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5章 高等部~そして卒業まで

閑話 実は気が付かれているのだけれども

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『‥‥‥蠢いているようだが、放置して良いのか?』
『‥‥問題はまだ、無いデスネ。起きないようにするのが最善でしょうが、そこまで干渉できるわけでもないのデス』
『散々天罰を落としまくってか?』


 はぁっと呆れるようにいう神に対して、ふふふっと謎めいた笑い声をあげる機械神。

 ここは神々がいる世界‥‥‥ではなく、アルスたちがいる世界を見ることが出来る特別な部屋のような場所であり、彼らはここで監視を行っていた。

『そもそも、この世界の管轄はあなたの方にありますからネ。私が担当していないからこそ、微々たる影響しか出せないのですヨ』
『微々たる、という言葉の定義を議論したいのだが』

 神々にもある程度の管轄や制限なども存在し、そうそう力が振るえるわけでもない。

 そもそも神という存在がおおっぴらにそうでもない者たちへ向けて力を行使すること事態はそこまで無く、やるとしてもほどほどなことが多い。

 けれどもこの目の前の機械神は、そのほどほどのやそこまででもない部分を理解していないのか、あるいはそれを無視できるほどの力があるのかと神は思う。

『まぁ、止めようがないのだが‥‥‥それでも、邪神の類が動いていること自体が、彼女への害になる可能性を考えると動きそうなのだが』
『確かにそうなりますね。とは言え、あの邪神が私の寵愛しているものへ向けて手を出すような真似はしません。邪神とは言いますが、ひねくれた邪神のような者ですからね…‥‥知り合いの悪魔らしからぬ悪魔や、龍の頂点のはずなのにそれを望まない者などと同類だと思いマス』
『その交流関係が神にあって良いのか…‥‥というか、それをいうならそちらも当てはまるような』
『‥‥‥』

 神の言葉に対して、機械神はずずっといつの間にか出していたお茶を飲んで沈黙を貫いた。

 それは肯定しているのか、知らぬふりをしているのか、自覚をしているからこそあえて黙っているだけなのか‥‥‥その思考は分からない。

 けれども、この状況が喜ばしいものでもないことは流石に分かっているはずである。

『しかし、ここの管轄をしているあなたの方が動くべきなのに、何故私に聞くのでしょうカ?邪神の類でも、あなたも力があるのでふっ飛ばせますよネ?』
『動こうとしても、加減が難しいのがあるからな‥‥‥特に今回は、色々と見えているからこそ困っているのもあるのだ』
『ふーん‥‥‥まぁ、納得はしますネ。邪神の信者となった、いや、自称信者といえるような方の中に、あなたがかつて送った魂もありますからネ。手を迂闊に出せば、神の力ゆえにうっかり消し飛ばしかねない‥‥‥一つ一つに気にかけているからこそ、判断を出せないのでしょウ』
『ああ、そうだな』

 機械神の言葉に、神は即答する。

 神ゆえに何でもできると思われそうなものだが、神でもできないことはある。

 ゆえに今回、相談も兼ねてこうやって共に状況を見ているのだが‥‥‥‥どうやら今回、機械神は動くつもりが無いらしい。

『いつまでも振るって居れば、その力に恐怖して襲わなくなるでしょウ。ですが、振るい続ければ後々狙う輩がまた出てくる‥‥‥ああ、人というのは面倒な生き物ゆえに、この辺りがちょっと難しいのデス』
『それは分かるなぁ』

‥‥‥他愛もなく話し合いつつ、相談を試みるもどうしようもないらしいと神は悟る。

 とはいえ、このままにしておくのも状況が悪化しそうで、どこかである程度の妥協をしなければいけない可能性がある。

『‥‥‥やはり、どうにもできぬか。ならばやれるのは、制限をなくすぐらいか』
『おや?外すのですカ。元々は力に溺れぬようになどの意味合いもあったはずですヨネ』
『そうだ。だが…‥‥こうやって見る限りでは、そうはならぬと信じている。‥‥‥残念ながら溺れてしまった者が相手にいることが悲しいが、それでも多少はマシになるだろう』

 そうつぶやき、映像が途切れてその場は何もなくなる。

 神も去り、機械神も経ちつつ、ふと先ほどの映像を思い出す。

『‥‥‥私もまた、出来ればもっと手を出したい。けれども、それができない時があるからこそ‥‥‥乗り切れるように祈るぐらいしかできないのデス』

 神が誰に何を祈るのか、それは分からない。

 意味を成すのか、そもそも何も解決しないのではと思うのだが、それでもそっと機械神は手を合わせ、寵愛している者へ向けて無事を願う。


 世のなかには、どうしても思い通りにならないこともあり、どうなるのかは神でさえも分からないのであった‥‥‥
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