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第2章:少年期後編~青年期へ
50話 面倒ごとは飛び火しつつ、変な方向に炎上しつつ
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SIDEエル
…ハクロ達以外にも何者かの手によって色々と悲惨な目にあったクラスタ皇国の兵士たちの大量捕縛事件から数日が経過し、事態は少々面倒な方向に動いたようである。
「『クラスタ皇国との戦争に関するお知らせ』…うわぁ、結局この結論に至ったのか」
「何事もなくすんなりと収まればよかったのに、何やら面倒なことになってますよね」
配られていたお知らせの紙を読み、そこに書かれていた内容に対してエルたちはそう口にする。
都市へ迫りつつも、運悪く容赦ない者たちによって返り討ちにされたクラスタ皇国軍。
全員捕縛された上に、戦争に関しての資料などもなぜか周辺一帯にこれでもかというほどぶちまけられており、証拠としてしっかりと国に回収されたのだが、うまいこと話し合いの場が成り立たなかったらしい。
元々皇国側から勝手に仕掛けてきて、宣戦布告も特になく攻めてきたので、非は皇国側にあるのは一目瞭然なのだが、証拠も兵士たちもいろいろとあるというのに、何をどう言う思考で開き直ったのか、改めて正式にゴエルリア王国へ宣戦布告をしてきたそうだ。
話し合いの場もつかず、逆切れのような…うーん、国の上の人たちの考えることなんぞ、一般庶民である俺たちの思考では想像することができないのかもしれない。
というか、思い出したのだがクラスタ皇国といえば、数年前は妖狐族とか言われる獣人たちがいて、彼らを利用していた話もあったが、タマモの一件で皆離脱しやらかしていたことがすべてダメになって混乱している状況が続いていたはずである。
それなのに、こうやって堂々と宣戦布告しに来たということは、国内の内情が落ち着いたのだろうか?
「いや、違うじゃろうな」
「そうなのか?」
「あの国、非とかそういうのを認めぬはずじゃったし…混乱している内情なんぞ、自力でどうにかできるとは思えんからのぅ。そうなると導き出されるのは単純な方法じゃな」
「あー…もしかして、目をそらすためにでしょうかね?」
「その可能性、一番ありえそう」
どこの世界でも国でもあるような、国内の簡単な意識の統一方法の一つとして、どこか適当な国にケンカを売って、その国を敵国として認識させる手法。
敵がいれば一致団結してという考えで、してきた可能性があるだろう…まぁ、そう簡単に一致団結できるわけでもないだろうが、この可能性が今のところ考えられるか。
だが、そんなことをしでかしておいてただで済むようなことはない。
案の定というか、この王国は皇国に対して宣戦布告を受け取り、開戦を決めたらしい。
被害はなく奇襲を仕掛けてこようとしていた相手のほうが被害が大きいわけだが、それでも油断していたところへ、気が付かれぬうちに懐へもぐりこまれかけていたことが許せないのだろう。
むしろ、都市の間近にまで接近していたとなると普通は気が付かれそうなものなのだが、そうなってくると、何処かで手引きした輩がいる可能性も捨てきれないというきな臭い話も出てくるものだ。
でも、そんなことを考えても自分たちには関係ないか。
お偉いさんがたに、勝手に争ってほしい。いっそ国のトップ同士がボクシングとかで対決したほうが、手っ取り早いような気がしなくもない。
しかしながら、簡単に済む話ではないので、しっかりと国としては用意をして徹底的にやり返す構えも準備していたようである。
「その手段として、冒険者への『戦争参戦依頼』か」
「こういうのもあるんですね」
「でも、わっちらのランクは受けられぬものじゃな」
「惜しいけど、受けて、メリットある?」
一応、卒業後の安住の地探しに役立つので冒険者登録をしているため、本日の放課後はちょっとしたお小遣い稼ぎに軽めの依頼がないか思ってギルドへ訪れてみたのだが‥‥‥ギルドにあった依頼板という掲示板のようなものに様々な依頼が混雑している中、そのような物があった。
―――――――――――――
『戦争参戦依頼』
冒険者に対して、傭兵代わりにという形で受けてくれないかと出される依頼の一種。
受注する冒険者のランクが高いほど報酬も高くなり、活躍すればさらにそれ相応の成功報酬を国が確約してくれるという内容である。
ただし、本来は各国の政治的な思惑からは独立しているギルドの冒険者に対してのものということになるので、めったに出るようなものでもなく、人の命が簡単に失われてもおかしくないので低ランク冒険者は受注不可となっており、Dランクからしか受けることができない。
―――――――――――――
「‥‥‥タマモ、俺達のランクって」
「スキップ申請をやっておらぬし、依頼もそんなに受けておらぬからのぅ。ランクアップしておらず、Hのままじゃよ」
俺たちの冒険者ランク、そういえば全然上げていなかった。
別に上げる意味もないし、のんびりと利用していたので更新してもそう簡単にランクが向上しないから、今のランクではほぼ確実に受けることが不可能だろう。
そもそもの話として、受注するつもりもいないけどね。のんびりスローライフを将来に誓っているのだし、のんびりとは程遠すぎる国同士の争いごとなんぞ巻き込まれてもいいことにはならない。
見なかったことにして、たまには適当なもの受けようと、俺達は安上がりの低ランク用の依頼を探し、そちらのほうを受注するのであった……
「というか、こんな物騒な依頼を受注する人がいるのかな?冒険者はあくまでも冒険者で、ランクが高くても戦闘面に向いている人とか限られるだろうしなぁ…」
「Dまでなら何とか行くような人たちが、報酬目当てでやるのでしょうかね?」
「そうだと思う。ランク高いほど、それなりの礼儀作法、しっかりと求められる」
「傭兵たちのほうが雇われやすいじゃろうなぁ。烏合の衆になりかねないなら最初からs年頭のプロに任せたほうがいいじゃろ」
それでもこんな依頼を出すってことは、人手不足なのか都合のいい尖兵扱いとかにするのか…そのあたりの真意は不明だし、かかわらないほうが良いだろうね。
――――――――――――――――
SIDE都市マストリア:ギルド長のダーンバルバル
「ごわぁぁぁぁぁ!!めぇーんぅーどぅーくさぁぁぁい!!」
都市マストリアのギルドの執務室にて、ギルド長のダーンバルバルはあるお知らせを読み終え、心の底からそう叫んでいた。
「何を叫んでいるんですかギルド長?ウザったらしいだみ声が響いてますよ」
「遠慮ない言葉を告げるな副ギルド長!!いや、今はそれよりもこれを見て見ろよ!!」
さらっと毒舌を吐いた副ギルド長エンドルに対して、ダーンバルバルはある紙を見せた。
それは、この王国内中のギルドに渡された通達書。正確には国から出されるギルド宛ての直接の依頼書であった。
「ほぅ、皇国との戦争のために、冒険者からも人手を集める奴ですか…戦争参戦依頼を出す以外にもより強制的にできないかなどの模索を頼む内容でもあるようですね」
「一応、ギルドは独立機関ゆえに国同士の争いに介入することはないが、こういう依頼の形で出されると処理が面倒なんだよ!!」
名目上は独立しているのだが、それでも依頼という形で来られると対応しづらいものもある。
なおかつ戦争に参戦したら、様々な処理がギルドに来るかもしれないと考えると、ダーンバルバルにとって気が重すぎるのである。
一応、この辺りでは頼れるギルド長としてのイメージを持って居るのだが‥‥‥こうして執務室で共に働くエンドルにとっては、駄々こねてサボろうとするいい年したおっさんにしか見えなかった。
「まぁまぁ、それならば冒険者たちに対して依頼を出しておけば済む話ですし、そこまで深刻に考えなくても良いですって」
「そういうことではない!!この以来の制限はD以上としているのだが…国め、戦争に参戦したら確実に役立つだろう冒険者の調査も先に済ませているようで、リストアップされた中に、明らかに低ランクにD以上の実力を持つのがいるのがばれていることが問題なんだ!!」
あはははと軽く笑い飛ばすエンドルに対して、ダーンバルバルはそう叫んだ。
「D以上?そりゃ、冒険者の中には高ランクが面倒くさそうだから低ランクにあえてとどまるような方もいますが、今更ですよね。ギルドとしては冒険者の個人情報につながるようなことを勝手に探るのはやめてほしいので要請しているのですが、なかなか対応してくれない面倒なところなので、高ランク冒険者に直接指名依頼を出して、脅したいところですよね」
「それはそれでありだなと思う過激な意見だが…それはともかくとして、他のところならまだよかった。だがしかし、この都市で登録してある冒険者の中にとんでもない奴が混じっているのを忘れたのか!!」
「とんでもない……ああ、最近登録されている方々の中で、明らかに高ランククラスの魔物を従えている方ですね」
ギルド長の言葉に対して、ぽんっと手を打ってエンドルはそう口にする。
このギルドに登録している冒険者の内、今はまだ学生らしいが、登録してある従魔の方がとんでもないのがいるのだ。
その従魔はアラクネにドリアードと、一見人の容姿に近いがゆえにそこまで警戒されるようなものではないと判断されそうだが、種族として確認してみればどれも低ランクに負える様なものたちhでない。
場合によっては高ランク冒険者でも難しいようなレベルのモンスターたちでもあり、それを従えている時点でかなりとんでもない冒険者でもあるのだ。
そのため、可能であればスキップ申請などで高ランクから登録してほしいところだったのだが…生憎、本人の意思で辞退することが可能だからこそ、Hランクと言う低ランクからのスタートにさせてしまったのだ。
この戦争参戦依頼、独立している立場にあるとはいえ、戦争なんてものが引き起こすさまざまな弊害を考えると、できれば高ランクの冒険者に出て行ってもらい、さっさとすべてを終えてほしいところもある。
特にそのモンスターを従えている人には、率先して出てもらったほうがより簡単に片付きそうな話でもある。
だがしかし、世の中というのは都合よくはいかないものなのだ。
「冒険者の方が自由度が高く、ギルドから強くは言えない。無理やりランクを上げたところでこの依頼は強制じゃないから参戦することもないだろうし、実力を予想できていながらも出せないと言うのは‥‥‥辛い。というか、後でばれたときに絶対まずい。うう、やっぱり高ランク冒険者に先にしておきたかったが…」
「後悔というのはしている時点で遅いんです。戦闘に関しての判断は的確かつ素早いくせに、それ以外では意外とどんくさい方が何を言っても無駄ですって」
「結構辛辣な言葉じゃないか!?」
ずーんと頭を抱えて落ち込むダーンバルバルに対して、エンドルは冷静にツッコミを入れる。
仕事ではまぁ有能といえるほうだが、面倒ごとになるとさらに面倒なおっさんと化す相手にまともに相手をするのは避けたいという思惑も多少はあるのだろう。
ひとまず、依頼を出してから数時間ほど経過し、あきらめをいったんつけて依頼を受注してくれた冒険者に関して確認を行うことにした。
「…しかし、思ったよりも参戦する冒険者が多いな」
「D以上としていましたけど、BやAといった高ランクの人も入ってますね」
中身を見る限り、本日訪れていた冒険者の大半が受理したようである。
こういう戦争時、金策にもがく人が受理したりするのだが、今回は何やら様子が異なっており、そう金に困っているような人ばかりではないのがうかがえる。
何か別の目的があるのかと思い、念のために参戦理由についてまともな方がいるか確認のために、アンケートも一緒に取っていたのだが‥‥‥その内容がほぼ一致していたことで、すぐに判明した。
『あの美女たちを戦場へ出したくねぇ!!戦場で無駄に血を流してほしくはないんだぁ!!』
『敵国にファンが増えるとやりにくい。我々こそが彼女たちをあがめたたえ、ひそかに応援するためにも争う日々を消さねばならぬ』
『ランクを考えると参戦しないだろうけれども、それでも彼女達が関わらないで安心して暮らせるようにしたい。一時の争いよりも、悠久の平和こそが推しを喜ばせることができる手段なのだ』
『妻も子もいないが、せめて今ある目の保養は大事にしたい。いや、敵兵たちに襲われて凌辱されるさまも見てみたくもあるが、平和による優しい笑顔が似合う彼女たちを曇らせたくはないのだ』
『彼女達が参戦してしまったら、おそらくあの美しい美貌ゆえに敵兵たちが殺すよりも捕縛し、ためているものを解き放つために陵辱の限りを…(内容の大半が官能小説)』
「…‥‥ほとんど、似たり寄ったりな理由だな。彼女たちに関してファンクラブだがなんだかできていることは知っていたが、一致団結して守りたいという思いがあふれているからか」
「相手の思惑はこの国を敵にして内情から目をそらさせる目的があると思われますが…こっちのほうが、圧倒的に平和すぎる一致団結手段ですね。後半、おかしくもありますが」
とにもかくにも、これだけの冒険者が様々な思惑がありつつもほぼ共通している思いで受理をしたのであれば問題はない。
いや、その動機が純粋なのか不純なのか分かりにくいが…とにもかくにも、これ以上気にしないほうが良いと、ギルド長と副ギルド長は思うのであった
「しかし、アンケートという趣旨をわかっているのか、こいつら?3割はまともだが2割欲望が垣間見えて、残り半分全部がガッチガチの官能小説ものって、何を考えているんだ」
「ふむ…これ、ギルドのほうでファンクラブの方々向けに、許可をもらってまとめて販売したほうが、いい収入源になりそうですよね」
「絶対にそれ、彼女たちにばれたときがギルドの最後になりかねないのだが」
…しかし後日、メリットデメリットを何度も審議にかけたうえで、ギルド内の職員たちの会議のもと、可決されたのは言うまでもなかった。
…ハクロ達以外にも何者かの手によって色々と悲惨な目にあったクラスタ皇国の兵士たちの大量捕縛事件から数日が経過し、事態は少々面倒な方向に動いたようである。
「『クラスタ皇国との戦争に関するお知らせ』…うわぁ、結局この結論に至ったのか」
「何事もなくすんなりと収まればよかったのに、何やら面倒なことになってますよね」
配られていたお知らせの紙を読み、そこに書かれていた内容に対してエルたちはそう口にする。
都市へ迫りつつも、運悪く容赦ない者たちによって返り討ちにされたクラスタ皇国軍。
全員捕縛された上に、戦争に関しての資料などもなぜか周辺一帯にこれでもかというほどぶちまけられており、証拠としてしっかりと国に回収されたのだが、うまいこと話し合いの場が成り立たなかったらしい。
元々皇国側から勝手に仕掛けてきて、宣戦布告も特になく攻めてきたので、非は皇国側にあるのは一目瞭然なのだが、証拠も兵士たちもいろいろとあるというのに、何をどう言う思考で開き直ったのか、改めて正式にゴエルリア王国へ宣戦布告をしてきたそうだ。
話し合いの場もつかず、逆切れのような…うーん、国の上の人たちの考えることなんぞ、一般庶民である俺たちの思考では想像することができないのかもしれない。
というか、思い出したのだがクラスタ皇国といえば、数年前は妖狐族とか言われる獣人たちがいて、彼らを利用していた話もあったが、タマモの一件で皆離脱しやらかしていたことがすべてダメになって混乱している状況が続いていたはずである。
それなのに、こうやって堂々と宣戦布告しに来たということは、国内の内情が落ち着いたのだろうか?
「いや、違うじゃろうな」
「そうなのか?」
「あの国、非とかそういうのを認めぬはずじゃったし…混乱している内情なんぞ、自力でどうにかできるとは思えんからのぅ。そうなると導き出されるのは単純な方法じゃな」
「あー…もしかして、目をそらすためにでしょうかね?」
「その可能性、一番ありえそう」
どこの世界でも国でもあるような、国内の簡単な意識の統一方法の一つとして、どこか適当な国にケンカを売って、その国を敵国として認識させる手法。
敵がいれば一致団結してという考えで、してきた可能性があるだろう…まぁ、そう簡単に一致団結できるわけでもないだろうが、この可能性が今のところ考えられるか。
だが、そんなことをしでかしておいてただで済むようなことはない。
案の定というか、この王国は皇国に対して宣戦布告を受け取り、開戦を決めたらしい。
被害はなく奇襲を仕掛けてこようとしていた相手のほうが被害が大きいわけだが、それでも油断していたところへ、気が付かれぬうちに懐へもぐりこまれかけていたことが許せないのだろう。
むしろ、都市の間近にまで接近していたとなると普通は気が付かれそうなものなのだが、そうなってくると、何処かで手引きした輩がいる可能性も捨てきれないというきな臭い話も出てくるものだ。
でも、そんなことを考えても自分たちには関係ないか。
お偉いさんがたに、勝手に争ってほしい。いっそ国のトップ同士がボクシングとかで対決したほうが、手っ取り早いような気がしなくもない。
しかしながら、簡単に済む話ではないので、しっかりと国としては用意をして徹底的にやり返す構えも準備していたようである。
「その手段として、冒険者への『戦争参戦依頼』か」
「こういうのもあるんですね」
「でも、わっちらのランクは受けられぬものじゃな」
「惜しいけど、受けて、メリットある?」
一応、卒業後の安住の地探しに役立つので冒険者登録をしているため、本日の放課後はちょっとしたお小遣い稼ぎに軽めの依頼がないか思ってギルドへ訪れてみたのだが‥‥‥ギルドにあった依頼板という掲示板のようなものに様々な依頼が混雑している中、そのような物があった。
―――――――――――――
『戦争参戦依頼』
冒険者に対して、傭兵代わりにという形で受けてくれないかと出される依頼の一種。
受注する冒険者のランクが高いほど報酬も高くなり、活躍すればさらにそれ相応の成功報酬を国が確約してくれるという内容である。
ただし、本来は各国の政治的な思惑からは独立しているギルドの冒険者に対してのものということになるので、めったに出るようなものでもなく、人の命が簡単に失われてもおかしくないので低ランク冒険者は受注不可となっており、Dランクからしか受けることができない。
―――――――――――――
「‥‥‥タマモ、俺達のランクって」
「スキップ申請をやっておらぬし、依頼もそんなに受けておらぬからのぅ。ランクアップしておらず、Hのままじゃよ」
俺たちの冒険者ランク、そういえば全然上げていなかった。
別に上げる意味もないし、のんびりと利用していたので更新してもそう簡単にランクが向上しないから、今のランクではほぼ確実に受けることが不可能だろう。
そもそもの話として、受注するつもりもいないけどね。のんびりスローライフを将来に誓っているのだし、のんびりとは程遠すぎる国同士の争いごとなんぞ巻き込まれてもいいことにはならない。
見なかったことにして、たまには適当なもの受けようと、俺達は安上がりの低ランク用の依頼を探し、そちらのほうを受注するのであった……
「というか、こんな物騒な依頼を受注する人がいるのかな?冒険者はあくまでも冒険者で、ランクが高くても戦闘面に向いている人とか限られるだろうしなぁ…」
「Dまでなら何とか行くような人たちが、報酬目当てでやるのでしょうかね?」
「そうだと思う。ランク高いほど、それなりの礼儀作法、しっかりと求められる」
「傭兵たちのほうが雇われやすいじゃろうなぁ。烏合の衆になりかねないなら最初からs年頭のプロに任せたほうがいいじゃろ」
それでもこんな依頼を出すってことは、人手不足なのか都合のいい尖兵扱いとかにするのか…そのあたりの真意は不明だし、かかわらないほうが良いだろうね。
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SIDE都市マストリア:ギルド長のダーンバルバル
「ごわぁぁぁぁぁ!!めぇーんぅーどぅーくさぁぁぁい!!」
都市マストリアのギルドの執務室にて、ギルド長のダーンバルバルはあるお知らせを読み終え、心の底からそう叫んでいた。
「何を叫んでいるんですかギルド長?ウザったらしいだみ声が響いてますよ」
「遠慮ない言葉を告げるな副ギルド長!!いや、今はそれよりもこれを見て見ろよ!!」
さらっと毒舌を吐いた副ギルド長エンドルに対して、ダーンバルバルはある紙を見せた。
それは、この王国内中のギルドに渡された通達書。正確には国から出されるギルド宛ての直接の依頼書であった。
「ほぅ、皇国との戦争のために、冒険者からも人手を集める奴ですか…戦争参戦依頼を出す以外にもより強制的にできないかなどの模索を頼む内容でもあるようですね」
「一応、ギルドは独立機関ゆえに国同士の争いに介入することはないが、こういう依頼の形で出されると処理が面倒なんだよ!!」
名目上は独立しているのだが、それでも依頼という形で来られると対応しづらいものもある。
なおかつ戦争に参戦したら、様々な処理がギルドに来るかもしれないと考えると、ダーンバルバルにとって気が重すぎるのである。
一応、この辺りでは頼れるギルド長としてのイメージを持って居るのだが‥‥‥こうして執務室で共に働くエンドルにとっては、駄々こねてサボろうとするいい年したおっさんにしか見えなかった。
「まぁまぁ、それならば冒険者たちに対して依頼を出しておけば済む話ですし、そこまで深刻に考えなくても良いですって」
「そういうことではない!!この以来の制限はD以上としているのだが…国め、戦争に参戦したら確実に役立つだろう冒険者の調査も先に済ませているようで、リストアップされた中に、明らかに低ランクにD以上の実力を持つのがいるのがばれていることが問題なんだ!!」
あはははと軽く笑い飛ばすエンドルに対して、ダーンバルバルはそう叫んだ。
「D以上?そりゃ、冒険者の中には高ランクが面倒くさそうだから低ランクにあえてとどまるような方もいますが、今更ですよね。ギルドとしては冒険者の個人情報につながるようなことを勝手に探るのはやめてほしいので要請しているのですが、なかなか対応してくれない面倒なところなので、高ランク冒険者に直接指名依頼を出して、脅したいところですよね」
「それはそれでありだなと思う過激な意見だが…それはともかくとして、他のところならまだよかった。だがしかし、この都市で登録してある冒険者の中にとんでもない奴が混じっているのを忘れたのか!!」
「とんでもない……ああ、最近登録されている方々の中で、明らかに高ランククラスの魔物を従えている方ですね」
ギルド長の言葉に対して、ぽんっと手を打ってエンドルはそう口にする。
このギルドに登録している冒険者の内、今はまだ学生らしいが、登録してある従魔の方がとんでもないのがいるのだ。
その従魔はアラクネにドリアードと、一見人の容姿に近いがゆえにそこまで警戒されるようなものではないと判断されそうだが、種族として確認してみればどれも低ランクに負える様なものたちhでない。
場合によっては高ランク冒険者でも難しいようなレベルのモンスターたちでもあり、それを従えている時点でかなりとんでもない冒険者でもあるのだ。
そのため、可能であればスキップ申請などで高ランクから登録してほしいところだったのだが…生憎、本人の意思で辞退することが可能だからこそ、Hランクと言う低ランクからのスタートにさせてしまったのだ。
この戦争参戦依頼、独立している立場にあるとはいえ、戦争なんてものが引き起こすさまざまな弊害を考えると、できれば高ランクの冒険者に出て行ってもらい、さっさとすべてを終えてほしいところもある。
特にそのモンスターを従えている人には、率先して出てもらったほうがより簡単に片付きそうな話でもある。
だがしかし、世の中というのは都合よくはいかないものなのだ。
「冒険者の方が自由度が高く、ギルドから強くは言えない。無理やりランクを上げたところでこの依頼は強制じゃないから参戦することもないだろうし、実力を予想できていながらも出せないと言うのは‥‥‥辛い。というか、後でばれたときに絶対まずい。うう、やっぱり高ランク冒険者に先にしておきたかったが…」
「後悔というのはしている時点で遅いんです。戦闘に関しての判断は的確かつ素早いくせに、それ以外では意外とどんくさい方が何を言っても無駄ですって」
「結構辛辣な言葉じゃないか!?」
ずーんと頭を抱えて落ち込むダーンバルバルに対して、エンドルは冷静にツッコミを入れる。
仕事ではまぁ有能といえるほうだが、面倒ごとになるとさらに面倒なおっさんと化す相手にまともに相手をするのは避けたいという思惑も多少はあるのだろう。
ひとまず、依頼を出してから数時間ほど経過し、あきらめをいったんつけて依頼を受注してくれた冒険者に関して確認を行うことにした。
「…しかし、思ったよりも参戦する冒険者が多いな」
「D以上としていましたけど、BやAといった高ランクの人も入ってますね」
中身を見る限り、本日訪れていた冒険者の大半が受理したようである。
こういう戦争時、金策にもがく人が受理したりするのだが、今回は何やら様子が異なっており、そう金に困っているような人ばかりではないのがうかがえる。
何か別の目的があるのかと思い、念のために参戦理由についてまともな方がいるか確認のために、アンケートも一緒に取っていたのだが‥‥‥その内容がほぼ一致していたことで、すぐに判明した。
『あの美女たちを戦場へ出したくねぇ!!戦場で無駄に血を流してほしくはないんだぁ!!』
『敵国にファンが増えるとやりにくい。我々こそが彼女たちをあがめたたえ、ひそかに応援するためにも争う日々を消さねばならぬ』
『ランクを考えると参戦しないだろうけれども、それでも彼女達が関わらないで安心して暮らせるようにしたい。一時の争いよりも、悠久の平和こそが推しを喜ばせることができる手段なのだ』
『妻も子もいないが、せめて今ある目の保養は大事にしたい。いや、敵兵たちに襲われて凌辱されるさまも見てみたくもあるが、平和による優しい笑顔が似合う彼女たちを曇らせたくはないのだ』
『彼女達が参戦してしまったら、おそらくあの美しい美貌ゆえに敵兵たちが殺すよりも捕縛し、ためているものを解き放つために陵辱の限りを…(内容の大半が官能小説)』
「…‥‥ほとんど、似たり寄ったりな理由だな。彼女たちに関してファンクラブだがなんだかできていることは知っていたが、一致団結して守りたいという思いがあふれているからか」
「相手の思惑はこの国を敵にして内情から目をそらさせる目的があると思われますが…こっちのほうが、圧倒的に平和すぎる一致団結手段ですね。後半、おかしくもありますが」
とにもかくにも、これだけの冒険者が様々な思惑がありつつもほぼ共通している思いで受理をしたのであれば問題はない。
いや、その動機が純粋なのか不純なのか分かりにくいが…とにもかくにも、これ以上気にしないほうが良いと、ギルド長と副ギルド長は思うのであった
「しかし、アンケートという趣旨をわかっているのか、こいつら?3割はまともだが2割欲望が垣間見えて、残り半分全部がガッチガチの官能小説ものって、何を考えているんだ」
「ふむ…これ、ギルドのほうでファンクラブの方々向けに、許可をもらってまとめて販売したほうが、いい収入源になりそうですよね」
「絶対にそれ、彼女たちにばれたときがギルドの最後になりかねないのだが」
…しかし後日、メリットデメリットを何度も審議にかけたうえで、ギルド内の職員たちの会議のもと、可決されたのは言うまでもなかった。
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
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