばないのだろう。


「でも、エリート種を2体も持つことになるって、君はどういう運を持っているんだい?滅多にないようなことをしてくれるなんて、将来有望な冒険者として評価するべきか、あるいはもっと厄介なものを引っ張ってきそうな将来超不安な冒険者として評価するべきか…‥‥うーん、ランクの方も見直すべきかもしれないし、悩ませないでほしいよ」
「ははは‥‥‥」

 何にしても、これでエリート種が2体目になっているので冒険者としてのランクも上がる可能性が出たようだ。

 思わぬ出来事に、僕は苦笑いを浮かべるしかできないのであった…‥‥‥



「あ、そういえば収納能力が莫大になるようですけど、何か他にとんでもないものってないですよね?」
「んー、無いと言えばないらしいが‥‥‥気になるのは、この次かな?」
「次?」
「魔物の変貌が1度で終わると思うかい?案外、確認が余りされていないだけで、まだ変貌する可能性があるんだよなぁ‥‥‥」



 
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