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第3章:青年期~いよいよここから始まる話

75話 一応、肉食系でもあるようです ※R15?

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SIDEエル

ボォォォォ!

 勢いよく汽笛を鳴らす蒸気機関車モドキを走らせ、速度がかなり出て、普通の馬車であれば3泊はする道のりをたった1泊ですまし、無事に村へとエルたちは到着した。
 だが、素人手作りの無理やり再現した蒸気機関車モドキの車体はすでに限界を迎えていたようであり、ブレーキをかけた瞬間、車体から蒸気がボンっと噴き出し、壊れてしまうのであった。

「うわぁ、やっぱり強度不足とかあったなこれ」
「よく無事にここまで持ちましたよね…」

 車体が軽く爆発はしたが、それでも停車に支障はなかった。
 なまじ頑丈にしていたがゆえに、爆発の規模が車体だけに抑えられただけのようで、メントスコーラのような爆発になりかけるも何とか周囲までは広がらなかったらしい。
 その代わりに、えげつないめくれ上がり方をしていたりするが…この辺りはまだ改良すべき点が多すぎるのだろう。どうにか無事に村に着くまで持ってくれたことに感謝したほうが良いかもしれず、このデータを今後に生かそうと、残骸もしっかり回収したのであった。

 とりあえず、村に到着して実家に入ってすぐにでもスローライフの地を見つけるたびに出てもよかったが、その前に食料やらなんやらと準備する必要もあるし、焦るようなものでもない。
 というか、帰郷して早々ある事実が判明してしまったので、ちょっとだけ予定を遅らせる羽目になった。


「はぁぁぁぁぁ!?母さん、妊娠したの!?」
「ええ、妹か弟かまだ分からないけれど、あなたお兄ちゃんになるわよ」
「ふはははは!!また家族が増えるぞ!!」

 村に帰郷して早々に、まさかの両親からの衝撃のカミングアウト。
 学校にいる間に連絡もなかったが、どうやら驚かせるために黙っていたらしく…なんと、母ルインの妊娠が発覚したのだ。
 村につくまではルインも父のヘルンもその事実に関して知らせては来ず、驚かせる目的自体は成功したようだが、この年になってまさかの兄になるとは…人生ってわからないものでもある。

 あ、でも考えたらどこぞの国王はたくさん子供いるからな…案外、珍しいものではないのか?

 それはともかくとして、新しい家族が増えるのは喜ばしいことだろう。
 
「とはいえ、まだ安定期ではないからな、当分気が抜けないのだ」
「ええ、でも子供が増えるのは良いわぁ。この子が独り立ちしてさみしくなりそうだったけど、またふえるのは楽しみね」
「…うーん、何とも言えないな」

 今のエルの年齢は17才、つまりそれだけ年の離れた妹か弟が産まれると考えるとどう返答すればいいのかいまいちわからない。
 某永遠の成長しない愉快な一家は確かそれなりに年齢差があったとはいえ、実際に我が身に年の離れた弟か妹が生まれるのは前世で未体験なこと。いや、体験していたとしても、どう対応すればいいのかわからないところがあるだろう。

「でも、そうなると私達にとっては義妹か義弟が生まれることになるのでしょうか?」
「そういうことになるのぅ…ふむ、楽しみじゃな」
「わくわく、お姉ちゃんと、呼んでもらえるかな?」
「まだ先のことになるとは思うけどね~♪」
「増えるのは良いことなのさ!」

 家族が新たに増えるのは喜ばしいようで、ハクロ達も喜んでいる様子。
 なお、予定日としてはどうやらあと8~9カ月ほどかかるらしいが、今の季節は春だから…雪の降る季節が近づいたころ合いに、ようやく顔を合わせることになるのだろうか。


「まぁ、お前たちが独り立ちするのはいいが、妹か弟かもしれない子が産まれるころには戻ってきて欲しいぞ」
「そりゃ、言われなくても誕生するなら戻ってくるよ」

 父ヘルンの言葉に、エルたちはそう返答する。
 自分達にとっても家族だし、新たな命の誕生は見てみたい。
 これからスローライフを送れる地を求める旅を行う予定だが、その中で楽しみなイベントが一つ、追加されたようなものだ。

 それはそれとして、実家に帰って早々一つ、気になる点もあった。

「ところで父さん、家の裏にあった残骸って…」
「…息子よ、何も言わなくてもいいぞ」

 エルが尋ねると、ヘルンはそっと目をそらした。
 やっぱりあれ、両親たちの仕業か。目は口程に物を言うらしいが、このしぐさだけで何がどうあったのかわかってしまう。
 そういえば、結構激しくやっているとかそれっぽい気配もあったと思うが…家の裏側に山のように積み重なっている廃棄物は早めに片づけたほうが良いと思う。
 相当激しくやっていたのだろうが、後片付けもしっかりしてほしいかな…そういえば、ベッドが良く売れる客がいるとか前にどこかの商会で聞いた覚えがあったけど、まさか…ね?

 とにもかくにも、新たな家族が産まれそうなのはめでたいことであった。









…そして、その日の晩、ふとエルは目を覚ました。
 そこには、いつもならハンモックで寝ているはずのハクロが、珍しく堂々とエルのベッドの上にまたがる形で乗っていた。
 衣服は脱ぎ捨て、窓から入り込む月明かりによって照らされて、彼女の美しい姿が生まれたままの姿のように映し出されている。

 何を思ってこんなことを、と口に出そうとしたが、その表情からすぐに何をしようとしているのかエルは理解した。

「…もしかして、触発された?」
「ええ、ちょっと…いつもならもうちょっと奥手ですが、たまには私も攻めたくなるのですよ」

 ふふふっと妖艶な笑みを浮かべ、ちょっとなれないように見える舌なめずりをするハクロ。
 その姿は蜘蛛の、狩人のような気配を漂わせつつも、目を離せないような別の美しさを魅せてくる。

「抜け駆けは、皆が怒るんじゃないか」
「あ、それは大丈夫ですよ。今回はしっかり、皆と話し合ってますからね。黙ってやるようなことでもないのですが…まぁ、あと数日ほどこの村に滞在するのであれば全員とゆっくりできるということで、了承済みなのです」
 
 いつもならば隙を見て抜け駆けのような真似をしていたが、流石にそれをやらかした後の争いをこの実家の村で行うのは不味いと学習しているのだろう。
 だからこそ、全員でしっかり事前に話し合っておくことでいらぬ争いを避け、何も考えずに肉食獣としての高ぶりを発散する気のようだ。

「それに…エルが望む場所を探して旅に出ると、野外ではいつできるか分かりません。なので、機会があるならば…安全を確実に確保できることがあれば、しっかりと交わろうと思っていますからね…」


 そう言いながら、ハクロはそっとエルに口づけをした。
 拒絶することもなく、求められるままにエルも任せ、互いの気持ちを確かめ合う。

 
「さぁ、たまにはこういう交わりもヤりましょうか」

 口を放し、ぺろりと二回目はちょっとなれた舌なめずりをして、妖艶な笑みを浮かべてそう告げるハクロ。
 恍惚とした表情で、もう準備万端のようであり、攻める気はあるようだ。
 けれども、攻められ続ける気もないし…あいてをするならば、こちらのほうが上回りたい。

 相手はモンスター…獲物を狩る者。
 だが、狩る者は常に狩る側に立たず、狩られる側に回ることもよく覚えさせないとね…
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