94 / 229
3章 学園中等部~
3-30 縁とは何かとあるもので
しおりを挟む
「‥‥‥にしても、妹かぁ。前世の僕にいたとはなぁ」
【アルス、まだ言っている、キュル】
「だって、結構驚いたからね」
‥‥‥リリとの話し合いから時間も経過し、風呂にもゆっくり入ってそろそろ寝付こうとする頃合い。
互いに寝間着に着替えつつ、本日はハクロのサイズはそのままで、彼女の蜘蛛部分の背中に横になりながらそうつぶやいた。
「前世の妹かぁ…‥‥今世も彼女が妹だったら、それはそれでよかったような‥‥‥いや、そうでなくて良かったかもしれない」
ふと想像してしまったが‥‥‥そんなことにならなかったのは、ある意味良かったのかもしれない。
なぜならば、彼女が血縁のある妹として生まれていたのであれば、あの酷い家の中で生まれることになり、ひどい扱いを受けていた可能性がある。
あの父も義母モドキも浮気をしていたようだし、何処かに知らぬ兄弟姉妹がいてもおかしくはないのだが‥‥‥一応、その可能性はない模様。
まぁ、そっちよりもあの兄モドキたちが手を出していた可能性もなくはないからな…‥‥今さらながら考えて見れば、相当ロクデナシな奴らだっただろう。
【そう言えば彼女、見かけて縁を見つけたって、言ってたよね?アルスの、兄モドキ、まだ生きていたの?】
「そのようなんだよね。まぁ、極刑は免れてはいたけれども…‥‥」
…‥‥義母モドキもとい罪人の子供ではあったが、まだまだ若き身の子供たち。
その性格などは矯正が不可能に近かったが、それでも命を奪うまでの処分は下されずに、それぞれ何処かの孤児院あたりに出されたはずであった。
まぁ、処分としては甘い方かもしれないが、血のつながりが無かったとはいえ、仮にも兄扱いしていたからなぁ‥‥‥犯罪者の洗脳教育と言うべきものの影響もあったかもしれないし、ある程度の情状酌量の余地はあったのだ。色々手遅れかもしれないけど。
とは言え、二度と会いたくもないし、僕が次期当主の座を継ぐとなった以上、逆恨みをして何かをやらかしかねないし、会わなくなるような場所へ出されたとは聞いていたが…‥‥結構経ったはずなのに、また耳にするとは思わなかった。
兄モドキ、本気で存在を忘れかけていたのもあるが‥‥‥うん、元気にやっているのであれば、それはそれで良いのかもしれない。そもそもそんなに干渉し合わなかったからなぁ‥‥‥‥あっちが勝手に自滅街道まっしぐらだったというべきか。
何にしても、どちらかの生存確認ができたのであれば、もう片方も生きていそうだ。
あの兄モドキたち、多分黒いG以上に生命力はしぶとそうだし、ひねくり曲がった根性などは多分直りようがないからね‥‥‥その分、生きる事への執着が強そうだ。
とは言え、今度僕らに害を加えたら、それこそ極刑まっしぐらではある。
流石に仏の顔は三度までと言う事もなく、二度もない。
冷徹かもしれないが、あの兄モドキたちに関心が無いだけなんだよなぁ‥‥‥‥
「…‥‥でも、そう考えると、ハクロはハクロで兄弟姉妹が多いようだよね?」
【うん、たくさんいた。皆、色々と凄かったけど…‥‥弟たち、執事になっていたの、一番驚いたかも】
リリの横で執事をしていた、ハクロの弟たち‥‥‥まとめてベイドゥ。
彼らは彼らで、人の暮らしにはなじんでいたようだったが、あれはあれで個性的だったかもしれない。
【生きていたの、良かったけど、流石に執事は、予想できなかった】
「まぁ、予想できないよね」
どこの世界に、生き延びた蜘蛛たちが力を合わせて、執事になるやつがいるのかわからない。
実際に目にしたとは言え、信じがたくも思えたが‥‥‥‥目の前に、人の姿を持つハクロがいるのを見ると、無いわけではない事実を理解させられるだろう。
と言うか、彼女の兄弟姉妹って本当にどうなっているんだろうか…‥‥ドマドン所長辺りが聞いたら興味津々だろうな。
「でも、血縁での前世のか‥‥‥今じゃないのは、惜しくもあるな」
あの酷い環境の中で生まれなくて良かったとは思うけど…‥‥そう考えると、血の繋がった相手がいなくて、自分は孤独なのかもしれない。
なんとなく物寂しいような感じがした中で…‥‥ふと、ハクロが腰を捻って僕の方へ向き、そっと抱きしめて来た。
【キュル、大丈夫、アルス。私、傍にいるもの】
「‥‥‥それもそうだね」
人とモンスター、血のつながりが無い間柄とは言え、彼女とは共に過ごした時間も長い。
いや、時間の長さも関係なく…‥‥彼女がいるからこそ、その寂しさは失われるだろう。
そっと抱きしめてきた彼女に対して、温かい気持ちを僕は抱く。
察してくれるその優しさに、どことなく愛おしさも感じる死…‥‥ああ、やっぱり彼女がいないと、今の僕は無かったかもしれないなぁ。
「ありがとう、ハクロ。僕の側にいてくれて」
【キュル、私こそ、アルスに助けられていること多いし、ありがとう。私、アルスとずっと一緒だもの‥‥‥】
ほんわかと互いに優しい気持ちになりつつ、眠気が襲ってきたので部屋の明かりを消し、眠ることにした。
温かみと安心感を感じつつ、前世の自分は思い出せずとも、せめて妹の存在に関してはちょっとは思い出すようにしないとなと思いながら、夢の中へといざなわれるのであった…‥‥
「‥‥‥いいなぁ、ハクロちゃんベッド」
「羨ましいが、この映像も記録せねばな…‥‥しかし、驚くべき情報が多かったな」
「ええ、今日一日だけでも、多く出ましたね」
すやすやとアルスとハクロが仲良く寝息を立てはじめたころ、その天井裏ではファンクラブの者たちが集まって、本日の情報交換を行っていた。
今日の一日の行動すべてに関して監視はしていたのだが…‥‥彼らにとっても、今日得られた情報が多すぎて、色々と整理すべきものが多かったのである。
「しかし、正妃様情報からも得たが、彼が転生者とは言え…‥‥前世の血縁者と思わしき者が、他国の令嬢から出るとはな」
「そのうえ、執事に蜘蛛のモンスターが…‥‥兄妹って似るのかな?」
「偶然だとは思うが…‥‥その事に関しては、また後でどうとでもなるが、それ以外でも気になることがあったね」
「ああ、ダンジョンで、群れの襲撃情報か…‥‥」
‥‥‥今日の話の中で、彼らも耳を立て、記録して、目にも焼きつけながらしっかりと情報を収集する中で出てきた、ハクロの故郷の話。
前々から候補ではあったが、今回の件でダンジョン内で彼女が産まれたらしいということがほぼ確定事項となったのだが…‥‥
「…‥‥ガス系の道具、もしくは魔道具の無許可使用の話は出てないな」
「ああ、皇女様の件で調べはしたが…‥‥その襲撃云々に関しては、出ていなかったな」
情報伝達はが素早く行われ、ベイドゥとやらが話していた内容の正誤を確認したところ、誤りはなかった。
しかし、そうなってくると…‥‥ハクロとベイドゥがかつていた群れの襲撃に関しての話で、おかしい点が出てくるのである。
「冒険者の無許可侵入無し。目撃情報があれども出てきたのはどれも違う者であり‥‥‥駄目だな、これ以上深く掘り下げられない」
「そもそも、タラテクト系の群れに大人数で襲ったとはいえ、それだけの人数の情報が出ないのも妙だ」
「何かと隠されているというか、何処かで工作された可能性があるな…‥‥見つかると、都合が悪い輩がいるな」
何か悪い企みが合って工作されて痕跡を消したようだが、痕跡の消し具合が綺麗過ぎてむしろ疑うべきところが多くなってくる。
そもそも、その群れを襲った目的が何なのか…‥‥糸を採取するだけならばまだわかるが、焼き払っての証拠隠滅などはやり過ぎな印象もあるのだ。
「まぁ、アンデッド化の可能性を考えると、焼却処分は正しいが…‥‥それでも、ここまで情報を得られないのはおかしいだろう」
「ファンクラブ会員内で情報を交換して見たが、どうやらどこの間諜や密偵などに所属しているようなものはいないようだ」
「何処かの貴族家が強制介入…‥‥いや、それにしては大きすぎるし、これは国そのものが関わっていると見て良い案件だろう」
何かと怪しいものが出てきているが、その正体はつかめていない。
とは言え、このまま放置するわけにもいかないだろうし…‥‥‥
「…‥‥細かい情報を集める限り、そいつらがいたからこそ我々が彼女に出会えたのだが…‥‥大怪我を負わせているのは万死に値するだろう」
「そもそも、あの姿になる前であったとは言え、彼女の心に傷を負わせたその罪は許されるものではない」
「この裏の業界に通じて似たようなことをやったこともあるが…‥‥それでも、奪われる側の気持ちを考えなかったことは無く、ここで贖罪するつもりではないが、相手を必ずあぶりださねばな…‥‥」
…‥‥何かと蠢くような業界にいる中で、見つけた一筋の温かい光。
純粋で眩しくて、自分達が良くないことに染めている時もあったが、彼女にそんなものを触れさせたくはない。
それなのに、かつて彼女へ手を出し、その心に傷をつけたという大罪を犯した輩を…‥‥ファンクラブの者たちは、絶対に放置することはない。
「せっかく、出身地が分かったんだ。そこからさらに、手を広げよう」
「ああ、こちらの雇い主は近々そちらへ出店する予定だし、情報ならば集めやすいはずだ」
「過去にそこに所属していたのも、伝手を辿ってより詳細に得られるだろうな」
「「「そして、彼女の心の憂いとなる輩を滅すべきだ」」」
優しくて純粋であり、あふれる光のようなハクロ。
彼女に対して、大きな蜘蛛時代での事らしいとは言え、それでも体・精神両方に傷を負わせた輩に対して、ファンクラブの者たちは彼女の代わりに復讐心を抱き、必ず見つけだしてあげようと誓いあう。
その心は伝播していき、そろそろファンクラブも拡大の時を見せるのであった。
なお、前から拡大していないかと言うツッコミは、ツッコミ役不在のために誰も入れないのであった。
「にしても、本当に気持ち良さそうだよなぁ…‥‥ハクロちゃんの、あのモフモフな蜘蛛の背中に寝るのは贅沢の極みだよ」
「贅沢と言うか、そもそも金で出来ぬことだが…‥‥現在、再現を頑張ってやろうとしている者たちもいたはずだな」
「ああ、寝るのは至福だが、寄り添いあいたいものだ‥‥‥‥」
【アルス、まだ言っている、キュル】
「だって、結構驚いたからね」
‥‥‥リリとの話し合いから時間も経過し、風呂にもゆっくり入ってそろそろ寝付こうとする頃合い。
互いに寝間着に着替えつつ、本日はハクロのサイズはそのままで、彼女の蜘蛛部分の背中に横になりながらそうつぶやいた。
「前世の妹かぁ…‥‥今世も彼女が妹だったら、それはそれでよかったような‥‥‥いや、そうでなくて良かったかもしれない」
ふと想像してしまったが‥‥‥そんなことにならなかったのは、ある意味良かったのかもしれない。
なぜならば、彼女が血縁のある妹として生まれていたのであれば、あの酷い家の中で生まれることになり、ひどい扱いを受けていた可能性がある。
あの父も義母モドキも浮気をしていたようだし、何処かに知らぬ兄弟姉妹がいてもおかしくはないのだが‥‥‥一応、その可能性はない模様。
まぁ、そっちよりもあの兄モドキたちが手を出していた可能性もなくはないからな…‥‥今さらながら考えて見れば、相当ロクデナシな奴らだっただろう。
【そう言えば彼女、見かけて縁を見つけたって、言ってたよね?アルスの、兄モドキ、まだ生きていたの?】
「そのようなんだよね。まぁ、極刑は免れてはいたけれども…‥‥」
…‥‥義母モドキもとい罪人の子供ではあったが、まだまだ若き身の子供たち。
その性格などは矯正が不可能に近かったが、それでも命を奪うまでの処分は下されずに、それぞれ何処かの孤児院あたりに出されたはずであった。
まぁ、処分としては甘い方かもしれないが、血のつながりが無かったとはいえ、仮にも兄扱いしていたからなぁ‥‥‥犯罪者の洗脳教育と言うべきものの影響もあったかもしれないし、ある程度の情状酌量の余地はあったのだ。色々手遅れかもしれないけど。
とは言え、二度と会いたくもないし、僕が次期当主の座を継ぐとなった以上、逆恨みをして何かをやらかしかねないし、会わなくなるような場所へ出されたとは聞いていたが…‥‥結構経ったはずなのに、また耳にするとは思わなかった。
兄モドキ、本気で存在を忘れかけていたのもあるが‥‥‥うん、元気にやっているのであれば、それはそれで良いのかもしれない。そもそもそんなに干渉し合わなかったからなぁ‥‥‥‥あっちが勝手に自滅街道まっしぐらだったというべきか。
何にしても、どちらかの生存確認ができたのであれば、もう片方も生きていそうだ。
あの兄モドキたち、多分黒いG以上に生命力はしぶとそうだし、ひねくり曲がった根性などは多分直りようがないからね‥‥‥その分、生きる事への執着が強そうだ。
とは言え、今度僕らに害を加えたら、それこそ極刑まっしぐらではある。
流石に仏の顔は三度までと言う事もなく、二度もない。
冷徹かもしれないが、あの兄モドキたちに関心が無いだけなんだよなぁ‥‥‥‥
「…‥‥でも、そう考えると、ハクロはハクロで兄弟姉妹が多いようだよね?」
【うん、たくさんいた。皆、色々と凄かったけど…‥‥弟たち、執事になっていたの、一番驚いたかも】
リリの横で執事をしていた、ハクロの弟たち‥‥‥まとめてベイドゥ。
彼らは彼らで、人の暮らしにはなじんでいたようだったが、あれはあれで個性的だったかもしれない。
【生きていたの、良かったけど、流石に執事は、予想できなかった】
「まぁ、予想できないよね」
どこの世界に、生き延びた蜘蛛たちが力を合わせて、執事になるやつがいるのかわからない。
実際に目にしたとは言え、信じがたくも思えたが‥‥‥‥目の前に、人の姿を持つハクロがいるのを見ると、無いわけではない事実を理解させられるだろう。
と言うか、彼女の兄弟姉妹って本当にどうなっているんだろうか…‥‥ドマドン所長辺りが聞いたら興味津々だろうな。
「でも、血縁での前世のか‥‥‥今じゃないのは、惜しくもあるな」
あの酷い環境の中で生まれなくて良かったとは思うけど…‥‥そう考えると、血の繋がった相手がいなくて、自分は孤独なのかもしれない。
なんとなく物寂しいような感じがした中で…‥‥ふと、ハクロが腰を捻って僕の方へ向き、そっと抱きしめて来た。
【キュル、大丈夫、アルス。私、傍にいるもの】
「‥‥‥それもそうだね」
人とモンスター、血のつながりが無い間柄とは言え、彼女とは共に過ごした時間も長い。
いや、時間の長さも関係なく…‥‥彼女がいるからこそ、その寂しさは失われるだろう。
そっと抱きしめてきた彼女に対して、温かい気持ちを僕は抱く。
察してくれるその優しさに、どことなく愛おしさも感じる死…‥‥ああ、やっぱり彼女がいないと、今の僕は無かったかもしれないなぁ。
「ありがとう、ハクロ。僕の側にいてくれて」
【キュル、私こそ、アルスに助けられていること多いし、ありがとう。私、アルスとずっと一緒だもの‥‥‥】
ほんわかと互いに優しい気持ちになりつつ、眠気が襲ってきたので部屋の明かりを消し、眠ることにした。
温かみと安心感を感じつつ、前世の自分は思い出せずとも、せめて妹の存在に関してはちょっとは思い出すようにしないとなと思いながら、夢の中へといざなわれるのであった…‥‥
「‥‥‥いいなぁ、ハクロちゃんベッド」
「羨ましいが、この映像も記録せねばな…‥‥しかし、驚くべき情報が多かったな」
「ええ、今日一日だけでも、多く出ましたね」
すやすやとアルスとハクロが仲良く寝息を立てはじめたころ、その天井裏ではファンクラブの者たちが集まって、本日の情報交換を行っていた。
今日の一日の行動すべてに関して監視はしていたのだが…‥‥彼らにとっても、今日得られた情報が多すぎて、色々と整理すべきものが多かったのである。
「しかし、正妃様情報からも得たが、彼が転生者とは言え…‥‥前世の血縁者と思わしき者が、他国の令嬢から出るとはな」
「そのうえ、執事に蜘蛛のモンスターが…‥‥兄妹って似るのかな?」
「偶然だとは思うが…‥‥その事に関しては、また後でどうとでもなるが、それ以外でも気になることがあったね」
「ああ、ダンジョンで、群れの襲撃情報か…‥‥」
‥‥‥今日の話の中で、彼らも耳を立て、記録して、目にも焼きつけながらしっかりと情報を収集する中で出てきた、ハクロの故郷の話。
前々から候補ではあったが、今回の件でダンジョン内で彼女が産まれたらしいということがほぼ確定事項となったのだが…‥‥
「…‥‥ガス系の道具、もしくは魔道具の無許可使用の話は出てないな」
「ああ、皇女様の件で調べはしたが…‥‥その襲撃云々に関しては、出ていなかったな」
情報伝達はが素早く行われ、ベイドゥとやらが話していた内容の正誤を確認したところ、誤りはなかった。
しかし、そうなってくると…‥‥ハクロとベイドゥがかつていた群れの襲撃に関しての話で、おかしい点が出てくるのである。
「冒険者の無許可侵入無し。目撃情報があれども出てきたのはどれも違う者であり‥‥‥駄目だな、これ以上深く掘り下げられない」
「そもそも、タラテクト系の群れに大人数で襲ったとはいえ、それだけの人数の情報が出ないのも妙だ」
「何かと隠されているというか、何処かで工作された可能性があるな…‥‥見つかると、都合が悪い輩がいるな」
何か悪い企みが合って工作されて痕跡を消したようだが、痕跡の消し具合が綺麗過ぎてむしろ疑うべきところが多くなってくる。
そもそも、その群れを襲った目的が何なのか…‥‥糸を採取するだけならばまだわかるが、焼き払っての証拠隠滅などはやり過ぎな印象もあるのだ。
「まぁ、アンデッド化の可能性を考えると、焼却処分は正しいが…‥‥それでも、ここまで情報を得られないのはおかしいだろう」
「ファンクラブ会員内で情報を交換して見たが、どうやらどこの間諜や密偵などに所属しているようなものはいないようだ」
「何処かの貴族家が強制介入…‥‥いや、それにしては大きすぎるし、これは国そのものが関わっていると見て良い案件だろう」
何かと怪しいものが出てきているが、その正体はつかめていない。
とは言え、このまま放置するわけにもいかないだろうし…‥‥‥
「…‥‥細かい情報を集める限り、そいつらがいたからこそ我々が彼女に出会えたのだが…‥‥大怪我を負わせているのは万死に値するだろう」
「そもそも、あの姿になる前であったとは言え、彼女の心に傷を負わせたその罪は許されるものではない」
「この裏の業界に通じて似たようなことをやったこともあるが…‥‥それでも、奪われる側の気持ちを考えなかったことは無く、ここで贖罪するつもりではないが、相手を必ずあぶりださねばな…‥‥」
…‥‥何かと蠢くような業界にいる中で、見つけた一筋の温かい光。
純粋で眩しくて、自分達が良くないことに染めている時もあったが、彼女にそんなものを触れさせたくはない。
それなのに、かつて彼女へ手を出し、その心に傷をつけたという大罪を犯した輩を…‥‥ファンクラブの者たちは、絶対に放置することはない。
「せっかく、出身地が分かったんだ。そこからさらに、手を広げよう」
「ああ、こちらの雇い主は近々そちらへ出店する予定だし、情報ならば集めやすいはずだ」
「過去にそこに所属していたのも、伝手を辿ってより詳細に得られるだろうな」
「「「そして、彼女の心の憂いとなる輩を滅すべきだ」」」
優しくて純粋であり、あふれる光のようなハクロ。
彼女に対して、大きな蜘蛛時代での事らしいとは言え、それでも体・精神両方に傷を負わせた輩に対して、ファンクラブの者たちは彼女の代わりに復讐心を抱き、必ず見つけだしてあげようと誓いあう。
その心は伝播していき、そろそろファンクラブも拡大の時を見せるのであった。
なお、前から拡大していないかと言うツッコミは、ツッコミ役不在のために誰も入れないのであった。
「にしても、本当に気持ち良さそうだよなぁ…‥‥ハクロちゃんの、あのモフモフな蜘蛛の背中に寝るのは贅沢の極みだよ」
「贅沢と言うか、そもそも金で出来ぬことだが…‥‥現在、再現を頑張ってやろうとしている者たちもいたはずだな」
「ああ、寝るのは至福だが、寄り添いあいたいものだ‥‥‥‥」
30
お気に入りに追加
3,725
あなたにおすすめの小説
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
黄金の魔導書使い -でも、騒動は来ないで欲しいー
志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。
そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。
‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!!
これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。
「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる