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第3章:青年期~いよいよここから始まる話
80話 エルフらしさはどこなのか
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SIDEエル
…前世で見たテレビ番組で、たまに大食いタレントとかが出る時がある。
とんでもない量を漠々と食べまくるが、あの体のサイズでどこに入っているのか謎過ぎて、現実世界でもある不思議なものだと思って納得はしていた。
後で吐いているとかも考えられたが…こうやって直接目にしても、本当にどこにどう入るのかがわからないのが、大食いの人のお腹の中に秘められた大いなる謎なのだろうか。
「うっぷ…ありがとウ。でも、おいしかったけれど、食べ過ぎて苦シイ」
「そりゃ、30杯じゃ間に合わなそうで追加して70杯分やったから、それだけ食べれば苦しいんだろうけど、どこにあの量が入ったんだよ!!」
明らかに人の中に入らなそうな量をすべて食べきられたが、漫画表現にあるようなまん丸体系になることはなく、ほぼ変わらない体形でハーフ・ハイエルフの女性が食べきったのを見て、思わずエルはツッコミを入れるのであった。
空腹状態での大量の食事は体に悪そうだが、そんな様子も見せていないし、せいぜい食い過ぎてちょっと膨れたと言っている程度で変わっていない。
まるで、某ピンクの悪魔の無限の食欲のように見えたが…まさかとは思うけど、腹の中がブラックホールとかではないかと疑いたくなるだろう。
それはともかくとして、少々腹ごなしとして体を軽く動かしてから、改めて彼女はこちらに向き直った。
「さて、改めてお礼を言わせてもらいたイ。空腹で動けぬところを、救っていただき、かたじけなイ」
数深々とお辞儀しながら、目の前のエルフ…鑑定でもう名前もわかっているルシア=ベアトリクスはそうお礼の言葉を述べた。
「いやまぁ、ここで会ったのも何かの縁というものあったし、食料は一応余裕があったから大丈夫だけど…何がどうあって、あのオークたちの群れを壊滅させたんだ?というか、バーサーカーと化していたけど何があったんだ?」
「ああ、それは…ちょっとそこに至るまでのことを話すと少々長いが、大丈夫かナ?」
「ああ、問題ない」
急ぐ旅路でもないし、説明をしてくれる方がありがたい。
空腹でオークの群れをバーサーカーと化して襲っていたのはわかるのだが、そもそもなぜそんな状態になったのかまでの過程が気になったから、その理由を話してくれた方がすっきりするだろう。
そのため、何があったのかという詳しい話を、エルたちは聞くことにした。
――――――――――
SIDEルシア
――あれは、数日前の事であっタ。
その時はまだ、ワタシは森の中にひっそりと存在している、とあるエルフの集落に居住して身だったのサ。
エルフの上位種のハイエルフ、そのハーフであるから半端ものとか言われそうだけど、選民主義に染まるような気ぐらい高すぎる奴ばかりがいるところではなく、居心地のいい優しい人が多いところで、怪力を活かして道の邪魔になる岩を砕いたり、切り倒し薪を運ぶなど、皆と仲良く暮らせていたんだヨ。
まぁ、若干喋り方がおかしいと言われるガ…理由としては、今はもう亡き母曰く、お父さんに似たとか言われるんだよネ。お父さん、すんごい怪力の人だったようで、今はいないのが惜しまれるらしい。
それはそうとして、ある時、集落で年に数回ほど皆で踊って楽しむ祭りの準備をしていた時に…アイツが現れタ。
巨大な体、真っ赤な肉体美を見せ、ギラギラと光単眼をもったギガンテスの亜種らしきモンスターが襲って来たんダ。
この大槌はそいつが持っていたものを奪って手に入れたんだけど、手に入れる過程でちょっとやらかしタ。
強そうだったけど、殴り合いではこっちが勝って武器を奪って、頭を思いっきり大槌で横殴りにしたら、首が千切れて吹っ飛んだヨ。
それだけであれば、集落を襲ってきたモンスターを撃退をしたということで良かったんだけど、その頭の吹っ飛んだ先が問題だったんダ。
何処だったと思ウ?
よりによって、集落のエルフの長の元へ、それも常日頃から純粋なエルフこそがここで暮らすのが一番良いと、集落の中でも珍しいエルフとしての純粋さだけを濃縮したものをあがめるような奴がいる家に直撃したんダ。
しかも、直撃した瞬間に奴がちょうどギガンテスがどうなったのかと思って顔を出した瞬間だったようで、吹っ飛んだギガンテスの頭と真正面から接吻した上に、そのまま一緒に家の中に入ってそこで頭が爆散して…悲惨な光景になったんだヨ‥‥‥。
そのせいで、そいつは激怒しちゃって、集落を多そうとした奴を退治したけれどもそんな功績は関係なくて、日ごろからワタシを疎ましく思っていたのもあって、ワタシは集落を追放されたのサ。
しかも、ご丁寧にその長は集落の中でも、妙なものを覚えていたようで、二度と戻ってこれないように呪縛とやらをかけてきタ。
――――――――――――――
SIDEエル
「…そして、それから数日の間は集落から追放されて戻れなくなったワタシはさまよイ、空腹で倒れて、後は、気が付いたらオークたちを蹂躙していたんダ」
「なるほど…色々とあったんだな」
語り終えて一息を吐くルシア。
彼女の身の上話や経緯を知ったのは良いのだが、そんなことがあったとは。
エルフの集落をギガンテスから救ったようだけど、後始末で失敗して追放されたのは同情するだろう。
放っておけば蹂躙されただろうし、彼女以外に戦えるのがいたのか気になったが、ギガンテスから大槌を奪い取って攻撃できたのは彼女だけだったようなので、他にまともな戦力がいないような状況だったらしいのを考えると、功績としては大きいはずだが…その功績がチャラになるほど、日ごろから思われていた部分があったのかもしれない。
優しい人が多かったようだけど、それでもそいつはどうもやけに力のある家だったようで、誰も抵抗できなかったらしく、出ていく際に涙する人もいたらしい。
「それでも、ルシアがいなければ、そのギガンテスの亜種らしきモンスターに集落を蹂躙された可能性があるのならば、追放処分はひどいように思えるな」
「まぁ、それでも別に気にしていないナ」
「え?」
理不尽なような追放劇に同情したが、どうやら彼女自身は何とも思っていなかったらしい。
「常日頃から色々とうるさかったシ、純粋なエルフだけで暮らすべきだと言っているけど他の人には聞かれずに人望薄かったシ、そんなことを言っている割には物凄く卑しい目で他のエルフの少女たち…まだ幼い娘たちを狙っているやつだったシ、さっさと離れて正解だとは思えるんだよネ」
「幼い娘?」
「エルフ、寿命は長いけど幼い範囲だと、人間でいうなら見た目が4~6歳ごろの子をさすネ。年齢は二けたあるのがちらほらいるけどサ」
…なんだろう、今の返答を聞いて、追放を下したそいつがロリコンと思えそうなのだが。
いや、年齢が二桁の幼女に対して…ん?でもそいつもエルフなら人間換算で考えると…何のフォローにもならない気がする。
「というかそもそも、そんな人がなぜ長をやっているんですか?」
「皆面倒がって押しつけたからだヨ。まぁ、たいした権限もないし、祭りの時期を知らせるための飾りとしかいう認識しかなかったナ。本人はいつか絶大な権力を抱くとか、夢物語を買っていたけれど…エルフの集落他にあるけど、ものすごく小さいほうの田舎だったし、まぁ、無理だナ」
やっていたというか、都合のいい飾りにしかなっていなかったのか。
無駄に力はあるような裸の王様というべきような…追放も本当はできないような…でも、呪縛とかそんなものが使えたのであれば、何か妙な力を持っていて、逆らいにくい部分もあったのかもしれない・。
「まぁ、ちょうどよかったから受け入れたと言うのもあるけどネ」
にかっとルシアは笑い、彼女は語った。
その集落にずっと過ごしていたが、色々と集落の外を見て回りたいと思っていたらしい。
旅に出も出たいと思っていたが、彼女は集落の者たちにとっては、その怪力などで貴重な労働力だったらしく、ちょっと外へ出にくかったらしい。
だが、この追放処分を受ければ大義名分として出ていけると思ったからこそ、呪縛されつつもおとなしく処分を受け入れたようだ。
「とはいえ、外の世界を甘く見ていたヨ。おかげで道中中々食料に恵まれなくテ、三日三晩さまよって、空腹に倒れたんだよナ。だからこそ、ここでごちそうを施してくれたことに、物凄く感謝しているのダ」
再びエルの方を向き直り、ルシアは深々とお辞儀をした。
「こちらとしても、偶然とはいえオークの群れを潰しまくってくれたことで、ある程度の食料が確保できたことに感謝をしているよ」
潰されていたりして、少々使えなくなったものもあるが、肉料理のためにある程度確保できたのは大きいだろう。
ラーメン作りで結構消費したが、それでももとはまだとれている。
「空腹で死にかけたワタシを救ってくれたことは大きイ。あれだけおいしいものをもたらしてくれたし、感謝し切ろうにも仕切れなイ」
そう言いながら、ふとルシアは皆を見て、再びエルの方へ向き直った。
「見れば、ここにいる者達、皆貴方についているようダ。ならば、ここは体で返すのが礼儀カ?」
「いや、そんな見返りは求めていないからね!?というか、エルフってそういうことに関してはかなりガッチガチに硬そうなイメージがあるんだけど!!」
「ン、そんなことはなイ。あの腐れ無能長は特定の性欲を持って居たから例外だガ、エルフって基本的に長寿だからネ…永い寿命ゆえに、楽しみがそれしかないってことがあるんだヨ」
そんな種族事情、聴きたくなかった。
というか、まだ半日もたっていないのに、徹底的にエルフのイメージをルシアが砕いていくんだけど、どうしてくれるんだろうか。
とりあえず、そういう事をしなくても良いという事を何とか説得したうえで、もういろいろと疲れたから、今日はここに居を構えて、野宿を行うことになったのであった。
…そして、真夜中になり、周囲の生き物たちが寝静まって静寂が訪れる中、クラフトハウスの魔法で作ったログハウスの一室に、潜り込む影があった。
「やっぱり、真夜中の方がいいカ?」
「昼間の人の話を聞いてた?」
今日は皆それぞれ作った家の部屋で寝ていたのだが、ルシアが寝室に忍び込んできた。
うん、もう色々と諦めるべきか…エルフって草食ってイメージもあったが、彼女は肉食系というべきなのだろうか。エルフのイメージ、どこまで粉砕玉砕大爆破してくるのか。
そう思いつつ頭を抱えたくなるような気もしたくなったが、エルも男だし、据え膳食わぬは男の恥とも言うので、彼女が望むならということで相手をするのであった…
「ところで、ハクロ達は?」
「皆、寝ていたヨ。集落の特製、眠りのお香焚いたから大丈夫サ」
…準備良いんだけど。あの彼女たちが眠りこけるって、かなりやばいんじゃないかな?
…前世で見たテレビ番組で、たまに大食いタレントとかが出る時がある。
とんでもない量を漠々と食べまくるが、あの体のサイズでどこに入っているのか謎過ぎて、現実世界でもある不思議なものだと思って納得はしていた。
後で吐いているとかも考えられたが…こうやって直接目にしても、本当にどこにどう入るのかがわからないのが、大食いの人のお腹の中に秘められた大いなる謎なのだろうか。
「うっぷ…ありがとウ。でも、おいしかったけれど、食べ過ぎて苦シイ」
「そりゃ、30杯じゃ間に合わなそうで追加して70杯分やったから、それだけ食べれば苦しいんだろうけど、どこにあの量が入ったんだよ!!」
明らかに人の中に入らなそうな量をすべて食べきられたが、漫画表現にあるようなまん丸体系になることはなく、ほぼ変わらない体形でハーフ・ハイエルフの女性が食べきったのを見て、思わずエルはツッコミを入れるのであった。
空腹状態での大量の食事は体に悪そうだが、そんな様子も見せていないし、せいぜい食い過ぎてちょっと膨れたと言っている程度で変わっていない。
まるで、某ピンクの悪魔の無限の食欲のように見えたが…まさかとは思うけど、腹の中がブラックホールとかではないかと疑いたくなるだろう。
それはともかくとして、少々腹ごなしとして体を軽く動かしてから、改めて彼女はこちらに向き直った。
「さて、改めてお礼を言わせてもらいたイ。空腹で動けぬところを、救っていただき、かたじけなイ」
数深々とお辞儀しながら、目の前のエルフ…鑑定でもう名前もわかっているルシア=ベアトリクスはそうお礼の言葉を述べた。
「いやまぁ、ここで会ったのも何かの縁というものあったし、食料は一応余裕があったから大丈夫だけど…何がどうあって、あのオークたちの群れを壊滅させたんだ?というか、バーサーカーと化していたけど何があったんだ?」
「ああ、それは…ちょっとそこに至るまでのことを話すと少々長いが、大丈夫かナ?」
「ああ、問題ない」
急ぐ旅路でもないし、説明をしてくれる方がありがたい。
空腹でオークの群れをバーサーカーと化して襲っていたのはわかるのだが、そもそもなぜそんな状態になったのかまでの過程が気になったから、その理由を話してくれた方がすっきりするだろう。
そのため、何があったのかという詳しい話を、エルたちは聞くことにした。
――――――――――
SIDEルシア
――あれは、数日前の事であっタ。
その時はまだ、ワタシは森の中にひっそりと存在している、とあるエルフの集落に居住して身だったのサ。
エルフの上位種のハイエルフ、そのハーフであるから半端ものとか言われそうだけど、選民主義に染まるような気ぐらい高すぎる奴ばかりがいるところではなく、居心地のいい優しい人が多いところで、怪力を活かして道の邪魔になる岩を砕いたり、切り倒し薪を運ぶなど、皆と仲良く暮らせていたんだヨ。
まぁ、若干喋り方がおかしいと言われるガ…理由としては、今はもう亡き母曰く、お父さんに似たとか言われるんだよネ。お父さん、すんごい怪力の人だったようで、今はいないのが惜しまれるらしい。
それはそうとして、ある時、集落で年に数回ほど皆で踊って楽しむ祭りの準備をしていた時に…アイツが現れタ。
巨大な体、真っ赤な肉体美を見せ、ギラギラと光単眼をもったギガンテスの亜種らしきモンスターが襲って来たんダ。
この大槌はそいつが持っていたものを奪って手に入れたんだけど、手に入れる過程でちょっとやらかしタ。
強そうだったけど、殴り合いではこっちが勝って武器を奪って、頭を思いっきり大槌で横殴りにしたら、首が千切れて吹っ飛んだヨ。
それだけであれば、集落を襲ってきたモンスターを撃退をしたということで良かったんだけど、その頭の吹っ飛んだ先が問題だったんダ。
何処だったと思ウ?
よりによって、集落のエルフの長の元へ、それも常日頃から純粋なエルフこそがここで暮らすのが一番良いと、集落の中でも珍しいエルフとしての純粋さだけを濃縮したものをあがめるような奴がいる家に直撃したんダ。
しかも、直撃した瞬間に奴がちょうどギガンテスがどうなったのかと思って顔を出した瞬間だったようで、吹っ飛んだギガンテスの頭と真正面から接吻した上に、そのまま一緒に家の中に入ってそこで頭が爆散して…悲惨な光景になったんだヨ‥‥‥。
そのせいで、そいつは激怒しちゃって、集落を多そうとした奴を退治したけれどもそんな功績は関係なくて、日ごろからワタシを疎ましく思っていたのもあって、ワタシは集落を追放されたのサ。
しかも、ご丁寧にその長は集落の中でも、妙なものを覚えていたようで、二度と戻ってこれないように呪縛とやらをかけてきタ。
――――――――――――――
SIDEエル
「…そして、それから数日の間は集落から追放されて戻れなくなったワタシはさまよイ、空腹で倒れて、後は、気が付いたらオークたちを蹂躙していたんダ」
「なるほど…色々とあったんだな」
語り終えて一息を吐くルシア。
彼女の身の上話や経緯を知ったのは良いのだが、そんなことがあったとは。
エルフの集落をギガンテスから救ったようだけど、後始末で失敗して追放されたのは同情するだろう。
放っておけば蹂躙されただろうし、彼女以外に戦えるのがいたのか気になったが、ギガンテスから大槌を奪い取って攻撃できたのは彼女だけだったようなので、他にまともな戦力がいないような状況だったらしいのを考えると、功績としては大きいはずだが…その功績がチャラになるほど、日ごろから思われていた部分があったのかもしれない。
優しい人が多かったようだけど、それでもそいつはどうもやけに力のある家だったようで、誰も抵抗できなかったらしく、出ていく際に涙する人もいたらしい。
「それでも、ルシアがいなければ、そのギガンテスの亜種らしきモンスターに集落を蹂躙された可能性があるのならば、追放処分はひどいように思えるな」
「まぁ、それでも別に気にしていないナ」
「え?」
理不尽なような追放劇に同情したが、どうやら彼女自身は何とも思っていなかったらしい。
「常日頃から色々とうるさかったシ、純粋なエルフだけで暮らすべきだと言っているけど他の人には聞かれずに人望薄かったシ、そんなことを言っている割には物凄く卑しい目で他のエルフの少女たち…まだ幼い娘たちを狙っているやつだったシ、さっさと離れて正解だとは思えるんだよネ」
「幼い娘?」
「エルフ、寿命は長いけど幼い範囲だと、人間でいうなら見た目が4~6歳ごろの子をさすネ。年齢は二けたあるのがちらほらいるけどサ」
…なんだろう、今の返答を聞いて、追放を下したそいつがロリコンと思えそうなのだが。
いや、年齢が二桁の幼女に対して…ん?でもそいつもエルフなら人間換算で考えると…何のフォローにもならない気がする。
「というかそもそも、そんな人がなぜ長をやっているんですか?」
「皆面倒がって押しつけたからだヨ。まぁ、たいした権限もないし、祭りの時期を知らせるための飾りとしかいう認識しかなかったナ。本人はいつか絶大な権力を抱くとか、夢物語を買っていたけれど…エルフの集落他にあるけど、ものすごく小さいほうの田舎だったし、まぁ、無理だナ」
やっていたというか、都合のいい飾りにしかなっていなかったのか。
無駄に力はあるような裸の王様というべきような…追放も本当はできないような…でも、呪縛とかそんなものが使えたのであれば、何か妙な力を持っていて、逆らいにくい部分もあったのかもしれない・。
「まぁ、ちょうどよかったから受け入れたと言うのもあるけどネ」
にかっとルシアは笑い、彼女は語った。
その集落にずっと過ごしていたが、色々と集落の外を見て回りたいと思っていたらしい。
旅に出も出たいと思っていたが、彼女は集落の者たちにとっては、その怪力などで貴重な労働力だったらしく、ちょっと外へ出にくかったらしい。
だが、この追放処分を受ければ大義名分として出ていけると思ったからこそ、呪縛されつつもおとなしく処分を受け入れたようだ。
「とはいえ、外の世界を甘く見ていたヨ。おかげで道中中々食料に恵まれなくテ、三日三晩さまよって、空腹に倒れたんだよナ。だからこそ、ここでごちそうを施してくれたことに、物凄く感謝しているのダ」
再びエルの方を向き直り、ルシアは深々とお辞儀をした。
「こちらとしても、偶然とはいえオークの群れを潰しまくってくれたことで、ある程度の食料が確保できたことに感謝をしているよ」
潰されていたりして、少々使えなくなったものもあるが、肉料理のためにある程度確保できたのは大きいだろう。
ラーメン作りで結構消費したが、それでももとはまだとれている。
「空腹で死にかけたワタシを救ってくれたことは大きイ。あれだけおいしいものをもたらしてくれたし、感謝し切ろうにも仕切れなイ」
そう言いながら、ふとルシアは皆を見て、再びエルの方へ向き直った。
「見れば、ここにいる者達、皆貴方についているようダ。ならば、ここは体で返すのが礼儀カ?」
「いや、そんな見返りは求めていないからね!?というか、エルフってそういうことに関してはかなりガッチガチに硬そうなイメージがあるんだけど!!」
「ン、そんなことはなイ。あの腐れ無能長は特定の性欲を持って居たから例外だガ、エルフって基本的に長寿だからネ…永い寿命ゆえに、楽しみがそれしかないってことがあるんだヨ」
そんな種族事情、聴きたくなかった。
というか、まだ半日もたっていないのに、徹底的にエルフのイメージをルシアが砕いていくんだけど、どうしてくれるんだろうか。
とりあえず、そういう事をしなくても良いという事を何とか説得したうえで、もういろいろと疲れたから、今日はここに居を構えて、野宿を行うことになったのであった。
…そして、真夜中になり、周囲の生き物たちが寝静まって静寂が訪れる中、クラフトハウスの魔法で作ったログハウスの一室に、潜り込む影があった。
「やっぱり、真夜中の方がいいカ?」
「昼間の人の話を聞いてた?」
今日は皆それぞれ作った家の部屋で寝ていたのだが、ルシアが寝室に忍び込んできた。
うん、もう色々と諦めるべきか…エルフって草食ってイメージもあったが、彼女は肉食系というべきなのだろうか。エルフのイメージ、どこまで粉砕玉砕大爆破してくるのか。
そう思いつつ頭を抱えたくなるような気もしたくなったが、エルも男だし、据え膳食わぬは男の恥とも言うので、彼女が望むならということで相手をするのであった…
「ところで、ハクロ達は?」
「皆、寝ていたヨ。集落の特製、眠りのお香焚いたから大丈夫サ」
…準備良いんだけど。あの彼女たちが眠りこけるって、かなりやばいんじゃないかな?
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