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4章 中等部後期~高等部~

4-44 出来上がりつつきちんと工夫もしまして

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‥‥‥夏季休暇も中盤を越えた今日この頃、ようやくインスタント食品を参考にした牧場から出せる商品を生み出すことが出来ていた。

「お湯で簡単に、出来立ての品へ戻せるインスタント食品‥‥‥イメージ的には、カップラーメンとかを考えていたのに、どうしてこうなったんだろうか」
「でも凄い、水一滴でケーキに戻るって、どうなっているの!?」
「食品の開発に、ちょっと国が巻き込まれちゃったからなぁ…‥‥」

 出来上がった試作品に対して、ハクロが驚いているのだが無理もない。

 ほんの小さな一粒の種のようなものが、水を一滴たらすだけで様々な食品へと変貌を遂げるのだから。

 本当に、どうしてこうなった…‥‥魔法がある世界だからちょっとは入り込むかもと思ったのに、滅茶苦茶入り込んでしまった。

「まぁ、そもそもインスタント食品自体の有用性が高すぎたんだよね‥‥‥」



 前世では普通に家庭に紛れて楽しめる食品ではあったが、その価値は捉え方によってはとんでもない方向に見いだされることがある。例えばただの鉄の塊で人から見れば使えない廃棄物でも、リサイクル業者から見れば再利用できる有価物になるようなものという事か。

 インスタント食品もある見方であれば、万が一の不作時の救済措置としてとれるものとしての便利な面を持つのだが、また別の面からすればお手軽な携帯食料として軍に利用できるというように、様々な価値を持ってしまう。

 そのことが、ファンクラブの方の観察で先に判明したようで、各方面に伝わってしまい、国を巻き込んだプロジェクトへ発展してしまったのである。戦争などに利用される可能性はできればなくしたかったので、軍用食品にはならないように制限をかけるという制約なども他国とも結ぶことになったり、より手軽なインスタント方法を開発していくうちに、なんでかこんなものになってしまった。

…‥‥価値はあるし、需要もかなり存在していたので消費問題は解決できたんだけどね。なんかこう、やらかした気がしなくもない。過去の転生者で誰かカップラーメンの作り方を知っているものがいれば、その人に全部押し付けられたんだろうけれどな。

 何にしても、国家プロジェクトレベルにまでなってしまえば、後は開発が一気に進んだ。

 帝国自体持っている技術力は非常に高いし、利用価値を考えると他国でも欲しくなるのでそちらからも優秀な研究者たちが回されるなど、共同プロジェクトとして発展するのも早かった。

 なので、こうやって各国が情熱を注いだ結果、インスタント食品にしてはやり過ぎたレベルのものが爆誕したのだが…‥‥開発期間を短縮できたと、前向きに考えようか。

 でも、その過程の中で契約書などを交わしまくったせいで、年間とんでもない売り上げが出ることが分かったんだけどね。今度は金の消費の問題かぁ…‥‥領地発展とこのインスタント食品で胡坐をかかないように他に何か投資できるところを探ったほうがいいのかもしれない。


「結果としては人々にきちんといきわたるし、問題はないとは思うけれども‥‥‥夏季休暇明けが怖いなぁ」
「キュル、アルス、遠い目になっている…‥‥これ食べて、元気出して」
「うん、ありがとうハクロ」

 僕がちょっと、やらかした末に結末を見えてしまって現実逃避をしたくなっていると、出来てきたケーキを糸で切り分けて食べさせてくるハクロ。

 味は良いのは分かっているけれども、このやらかしの後が怖い。本当になんでこうなったんだと言いたいが、既に後の祭りである。

「研究所が出来上がっていたり、牧場の試験運用レベルから完全運用の話が出てきたり、なんかもう手を離れて動かれているし、考えない方が気が楽かも。ハクロ、ケーキ以外のやつで、ちょっと辛いのないっけ?甘ったるくなってきたし、気分転換に欲しい」
「えっと、辛いの辛いの‥‥‥デス・マグナム・ソースハンバーグがあるよ?」」
「どんなハンバーグだ。いや、ミートスライムからの肉を元にしたけれども、そんなの作ったっけ?」

 商品開発に携わりもしたが、これはちょっと覚えがない。

 まぁ、プロジェクト自体は他の国々の共同研究もあって、あちこちから意見を貰ってやっているからこそ、知らないものが出てもおかしくはないけど‥‥‥うん、これ確かにうちで作ったやつだ。

「アイディア提供は『女王の犬志望』さん…‥‥なんか名前が濃いというか、どんな人なんだろう、この人」
「女王の犬?なにそれ?」
「多分ハクロが知らなくても良い事だ思うよ」

 嫌な予感がひしひしと伝わって来るし、深く関わらないのが良いだろう。

 そう思いつつ、出て来たものをポンッと水をかけて食品に戻す。真っ赤でじゅうじゅうと焼けたてのハンバーグになっているのは中々の出来具合。

 だがしかし、何故か煙の時点で刺激があるような‥‥‥‥これ、食べないほうがいいのでは?でも出しちゃったのでもったいない。

「とりあえず残さないように食べようかな‥‥‥あ、ハクロも食べる、これ?」
「うん、一緒に食べよう♪」

 今は現実逃避もしたいので、作った商品を実際に味わってゆっくりと落ち着くのが良いだろう。

 そんなわけで、僕らは一緒にハンバーグを口の中に入れるのであった。


ぱくっ
「「‥‥‥‥からあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」

…‥‥ついでに食べてすぐに、全身から汗が噴き出て火を吐きそうになるほどの激辛に悶える羽目になったのは言うまでもない。
「キュルルル!!辛いけどこれ、度過ぎている!!多分売れない!!」
「何でこれ作っちゃった!?というか、誰が考えたのこれぇぇぇぇぇぇ!!」

 何でこれ、できちゃったの!?どこでどうやって、混ざったのかなこれ!?

 実はとある第2皇子が王城内で偶然このプロジェクトを耳にして、気まぐれで採用を願ってアイディアを出したのが原因であることは、後日知るのであった。そしてついでに、ハクロを辛さで泣かせたという事で、その皇子はファンクラブによる処分が行われたらしいが、僕らの知る由はないのであった…‥‥
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