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第2章:少年期後編~青年期へ
52話 ある意味テンプレだと思うかもしれない
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SIDEエル
「…毎年こういうのがあると思うんだけどさ、夏休みの宿題のこの量って鬼畜の所業だと思うんだよなぁ」
「まぁ、そうですね。でも、今日やると決めた分はきちんとやらなければいけませんよ」
エルのつぶやきに対して、ハクロも同意するが、無理もないだろう。
夏休みとなって、村に帰郷して数日。毎年恒例の大量の夏休みの宿題は辛いので、分散して行っているのだが、だんだんと学年後期に入っているせいか、量が増加していたりするのだ。
内容としてはあくまでも休みの間の復習に近いわけなので、まじめに勉学に励んでいればそこまで難しくはないけれども、量が多くて放置したらきつくなる。
今日はこれだけ、明日はさらにこれだけと毎日決めているが…それでも、大変である。
何にせよ、早朝からさっさと片付けようと、ぶつくさと文句をたれつつも本日やる分を終えたころには、太陽が真上に近づいてきていた。
お昼時が近づいているので、台所のほうでタマモが料理の手伝いをしているようで、いいにおいが漂ってくるのだが、どうやらもうちょっとだけかかるらしい。
「むぅ、じゃができれば何かスパイスが欲しいんじゃよなぁ」
「うーん、そうなってくるとそうねぇ…ねぇ、エル。森の中でボボッスの実を探してきてくれないかしら?カトレアちゃんが作るのもいいけれども、甘みのあるやつは時間をかけてなっていないとだめだから、いいのが欲しいわ」
「あー、わかったよ母さん。それじゃ、ちょっと出かけてくるね」
ボボッスの実は、前世でいうところの香辛料に該当する実の一種だが、ちょっと特殊なせいしつをもっており、実がなってから3日以上経過したものが一番おいしい辛さを有するものなのだ。
カトレアの力でも入手は可能だが、彼女の方法では基本的になりたてになってしまうものなので、適度な時間経過を経た木の実をすぐに得ることができるわけではない。
そこで、昼食の向上のために、僕らは近場の森に訪れて、ついでにおやつの時間にも使える甘い木の実などを求めていた。
「うーん、他の木の実は多く集まるけど、ボボッスはなかなか見つからないなぁ」
「ふみゅ、辛い木の実、意外と見つけにくい」
「甘い木の実のほうがこの周辺だと多いですもんね。…それにしても、相変わらずなのですが、エルが探した時にだけ大量に採れるのってなんででしょうね?」
「それを言われても、何でかは分からないなぁ」
森の中で木の実を見つけて収穫しているのだが、毎回こうやって集めているとなぜか一番見つけやすく、すぐに用意していたかごの中にいっぱいになるほど大量に集まってしまった。
しかし、これだけ量があってもなかなかお目当てのものにたどり着けないのは、ちょっと不便かもしれない。いつもなら結構都合よく見つけられるのだが…たまにこんな不調もあるかな。
いつもいつもすべてが思い通りになるわけもないし、ならないほうがおもしろいのもあるけれどね。繰り返し過ごす歯車のような日々よりも、何かしらの変化がいつも起こるような楽しい日々のほうが受け入れやすいのと同じ感じだろう。
朝食に毎日適当にパンを食べて過ごす、ブラック企業勤めの時のようなものよりも、朝毎回違うものを食べられる今の暮らしのほうが圧倒的に良いのがその最たる例である。
いや、そもそもブラック企業勤め時代、朝食抜きも多かったような…パンだけじゃなくてコンビニおにぎりで過ごした時もあったな…めっちゃ安いけど、あれはあれでおいしかった記憶はある。
そういえば、この世界でおにぎりを見たことがないような?
パンはあるから小麦のようなものを確認できているし、米もありそうなものだがなぁ。かなりはるか東方の国々であるかもしれないし、そこは気になるところ。
パン暮らしも悪くはないが、やはり前世の感覚でいえばお米もしっかり食べたいところ。
しかし、鑑定魔法で調べたくともそう都合よくはいかないし…‥‥卒業後、スローライフを送るための地を探す際に、米も一緒に求めてみようかな?田んぼがある暮らしも、良さそうだ。まぁ、そんな都合よく農業できないけどね。ゲームとかだと楽そうだけど、現実だと非常に厳しいが…それでも、ちょっとやってみたいことには変わりない。
そう考えつつも、どうにかちょうどいい感じのボボッスの実をいくつか発見し、収穫したほかの木の実もいっしょに持って帰って、家へ帰ろうとした……その時であった。
―――――グエエェェェェ!!
「ん?」
「にゅ?」
「何か、大きな声がしましたね?」
ものすごく野太いような、大きな声が響いたが‥‥‥人の鳴き声とか、断末魔とか言った類ではなさそうだ。いつぞやかハクロ達に首を絞められてゴキッと音を立てた賊たちの声に似ているようでも、違う感じだろう。
と言うか、空から聞こえてきたようである。
そう思い、なんとなく気になって森の中でも木々がちょうど倒れて広場になっている場所の、大空が見える、開けたところに出たところで空を見上げると、その鳴き声を出したものの姿を目にすることができた。
「でかっ!?何あの鳥は!?」
結構高いところを飛んでいるようなのに、はっきりと見えるほどの大きな鳥。
鷲とか鷹とかなんかよりもはるかにでかく、明らかに何かのモンスターのようだ。
「『鑑定』!」
気になったのでとっさに鑑定魔法を使用してみたのだが…残念ながら、適応圏外のようで詳細が見れない。
流石に対象との距離が遠すぎると名前ぐらいしか見えないようで、見えたのは種族名の『巨大怪鳥ギギモゲボンブ』というぐらいだ。
変な名前だなと思いつつも、ふと、僕らはあることに気が付いた。
「あれ?何か動きがおかしくないか?」
「え?‥‥‥あれ?確かに変ですね」
怪鳥は鳴き声を上げつつも、上空で何やらバタバタと動いていた。
足のほうで何かをつかんでいるようだが、あの足につかんでいる何かの攻撃を受けているようで、ものすごく暴れている様子だ。
そう思いつつも、観察していると違う動きに切り替わった。
―――――グエェェェェェェェ!!
けたたましく声を上げ、ものすごくのけぞったかと思えば、足に持っていた何かを落とした。
そしてその場から逃げるようにして素早く飛び去ったが、今、何を落としてたのか。
「んん?あれ?なんか人っぽい何かがおちてくるんだけど!?」
「ええっ!?」
どうも人の手や頭っぽい影があったので、慌てて人命救助のために俺たちは動き出す。
状況が状況だけに、なんとなく某天空の城風に言うのならば叫びたい言葉もあるのだが、確信を持って言えないのでちょっと我慢をしておく。
「ハクロ!糸を出して急いでネットを作り上げろ!」
「了解です!」
素早くハクロに指示を出し、落ちてきた人を受け止めるためのネットを張り出した。
だが、かなり高いところか落ちてきているようなので、このままでは受け止めても勢いを殺しきれずに落下の衝撃が伝わってしまう。
もうちょっと落ちてきている人が動いてくれればいいのだが、残念ながら抵抗で力尽きたようで、動く様子も見えないだろう。
「カトレア!ネットを張った木を成長させられるのなら、あの人を受け止められる高さにできないか!?ネットで確保しても勢いで地面に激突する可能性もあるし、少しでも受け止めてからの地面前の距離を稼ぐんだ!!」
「ふみゅっ!了解!」
素早くネットを張った木を、カトレアが成長させて上に伸ばす。
丁度伸び切ったタイミングで、そのネットに落ちた人が入り、みょいいいいんっと伸びて…
ばいいいいいん!!
「「「飛んじゃったぁぁl!?」」」
伸縮性があだとなったようで、トランポリンのごとく跳ねてしまったらしい。
そのせいでおかしな軌道に飛んでしまい、設置が間に合わなさそうな状態だ。
「やばいやばいやばいどうしよう!?」
「落ち着いてくださいエル!!あ、そうだ、エルの魔法は!!」
「それだぁ!!」
こんな時にこそ、無駄に多い魔力を生かした救助方法があるじゃないか。
そう思い、どういうのがいいのかすぐに判断し…ここは手近にあったこの木の実を使う。
「カトレア2号が生まれないように願いつつ、とりあえずこれで衝撃を全部殺せる地面ができてほしい!!急成長植物対応魔法『アットグングン』!!」
詠唱とかその過程もすっ飛ばし、自身の魔力で無理やり木の実を成長させ、草の大地を作成する。
使用した木の実はモッチリンの実と呼ばれているもので、もちもちした感触の木の実はもちろんのこと、その実はふかふかの綿のような木々になるので、一瞬のうちに綿で敷き詰められるような地面と変り果て、その上に無事に人が落ちてくれた。
ぼっすぅん!!
「よし!!うまいことできた!!」
「よかったですよ、エル!!」
「私2号…は、なかった。ちょっと残念」
ははは、カトレアのことがあったのだし、多少どうにかなるように願っていたがうまくいってよかっただろう。
そんなことも思いつつ、身の無事を確認するためにその人影へ僕らは駆け寄ったのだが…近くに来て、ようやく気が付いた。
「…あれ?人じゃない?」
遠目で見たら人影だったが、間近で見れば全く違った。
確かに手や頭はあり、綺麗な青い髪に、整った顔の女性だったんだけれども、人の足を持っていなかったのだ。
一言で言うのならば…魚としか言いようのない下半身。
鱗は綺麗な宝石のような水色だが、所々が傷を負ってはがれており、血を流している。
よく見れば肌とかにも細かな傷があり、相当疲労しているようだ。
「人魚?いや、何か知るにはこっちのほうが早いか。『鑑定』」
姿に驚愕しつつも、まずは治療しつつ正体を確かめるために、ハクロ達が素早く薬草や糸での包帯で手当てをする中、鑑定魔法を使用して詳細を探ることにした。
――――――
種族名:「クリスタルマーメイド(希少種)」
名前:無し
性別:メス
状態:「水分不足」、「失血」、「骨折数か所」
「水分不足」:陸上の生物が陥る水分不足とは異なり、水生の者たちに起こりうる、長時間の水離れにより水分が無くなり、乾燥してしまう状態。いわゆる干物になりかけており、水分を早急に取らなければ危険な状態。
「失血」:血が流れ過ぎて足りていない状態。傷口を防ぎ、造血剤を投与しないと危険。
「骨折数か所」:肋骨など、各箇所に骨折あり。
『クリスタルマーメイド』
一般的には「人魚」や「セイレーン(海に住むタイプ)」などと呼ばれる「マーメイド」というモンスターの中でも珍しい、希少なモンスターの一種。
水中行動だけではなく、陸上では空を泳ぐことが可能な特性を持っており、泳げる場所はすべての空間ということで活動範囲は広い。
ただし、それでも水とは切っても切れない関係にあり水が欠かせないゆえに水辺から離れることを好んですることはない。
マーメイド種は基本的に有効的なモンスターとしても知られており、人懐っこい性格をしているものが多かったのだが、その肉には不老長寿の効果があると根も葉もない噂があり、狙う輩もいるせいで、人間不信に陥っているものも存在している。
また、歌声には様々な力があるとされるが、有名なのは雨を呼び寄せたりすることなどがあげられるだろう。
―――――――
「つまり、水辺から離れちゃダメなのか」
「となると、早く水がないと不味いですよね?」
「あ、そうだそうだ。とりあえず応急的に、適当に水球の魔法で、これに突っ込もう」
鑑定結果に驚きつつ、何故ここにいるのかなどを聞くよりも、今は手当てをしないと相当不味い状態なので、慌てて治療と荒っぽいながらも水分補給を行うのであった‥‥‥
「…毎年こういうのがあると思うんだけどさ、夏休みの宿題のこの量って鬼畜の所業だと思うんだよなぁ」
「まぁ、そうですね。でも、今日やると決めた分はきちんとやらなければいけませんよ」
エルのつぶやきに対して、ハクロも同意するが、無理もないだろう。
夏休みとなって、村に帰郷して数日。毎年恒例の大量の夏休みの宿題は辛いので、分散して行っているのだが、だんだんと学年後期に入っているせいか、量が増加していたりするのだ。
内容としてはあくまでも休みの間の復習に近いわけなので、まじめに勉学に励んでいればそこまで難しくはないけれども、量が多くて放置したらきつくなる。
今日はこれだけ、明日はさらにこれだけと毎日決めているが…それでも、大変である。
何にせよ、早朝からさっさと片付けようと、ぶつくさと文句をたれつつも本日やる分を終えたころには、太陽が真上に近づいてきていた。
お昼時が近づいているので、台所のほうでタマモが料理の手伝いをしているようで、いいにおいが漂ってくるのだが、どうやらもうちょっとだけかかるらしい。
「むぅ、じゃができれば何かスパイスが欲しいんじゃよなぁ」
「うーん、そうなってくるとそうねぇ…ねぇ、エル。森の中でボボッスの実を探してきてくれないかしら?カトレアちゃんが作るのもいいけれども、甘みのあるやつは時間をかけてなっていないとだめだから、いいのが欲しいわ」
「あー、わかったよ母さん。それじゃ、ちょっと出かけてくるね」
ボボッスの実は、前世でいうところの香辛料に該当する実の一種だが、ちょっと特殊なせいしつをもっており、実がなってから3日以上経過したものが一番おいしい辛さを有するものなのだ。
カトレアの力でも入手は可能だが、彼女の方法では基本的になりたてになってしまうものなので、適度な時間経過を経た木の実をすぐに得ることができるわけではない。
そこで、昼食の向上のために、僕らは近場の森に訪れて、ついでにおやつの時間にも使える甘い木の実などを求めていた。
「うーん、他の木の実は多く集まるけど、ボボッスはなかなか見つからないなぁ」
「ふみゅ、辛い木の実、意外と見つけにくい」
「甘い木の実のほうがこの周辺だと多いですもんね。…それにしても、相変わらずなのですが、エルが探した時にだけ大量に採れるのってなんででしょうね?」
「それを言われても、何でかは分からないなぁ」
森の中で木の実を見つけて収穫しているのだが、毎回こうやって集めているとなぜか一番見つけやすく、すぐに用意していたかごの中にいっぱいになるほど大量に集まってしまった。
しかし、これだけ量があってもなかなかお目当てのものにたどり着けないのは、ちょっと不便かもしれない。いつもなら結構都合よく見つけられるのだが…たまにこんな不調もあるかな。
いつもいつもすべてが思い通りになるわけもないし、ならないほうがおもしろいのもあるけれどね。繰り返し過ごす歯車のような日々よりも、何かしらの変化がいつも起こるような楽しい日々のほうが受け入れやすいのと同じ感じだろう。
朝食に毎日適当にパンを食べて過ごす、ブラック企業勤めの時のようなものよりも、朝毎回違うものを食べられる今の暮らしのほうが圧倒的に良いのがその最たる例である。
いや、そもそもブラック企業勤め時代、朝食抜きも多かったような…パンだけじゃなくてコンビニおにぎりで過ごした時もあったな…めっちゃ安いけど、あれはあれでおいしかった記憶はある。
そういえば、この世界でおにぎりを見たことがないような?
パンはあるから小麦のようなものを確認できているし、米もありそうなものだがなぁ。かなりはるか東方の国々であるかもしれないし、そこは気になるところ。
パン暮らしも悪くはないが、やはり前世の感覚でいえばお米もしっかり食べたいところ。
しかし、鑑定魔法で調べたくともそう都合よくはいかないし…‥‥卒業後、スローライフを送るための地を探す際に、米も一緒に求めてみようかな?田んぼがある暮らしも、良さそうだ。まぁ、そんな都合よく農業できないけどね。ゲームとかだと楽そうだけど、現実だと非常に厳しいが…それでも、ちょっとやってみたいことには変わりない。
そう考えつつも、どうにかちょうどいい感じのボボッスの実をいくつか発見し、収穫したほかの木の実もいっしょに持って帰って、家へ帰ろうとした……その時であった。
―――――グエエェェェェ!!
「ん?」
「にゅ?」
「何か、大きな声がしましたね?」
ものすごく野太いような、大きな声が響いたが‥‥‥人の鳴き声とか、断末魔とか言った類ではなさそうだ。いつぞやかハクロ達に首を絞められてゴキッと音を立てた賊たちの声に似ているようでも、違う感じだろう。
と言うか、空から聞こえてきたようである。
そう思い、なんとなく気になって森の中でも木々がちょうど倒れて広場になっている場所の、大空が見える、開けたところに出たところで空を見上げると、その鳴き声を出したものの姿を目にすることができた。
「でかっ!?何あの鳥は!?」
結構高いところを飛んでいるようなのに、はっきりと見えるほどの大きな鳥。
鷲とか鷹とかなんかよりもはるかにでかく、明らかに何かのモンスターのようだ。
「『鑑定』!」
気になったのでとっさに鑑定魔法を使用してみたのだが…残念ながら、適応圏外のようで詳細が見れない。
流石に対象との距離が遠すぎると名前ぐらいしか見えないようで、見えたのは種族名の『巨大怪鳥ギギモゲボンブ』というぐらいだ。
変な名前だなと思いつつも、ふと、僕らはあることに気が付いた。
「あれ?何か動きがおかしくないか?」
「え?‥‥‥あれ?確かに変ですね」
怪鳥は鳴き声を上げつつも、上空で何やらバタバタと動いていた。
足のほうで何かをつかんでいるようだが、あの足につかんでいる何かの攻撃を受けているようで、ものすごく暴れている様子だ。
そう思いつつも、観察していると違う動きに切り替わった。
―――――グエェェェェェェェ!!
けたたましく声を上げ、ものすごくのけぞったかと思えば、足に持っていた何かを落とした。
そしてその場から逃げるようにして素早く飛び去ったが、今、何を落としてたのか。
「んん?あれ?なんか人っぽい何かがおちてくるんだけど!?」
「ええっ!?」
どうも人の手や頭っぽい影があったので、慌てて人命救助のために俺たちは動き出す。
状況が状況だけに、なんとなく某天空の城風に言うのならば叫びたい言葉もあるのだが、確信を持って言えないのでちょっと我慢をしておく。
「ハクロ!糸を出して急いでネットを作り上げろ!」
「了解です!」
素早くハクロに指示を出し、落ちてきた人を受け止めるためのネットを張り出した。
だが、かなり高いところか落ちてきているようなので、このままでは受け止めても勢いを殺しきれずに落下の衝撃が伝わってしまう。
もうちょっと落ちてきている人が動いてくれればいいのだが、残念ながら抵抗で力尽きたようで、動く様子も見えないだろう。
「カトレア!ネットを張った木を成長させられるのなら、あの人を受け止められる高さにできないか!?ネットで確保しても勢いで地面に激突する可能性もあるし、少しでも受け止めてからの地面前の距離を稼ぐんだ!!」
「ふみゅっ!了解!」
素早くネットを張った木を、カトレアが成長させて上に伸ばす。
丁度伸び切ったタイミングで、そのネットに落ちた人が入り、みょいいいいんっと伸びて…
ばいいいいいん!!
「「「飛んじゃったぁぁl!?」」」
伸縮性があだとなったようで、トランポリンのごとく跳ねてしまったらしい。
そのせいでおかしな軌道に飛んでしまい、設置が間に合わなさそうな状態だ。
「やばいやばいやばいどうしよう!?」
「落ち着いてくださいエル!!あ、そうだ、エルの魔法は!!」
「それだぁ!!」
こんな時にこそ、無駄に多い魔力を生かした救助方法があるじゃないか。
そう思い、どういうのがいいのかすぐに判断し…ここは手近にあったこの木の実を使う。
「カトレア2号が生まれないように願いつつ、とりあえずこれで衝撃を全部殺せる地面ができてほしい!!急成長植物対応魔法『アットグングン』!!」
詠唱とかその過程もすっ飛ばし、自身の魔力で無理やり木の実を成長させ、草の大地を作成する。
使用した木の実はモッチリンの実と呼ばれているもので、もちもちした感触の木の実はもちろんのこと、その実はふかふかの綿のような木々になるので、一瞬のうちに綿で敷き詰められるような地面と変り果て、その上に無事に人が落ちてくれた。
ぼっすぅん!!
「よし!!うまいことできた!!」
「よかったですよ、エル!!」
「私2号…は、なかった。ちょっと残念」
ははは、カトレアのことがあったのだし、多少どうにかなるように願っていたがうまくいってよかっただろう。
そんなことも思いつつ、身の無事を確認するためにその人影へ僕らは駆け寄ったのだが…近くに来て、ようやく気が付いた。
「…あれ?人じゃない?」
遠目で見たら人影だったが、間近で見れば全く違った。
確かに手や頭はあり、綺麗な青い髪に、整った顔の女性だったんだけれども、人の足を持っていなかったのだ。
一言で言うのならば…魚としか言いようのない下半身。
鱗は綺麗な宝石のような水色だが、所々が傷を負ってはがれており、血を流している。
よく見れば肌とかにも細かな傷があり、相当疲労しているようだ。
「人魚?いや、何か知るにはこっちのほうが早いか。『鑑定』」
姿に驚愕しつつも、まずは治療しつつ正体を確かめるために、ハクロ達が素早く薬草や糸での包帯で手当てをする中、鑑定魔法を使用して詳細を探ることにした。
――――――
種族名:「クリスタルマーメイド(希少種)」
名前:無し
性別:メス
状態:「水分不足」、「失血」、「骨折数か所」
「水分不足」:陸上の生物が陥る水分不足とは異なり、水生の者たちに起こりうる、長時間の水離れにより水分が無くなり、乾燥してしまう状態。いわゆる干物になりかけており、水分を早急に取らなければ危険な状態。
「失血」:血が流れ過ぎて足りていない状態。傷口を防ぎ、造血剤を投与しないと危険。
「骨折数か所」:肋骨など、各箇所に骨折あり。
『クリスタルマーメイド』
一般的には「人魚」や「セイレーン(海に住むタイプ)」などと呼ばれる「マーメイド」というモンスターの中でも珍しい、希少なモンスターの一種。
水中行動だけではなく、陸上では空を泳ぐことが可能な特性を持っており、泳げる場所はすべての空間ということで活動範囲は広い。
ただし、それでも水とは切っても切れない関係にあり水が欠かせないゆえに水辺から離れることを好んですることはない。
マーメイド種は基本的に有効的なモンスターとしても知られており、人懐っこい性格をしているものが多かったのだが、その肉には不老長寿の効果があると根も葉もない噂があり、狙う輩もいるせいで、人間不信に陥っているものも存在している。
また、歌声には様々な力があるとされるが、有名なのは雨を呼び寄せたりすることなどがあげられるだろう。
―――――――
「つまり、水辺から離れちゃダメなのか」
「となると、早く水がないと不味いですよね?」
「あ、そうだそうだ。とりあえず応急的に、適当に水球の魔法で、これに突っ込もう」
鑑定結果に驚きつつ、何故ここにいるのかなどを聞くよりも、今は手当てをしないと相当不味い状態なので、慌てて治療と荒っぽいながらも水分補給を行うのであった‥‥‥
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「あの、僕に色々な選択肢はないのでしょうか?」
「あ、そうね、あいつのミスだからねえ。何か希望ある?」
「希望も何も僕は何処へ行くのですか?」
「そうねえ、所謂異世界よ?一寸あいつの管理してる世界の魔素が不安定でね。魔法の元と言ったら分かる?」
「色々突っ込みどころはありますが、僕はこの姿ですか?」
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「あんた生き返るのに何贅沢をってそうねえ・・・・あれのミスだからね・・・・いいわ、何とかしてあげるわ!」
「一寸待て!良い考えがある!ダイスで向こうへ転生する時の年齢や渡すアイテムの数を決めようではないか!」
何ですかそれ?どうやら僕は異世界で生まれ変わるようです。しかもダイス?意味不明です。
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