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第2章:少年期後編~青年期へ

51話 最前線は物騒らしいが

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…クラスタ皇国との戦争のお知らせから数カ月後が経過し、季節は夏季へと移り変わってきていた。
 長引いているような感じがするが別にお互いに泥仕合になりまくったわけではない。

 まず、戦争を吹っかけてきたクラスタ皇国側に関しては、こちらは当初兵士たちを意気揚々と送り出していたそうだが、ここ最近国内で何かと騒動が起き始めたようで、戦争どころではない状況になったようだ。
 そもそも開戦のきっかけになった、都市への奇襲を企てた兵士たちがこちらに捕らわれたままなのだが、中々重要な立場につく人たちの子供が多かったようなのに、見捨てたような形で開戦に踏み切ったせいで、その人たちからの反発も出てきているらしい。
 それなら最初からやるなよとツッコミたいが…そこは国の上の人が判断することだし、どういう思考だったのかは不明である。

 ならばこちらの国のほうが優位になって早く終わるのではと思われたのだが…こっちはこっちで、やらかした形になってしまったそうである。
 どうもやる気にものすごく満ち溢れた冒険者が数多く集ってきたようで戦力としては過剰なレベルだったらしいのだが…今回のこの参戦に関しては、一応『依頼』という形になっており、勝利すれば報酬がもらえるのだが、この確実に勝てそうな状況になってくるとその褒章を目当てに余計な者たちもどんどん殺到してきてしまうようになってしまい、軍費よりも用意する報酬の方で金がかかってしまうことになり、身動きが取れなくなったのだ。
 普通はそこまでいないらしいのに…確実に勝利できるほど集ったがゆえに、さらにやってきてしまうせいで今度は何もできなくなるとは、世の中そう都合よくはいかないみたいだ。

「そう考えると、どっちも引き下がれないし相手にしきれないし、無駄に硬直状態とは…戦争ってやるもんじゃないよなぁ」
「うーん、人間のやる争いごとって不思議ですもんね。でも、気にすることもなさそうです」
「それもそうか。戦争中とはいえあまりにも硬直状態すぎて逆に安全な状態になっているらしいし、せっかく夏休みというものが来ているのだから、何も考えずにゆっくり過ごそうか」

 ハクロの言葉に俺はそう答え、無駄な考えを放り投げておく。
 現在、硬直した状況に最前線が鳴っているせいか、報酬目当てやらなんやらで集う人がいることによって旅路に安全さが向上したらしく、例年よりもやや早い夏休みとなったので俺たちは帰郷のための馬車に乗っていた。

 毎年夏休みになったら実家に帰郷するが、今年は戦争があるというのにむしろ例年以上に安全な道のりになっているらしいとは幸いなことだろう。
 しいていうのであれば、時々出てくるであろう賊の発生率も同時に低下しているので、今年は犠牲になる哀れな人たちはいないということか…去年の帰郷時に久しぶりに出たと思ったら、豆電球案山子になっていたからね。どういう状態になっていたのかは、賊とはいえその悲惨さに対して同情するほどだったので語るまい。人の尊厳は相手が誰であろうともあれは…うん、守ってあげないといけないだろうなぁ。

「まぁ、卒業までもう間もなくだし、夏の帰郷はこれで最後になるのかな」
「休みがなくなる。でも学生卒業、立派な社会人、自由に動ける」
「何も考えずに、今を楽しめばいいと思うのじゃよ。お、フルハウスじゃ!」
「はい!?もうですか!?」

 何にせよ、慣れた帰郷の中で、こうしてのんびりと馬車の中で皆で遊ぶのも楽しい。
 今は暇つぶしのためにトランプをやっているのだが…皆、ちょっと強いかも。

「あれ?まだ俺はワンペアなんだけど…‥」
「私は、ストレートフラッシュ、いまひとつ」
「‥‥‥揃えてすらないんですが!?」
「お、ロイヤルストレートフラッシュじゃ」
「「「なんでそんなに揃うの!?」」」

 やけに先ほどからタマモの引きが良すぎるのだが…こっそり幻術とかイカサマを使っていないよね?
 そう思い、ちょっと鑑定魔法を使用してみたが、そんなことはなかった。
 いや、でもこれは…

―――――――
状態:「ラッキー祭り・リベンジ」
たまに人に発動する、ちょっとした状態異常の一種。
悪いものではなく、トランプなどのゲーム限定で一時的に運が急上昇する状態で、俗にいう「ツキまくっている人」になる。
短時間しかないが、ごくまれにしか出ないのでなれたのなら相当運がよかったことになる。
――――――――

 …やけにタマモばかりがこういう時についていると思ったら、こんなからくりがあったのかよ。あれか、ものすごくギャンブルについている人がなるようなものってことなのか。
 でも、そうなると運がいい相手に対しては、このままでは勝つことができない。
 ならば、運が絡まないようなゲームにすればいいか…?




 そう考え、今度はジェンガというゲームに変えてみた。
 積み上げたブロックを崩さないようにとっていき、最後に崩した人が負けってことなので、運よりも微細なバランス感覚が必要になるものだ。
 これならば、運が絡むことがないので状態異常を気にせずに…と思ったのだが、これはこれでどうなんだと思うような状況になってしまった。

ぽいんっ
ガラガッシャァァン!!
「ああああああ!!崩れてしまいましたぁぁぁ!!」

ぼいん
ドガッシャァァン!!
「ふみゅ、揺れ、当たるのが難しい」

ぽゆん
ズガッシャァァン!!
「のじゃあぁぁぁぁぁ!!ここまでの苦労がぁぁぁ!」

 三者三葉の悲鳴だが、皆原因は同じ。
 馬車の揺れによってそれぞれの大きな胸が同時に揺れて、積み上げたジェンガに当たり、崩してしまうのだ。しっかりブラとかさらしとかしているはずなのだが、現在ちょっと道としては荒いところに来ており、否応なく揺れてしまう。
 と言うか、このゲームは一番彼女達に向いていないよな…やっちまった感があるが、揺れで胸が当たるようなゲームはやめておくべきか。


 何にせよ、馬車は故郷の村に向かって進んでいく。
 揺れ動き、はじけ飛ぶ光景を見ながら、別の改善策を考え始めるのであった…


「うにゅぅ、私たちにこれ厳しいですよ」
「よりしっかりしめつけて、動かないように…ぐにゅ、苦しぃ」
ぶちぃっ
「おぅ…きつくし過ぎて、切れてしまったのじゃ」

…お前ら、それは絶対に胸部にコンプレックスがあるような人たちの前では言うなよ?なんかどこかの絶壁な人が聞いたら、確実に殺されそうな気がするんだが。
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