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3章 学園中等部~

3-9 年頃と言えばそうなるものもいるかもしれないが

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‥‥‥中等部の時期は、前世で言う所の中学と高校の間ぐらい。

 なので、年頃の少年少女というのもあり、初等部の時に比べると色々と健全でもあるようなそうでもないような、そんな物が出回ったり話に挙がったりすることはあるだろう。

 とはいえ、一応この帝国の学園は不順異性交遊などを禁じており、仮に風呂の覗きなどが起きたとしても徹底した対策は施されているそうで、撃沈されている生徒を目にすることもある。

 まぁ、撃沈する生徒が出るという事は、それなりに色々と思うところはあるらしいが…‥‥



「図書室で借りた本に、こんなものが挟まっているとは誰が思うんだよ…‥‥」

‥‥‥幸いと言うべきか、現在ハクロは珍しく僕の側にはおらず、魔法について色々と考えていることがあるそうで、教員の元に尋ねに行っている。

 一緒に出向くのも考えたけど、たいした魔法を僕は使えないし、流石にずっと一緒なのもどうなのかと思う時があるので、こうやって一人で寮の自室で留守番をしつつ、図書室から借りてきた小説を読みふけろうとしていたのだが…‥‥はらりと落ちてきたものを見て、素早く元のあった場所へいれ、本を閉じた。

 何が出たのかは口から出したくはないが、あえて言うのであれば、古典的な表現であはーんでうふーんというか、その手の類。

 健全な男子生徒が狙うような類なのだろうが…‥‥ゆっくりと小説を読もうとしている中で、そんな物が出てきてしまった驚きはどうにかしてほしい。

「‥‥‥にしても、なんでこんなものが挟まっているのやら」

 出てきた写真の人達よりも、ハクロの方が何倍も綺麗だからまだ動揺は少ない方ではあったが、それでも心臓に悪いものである。

 というか、仮にこれを図書室内でぶちまけたら、今後の学園内で居場所がなくなりかねん代物である。

 あとちょっと、隠し撮りっぽいのもあったような‥‥‥‥誰だ、犯罪者になりかけているやつは。


 とにもかくにも、素早く本に閉じて見ないようにしたとは言え、挟まっているのには変わらない状況。

 前世の事で自分自身のことはそう思いだすことは無いのだが‥‥‥‥なんか、本を読んでいる時に黒く這いよる混沌Gが落ちてきたので驚愕し、バシンっと挟んでしまった時の危機的状況に似ているだろう。

 いやまぁ、ちょっとグロイ光景と文字を一つ変えただけのものにはなるのだが‥‥‥うう、なんか思い出したくはない一部の記憶が出てきてほしくはなかった。

 ひとまず隠してしまったが、開けばまた出るだろうし‥‥‥見たとかそういうことを言われるのも何か嫌である。

 そう考えると、誰にも気が付かれないうちに返却したいのだが、問題があった。

 まず、ここから図書室までは距離があり、返すまでの道中に人目に付く可能性がある。

 次に、移動中にハクロが来て、何をしているのか興味津々で見られてしまう可能性がある。

 そして何よりも、貸出系統は記録が残されており…‥‥こんなものを挟んだ輩に僕がこれを借りて中身を見たことで、共犯にされる可能性があるのだ。

‥‥‥あ、でもそれならいっその事、教員に告げ口するべきか?

 こんなものを持ち込んできている時点で、貸出記録から洗い出すこともできるはずだろう。

 けれどもこれを元にして、なんかやられそうなのも嫌だな…‥‥そもそも今でさえ、ハクロと一緒に生活していることで、何かとほんわかしているらしい人もいるが、嫉妬の目とかが無くなっているわけでもないし、その手の輩が出てくる可能性がある。

 本を接着して開かないように‥‥‥いや、書物を駄目にしたらそれはそれでアウトか。


「どうしたものかなぁ‥‥‥」
【キュル?アルス、どうしたの?本持って、何で悩んでいるの?】
「‥‥‥あ、ハクロ、お帰り」
【キュルゥ♪】

 っと、考えている中で、先ずその難問の一人が帰還してきました。

 素早く扉を開けたようで、気が付くまでに時間がかかったというか、すごい冷や汗を吹き出しかけたというか‥‥‥うん、まだ大丈夫、彼女にまだわかっていないはず。

「ちょっとこの本、返却しようと考えていたんだよ。内容的に、ちょっと面白くなかったからね」
【そうなの?んー、内容気になるけど、読んじゃダメ?】
「いや、面白くないって。多分ハクロが読んでも同じじゃないかな?」
【‥なら、別に良い。アルス、返却するなら、一緒に行く♪】

 とっさにごまかしたのだが、この本を返却することを言ったからか、自然な流れで彼女の背中に乗せられていた。

 うん、どうしようこの状況。絶対に不味い方向へ転がっている気がするのだが。

 でも無理に言っても怪しまれそうだし‥‥‥まだ中身に何があるのか見られたわけでもない。

 そう考えると、ここは一旦素早く返却し‥‥‥‥貸し出しの記録などを後でどうにかして、証拠隠滅を図ったほうが良いのかもしれない。

 
「なら、返しに行こうか」
【キュルゥ♪】

 僕を乗せ、ご機嫌そうに返答してハクロが歩きだす。

 背中に背負われている分、背後は捻らなければ見えないだろうし、輸送に関してはこれでどうにかなるだろう。

 ただ、このあとの記録とかでどうごまかしをするかと考えていた…‥‥その時であった。



「「「「おわわわぁぁぁぁぁあ!!」」」」
【キュ?なんかかけてきているよ?】
「え?」


 何やら変な叫び声が聞こえてきたかと思えば、前の方から誰かが走ってきていた。

 数人ほどの、同級生の男子たちのようなのだが‥‥‥‥嫌な予感がする。

 頼むから、ただバカ騒ぎをしているだけだと思いたいのだが、そうはいかないようだ。

 僕らを見つけ、その目が手に持っていた本にすぐに引き寄せられ、見つけたというような表情と不味いという表情と、バレたら共犯者にするというような具体的な顔が次々と浮かび上がり、こちらへ向けて駆けだす。

「「「「おいーーー!!その本、急いで回収させてくれぇぇぇぇ!!」」」」

 そしてハクロがいる事にも気が付いたようで、この中身がバレたらそれこそ不味いとすぐに理解したのか、瞬時に慌てだす。

 うん、脅される可能性とかを考えていたけど、そもそもハクロがいる時点でそれは意味をなさないのか。学園内の美女の中の美女である彼女にこの中身を見られて、軽蔑されたりしたらそれこそ地獄だろうからね。

 ならば、ここは彼らが返却を望むのであればここは何事も無いように穏やかに返し合うだけで良いと思っていたのだが…‥‥次の瞬間、僕はその彼らの背後の方に迫る女子たちを見て、何が起きたのか瞬時に悟った。

‥‥‥そう言えば、この中身に盗撮みたいなのもあったっけ。

 という事は、彼らが何らかの要因でいつの間にかばらしてしまい、密かに女子たちの方で証拠を押さえるために動いていて‥‥‥それを今、行う気なのだろうか。

 


 見せたくない者、返してほしい者、証拠隠滅をされる前に奪おうと考える者。

 たった一冊の本の中身にあった物のせいで、瞬時に組みあがる関係性。

 駆け寄ってくる男子生徒たちに渡したとしても、背後からの女子生徒たちの手によって素早く奪われて、公開処刑のような絵面になるのが目に見えている。

 そして迂闊にその場にいれば巻き添えになる可能性もあるし…‥‥彼女にそんな写真の中身を見せるわけにもいかないだろう。

「ハクロ、この本、糸で結んであの男子たちへ全力投球」
【キュル?どうして?】
「どうしても何も、色々とあるようで…‥‥とりあえず、やった後はすぐに部屋へ戻って遊ぼうか」
【遊ぶのなら、やるよ♪】

 瞬時に糸を出して本が開かないように封をして、全力で男子生徒たちへ投球してもらう。

 そしてその行動の意図を相手はすぐに受け取ったようで、男子たちは素早く受け取り、背後の方から迫る女子たちの動きを見て、全力逃走を試み始める。

 僕らは巻き添えにならないようにこの場から素早く逃走を試みつつ、男子たちの冥福を祈るのであった。


‥‥‥え?なんで冥福を祈るとか、男子たちの敗北を考えているんだって?

 そりゃそうだろう。こういう時の怖さは、女性の方が上だろうし、圧倒的脅迫の前には委縮して普段通りの速さを出せない人もいるだろうから。

 火事場の馬鹿力で逃げることもできるだろうが、全員捕らえられる予測ができたから。

 それでも、せめて同性としての情けとして、中身がそう簡単に見れないように糸で封をしてもらったが‥‥‥後でハクロに頼んで、開封ができなさそうな様子なら開けるのを手伝って、中身を見る前に最速で戻ってきてもらうように頼むつもりではある。

 男子たちのせめてもの抵抗を補助しつつ、女子たちの手助けも行い、どちらにもできるだけ深くかかわらないようにかつ巻き添えに遭わないようにしておく。

 ただ、これだと開封される時に男子たちが捕縛されており、その様子を見られていれば恨まれる可能性があるが…‥‥その時はまぁ、捕縛された自分たちの身の上を振り返る方に専念してほしい。

 そもそもこんな代物を、隠しておいて、こちらにわたる前にどうにかしてくれなかった方が悪いのだから。

「何にしても、全力で否定をしておくべきか…‥‥」
【アルス、何をぶつぶつ、言っているの?】
「いや、何でもない。ただの独り言だし、それよりもハクロ、部屋で遊ぶためにさっさと向かおう」
【キュルゥ♪】

 今はとりあえず、男子たちへの大災害と言うべき嵐が何事もいなく通過されることを願う事にしよう。



 なお数日後、本に全部戻したつもりのヤヴァイ品々の一部が、開封時に回収しかねていたものがあったらしく、ハクロに拾われてしまったのは言うまでもない。

【ん?なにこ‥‥‥】
「あ‥‥」
【キュルゥ、変な写真、変な絵。コレ、なんでアルスの部屋に、落ちているの?】
「風でも吹いて、窓から入ったんじゃないかな?」
【‥‥‥でも、これに似たやつ、この間、焼かれていたよ?男子たち、涙を流して女子たちに睨まれていたけど‥‥‥これ、アルスも涙を流すの?】

 焼かれていたのかよ。しかも目の前で盛大にか。

「流さないかな…‥‥」
【ならよかった。あの様子、すごい悲壮だった。アルス悲しむかと思った】

‥‥‥どういう意図で泣かれていたのか、そこまでは伝わっていなかったらしい。

 うん、彼女が色々と純粋だったというべきか、その手には無垢で本当に良かった。

【あ、でも、そう言えば思いだした】
「何が?」
【似たような恰好、ドマドン所長、男子がイチコロになるって話、してくれた。ってことはアルス‥‥これで、イチコロ?】



「-------」
【アルス?アルス‥‥?どうしたの!?】

 うん、ドマドン所長許すまじ。なんてものを彼女に教え込んでいるんだよ。

 そして彼女のような美女が傍にいるし、前世の記憶などで精神面の年齢は足されるけど、それでも僕もまた大体年相応の年頃の男子であるのは間違いないのだが。

 少なくとも、騒がれる前に大丈夫だと言っておきつつ、赤い海を消す薬をすぐに生成して掃除するのであった…‥‥

「ハクロ、絶対にそのなんか教えてもらったやつ、やっちゃだめだからね?イチコロどころか、本気で命を奪いかねないもん」
【そんなに!?】

 









‥‥‥ハクロがアルスに説教されている間、天井裏で見てしまった間諜たちもまた、某アンドロイドの溶岩に沈むような光景になり果てていた丁度その頃。

 帝都から離れた、帝国内のとある農村部では今、とある被害が出ていた。

「てぇへんだぁぁ!!化け物が出てきただぁぁぁ!!」
「おらの作物を狙わず、取っておいた乾燥肉などが奪われただぁぁあ!!」

 小さな農村部ゆえに、普段は肉とはそこまで縁があるわけではない。

 だがしかし、祭りなどの時に放出して楽しむ目的で保存していた肉があったのだが…‥‥この日、その場所が襲撃されたのである。

【ギュルギュルギュルゥゥゥゥ!!】

 雄叫びを上げ、旨そうに奪った肉を喰らいつくしつつ、糸で体に結び、後でゆっくりと味わうために取っておくために蠢く怪物。

 怪物騒動はすぐに人の口を伝わり、帝都へと渡っていくのであった…‥‥‥


 
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