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第1章:幼少期~少年期前編

10話 本領発揮とちょびっと…

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SIDEウサモン盗賊団

「げははははは!!偶然とはいえ獲物が増えたぜぇぇえ!!
「押しかけた先で、更に獲物を得るとは、運が良いぜぇぇぇふぉぉい!!」

 下卑た笑い声をあげ、ニタニタとした外道の笑みを浮かべ、壊れた馬車と巻き添えになった馬車の荷台の周囲を逃がさないように取り囲みつつ、『ウサモン盗賊団』の頭領サウスとその愉快ではない不快な仲間たちは狩りの終盤に向けて動いていた。
 最近はこの周辺で盗賊団として活動しているせいで、少々噂が流れてきたのか獲物が入りづらくなってきたのだが、本日は幸運なことに獲物を追いかけてさらなる獲物を見つけ、うまい具合に収穫できそうな状況に思わず笑いが止まらない様子。
 最初の方は、明らかに上等の乗客が乗っていそうな馬車を狙っていたのだが、逃げているのを追いかけている最中に、新たな獲物となる馬車を見つけてまとめて拿捕できるような状況というのは中々無く、普段は神なんぞ信じてもいない者たちであったが、この幸運に思わず神に感謝をささげてしまうほどであった。
 
 とは言え、偶然巻き添えにできた馬車の方は、上等なものでもなく、見たところ国の教育機関で輸送用に使用されるような類のようで、普通ならば獲物としてはそんなに美味しくはないものたちしかいないだろう。
 だがしかし、盗賊としてやってきた分、獲物に対して嗅ぎ分ける鼻を得て来た頭領のサウスの鼻はごまかせなかった。

「おい!そっちの馬車に美味そうな女が乗っているだろう!!さっさと俺たちに差し出せばぁ、今ならまだ軽く、他国で奴隷として売り払う程度で済ませてやるぜぇ!!」

 この盗賊団は、特にサウスは今まで馬車を襲撃し、そのたびに命をまだ助ける代わりに女たち奪い、自らの欲望のはけ口として性奴隷のように扱うなど、色欲の塊と化していた。
 外道としてねじ曲がっている色欲を持つがゆえに、今巻き添えにした馬車にはめったにお目にかかれなうようなうまそうな獲物が乗っているのだと匂いでわかったのである。
 
 そして大抵の場合、その女以外の乗客たちは命だけでも助かるために無理矢理出すか、あるいは自ら他の者を助けるために抵抗もせずに身を出す者もいたりするのだが、そんな事情も関係なく彼らは襲い掛かり、尊厳を奪い色欲を満たしてきたのである。

 その為、常日頃彼らの腰には、いつでもどこでも万全の状態で相手を犯せるように、普段は少しづつしか使えないほどの高級品とは言え、効果は確実にある媚薬を詰めた瓶を持っているのだ。
 そのお値段ゆえに、収入の8割が持っていかれているのだが、気持ちよくできるのであれば投資は惜しまない。
 ある意味、間違った方向へ努力を注ぐ悪しき投資家とも言えるだろう。


 そうこうしているうちに、じれったくなったのか仲間の一人がウサギから降り、その馬車へ近づいて無理やり中から引きずり出そうとした‥‥‥その時だった。

ドッゴォウ!!
「ごげっぶぅん!?」
「なっ!?」



 突然、馬車の扉に手をかけていた仲間の前で扉が開かれ、仲間が何かにぶん殴られて句の時に曲がって吹っ飛んでいき、何度もバウンドして地面を転がった。
 見れば、見事な拳が入ったようでめり込んだ跡が残っており、ひくひくと虫の息になっていた。

「な、何だ今の攻撃は!?」
「落ち着け、誰か腕に覚えのある用心棒でも乗っていたんだろう」

 中に入って、近づいたところで襲う、待ち伏せの攻撃。
 とはいえそれは、まだ一人だけしか受けておらず、種が割れたのであれば後は普通に数の暴力で押せば良いだけの話だと頭領は判断を下す。

「野郎共!!ひるむことなく中にいるやつらを引きずりだせぇぇぇ!!抵抗する用心棒がいようがいまいが、数人が犠牲になるだけで、あとは押し切れるはずだぁ!!」
「「「「いえっさぁぁぁぁ!!」」」」

 たかが仲間が一人、油断したために逝っただけである。
 むしろ、数が減ってくれればその分自分が上質な女を得た時により長く楽しめるだろうと思い、数が減ろうが何だろうが自分だけならばなんとか大丈夫だろうと、数の暴力による濁流の効果を信じ‥‥‥その馬車へ流れ込もうとしたその時だった。
 
シュルルルルルルルルルルル!!
「うわっつ!?」
「うおっつ!?」
「ぐげっつ!?」

 何かが馬車の扉からすごい勢いで飛び出し、盗賊たちの身体へ一気に巻き付いた。
 見ればかなり細い糸のようだが、その強度はおかしく、全身に力を入れても全然千切れる気配もない。
 更に、細い糸が食い込めば肉を切っているかのように痛みが走り、簡単に振りほどけないものだと理解させられる。

「ぐぅ、たかがこんな糸程度、抑えられてたまるか!!」
「こんなもん、ナイフでぶった切って」
バギィン!!
「は、は、刃が欠けたぁだとぅ!?」

 ただの糸ならば切ればいい話だと思ったが、手元にあったナイフでは逆に刃が欠けてしまう。
 シャレにならない硬度に、思わず目が飛び出そうになる。

「なんじゃこりゃぁ!?やっべぇ硬さだ!!」
「誰だよこんなもん、扱うやつは!?」

 信じられないほどの強度の糸に驚愕させられ、声を上げていると、ふと馬車から誰かが出てきた。
 どうやらこの事態を引き起こして見せた相手のようで、思わず文句を言おうとして‥‥‥サウスたちは声を失った。

 降りてきたのは、まるで女神かというような美しい女性。
 清き白さを身に纏いつつ、妖艶な体つきをしており、思わず言葉を失わされる。

 これまで見たことがないような美女の登場に驚かされたが‥‥‥よく見ると、その下半身の方には大きな蜘蛛の身体があった。


(こいつは‥‥辺境の方で、噂になった事のある蜘蛛女か?)

 こんな場所を活動拠点している盗賊団なだけに、多少の噂話程度ならば小耳にはさんでいた。
 ゆえにサウス及び他の仲間たちはその事を思い出し、どういうモノなのかすぐに理解した。

 だが、噂というのはしょせん尾ひれも付くもので、特に美しいアラクネと言うモンスターがいるという話でも、眉唾物の話のようなものだとこれまで思っていたのだ。
 それなのに、こうして目の前に出てくれば…その噂が、真実だった。いや、それ以上のものだと思わされる。

「さてと、これで全員捕縛できましたね」

 サウスたちがあまりの美貌にあっけに取られている中、関係ないというようにそう口に出すアラクネの美女。
 気が付けば、彼女の手元には盗賊たちを捕縛している縄があり、いつの間にか糸が縄に変わっており、しっかり全員を捕らえていた。
 さらに、彼らが乗っていたウサギのモンスターたちがいつの間にか失せており、全力でこの場から逃亡したようである。
 乗っていた感覚が消失したのに気が付かなかったのは、糸が凄まじい強度で固定されており、空中に浮いているかのような状態になっていたせいのようだった。

 ここではっと状況を把握し、サウスは叫ぶ。

「や、野郎共なんとかこの拘束をほどけ!!モンスターだろうとなんだろうと、めったに得られない超超超上玉の絶世の美女を逃してなるかぁぁぁあ!!男としてかなり情けないことになるぞぉぉぉぉ!!」

 流石外道な盗賊の頭領というべきか、すぐに色欲に謝意され、不利な状況であろうとも何とかなるだろうという勢いで動き出す。
 だがしかし、力いっぱい振りほどこうとして必死にもがくが、糸から縄に変わった拘束具の前にはその肉体も役に立たないだろう。

 そんな中で、そのサウスの言葉を聴き、物凄く不快そうな顔でアラクネの美女が彼の方に顔を向けた。

「号令をかけるところを見ると、あなたがこの盗賊団の頭領ですか」
「そ、それがどうした!!今に見ていろ、こんな縄などほどいて貴様をこの場で犯し、」

「話は聞きません。エルとの馬車の旅を邪魔した事には、ひどく不快に思っています」
「ぐっ…」

 美女のあからさまに怒っている顔というのは、何となく言えないような迫力を感じ、ぐぅの音も出ない。

「だからこそ、ここで一気に静かにさせますね。私の母さん直伝‥‥‥『全力ぶん回し投げ』!!」
「な、なに、おぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「「「ふんげぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 一瞬の出来事で理解が追い付かなかったのだが、状況を把握できたときには体に物凄い重圧を感じ取り、変な声が漏れだした。
 その声は他の仲間たちも同様の者を上げており、全員が瞬時に加圧されたようである。

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
 
 そう、どうやらあのアラクネは驚くべきことに、その細腕で全員分の縄を束ねて無理矢理ぶん回しているのだ。
 しかも勢いがかなりすさまじく、急加速で内臓が飛び出そうになるほどの負担を掛けられつつも、逃れることができない拘束状態でどうしようもできない。


 ぶんぶんと勢いよく回し、全員宙を縛られた状態で舞う。その速度はかなり早く、遠心力がどんどんかかり、その分体に猛烈な力がかかって押しつぶされていく。

「ぎえぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぐげぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「吐くぞぉぉぉぉぉぉ!!」
「おえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 もはや阿鼻叫喚の遠心力地獄。全身押さえつけられるどころか何もかもが外に飛び出そうになり、かなりヤバい状態になっていく。
 次第に、盗賊たちはそれぞれ気を失っていき、抵抗が無くなっていった。

「ぐげげげ、ごぼぶ!!ならばぜめでごれでぐらいやがべぇ!!」

 もはや呂律も回らないほどの酷い状況にあるにもかかわらず、頭領として出ていた分鍛えていたのか、根性でそう口にするサウス。
 縛られていたのだが、遠心力のおかげで少しだけ体がずれ込み、腰に遭った瓶を手に取る事が出来たのだ。

 最後の抵抗と言わんばかりに、サウスは腰にあった媚薬入りの瓶を全力をもって、アラクネにめがけて投げつける。
 この遠心力で投げるのもままならず、手も自由ではないのでうまいこと当たらないかもと思っていたのだが、火事場の馬鹿力というべきか、その外道根性が奇跡を起こしたというのか、何と遠心力から抜け出してアラクネへめがけて飛んだのだ。

 その事に気が付いたのか、そのアラクネは片手で縄を持ち替え、もう片方の手から糸を出して捕えようとしたが、生憎回していた分行動がすぐにできず、瓶が直撃する。
 脆い瓶だったようで、幸いにも怪我することはなかったが、砕け散ってその中身がアラクネに降りかかった。

 相当の効力を持つ、高級媚薬入りの瓶。
 そんなものを、頭から被ったようだが、生憎人間や亜人とは違うモンスターなためか、どうやらすぐに効果は出ていない様子。
 だがしかし、その効力がどれだけ強いのか、使用してしっかりと知っているサウスは、この後アラクネがどうなるのかを予想が付き、この地獄に対する意趣返しにはなっただろうと思い、限界であった胃の内容物をぶちまけながら気絶していくのであった‥‥‥‥



――――――
SIDEエル

「‥‥‥ハクロ、大丈夫か?」

 馬車の外の騒ぎが収まり、盗賊たちが全員気を失って動けなくなったところで、僕はそうハクロに問いかけた。
 様子を見ていたが、あの盗賊の頭領と思わしき人物が何かを彼女にぶつけていたようで、その中身の液体によって、彼女は少し濡れていた。
 何かをかけられたようだが、その正体は見当がつかない。劇薬の危険性もあったが、肌が焼き爛れているような様子もないし、不明である。

「私なら大丈夫ですよ。盗賊の頭領と思われる人物が何かを投げつけてきたのですが、苦し紛れの抵抗で投げて来た、ただの飲み水かもしれないですしね」

 ハクロは糸で素早く布を作り、何も問題がないというように、濡れた部分を拭いていく。
 気のせいか、少しだけ赤みを帯びているようだが‥運動して少し熱くなったのだろうか。

「お、おおぅ、なんとかたすかったべ‥‥酷いものじゃな、これ」

 と、馬車で隠れていた御者さんが出てきて、周囲の惨状を見てそうつぶやいた。
 無理もない。盗賊たちが、円周上にぐったり倒れているからね。
 縄を作って縛り上げ、抵抗できないようにしたうえで、ぶん回したのだが‥‥ちょっとやり過ぎたような気がしなくもない。
 だって、かなりの気持ち悪さだったのか嘔吐していたり、漏らしていたり、身体が変な方向へ曲がっていたり、髪の毛が白くなっているもん。悲惨な光景という言葉以外、何と言うのか。

「やり過ぎなような気もするけど…ハクロ、凄い強いね」
「あははは…昔、お母さんから教わった直伝の『空中ぶん回し大道芸』って技を真似しただけですよ。本家本元だったお母さんには及びませんが、それでも、十分だったようです」

 苦笑しつつ、そう説明するハクロ。どうやら彼女自身、この惨状からやり過ぎたと、思っているようである。
 というか、何を教えているんだハクロのお母さん蜘蛛。確か、ハクロとは違って巨大な蜘蛛のモンスターだと聞くけど、そのぶん回し芸の規模はさらにヤバそうだと思わされる。
 山のような巨体と聞くが、それが振り回すとなると、もっと大きな相手でもいたのだろうか。
 あ、もしかして子供たちが襲われないように編み出したかな?



 とにもかくにも、コレで盗賊たちは無力化したも同然である。無力化よりも酷いことになっているような気がしなくもないが、外道ならば仕方がない事だろう。
 ふと気が付けば、最初に盗賊に襲われていたな馬車から人が降りてきていた。

「おお、ありがとうございます」

 見れば、御者の爺さんに負けず劣らずの好々爺のように見えるお爺さんであった。。
 王道の展開ならば物凄く高貴な美女とかもありそうだったが、そううまいこと行かない話か。そんなつもりでやったわけじゃないけどね

 事情を話してきたので聞いてみると、どうやらこのお爺さんの名前はデーンザ=ボーンという名前らしい。
 アルクレウス商会というところの老舗の店の商会長をしており、今回はある商売話で単独で向かっていたそうなのだが、最悪なことにあのウサモン盗賊団とかいうバカげた名前の盗賊たちに襲撃をかけられ、逃げていたところを偶然にも俺達が通りがかってしまったようだ。
 盗賊たちの獲物としては、かなりの金持ちの人だったので、襲うには値する人だったのだろう。

「巻き添えにした上に、助けて下さって本当に申し訳ない。お礼をしたいところなのだが、生憎今は商売話のために何も手許に無くてな‥‥‥」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「そうですよ。私が単に、エルとの馬車での旅に邪魔をされたから、怒って撃退したにすぎませんからね」

 申し訳なさそうにするデーンザさんに対して、僕とハクロはそう言葉を返す。
 というか、今回の一番の功労者のハクロがそう言っているんだし、気にすることもないってば。



「いやいやいや、それでは本当にこちらが何もできずに心苦しいのだ。助けてもらったのに、何もせぬとは商売人として名が折れる。むぅ…ふむ、見れば、まだ年端も行かぬ子供に、女神のような美しさをもつモンスターと出会うとはこれも何かの縁。そうじゃ、だったらこれを渡そう」

 そう言いながら、何か思いついたのか、デーンザさんは懐から何かを取り出した。
 それは小さなカードのようなものであり、名前を書き込んで手渡してきた。

「これは商売人必須の商売用のマジックアイテム『絶対証明』と言われる魔道具でしてな、渡してきた本人からの贈り物だと確実に証明できてしまう信頼性抜群の特別なものじゃ。これにちょっと書き込んだが‥‥‥あなた方はこの先、我がアルクレウス商会の品を今後無料で購入できるようにしたぞ」
「へぇ、無料で…えええ!?」
「それ、良いのですか!?」
「一応、一月の購入での限度額は、星金貨1枚程度しかできぬからな。完全無制限とはいかぬが、これでも十分だと思うぞ」
「「十分すぎるんですけれども!?」」

 デーンザさんの言葉に、僕とハクロはそろって口に出す。
 この世界は基本的に全国共通貨幣という物が存在するらしく、星金貨となるとだいたい前世で言う所の一億円ほどの金額になるだろう。
 その他にも、特別な価値を示すものはあるが、この爺さんの説明だと、ひと月にという限度があるとは言え、現世で一億円もの価値までなら無料で購入可能にしてくれるとは恐ろしすぎる。
 アルクレウス商会ってどんな商会なんだよ。この世界、生まれてから田舎暮らしだから、どこにどんな規模の商会があるのかすら把握できていないからな。
 一つ言えるのは、超太っ腹すぎる爺さんだったというべきか。

 将来的に村でのんびり過ごすから縁もなかったのに、いきなりの大金が使用可能になるとは、人生思いもしないことが多すぎるなぁ。
 というか、そんなことができる爺さんだったらそりゃ盗賊にも狙われるよ。




 大金過ぎるので断りたかったが、こうでもしないと恩返しできないと言われたので、僕等は何とかそれを受け取ることにした。
 可能な金額が怖ろしいが‥‥まともに考えるならば、そこまで使うことはないと思いたい。

「そういえばデーンザさんはこの後どうするんですか?馬車が壊れていますよね」

 あの盗賊団のせいで破壊されたデーンザさんが乗っていた馬車。車輪が破壊されており、走行が出来ない状態と言って良いだろう。

「大丈夫。すでに迎えが来るように連絡しておるからのぅ」
「い、いつの間に…」


 どうやら連絡を取るためのマジックアイテムもあるようで、既に盗賊たちが捕縛されていることを通報したらしい。
 30分ほど経つと、なにやら大きな牢を接続した馬車がやってきて、盗賊たちを放り込んでいった。


 とにもかくにも全員収容され、その手続きをデーンザさんが引き受けてくれるようで、その場で別れることになった。
 今回の盗賊、懸賞金がかかっているので、確認が取れ次第全額後で送金してくれるそうだけど、この後の僕らの場所へ送る事が出来るのだろうか。

 そう疑問に思って問いかけると、どうやら寮暮らしとなるなら、ある程度特定可能らしい。
 この世界の個人情報はどうなっているのだろうかと思うが、考えない方が良いのだろう。

 
 そしてデーンザさんと別れたあと、もう少し安全を確保するために、今晩の宿泊場所になるだろう地を目指して、再度馬車が進み始めた時だった。


「ん?」
「どうしたの、ハクロ?」

 ふと、馬車に乗っているとハクロがモゾッと体をよじらせた。

「い、いえ、なんでもありません」

 手を振ってハクロはそう返答したけど…気のせいか?なんかハクロ少し赤くなっているというか、息が荒くない?
 もしかして、さっきのあの投げつけられた液体って、毒でもあったのだろうか?

「ハクロ、今晩停車して野宿する予定の場所の近くには湖があるらしい。もし、何か毒でもかかっていたのならば、そこで洗い流すと良いよ」
「だ、大丈夫ですよ、エル。ちょっとかゆいかなぁっと、うっ」

 もぞもぞと、なにやら落ち着かない様子のハクロ。
 かゆみ薬でも使われたのか、不安にさせられるのであった…

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