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2章 学園初等部~
小話 間諜会談
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‥‥‥ゼルナイト学園ではそろそろ、夏季と冬季にそれぞれ生徒たちへひと月ほどの間の休暇が与えられる。
往復の時間を考慮すると、2~3週間ほどしか休めない生徒もいるが、長い休暇と言えば休暇であり、帰郷できる機会に心を躍らせる生徒たちがいるだろう。
また、初等部はまだ良いが、中等部~高等部辺りの貴族の生徒たちであれば、将来の伴侶探しも兼ねた婚約者探しが始まり、休み明けには婚約関係を結ぶという光景もよく見られるものだ。
そのため、その婚約関係の話で意気込む生徒たちが多いはずなのだが…‥‥
「例年と比較すると、男子生徒たちのやる気が下がっている‥‥‥か」
「当主争いをしている家であれば、相手の家などを見てできる限り後見となってくれるようなところを求め、自分達の力を高めることに尽力しているはず。だがしかし、どうも今年は彼らのやる気が失せているようなのだ」
そんな話し合いがとある間諜とその雇い主の間で話され、その調査を行うことになった。
ついでに、敵対派閥だったり隣国の間諜や密偵などもいるのだが、彼らもまたその事に気が付いており、同じような目的であれば一旦休戦と言わんばかりに、ひとまず協力して調べてみることにした。
「‥‥‥という訳で、全員で調べてきたが…‥‥調査結果を分かりやすく、各自で報告書にまとめてきたな?」
「ああ、やって来たぞ」
「というか、大体予想がついていたんだけれども‥‥‥皆もしかして、同じような結果が出ているのかしら?」
「そうだとは思いたくは無いのだが、どうなのか…‥‥聞いて見ないとな」
調査をし終え、間諜や密偵たちはとある晩に集まり合い、報告会を開いた。
場所はとある建物の中で、ある間諜が個人的に有している所らしく、そこを会場として提供してもらったのである。
「では、誰から報告するか?」
「それなら、わたしから報告しようか」
誰からまとめ上げた内容を聞くかと見渡していると、一人の間諜が手を上げた。
「ああ、ならそちらから時計回りで始めるとしよう。では、報告を」
「分かった。今回の男子生徒たちのやる気が出ていない傾向に関してだが…‥‥」
‥‥‥その間諜がまず行ったのは、各男子生徒たちの意識に関しての調査。
本当に今、婚約者探しに対しての意気込みが低いのかどうかの正確性を測るためにわざわざ教師や生徒に変装して近づき、軽い会話を交えつつこっそりとその意気込みに関しての話を行うことによって聞き出した。
「その聞き出した内容では、おおよそ半数以上が婚約者探しに乗り気ではないという結果が出た。とは言え、もう半数が逆の結果ではなく、少しづつや、まぁまぁ、ある程度など、あやふやな回答をしつつもそれでも乗り気ではない様子が見られた。この結果は、例年行っている意識調査のデータと比較すると、かなり落ち込んでいることが分かるだろう」
各自に手渡された複製済みの報告書に書かれたグラフ図を見て、全員納得して頷く。
「なので、その原因は何なのかと密かに探ったが…‥‥どうやら、今年の新入生‥‥‥もとい、我々のような輩が最近注目をしているとあるものが原因であることが分かった」
「それは?」
「アルスという男爵家の三男‥‥‥彼の管理下にあるモンスター、ハクロだ」
「ハクロちゃんがか?」
「あの子が、男子生徒たちにどのような影響を与えているのかしら?」
調査をして見たところ、どうやら今年の意識変化の根底に、ハクロが関わっていることがうかがえた。
そのため、より詳しく分けて調べてみると…‥‥どうやら、各生徒によっては色々な事情があった。
「まずは、一番多かったのは『彼女の美貌に影響されて』のようだ。この場の同業者諸君は既に知っているだろうが、彼女は蜘蛛の体もあるが、美しい美女の体も持つモンスターだ。その美貌はまさに美しく、まだまだ成長する期待があるのだが、その容姿に心を打たれてしまったものが多いらしい。
「ああ、美しいもんなぁ…‥‥それでか」
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花‥‥‥アルスの前世にあったことわざを用いるのであれば、それである程度はハクロの美しさに対して表現できているのかもしれない。
だがしかし、美しいということはその分影響も与えやすく、周囲の見え方に関わってしまうのだ。
「彼女の美しさに見惚れる男子生徒や時々女子生徒などがいるのだが…‥‥その美しさを見て、他の者とつい比較してしまいがちになるそうだ。美しい花の横に平凡な花があったら、その平凡な花を選べるか?」
中身や家柄に血筋など、その他にも選ぶものはあるだろう。
だがしかし、悲しいかな‥‥‥容姿の方で選ぶものもそれなりに存在しており、美しき者を知ってしまった今、その他の者が目に入りにくいのである。
「美しさ以外でも妖艶、清廉、ほがらか、明るい、可愛い…‥‥様々な言葉が存在しており、それらが当てはまるような女性はいるだろう。でも、彼女の場合はそれらをひとまとめにしており…‥‥ゆえに、他の者へ目を向けるのに妨げてしまうのだ」
「わかるなその気持ち‥‥‥美しいと思っていても、明るくニコニコ笑っている姿も結構良いなと思うからな」
「特に、彼女にとって大事なアルスと一緒にいるところが可愛らしくて‥‥‥甘える様子とか本当にほのぼのしているけれども、代わりたくなると思うわよね」
「モンスターであるという部分もあるが、それはそれで魅力はあり…‥目を引くような者だというのは理解できるな」
「泳ぐ姿も一生懸命で、それがまた可愛いのよねぇ」
うんうんとその言葉にうなずく間諜たち。
結構絆されているような気がしなくもないが、普段の任務などでは見られないその光景が非常に眩しく、きらびやかな宝石のように見えてしまう。
「また、その美しさゆえに他の女性が目に入りにくいというのもあるが…‥‥失恋故の癒えていないショックが次の恋への障害となっているようだ」
「あー、失恋ねぇ…‥そりゃ、するだろうな」
「だって彼女、どう見てもアルスという少年一筋だものね」
美しい花を見れば、その花を自分のものにしたくなる気持ちは分からなくもない。
だがしかし、その花は既に先約済みというか、自ら選んでいるので自分のものになることは無いと分かってしまうのである。
「アルスがいない間に、告白を試みる男子生徒が学年を問わずに見かけたが…‥‥清々しく玉砕していたな」
「まだ、自分のその感情についての言葉は学べていないようだけれども、何となくで分かるようだ。だからこそ、首をすぐに横に振ったり、謝ったりしているようだ」
「そもそも、彼にべったりな光景を見てしまって、その場で失恋ってこともあるようなのよねぇ‥‥‥これだと、来年の新入生が不安になるわ」
猪突猛進、当たって砕けろの意気込みで向かう生徒はいるのだが、即座に爆散してしまう。
また、告白する前にどのような想いを彼女が抱いているのかを読み取ってしまい、その場で失恋するケースも存在しているようだ。
「美しい花故の、周囲への比較や手に入らぬ美しさに心を痛めてか‥‥‥‥まぁ、気持ちが分からないわけでもないがな」
「諦めの悪い生徒は親の権力を使おうとした様子もあったが、そちらは国が既に潰していた。学園の場は公平で平等だが、そこに親の力を入れるわけにはいかないからな。そもそも、そんなわがままをしている時点でどのような者か知れるものよ」
「まぁ、大抵は自国ではなく他国から学びに来た人が多かったようだけれども…‥‥ここは帝国で、他国とは違うものね。ついでにやってきたら釣りあげて、次の貿易契約などの材料にしているそうよ」
「そう言えば、我が国の方でいくつかの貴族家が降格していたりしたな…‥‥まぁ、自業自得なのは仕方が無いか」
心当たりがある間諜たちがそうつぶやきつつ、原因ははっきりと見えてきた。
というか、今年度からという時点で、そもそも全員なんとなくで予想していたのだが…‥‥どうやら見事に当たっていたようである。
何にしてもその後、他の間諜や密偵たちが報告をしあった結果、誰も彼もが同じような結論に至っていた。
そうなるのも無理はないと思いつつも、できるだけ改善したくもなるだろう。
「というか、初恋して数秒で失恋って悲劇が多いな‥‥‥心が痛くなるぞ」
「告白して玉砕するのが分かり切っているはずなのに、それでもやる奴がいるからな」
「後は、あの美しさを見た後だと、並大抵の者では満足できなくなる気分が分からなくもないが‥‥‥どうにかせんとなぁ」
どうしたものかと悩みつつも、この場で結論を出したところで彼らがやることは無い。
やるとすれば、彼らのそれぞれの雇い主の判断次第だろうし、それに従うしかないのだ。
「とはいえ、この件でもしかすると興味を持って、変に仕掛ける輩がいるかもしれん」
「ああ、それはこちらの雇い主がやりかねないなぁ」
「こちらも、大体予想できるからな…‥‥」
「そう考えると、報告しつつ…‥‥彼女に対して危害を加えそうなものがいたら、そちらを全力で阻止するという事で良いか?場合によっては失業しかねない者も出るかもしれないが、そちらに関しても各自ですぐに再就職が可能なように手を回すという事でどうだ」
「「「「「異議なし!!」」」」」
その言葉で、ひとまずはこの場の収拾はついただろう。
各自で雇い主の元へ戻り、今回の調査結果を報告していく。
その報告内容を聞き、その雇い主たちで頭をかかえる者や良からぬ企みを抱く者が出て、ハクロへの危害を防ぐためにその業界で忙しさが増したことは言うまでもないのであった…‥‥
「ところで、ふと思ったのだが、この休暇ではどうなるんだ?アルスという少年と一緒にヘルズ男爵領へ戻ると思うのだが‥‥‥」
「いや、情報だとあそこの屋敷が放火にあったというか、お家騒動と言えるようなものが起きているからな。学園で過ごす可能性の方が高い」
「その方が良い。我々の目で見やすくて、集まるにも都合がいいからな‥‥‥」
「出来れば距離を縮ませて、来年の時点でしっかりとカップル成立していたほうが今回のようなことを防げると思うのだが…‥‥どうにかできないだろうか?」
往復の時間を考慮すると、2~3週間ほどしか休めない生徒もいるが、長い休暇と言えば休暇であり、帰郷できる機会に心を躍らせる生徒たちがいるだろう。
また、初等部はまだ良いが、中等部~高等部辺りの貴族の生徒たちであれば、将来の伴侶探しも兼ねた婚約者探しが始まり、休み明けには婚約関係を結ぶという光景もよく見られるものだ。
そのため、その婚約関係の話で意気込む生徒たちが多いはずなのだが…‥‥
「例年と比較すると、男子生徒たちのやる気が下がっている‥‥‥か」
「当主争いをしている家であれば、相手の家などを見てできる限り後見となってくれるようなところを求め、自分達の力を高めることに尽力しているはず。だがしかし、どうも今年は彼らのやる気が失せているようなのだ」
そんな話し合いがとある間諜とその雇い主の間で話され、その調査を行うことになった。
ついでに、敵対派閥だったり隣国の間諜や密偵などもいるのだが、彼らもまたその事に気が付いており、同じような目的であれば一旦休戦と言わんばかりに、ひとまず協力して調べてみることにした。
「‥‥‥という訳で、全員で調べてきたが…‥‥調査結果を分かりやすく、各自で報告書にまとめてきたな?」
「ああ、やって来たぞ」
「というか、大体予想がついていたんだけれども‥‥‥皆もしかして、同じような結果が出ているのかしら?」
「そうだとは思いたくは無いのだが、どうなのか…‥‥聞いて見ないとな」
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場所はとある建物の中で、ある間諜が個人的に有している所らしく、そこを会場として提供してもらったのである。
「では、誰から報告するか?」
「それなら、わたしから報告しようか」
誰からまとめ上げた内容を聞くかと見渡していると、一人の間諜が手を上げた。
「ああ、ならそちらから時計回りで始めるとしよう。では、報告を」
「分かった。今回の男子生徒たちのやる気が出ていない傾向に関してだが…‥‥」
‥‥‥その間諜がまず行ったのは、各男子生徒たちの意識に関しての調査。
本当に今、婚約者探しに対しての意気込みが低いのかどうかの正確性を測るためにわざわざ教師や生徒に変装して近づき、軽い会話を交えつつこっそりとその意気込みに関しての話を行うことによって聞き出した。
「その聞き出した内容では、おおよそ半数以上が婚約者探しに乗り気ではないという結果が出た。とは言え、もう半数が逆の結果ではなく、少しづつや、まぁまぁ、ある程度など、あやふやな回答をしつつもそれでも乗り気ではない様子が見られた。この結果は、例年行っている意識調査のデータと比較すると、かなり落ち込んでいることが分かるだろう」
各自に手渡された複製済みの報告書に書かれたグラフ図を見て、全員納得して頷く。
「なので、その原因は何なのかと密かに探ったが…‥‥どうやら、今年の新入生‥‥‥もとい、我々のような輩が最近注目をしているとあるものが原因であることが分かった」
「それは?」
「アルスという男爵家の三男‥‥‥彼の管理下にあるモンスター、ハクロだ」
「ハクロちゃんがか?」
「あの子が、男子生徒たちにどのような影響を与えているのかしら?」
調査をして見たところ、どうやら今年の意識変化の根底に、ハクロが関わっていることがうかがえた。
そのため、より詳しく分けて調べてみると…‥‥どうやら、各生徒によっては色々な事情があった。
「まずは、一番多かったのは『彼女の美貌に影響されて』のようだ。この場の同業者諸君は既に知っているだろうが、彼女は蜘蛛の体もあるが、美しい美女の体も持つモンスターだ。その美貌はまさに美しく、まだまだ成長する期待があるのだが、その容姿に心を打たれてしまったものが多いらしい。
「ああ、美しいもんなぁ…‥‥それでか」
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花‥‥‥アルスの前世にあったことわざを用いるのであれば、それである程度はハクロの美しさに対して表現できているのかもしれない。
だがしかし、美しいということはその分影響も与えやすく、周囲の見え方に関わってしまうのだ。
「彼女の美しさに見惚れる男子生徒や時々女子生徒などがいるのだが…‥‥その美しさを見て、他の者とつい比較してしまいがちになるそうだ。美しい花の横に平凡な花があったら、その平凡な花を選べるか?」
中身や家柄に血筋など、その他にも選ぶものはあるだろう。
だがしかし、悲しいかな‥‥‥容姿の方で選ぶものもそれなりに存在しており、美しき者を知ってしまった今、その他の者が目に入りにくいのである。
「美しさ以外でも妖艶、清廉、ほがらか、明るい、可愛い…‥‥様々な言葉が存在しており、それらが当てはまるような女性はいるだろう。でも、彼女の場合はそれらをひとまとめにしており…‥‥ゆえに、他の者へ目を向けるのに妨げてしまうのだ」
「わかるなその気持ち‥‥‥美しいと思っていても、明るくニコニコ笑っている姿も結構良いなと思うからな」
「特に、彼女にとって大事なアルスと一緒にいるところが可愛らしくて‥‥‥甘える様子とか本当にほのぼのしているけれども、代わりたくなると思うわよね」
「モンスターであるという部分もあるが、それはそれで魅力はあり…‥目を引くような者だというのは理解できるな」
「泳ぐ姿も一生懸命で、それがまた可愛いのよねぇ」
うんうんとその言葉にうなずく間諜たち。
結構絆されているような気がしなくもないが、普段の任務などでは見られないその光景が非常に眩しく、きらびやかな宝石のように見えてしまう。
「また、その美しさゆえに他の女性が目に入りにくいというのもあるが…‥‥失恋故の癒えていないショックが次の恋への障害となっているようだ」
「あー、失恋ねぇ…‥そりゃ、するだろうな」
「だって彼女、どう見てもアルスという少年一筋だものね」
美しい花を見れば、その花を自分のものにしたくなる気持ちは分からなくもない。
だがしかし、その花は既に先約済みというか、自ら選んでいるので自分のものになることは無いと分かってしまうのである。
「アルスがいない間に、告白を試みる男子生徒が学年を問わずに見かけたが…‥‥清々しく玉砕していたな」
「まだ、自分のその感情についての言葉は学べていないようだけれども、何となくで分かるようだ。だからこそ、首をすぐに横に振ったり、謝ったりしているようだ」
「そもそも、彼にべったりな光景を見てしまって、その場で失恋ってこともあるようなのよねぇ‥‥‥これだと、来年の新入生が不安になるわ」
猪突猛進、当たって砕けろの意気込みで向かう生徒はいるのだが、即座に爆散してしまう。
また、告白する前にどのような想いを彼女が抱いているのかを読み取ってしまい、その場で失恋するケースも存在しているようだ。
「美しい花故の、周囲への比較や手に入らぬ美しさに心を痛めてか‥‥‥‥まぁ、気持ちが分からないわけでもないがな」
「諦めの悪い生徒は親の権力を使おうとした様子もあったが、そちらは国が既に潰していた。学園の場は公平で平等だが、そこに親の力を入れるわけにはいかないからな。そもそも、そんなわがままをしている時点でどのような者か知れるものよ」
「まぁ、大抵は自国ではなく他国から学びに来た人が多かったようだけれども…‥‥ここは帝国で、他国とは違うものね。ついでにやってきたら釣りあげて、次の貿易契約などの材料にしているそうよ」
「そう言えば、我が国の方でいくつかの貴族家が降格していたりしたな…‥‥まぁ、自業自得なのは仕方が無いか」
心当たりがある間諜たちがそうつぶやきつつ、原因ははっきりと見えてきた。
というか、今年度からという時点で、そもそも全員なんとなくで予想していたのだが…‥‥どうやら見事に当たっていたようである。
何にしてもその後、他の間諜や密偵たちが報告をしあった結果、誰も彼もが同じような結論に至っていた。
そうなるのも無理はないと思いつつも、できるだけ改善したくもなるだろう。
「というか、初恋して数秒で失恋って悲劇が多いな‥‥‥心が痛くなるぞ」
「告白して玉砕するのが分かり切っているはずなのに、それでもやる奴がいるからな」
「後は、あの美しさを見た後だと、並大抵の者では満足できなくなる気分が分からなくもないが‥‥‥どうにかせんとなぁ」
どうしたものかと悩みつつも、この場で結論を出したところで彼らがやることは無い。
やるとすれば、彼らのそれぞれの雇い主の判断次第だろうし、それに従うしかないのだ。
「とはいえ、この件でもしかすると興味を持って、変に仕掛ける輩がいるかもしれん」
「ああ、それはこちらの雇い主がやりかねないなぁ」
「こちらも、大体予想できるからな…‥‥」
「そう考えると、報告しつつ…‥‥彼女に対して危害を加えそうなものがいたら、そちらを全力で阻止するという事で良いか?場合によっては失業しかねない者も出るかもしれないが、そちらに関しても各自ですぐに再就職が可能なように手を回すという事でどうだ」
「「「「「異議なし!!」」」」」
その言葉で、ひとまずはこの場の収拾はついただろう。
各自で雇い主の元へ戻り、今回の調査結果を報告していく。
その報告内容を聞き、その雇い主たちで頭をかかえる者や良からぬ企みを抱く者が出て、ハクロへの危害を防ぐためにその業界で忙しさが増したことは言うまでもないのであった…‥‥
「ところで、ふと思ったのだが、この休暇ではどうなるんだ?アルスという少年と一緒にヘルズ男爵領へ戻ると思うのだが‥‥‥」
「いや、情報だとあそこの屋敷が放火にあったというか、お家騒動と言えるようなものが起きているからな。学園で過ごす可能性の方が高い」
「その方が良い。我々の目で見やすくて、集まるにも都合がいいからな‥‥‥」
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