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7章 死がふたりを分かつまで

7-5 日が訪れる時は、あっさりと

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「キュルル‥だいぶ大きくなった。お腹の子、アルスとの子、すくすく成長している♪」
「中で動いている様子があるし、もう間もなくかもしれない‥‥‥んー、やっぱりドキドキするな」

 ふふっと笑みを浮かべるハクロに対して、僕はそのお腹に手を置きながらそう口にする。

 もう間もなく予定日が近くなってきたというのもあって、あちこちで用意される中、万が一に備えてすぐに動きやすい場所という事で特別に用意された室内で過ごしているわけだが、出産の時が近づいてくるにつれて緊張してくる。

 ああ、子供が出来るのは良いのだけれども、機械神の祝福などがあるとはいえ不安にならないわけじゃない。

 何が起きるのかもわからないし、そもそもお腹の子がどの様な子なのかお楽しみと言わんばかりに隠されており、ドキドキしてしまうのだ。

 女の子なのか、男の子なのか。双子という部分は分かったけれども情報が少ないがゆえに、早く生まれてきてほしいという気持ちもあるだろう。

「大丈夫大丈夫、私とアルスの子、絶対にいい子だもの!困るようなこと、無いと思う」
「そうかもね」

 というか、僕の方がドキドキしているのにハクロはすでに準備満タンと言うように肝が据わっているような気がする。

 母となるからなのか、成長がみられるのはいいけれども、子供に情けない父親として見られたくないなぁ‥うん、直ぐに気持ちを切り替えて、しっかり緊張を消し飛ばすか。

「でも、お腹の子本当に元気。出てきたらきっと、すごく動…‥‥いたっ!?」
「どうしたのハクロ!?」
「お腹が、すごい痛い、キュルルルルルルル!!」

 にこやかに話していたところで、急にハクロガ顔をしかめて痛みを訴え始める。

 さっきまで何もなく、愛おしそうにお腹を撫でていたはずだが‥‥‥あ、これまさか…‥

「陣痛!?所長、職員、全員緊急事態緊急事態!!ハクロが産気づいたぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」」

 本当に用意していてよかった、万が一に備えて部屋からすぐに外部へ通信できる魔道具をフル稼働させると、全部の魔道具から返信が帰って来て、一気に慌ただしくなった。

 予定日より早まる可能性もあったが、それがあたるとは‥‥‥何にしても、今は緊急事態である。

 その為、大急ぎで近くにいた人たちから対応し始めるのであった。






「うーん、うーん、お腹、キュルキュル、痛い!!」
「ひーひーふーのリズムで、力むのじゃ!!難産な様子はないのじゃから、早めに終えるのじゃぞ!!」
「ひーひーふー、ふっふひー!!」

 ドマドン所長のアドバイスに従いつつ、力むハクロ。

 その手の片方を僕は握っており、出産を見守る。

「がんばれハクロ、お腹の子がもうすぐ出てくるよ」
「キュル、頑張る。アルスとの子、産む、ひーひーふーへ!!」

 ちょっと途中でリズムを間違えている気がしなくもないが、それでも危険な兆候などは見られない。

 安産の祝福とやらが効いているのだろうけれども、それはあくまでも安産なだけで、産まれるまでの痛みなどは軽減してくれないらしい。

 

 長いようで、気が付けば数時間ほど経過したが…‥‥ようやく、赤子が産み落とされた。

「「ふぇ、おっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」
「っと!!生まれたよハクロ!!」
「キュル、ようやく生まれた…‥キュルル、疲れた」

 産声を聞いて、ほっと一息をつくハクロ。

 かなり大変だったようだが、それでもすぐにいつもの調子に戻ったようである。

「のじゃ、元気な双子じゃな。‥‥‥ふむ、男の子と女の子、見事に産み分けているのぅ」

 どうやらハクロの産んだ子は、男女そろっていたらしい。

 どっちが兄や姉になるのかと思ったが‥‥‥そこで一つ、問題が起きた。

「ところでじゃな、ハクロ。お主の最後の力みですぽっと生まれたのは良いのじゃが‥‥‥同時に出てきたのじゃけれどこれどう区別するのじゃ?」
「え、同時に生まれたの?」
「うむ。どっちが先かと思っていたのじゃが…‥‥どうもどちらも同じ産道を一緒に出てきちゃったようでな、普通ではあり得ぬにじゃが‥‥‥これ、どっちを先に産んだというべきかのぅ」


‥‥‥安産というか、無事に生まれたのは良かったのだろう。

 けれども、まさかの同時生誕によって、兄姉問題が起きてしまうのであった…‥‥いや、産まれてくれたことが一番良いんだけど、これ後で出生届けなどをする際に困ることだよね。

「キュル、道理で最後が一番、きつかった‥‥‥でも、そろって生まれてよかった…‥可愛い子供、産んで嬉しくなる気分、お母さんの気持ちが分かったかも」

 まぁ、そんな事は些細な事だったようで、ハクロが喜んでいるなら今はその喜びを味合っておこう。

 その兄姉問題は後で考えるとして、何か問題が無いか素早く検査が行われ、異常は見当たらなかったので赤子を渡してもらう。

「「すぅ‥すぅ‥‥」」
「さっき産声を上げたというのに、直ぐに寝ているね」
「うん、元気だったけれども、鳴き疲れたのかも。アルスとの大事な赤ちゃん‥‥‥ふふふ、良い子良い子」


 生まれた赤子を抱え、優しく微笑むハクロ。

 大げさすぎる表現でもないのだが、その姿は赤子を愛おしく思う聖母のようにも見えるのであった‥‥‥


「キュル、それにしても、なんか体が軽い‥‥‥赤子、お腹からいなくなって、軽くなった?」
「あ、ハクロのお腹が元に戻っている。あれだけ膨らんでいたのに、なんですぐに戻っているの?」
「どんな体質じゃよソレ。ハクロ、お主の状態も後で検査をしておくかのぅ」

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