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第3章:青年期~いよいよここから始まる話

97話 進め進め、どうやって

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SIDEエル

―――発生源まで木の船で到達することはできた。
 事前に上空から噴き出したであろう場所。水源というかスライム源というべきような場所にまで船を進めることはできたのだが…ちょっとだけ想定外なことになっていた。

 イメージとしては、ここまでの大規模なスライム水害の状態だと、噴き出しているのはスライムの底だと思われていた。
 こう、こぽこぽと水が沸き上がるようなものを考えてはいたのだが…この大量のスライムの時点で、そんな穏やかな噴出はありえなかったのだ。

ドバババババババババババババ!!

「…間欠泉かな?いや、スライムが勢いよく出ているから違うか」
「水柱ならぬスライム柱が立ってますね…」


 大量のスライムが用意できる場所というだけあって、噴出ポイントではすさまじい勢いでスライムが放水されており、ドバドバと供給されている様子。
 しかも、一か所ならばまだしも数か所から噴き出しているようで、スライムの底の方でいくつかの排出口ができてしまっているようである。

 そこのほうに元凶となった洞窟が…おそらくはスライムの発生量と水圧もといスライム圧力であちこちひび割れて大量のスライム開放口が出来上がっているところがあるだろうが、そこに向かって調べるのは難しいだろう。

 入らずとも外部から鑑定魔法でと思ったが、いかんせん周辺のスライム全体が邪魔をしているせいなのか、詳細な読みができない。

「となると、やっぱり直接調べるしかないか」

 スライムの大量発生の原因を調べるには、現地へ直接出向いたほうが良い。
 だがしかし、その現地は現在スライムの底…木以外は盛大に溶かしてしまう中に入ることになる。

 潜水艦のようなものを、木製で作る手がなくもない。
 だが、スライム圧力を考えると木では強度が不安であり、途中で潰されたらシャレにならない。
 

 もっとこう、木じゃなくて圧力に強く、それでいて長時間持つような防壁でもあれば…いや、待てよ?

「あ、そっか。ないなら作ればいいんだ」
「何をなのさ?」
「魔法で全体を覆える防壁だよ」

 無理やりな方法だが、大量にある魔力をむりやりこう放出してバリアーのようなものを作ることができないだろうか?
 ファイヤウォールとかアイスシールドとか、一応その手の防壁系の魔法の存在はあるらしく、出来ないことはないだろう。


「こう、シャボン玉のように全体を覆うような…‥いや、水中ならぬスライム中を進むのならば、潜水艦の方が良いか?そう考えて作るのであれば…‥‥」

 全身を守り、空気を生み出し、なおかつスライムの中に入っても解けないようにという事は…‥‥木の魔法で潜水艦のようなものを作ればいいのだ。


「名付けるならば…『マリンシャボン』!!」

 もう少しネーミングセンスを鍛えたくはあるが、それはまた後で考えよう。
 今はとりあえず、魔法を発動させると同時に空中にうごうごとと何かが発生する。

 ちょっとこう、イメージとしてはバリアー的なものを考えていたが…潜水艦のイメージも抜けていなかったせいか、潜水艦発生タイプの魔法になった様子である。

 ブクブクと膨らみ、ある程度形になったところで…

ひゅるるる、ドッボォォォン!!

 見事にスライムの湖の上に、軟着陸した。

「よし!成功!」
「なんなのさあれー!?」

 魔法で生み出されたのは、シャボン玉のような潜水艦。
 どういうことなのといえば、球状の物体が出来上がったのだが、一応潜水艦のような機能を持っているらしい。

―――
「マリンシャボン」
潜水艦生成を行う、水魔法の一種。
ただし、永遠に出続けることはなく、3時間経過すると破裂し消失する。
―――

 永遠に続く魔法ではないので、生み出されたシャボン潜水艦…シャボンなのに艦と言っていいのか不明だが、それでも入ることができるものができたので問題はない。
 シンプルな形状だが、全員入るだけの大きさも確保できているし、浮いているところから溶ける様子もない。

「多分、これなら大丈夫かな?潜航開始っと…」


 試しに沈めてみれば、ゆっくりと溶けずに下へ進み始める。
 粘性がそこそこあるせいか、少々力がいるが…それでも、どうにかできそうである。

 そのまま潜航を行い、いよいよ噴出しているその源泉というべき場所へ、向かっていくのであった…
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