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3章 学園中等部~

3-14 腰の治療を速攻で終えつつ

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‥‥‥突然落下して来た、鎧の人物。

 全身甲冑というか、ガッチガチに固めているというか、防御は攻撃にも変えることができると身をもって知ってしまったというべきか…‥‥とにもかくにも、不審者として判断されるのは間違いないだろう。

 治療薬で痛みを消しつつ、ハクロに急いで教師たちを呼んでもらったが、休日ゆえに人手不足。
 
 なので一旦は、気絶している様子もあるので確認のために、保健室へ運んだのだが…‥‥


【キュルゥ‥‥‥鎧、重かった】
「ご苦労さま、ハクロ。頑張って運んで、偉い偉い」
【キュル】

 ふぅっとハクロがひと息を突き、運んだ彼女を褒めるために頭を撫でてあげる。
 
「にしても、先生たちは?」
【休日中、職員室にいなかった。けれども、緊急連絡先はあるから、しっかり連絡済み。全員、直ぐに来るって言っていたよ】

 明日からは授業だし、教員たちもすぐに出られるようにしていたのだろう。

 ほんの十分ほどで近い人からすぐに来れることを確認しつつ、ひとまずはこの謎の鎧の人物について何者か考えておく。

「なんで部屋に、こんな人が落ちてくるのかな‥‥‥?」
【突然、現れた。落ちてきたかのように、出てきたよね?】

 うーんと二人で首を捻ってみるが、こんな人物が落ちてくる原因がわからない。

 なんというか、前世で言う所の神隠しの出てくるバージョンと言うべきか‥‥‥‥出てくるのであれば、せめて僕の上ではなく室外にして欲しかった。一歩間違えたら、打ちどころ悪かった可能性があるからね。

「あと、鎧で全然素性が分からないけど…‥‥生きているのかな?」
【どうなのかな?】

 改めて確認して見れば、気絶しているようではあるが、寝息が聞こえているので息はできているらしい。

 鎧を着こんで寝るのは、体に悪そうだが、生きているのならば情報を得られるだろう。

「何にしても、まずは先生待ちか…‥‥それまで、このまま寝かせようか」

 無理に鎧を脱がせる必要はないだろうし、体がガッチガチにこってもこっちの知った事ではない。

 というか、うつ伏せで寝ていた分、腰に強打されたし…‥‥内心、ちょっと恨んでいたりする。


【先生、早く来ないかな?】

 目を離したすきにどこかに行っても困るし、先生方が来るまでここで待つ。

 貴重な休日を潰しかけている分、起きたらそれはそれで、何かで補ってほしい。そうだな‥‥‥帝都内の人気のお菓子店の幻のメニューとかかな。

 そう思いつつも、教師たちの到着を待っていた…‥‥その時であった。


――――ピピピピピ!!
「【!?】」
 
 タイマーの音みたいなものが鳴り響き、僕らは驚く。

 音の発生源を見れば、鎧の人からであり…‥‥鎧の節々が、軽く光る。

 どうなるのかと身構えて見ていると、ぶしゅうううっと音を立てて鎧が変形していき…‥‥その人物からはがれ、大きなネックレスに収まった。


「‥…人間の、女性?」

 残っていたのは、ネックレスを付けた女性だろう。

 綺麗な長い金髪をしており、どこかで見たことがあるような顔に似た少女だろう。

 というか、最近本当にどこかで見ているような…‥‥うーん、誰かに似ているけど、誰だろう。

【キュルゥ、女の人?あの鎧、この人なの?】
「みたいだけど…‥‥何だったんだ、あの鎧」

 見れば、首元にかかっているネックレスに収納されたかのように見えるが、何かの魔道具だったのだろうか?

 時限式というか、安全を確認して解除する防御の魔道具と言うべきか…‥‥変型はちょっとロマンあるような気がする。

 そう言えば、貴族の中でも高位の人達は、身を守るための魔道具を肌身離さず持っているらしいし、この人のあの鎧もその類なのかもしれない。

 そう考えると、この女の人は高位の貴族という可能性があるが…‥‥それならなおさら、僕らのところに振ってくる理由がわからない。

「でも、どこかで見た容姿に近いような…‥‥誰だったかな?」
【キュル、私も、なんか見覚えがある気がする。というか、匂いが誰かに近い?】

 容姿という点以外でも、何やら匂いが誰かに似ているらしい。

 そんなものは分からないが、モンスターである彼女なら分かるのか…‥‥そう言えば、蜘蛛って匂いが分かるらしいし、その類の彼女も匂いには敏感なのかな?

 

「‥っ‥こ、こは‥‥‥」
「あ、目を覚ました」

 誰なのか首をかしげて考えていると、寝ていた少女が目を覚ます。

 改めて見れば、年齢的には僕よりも上かもしれないし…‥‥中等部終わりぐらいじゃないかな?

【大丈夫?】
「‥…大丈夫‥‥‥って、あれ?わたし‥‥‥誰?」
「え?‥‥‥まさかとは思うけれど、自分自身の記憶が無いの?」
「記憶‥‥‥いえ、わたしが誰なのか、というのは‥‥‥ああ、駄目ね。思い出せない、って、なんか大きな蜘蛛に人が腰かけているぅぅぅぅ!?」

 気が付くまで遅かったが、彼女を見てそんな反応をするのか。すごい新鮮と言うか、ここまで驚く人が出るのも久しぶりなような気がする。

 まぁ、一瞬そう見えるのだから無理は無いか…‥‥驚愕しすぎているような気がするけど、人によって驚く個人差はあるだろう。







 とにもかくにも、目を覚ましたようだが、何やら様子がおかしい模様。

 詳しく聞いて見たところ、常識などはまだあるようだが‥‥‥‥どうやら、彼女自身の記憶が無いらしい。

 すぽっと、人生から自分だけが抜けているような状態らしいが、わからないことが多くて彼女が頭を抱え込んでいると、ようやく教師の一人がやってきたようだ。

【キュル!ガルバンゾー先生が来たよ!】
「むぅ、今日は休日ゆえに色々としていたのだが…‥‥何やら人が落ちてきたという話があったが、どうなのかね?」
「あ、先生この人です」
「どれどれ‥‥‥は?あ?え?何故、ここに彼女が…‥‥」
 ガルバンゾー先生を室内にいれ、記憶喪失になっているらしい彼女を見せた途端…‥‥戸惑うかのような声を上げ、先生の表情が驚愕に染まった。


「先生、知り合いなのでしょうか?」
「すいません、見知らぬお方。わたしのことを知っているのでしょうか?」

 なにやら知り合いに出くわしたかの様子なので、案外早くに正体を知ることができるかもしれない。

 そう思い、先生に問いかければ…‥‥出てきた回答は、驚くべきものだった。

「知っているも何も‥‥‥‥アリス・フォン・エルスタン様だ」
「ん?なんか聞いたことがあるような…‥‥」
【キュル‥‥‥家名、聞いたことあるよね?】
「聞いたことがあるも何も、彼女は第1皇女様のようにしか見えないのだが」

「【‥‥‥皇女様!?】」
「え?え?え?」

 ガルバンゾー先生の言葉に僕らは驚き、彼女は…‥‥第1皇女様らしい人物は、戸惑うかのような反応を見せる。


「‥‥‥ふむ、これは守りの魔道具だ、しかも、皇族や王族の御用達の徹底されたものだが…‥‥ここに、名前が彫ってあるぞ」
「本当だ、しっかり名前が彫られている」
【キュル、こっちを見れば、早かったかも?】

 ひとまずは王城の方に連絡を取りつつ、ガルバンゾー先生に経緯を説明し、彼女のネックレスを見てもらったところ、ほぼ皇女様で確定らしい。

 ただ、本当に皇女様だとすると、なんで自室に落下してきたのかが不明だが…‥‥連絡を出してすぐに王城の方から呼び出しがかかり、僕らはそのまま連れていかれるのであった…‥‥

「えっと、わたしこの国の皇女‥‥?全然、記憶に無いのだけれども…‥‥」
【アルス、これ、記憶戻せないの?】
「んー、記憶を戻す薬って作れそうだけど…‥‥駄目だ、今一つイメージがわかないや」

 作ろうと思えばたぶんできるんだろうけど、今一つ抽象的過ぎて想像しにくくてできない。

 記憶のイメージはタンスのようなものな感じで思い描いたけど、精製できないな…‥‥忘却ならできるけど、こっちができないのも変な話しである。

 まぁ、チート能力も制限ありだから、こういうことがあっておかしくないけど、ここまでできないと神のいたずらと言っても良いような気がするなぁ‥‥‥‥
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