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第1章:幼少期~少年期前編

15話 調べる前に、ちょっとは試したかったと供述しており

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SIDEエル

 魔法適性検査で少々やらかしたが、後日もっと強力な魔水晶で測定してもらうことになったので、結果を知るのはもうしばらく後だろう。
 けれども、急いでも数日ほどかかるらしく、その間にも授業はあるので待つと学習に遅れが出かねないということもある。
 その為、適性が不明なので無理なことをして負担にならないようにという注意を受けつつ、授業に出ることになった。一応、水晶の反応具合から魔力自体はあるという事で、出ても意味がないという事はないのも理由であり、むしろ授業に出て自身の魔力をつかんでもらい、少しでもやらかしを減らそうという
事もあるらしい。


 とにもかくにも、授業を受けることになったのだが、この世界の学校の教科に関して魔法以外の事であれば、大まかなところでは前世の地球の座学の部分は同じらしい。
 ちょっと細かい違いを挙げるのであれば、魔法以外に剣術や薬学、経済学に農業などに関する授業が選択式で組み込まれていることぐらいだろう。
 選択式になっている理由としては、魔法使いを目指し、将来的に宮廷魔導士などになりたいだけならば魔法に関する授業を多くとり、騎士や商人等になりたいのであれば、剣術や商売に関しての授業を取ってもらうことで、生徒の自主性とその将来へ向けての学習を行うためなのだとか。

 一部は均一にしつつも、生徒たちの自主性や個性を保ちつつ、適していないのであれば変更も可能になっており、多種多様な人材を得るためにも専門的な知識を増やすための試みにもなっているそうだ。
 また、異世界ではお決まりの冒険者とか言う職業も存在しており、そのために狩りの仕方や依頼を受ける際の報酬と内容が見合っているのかの損得勘定、違法なことに手を出さないために法律の勉強などもしっかり受けることが出来る授業も存在しているのだ。

 一応、僕は卒業後にどこかでひっそりとスローライフを送るつもりなので、その為にも必要だと思われる農業や狩り、時々売ったりするための商売などに関する授業など、そこそこ多くの種類の授業をとった。
 ついでに、魔法も気になるので魔法に関する授業も習得したのである。
 ただし、適正結果が出てから正式に学ぶことになっており、現時点では魔法に関しての知識や扱い方が先に基本的なものとして出てくるので、本格的なものはもう少し後になりつつ、適性が不明ゆえに今はまだ見学の扱いになる。

 ついでにハクロは、保護者的立場で一緒に来ることが出来たが、生徒ではない。
 それゆえに授業に出る必要もないのだが、何もしないのは流石に手持ち無沙汰になるので、せっかくだからモンスターである身を生かして、あちこちの授業の手伝いをするそうだ。
 きちんと許可も貰っており、知識も意志もあるので、授業では扱いにくいものが扱いやすい存在として出てきてくれるのは学校側としても非常にありがたいらしい。
 まぁ、ずっと寮室にいるのも暇だからというのが最も大きな理由らしいが‥‥‥良いのかな?



 ひとまず、彼女が自分でやると決めたことに関して口を出す必要ないので、今は授業の方に意識を向けることにした。
 授業のその授業が行われる運動場へ移動しつつ、一応見学のほうなので後方で見ているだけだが‥‥なんとなく、視線を感じ取る。

「おい、あいつが例の…」
「ああ、適性検査で魔水晶を破壊したって奴か?何をどうやったんだよ」
「それに、あの綺麗なお姉さんのモンスターも連れてきたってやつらしいし、一体何者なんだよ」

 ひそひそと話しているようだけど、割と聞こえるものではある、
 そりゃまぁ、やらかしたので目立ってしまったが…授業、もう始まっているよ。

「おーい、お前らひそひそ話はやめろ!これから授業を起こなうから、こっちの話をよーく聞くんだ!!曖昧な認識で魔法を使うと、ひどい目に遭うからしっかりと学べぇ!!」

 担当教員がそう叫ぶと、生徒たちはいっせいに教師の方に顔を向け、話を止めた。
 今回行うのは初球魔法の授業であり、その担当教員の容姿は見た目はおっさん、中身もおっさんなレンディング先生である。
 どう見たってこう、イメージ的には魔法を扱えそうな人ではないと思えるのだが‥‥‥人選ミスっていないよな?

「さて、今日からこの授業を担当するのだが、まずは初級魔法に関しての講義を行う。耳の穴をゴリゴリと削って開いて、真面目に聞いておかないと後で損をするからな」
「先生質問です!!」
「話す前に、質問か。早すぎるが、その自主性を買って答えよう!!」

 生徒の一人が早々に手をあげると、すぐにレンディング先生はその生徒を当てた。

「ふむ、名簿で確認させてもらうが‥‥ソンブル、何の質問だ!」
「初級って言いましたけれども、魔法に何か等級があるのでしょうか?」
「質問は悪くはないな。確かに等級が存在しており、いくつかある。だがしかし、同じ魔法でも込めた魔力量によって変動しやすくもあるので、ここで一旦、基本的なものを先に話すとしよう!!」


 その質問は予想できていたのか、レンディング先生は堂々と説明しつつ、黒板に書き始めた。

――――――――――――
Q.「魔法」の等級とは何ぞや?
A.様々な基準で定められた、魔法に関して少々細かく分けた分類の一種。基本的なものは、下記に記す。
『初級』:一番簡単で制御も容易く、適性があろうがなかろうが、魔力の消費もあまりない優しい魔法。物凄く気を抜いたものでもあり、そこそこ緩く使う事が出来る。
『中級』:一般的に扱われるレベルの魔法が大体この階級に該当しており、制御は初級よりも上であり、汎用性が高いものが多く、また組み合わせによってはさらに上の等級になる魔法へと発展させることが出来るなど、可能性を秘めている魔法が多い。
『上級』:制御も難しく、魔力の消費量も多くなる魔法。一つ間違えれば大事故確定だが、そもそもここまで扱う必要は、普段の生活の中ではない。
『特級』:超難しくなった。緻密な制御が必要であり、魔力の消費も多く、下手すりゃ一発撃っただけで全魔力が空になってしまうほどの代物。戦場などでしかでないようなものもおく、場合によっては対軍・対国・対竜などのカテゴリーに分類されることがある。
『王級』:トップクラスに難しすぎる魔法。ココまで極めると、その他の等級の魔法が赤子の手をひねるように物凄く楽になるが、そもそも使う機会自体がほとんどない。
『幻級』:今は存在しないはずの魔法全般を示す。難しすぎるのか、はたまたは魔力の消費が多すぎるのか等言われてはいるが、文献には存在しているので一応ギリギリこの世からは失われていないはずの魔法。再び扱う者がでれば、戦略的にかなりの力を持つことになる魔法もあるようで、注意が必要。

「魔法の扱い方」
・基本的に、魔法は己の体内にある魔力を利用するが、ただ使いたいと思うだけでは意味がない。
・必要なのは主に『詠唱』、『魔力』、『制御』の3つ。場合によっては詠唱を破棄しても可能な事があることから、近年の魔法研究者の間では、詠唱は必ずしも必要ではないとして外すことが検討されている。

『詠唱』:魔法を唱える際に、その魔法に関するイメージを付けるために必要なものとされる。ただし、ある程度イメージが可能ならば詠唱がなくとも魔法が扱えるので、想像力があればあるほど詠唱を破棄しやすい。その事もあって、必要なものから外される検討が行われる理由にもなっている。

『魔力』:適性検査時に説明したので省略。多ければ多いほど良いという訳でもなく、しっかりと制御の方が必要になるので過信してはいけない。

『制御』:どのように魔法を動かすのか精密な動きを考えるために必要なもの。調節次第ではただの初級魔法も上級魔法に匹敵するものになる。古代文明に残されていた文献ではわかりやすい例が存在していたようだが、その魔法がどの様なものなのかは不明。火の魔法に該当するものがあるとも言われている。
 

 また、魔法には『魔法名』と言う物があるが、これは少し詠唱に入るそうで、唱えなくともイメージして発動できることがある。制御の分類にも入りそうで、詠唱がいらないような検討される一因にもなっていたりする。
――――――――――――

 書き終え、黒板に出た内容を写しつつ理解する。
 
 なるほど、そうやって魔法を扱うのか。聞くだけなら簡単そうだけど、実行するにはちょっと難しそうでもあるのかな。
 というか、その古代文明で言われている魔法って、多分転生者が適当な例を挙げたのではないだろうか?「これは○○ではない、ただの…だ」みたいな感じだろう。絶対にやらかした人がいると思える。


 何にしても、その他の魔法に関する説明があったのちに、それぞれ魔法を発動させる練習が開始された。
 口で言うのは簡単だが、実際にやったほうが身に付きやすいらしい。

「ふぉぉぉぉ!!うなれ火の球、燃えよ『ファイアーボール』!!」
「はぁぁぁぁあ!出て来い、のどを潤すために、清き水よ『ウォーター』!!」
「あの子のスカートをめくれないかなぁ、いたずらな風をちょっと吹かせて『ウインド』!!」

 おい、今一人最低な事をやろうとしていなかったか?

「あの馬鹿を、ちょっと潰して、石の塊『ロックバレット』!!」
キーン!!
「ほんげぇぇぇぇぇぇ!?」

‥‥‥あ、今の子の魔法、うまくいったようだ。断末魔を上げる程の、潰したものが何かとは言わないが、自業自得だろう。
 それぞれ自身に適正のある魔法を試そうとしているようだけど‥‥詠唱や魔法名を言ったところで、まだまだ魔力がちゃんと出てこなかったりするのか、指先ほどの炎の塊や、一滴の水がしたたり落ちるほどで、なかなか難しいようである。
 懲りずに再度今スカート捲りを試みたやつがいたが、今度は他の子に氷でできた針でケツを刺された。あれは成功例か。


 見ているのは面白くもあるが…実際にやらないと、暇である。
 適性のない魔法を使うと魔力を一気に取られるようだし、出来れば適性が判断で来てから魔法を扱いたいが‥‥見ているだけだと本当に暇だ。

「せっかくだし、ちょっと試してみるか」

 やってみたいというか、魔法に関しては気になるからね。適性がなくとも、たとえしょぼかろうとも挑戦してみよう。初級魔法ならば、そんな大したものもないだろうし、適正無しでもまだギリギリ大丈夫なはずだ。

 でも、火はほんの僅かでも火事とかが問題だし、水は濡れると乾かすのが大変だから‥‥試すなら土か木かな。
 そう考えると、ここは造形できる魔法で、ミニチュアの小屋でも作ってみよう。
 丁度いいのは‥‥あ、合った。無属性のカテゴリに近いけれども、過去にその魔法はあったらしい。

「えっと、小人が住まう、居心地よき小屋よ『クラフトハウス』」


ボン!!
「‥‥は!?」

 まさかの一発成功‥‥‥なのか?いや、想像していた通りに小屋が出来たのは良いだろう。
 だがしかし、ミニチュアサイズを想像していたはずなのに、できたのは何故か人が立派に住むことができるほどのちょうどいいサイズのものになっていた。

 突然できた小屋に、他の魔法を練習していた人たちも、担当教員も目をびっくりさせて見開き、顎を外れんばかりにして驚愕していたのであった…‥‥やっべぇ、完全にやらかした。見学だけどこっそりやるつもりだったのに、なんでこういう時に限ってこんな目立つやつが出来てしまうのかなぁ?

――――――――――
SIDEハクロ

「ふ~ん♪ふふん♪ふ~~~~ん♪」

 その頃、ハクロは寮の食堂の厨房にて、食堂の調理人兼番人であり、愛称としておばちゃんと呼ばれている人の下で、本日の昼食の用意を手伝っていた。
 働かざるもの食うべからずという言葉があるので、ただのんびり暇に過ごすことはなく、ハクロは各授業の手伝いをしていたのだが、今はこの調理場の手伝いを行っていたのだ。

 料理はエルの家で、母親がやっていたのを手伝ってやっていたこともあり、糸で細かく野菜を刻んだり、味見をして少々物足りない部分を加えるなどの知識はしっかりと学んでいた。

「あらあらハクロさん、中々器用ねぇ」
「あははは、これぐらいなら私でもできるんですよ」

 おばちゃんがハクロの手つきを見て、その料理の腕の意外な上手さに驚き、ハクロは笑って答える。

「いやいや、今どきの若い子の中には、全く料理ができない子もいるんだよ。貴族の令嬢とかもそれに当てはまるけどねぇ。でも、いつ何があるのかもわからないからこそ、いつどうなっても対応して動けるように、最低限の料理ぐらいなら出来た方が良いのに、この学校の調理の授業ではどこをどうしたらそうなったのかわからないような代物が出来たりするのよねぇ」
「へー。例えばどのようなものがありますか?」

 料理下手だとしても、どのようなものができるのかよく知らないので、ハクロは興味をもっておばちゃんに聞いた。

「たとえば、塩と砂糖を間違えて不味く成ったり」
「ああ、それはありますよね」

「焼き方が不十分で、ちょっと生焼けだったりドロドロだったり」
「ええ、それもありますね」

「ゼリーンというお菓子を作ってもらったら、どういうわけかモンスターのスライムを誕生させたり」
「それもあ…ん?」

「レシピ通りに作っていたはずなのに、変なアレンジをしちゃって異臭が漂うだけじゃなくて、未知の生命体を生み出していたり」
「んん?」

「そして、調理場が大・爆・発☆ってやらかすのもいたのよねぇ」
「途中から明らかにおかしくなっていませんか!?」

 恐るべし、料理下手な人々。度が過ぎれば過ぎる程、凄まじいやらかしを見せるのか。
 そういう事例が過去にあったことから、起きないように指導も徹底するそうで、調理関係用の部屋は全て防爆・防塵・防臭・防生命体創造などの対策が施されているらしい。

 なにやらものすごい調理の裏事情を聞きつつも、気を取り直してせっかくここで料理を作るのであればという事で、おいしいレシピを教えてもらっていた‥‥その数分後に、エルがやらかした事が伝わって来て、慌ててエルの下へ彼女は駆けるのであった。

「な、な、何をやらかしているんですか、エルぅぅぅぅぅ!!」

‥‥‥苦労人はどうやら、彼の保護者も該当してしまうようであった。
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