160 / 229
4章 中等部後期~高等部~
4-31 引き籠るのは案外難しい
しおりを挟む
…‥‥夏季休暇が始まるまでの、短い引き籠り生活。
それまでに正妃様及び正常なファンクラブたちが徹底的に清掃を行うので、待つだけで良い。
時間にしてもせいぜい1週間ほどではあったが、3日目の現在、ちょっと個人的に困ることになっていた。
ぎゅううぅぅ
「…‥‥なんか前より密着してない?」
【キュル‥‥‥なんとなく、アルス抱きたい気分、強くなってる】
室内が太陽光コケで外と変わらぬ状態の明るさで照らされている中、本日のハクロは元のサイズのまま、僕をぎゅっと抱きしめたままになっていた。
くっつくのはいつものことかもしれないが、その密度がちょっと増している。
より強くというか、手元に引き寄せられているというか…‥‥なんかいつもよりも、甘えられていないだろうか?
【アルス、ぎゅっとしたい。しっかりと感じ取りたいって、なんか思うの】
「ストレスが変に影響したのかな‥‥?」
この引き籠りになる場所であれば、そうそう変な視線が入ることは無いだろう。
だがしかし、ここに籠るまでの間に受けていた視線に対する影響が、今頃出てきてもおかしくはないだろうし‥‥‥それで本能的に他者を求めている可能性もある。
「でも、ちょっと拘束されるなぁ」
ギュウギュウ抱きしめられることに悪くは思わないのだが、ちょっと動きにくい。
というか、理性的にちょっヤヴァイ。清い交際清い交際清い交際と念仏のごとく心の中で唱えるけれども…‥‥そもそも状況が状況だからなぁ。
取りあえず時間が立てば直るとは思うけれども、こうやってぎゅっとくっ付かれているとこちらの精神的な負担が大きい。
おのれ独占派閥めと責任を追及しつつ、気を紛らわせたいところではある。
「そうなると、思いっきり体を動かすことなんだろうけれども…‥‥ここだとできないからなぁ」
小さくなる薬で小人のようになって動くことで、普段以上に動くことになるのだが、ごまかしたようにしか思えない。
こういう引き籠り生活をしていると、どうしてもこう大空のもとで思いっきり動きたくなる。しかし、そう容易く外に出にくいとなると、何か別の手段を考えなければならない。
部屋の中に引き持ちつつ、それでいて大運動しつつ、思いっきり煩悩退散ストレス解消…‥‥あ、単純な事じゃん。
「何も、外に出ずとも増やせばいいのか」
【キュル?何を?】
「部屋」
簡潔に答えたが、これが多分一番いい方法だろう。
そもそもこのアイアンウッドで作ったログハウス自体、僕の薬でこういう成長をするようにしているのだから、そこにさらに影響を与えればいいだけの話である。
しかも外に出ることなく、内側から直接打ち込めばいいだけの話で、この細工によって部屋数を増やせばいいのだ。
まぁ、念のための基礎部分の補強が必要になるけどね…‥‥計画性のない増築というのはどう考えてもリスクしかないからな。
思い立ったが吉日というのもあって、直ぐに実行することにした。
既にこのログハウスを作っているので、これを元にして新しく内側から増築できるようにすればいいだけだ。
もちろん重量を考えて根っこ部分を強化させつつ、イメージとしてはジムを増築するようなイメージで作成し‥‥‥珍しく注射器型の薬を作ることが出来た。
「あとはこれを刺せばいいだけだ」
【キュルゥ、痛そう】
注射針の鋭さを見てハクロがそうつぶやく。
まぁ、アイアンウッドなのでしっかりと刺せるように極太にしたからね‥‥‥こんなもん、誰が打たれても悶絶する痛みになりうるだろう。
そう思いつつ、ためらわずに床に直接注入して数分後、少々揺れつつも階段が出来上がり、新しい部屋ができたようだ。
太陽光を放つコケを放り込んで明かりを確保してから登って見れば…‥‥そこにはきちんと、イメージ通りのジムのような空間が作られていたのであった‥‥‥‥
「あ、器具も全部木製になっていた…‥‥重さもそんなにないか」
【キュル、なにこれ、動く床の道具があるよ!?】
ルームランナーをハクロがダッシュで走るが‥‥‥‥これ、木の皮で出来ているけど耐久性大丈夫かなぁ?
‥‥‥木製品ばかりのジムが出来上がっていた丁度その頃。
ファンクラブ内では今、掃除が行われていた。
あちこちから派閥同士が協力し合い、しばらく見れないハクロの姿に血涙を流して悔やみつつ、その状況にしてしまった者たちへと怒りをぶつける。
そして元凶となった者たちもただやられるわけにはいかず、全力で逃げつつ反撃の手立てを模索するも、数や想いの差によって見つかることは無い。
「くそぅ!!どうしてだ!!何故、我々の考えが通じないんだ!!あの美しさを見たら誰だっても思うだろう!!」
「そうだそうだ!!あのような芸術作品を、いや、神が創り上げた存在と言って良いものを手元に置くべきだというのに、なぜ誰も賛同しない!!」
路地裏にて、逃げ伸びていた者たちが身をひそめつつも、盛大に文句をつぶやく中…‥‥ふと、その背後に人影が立った。
「…‥‥おやおや、お困りのようですね」
「っ!!何者だ!!」
「追手か!!」
「いえいえ、そうではございません。自分はただの商売人でして…‥‥何か手伝えることがありそうでしてねぇ…‥‥」
追手に追われていた者たちを見て、ニヤリとそう口にする人物。
いかにも怪しすぎる人物ではあったが、今の自分たちの状況をどうにかできるのならばと、甘い話しに彼らは乗ってしまうのであった…‥‥‥
「‥‥‥なるほどなるほど、そういう者たちですか」
「そうだ、我々の思いを理解することのない奴らだがな」
「本当にどうにかできそうか?」
「ええ、そうですねぇ…‥‥でしたら、まずは手に入れるのが早いと思うのですがねぇ‥‥‥‥」
それまでに正妃様及び正常なファンクラブたちが徹底的に清掃を行うので、待つだけで良い。
時間にしてもせいぜい1週間ほどではあったが、3日目の現在、ちょっと個人的に困ることになっていた。
ぎゅううぅぅ
「…‥‥なんか前より密着してない?」
【キュル‥‥‥なんとなく、アルス抱きたい気分、強くなってる】
室内が太陽光コケで外と変わらぬ状態の明るさで照らされている中、本日のハクロは元のサイズのまま、僕をぎゅっと抱きしめたままになっていた。
くっつくのはいつものことかもしれないが、その密度がちょっと増している。
より強くというか、手元に引き寄せられているというか…‥‥なんかいつもよりも、甘えられていないだろうか?
【アルス、ぎゅっとしたい。しっかりと感じ取りたいって、なんか思うの】
「ストレスが変に影響したのかな‥‥?」
この引き籠りになる場所であれば、そうそう変な視線が入ることは無いだろう。
だがしかし、ここに籠るまでの間に受けていた視線に対する影響が、今頃出てきてもおかしくはないだろうし‥‥‥それで本能的に他者を求めている可能性もある。
「でも、ちょっと拘束されるなぁ」
ギュウギュウ抱きしめられることに悪くは思わないのだが、ちょっと動きにくい。
というか、理性的にちょっヤヴァイ。清い交際清い交際清い交際と念仏のごとく心の中で唱えるけれども…‥‥そもそも状況が状況だからなぁ。
取りあえず時間が立てば直るとは思うけれども、こうやってぎゅっとくっ付かれているとこちらの精神的な負担が大きい。
おのれ独占派閥めと責任を追及しつつ、気を紛らわせたいところではある。
「そうなると、思いっきり体を動かすことなんだろうけれども…‥‥ここだとできないからなぁ」
小さくなる薬で小人のようになって動くことで、普段以上に動くことになるのだが、ごまかしたようにしか思えない。
こういう引き籠り生活をしていると、どうしてもこう大空のもとで思いっきり動きたくなる。しかし、そう容易く外に出にくいとなると、何か別の手段を考えなければならない。
部屋の中に引き持ちつつ、それでいて大運動しつつ、思いっきり煩悩退散ストレス解消…‥‥あ、単純な事じゃん。
「何も、外に出ずとも増やせばいいのか」
【キュル?何を?】
「部屋」
簡潔に答えたが、これが多分一番いい方法だろう。
そもそもこのアイアンウッドで作ったログハウス自体、僕の薬でこういう成長をするようにしているのだから、そこにさらに影響を与えればいいだけの話である。
しかも外に出ることなく、内側から直接打ち込めばいいだけの話で、この細工によって部屋数を増やせばいいのだ。
まぁ、念のための基礎部分の補強が必要になるけどね…‥‥計画性のない増築というのはどう考えてもリスクしかないからな。
思い立ったが吉日というのもあって、直ぐに実行することにした。
既にこのログハウスを作っているので、これを元にして新しく内側から増築できるようにすればいいだけだ。
もちろん重量を考えて根っこ部分を強化させつつ、イメージとしてはジムを増築するようなイメージで作成し‥‥‥珍しく注射器型の薬を作ることが出来た。
「あとはこれを刺せばいいだけだ」
【キュルゥ、痛そう】
注射針の鋭さを見てハクロがそうつぶやく。
まぁ、アイアンウッドなのでしっかりと刺せるように極太にしたからね‥‥‥こんなもん、誰が打たれても悶絶する痛みになりうるだろう。
そう思いつつ、ためらわずに床に直接注入して数分後、少々揺れつつも階段が出来上がり、新しい部屋ができたようだ。
太陽光を放つコケを放り込んで明かりを確保してから登って見れば…‥‥そこにはきちんと、イメージ通りのジムのような空間が作られていたのであった‥‥‥‥
「あ、器具も全部木製になっていた…‥‥重さもそんなにないか」
【キュル、なにこれ、動く床の道具があるよ!?】
ルームランナーをハクロがダッシュで走るが‥‥‥‥これ、木の皮で出来ているけど耐久性大丈夫かなぁ?
‥‥‥木製品ばかりのジムが出来上がっていた丁度その頃。
ファンクラブ内では今、掃除が行われていた。
あちこちから派閥同士が協力し合い、しばらく見れないハクロの姿に血涙を流して悔やみつつ、その状況にしてしまった者たちへと怒りをぶつける。
そして元凶となった者たちもただやられるわけにはいかず、全力で逃げつつ反撃の手立てを模索するも、数や想いの差によって見つかることは無い。
「くそぅ!!どうしてだ!!何故、我々の考えが通じないんだ!!あの美しさを見たら誰だっても思うだろう!!」
「そうだそうだ!!あのような芸術作品を、いや、神が創り上げた存在と言って良いものを手元に置くべきだというのに、なぜ誰も賛同しない!!」
路地裏にて、逃げ伸びていた者たちが身をひそめつつも、盛大に文句をつぶやく中…‥‥ふと、その背後に人影が立った。
「…‥‥おやおや、お困りのようですね」
「っ!!何者だ!!」
「追手か!!」
「いえいえ、そうではございません。自分はただの商売人でして…‥‥何か手伝えることがありそうでしてねぇ…‥‥」
追手に追われていた者たちを見て、ニヤリとそう口にする人物。
いかにも怪しすぎる人物ではあったが、今の自分たちの状況をどうにかできるのならばと、甘い話しに彼らは乗ってしまうのであった…‥‥‥
「‥‥‥なるほどなるほど、そういう者たちですか」
「そうだ、我々の思いを理解することのない奴らだがな」
「本当にどうにかできそうか?」
「ええ、そうですねぇ…‥‥でしたら、まずは手に入れるのが早いと思うのですがねぇ‥‥‥‥」
0
お気に入りに追加
3,725
あなたにおすすめの小説
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
黄金の魔導書使い -でも、騒動は来ないで欲しいー
志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。
そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。
‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!!
これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。
「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる