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第3章:青年期~いよいよここから始まる話

84話 制御装置は、様々な作品で必要性が明確にある

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SIDEエル

…前に木製での蒸気機関車を作った際、強度や出力の安定性などの課題が多くあった。
 だが、その時の経験を活かしつつ、金属製による頑強さを追加すれば、より安定した出力を追って
制御しやすく…

ボボボボ!!ボッボォォォォォォォォォォォォウ!!
ボァァァァァァァァァァァウ!!

「やっちゃったぁぁぁぁぁ!!出力制御用のバルブが取れて、思いっきり大出力になっているぅぅ!!」
「速度出過ぎですよぉぉぉぉぉぉ!!これ、火は消しているのですぐ止まりますよね!?」
「難しいじゃろうなぁ。蒸気の熱があるのとボイラー自体が熱をため込んでいるから、火を消してもすべての蒸気を出し切るまで止まらぬじゃろ」

…悲しいかな。安定した出力を出せるように、ちょっとパワーを上げ過ぎた。
 
 金属製のボイラーによって圧力をよりかけやすくなったからこそ、より大量の蒸気を常に出せるようにして、制御することで安定した出力を予定し、火の魔法で溶接して蒸気漏れなどが無くしているので、蒸気が漏れ出ることによる出力低下も防いでいたはずだが…いかんせん、密閉性が強すぎたせいか、想定以上の蒸気がたまって、出力が上がり過ぎて…全力放出状態のはずだが、強い圧力がかかり過ぎて頑丈に作っていたせいで、逆に逃げ場に集中して大出力で噴出して爆走してしまう状態になってしまったのである。

「蒸気が切れれば自然に止まるはずだけど…どのぐらい、出てたかな」
「わからないね~♪」
「最悪なのさぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
 超強力な牽引力で機関車に接続されている馬車から、必死に振り落とされないようにしがみつハクロたち。
 機関車側に乗っていたものたちも勢いで後方に吹っ飛ばされて、馬車のほうに回収はされているのだが、操縦者がいないので当てもない大爆走となっている。

「こうなった飛び降りるしかなさそうじゃよ!!」
「この速度で飛び降りたら大怪我だよ~♪!」
「あの、一ついいかナ?」
「なんだ?」
「ハーピーの子と、そのマーメイドは宙を浮けるから、飛び降りるよりも飛んだほうが良いのでハ?」
「「「あ、それだ」」」」

 ルシアの提案に、皆は賛成する。
 この異常な速度に冷静さを失っていたが、よく考えたら上に逃げるという手段を取ることができたのだ。

「ミモザ、ジェリア!!頼む!!」
「流石に全員は重いのさ!!」
「分担して、なんとかいけるね~♪ついでに一曲、身体強化の『マッチョマチョの歌』だよ~♪」

 ミモザが全員の身体能力を向上させる歌を歌い、万が一に備えて体をすぐに動かせるようにして、準備を整える。
 大人数だが何とか強化されて持ち上がるようにして、全員で二人にしがみつき、上に飛翔した。

ボォォォォォ!!!

 宙に逃げた後、乗る者がいない状態のまま、暴走する蒸気機関車モドキは汽笛を上げて地の果て疾走し、姿を消していった。
 いつかは止まるだろうが…どれだけかかるかなぁ。結構な量の蒸気があったので、当分動いていそうな気がしなくもない。


 とりあえず今は、落ち着くために適当な場所に着陸し、遠ざかっていく様子を見るしかないのであった。

「あ、しまった。ルシア、ごめん。後できちんと直すつもりだった大槌だった機関車だったけど、爆走してどこかに行っちゃったよ」
「別に大丈夫だヨ。残った分だけでも、扱いやすいし、問題ないかナ」

 もともとはルシアの武器の一部だったが…こうなっては回収不可能だろう。
 行き先を追えばどこかで停車している可能性があるが、少々改造しすぎたので、どこまで行っているのか追うことはできない。
 行き先に湖や川があれば、流石に鉄の塊なので沈んで沈没するだろうが…そんなのあっただろうか。

 一応、念のために地図を確認すると、予想できる行先には人の住まう村などもない様なので、どこかで人を跳ね飛ばすようなことにはならないだろうと、思いたいのであった…
 少々不安げなことになったが、まぁ、被害がでないことを祈るしかないだろうなぁ…

――――――――――――――――――――――――――――――
SIDEとある盗賊団

「げへへっへ、そろそろあの商人一行でも襲うかぁ?」
「おうおう、いいですねぇおやびん」
「ここいらで、まとまった金がほしいでやんすからねえ」

…とある山奥にて、そこにいた盗賊たちは、近くを通りかかった商人たちの馬車を目撃し、陰に隠れながらひそひそと襲撃の計画を企てていた。

「ああ、久しぶりの獲物だし、まずは気が付かれないようにそっと背後から…」

…ボォォォォォ!!

「ん?なんの音だ?」
「おやびん、屁でもこいたんすか?」
「馬鹿かお前、こんな大きな音をた、」


ボッボッボッボボォォオオオオオオオオオオ!!
バァァァァァァァン!!
「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!?」」」

……最後まで盗賊の親分が言いきることはなかった。
 その瞬間に、彼らの背後に突如として謎の物体が接近し、空の彼方まで跳ね飛ばして、断末魔を最後に盗賊たちは山から消え失せてしまうのであった。

 それを見届けることもなく、暴走して爆走しているその物体は止まることもなく、どんどん先へと進んでいく。


 それから1時間ほど後、山を下りて平地を進んでいた襲われるはずだった商人たちは、転がっていた瀕死の盗賊たちを見て驚愕した。
 一応、賞金首に該当する者たちであり、その素顔などが手配されていたのですぐに何者なのか理解したのだが、そのぼろぼろ具合に首をかしげる。

 山のほうで密かに襲ってこようとしていた盗賊たちだということも知ることもなく、賞金首ということで都合のいい小遣い稼ぎになったと、盗賊たちを捕らえて商人たちはほくほく顔になるのであった…



 その後、しばらくの間、謎のヘビーな高速物体が各地に出没し、多くの賊や犯罪者たちをふっ飛ばしていったという噂が、その大本の者たちの耳へ届くのは、もっと後のことである…
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